vol.399:階段昇降による体幹の筋の促通 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
バイオメカニクス
タイトル
体幹を安定化させる筋を階段昇降中に活性化するAbdominal Hollowing(AH)の効果:A
Cross-Sectional Study
Effects of abdominal hollowing during stair climbing on the activations of local trunk stabilizing muscles: a cross-sectional study.Shibata S,
Takemura M, Miyakawa (2018)
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・階段昇降による機能を促通する効果を知りたいと考え、本論文を読むことにした。
内 容
INTRODUCTION
・有酸素運動は腰背部に対するリハビリテーションの基本である。
・階段昇降は費用が高くなく、自然な有酸素運動で毎日の生活で簡単に行うことが可能である。
・しかし、階段昇降の体幹の筋に対する効果は明らかになっていない。
・腹部を引っ込める運動(AH)は体幹の浅層のグローバル筋の活動を弱め、ローカル筋の活動を強めることにより、腰背部痛(LBP)の予防や治療に用いられる。
・我々はAHと共に行う階段昇降はAHを行わない階段昇降より効果的に体幹を安定化す
るローカル筋を促通すると仮説を立てた。
METHODS
・20人の健康な右利き男性で腰背部痛の既往がない者を被験者とした。
・被験者は理学療法士によりAHが正しく行えるように訓練された。被験者はゆっくりと呼吸する間、上腹部と背部と骨盤を動かさずに、ヘソより下の下腹部を優しく、ゆっくりと吸うよう指示された。
・被験者はAHを口頭指示と触覚フィードバックにより練習する。きちんとAHが行えるようになるまで腸骨稜から2cm中央に被験者の指を置いて触覚のフィードバックを用いて練習した(Fig. 1)。
・Stabilizer pressure biofeedback unitを使ったフィードバックで腹横筋を活動させる訓練した。
・背臥位と膝を立てた背臥位、片側の下肢を空間位で動かしながら片側の足底のみが接地した背臥位、片側の下肢を空間位で動かしながらもう一方の足底も接地させない背臥位で行った(Fig. 2)。
・膝を立てた背臥位で超音波フィードバックを見せながらAHを練習した。AHの前に被験者は咳をするように指示され、腹部の筋の動きを見られるようにした。その後、片側の下肢を空間位で動かしながら片側の足底のみが接地した背臥位、片側の下肢を空間位で動かしながらもう一方の足底も接地させない背臥位でも行った(Fig. 3)。
・電極は多裂筋(MF)と腰部脊柱起立筋(LES)と胸部脊柱起立筋(TES)と外腹斜筋(EO)と内腹斜筋(IO)と腹直筋(RA)に貼り付けた(Fig. 4)。腹横筋(TrA)と内腹斜筋(IO)の収縮は分けて記録することが困難なので、TrA-IOとして記録した。
・EMGによる測定は3回行われ、平均が分析に使われた。二乗平均平方根(RMS)はEMGの生データから計算され、筋活動の水準を定量するためにRMS3回の平均は最大自動収縮(MVC)について標準化され、MVCに対するパーセント(%MVC)で表した。
・MVCを決めるために被験者は3回のトライアルの後に数分をおいて、最大の等尺性の体幹屈曲・伸展・左右への回旋を行なった。被験者は椅子型の動力計にまっすぐに座るように指示され、それぞれの運動を3回繰り返すように指示された。腹横筋のEMG MVCは座位で出来る限り強く咳をしてもらうことで得た。
・被験者はEMGをつけた状態で階段昇降を行なった。高さが0.17 m、奥行き0.27 mの12段の階段を用いた。階段昇降直前に腹横筋の収縮を理学療法士が触診して評価した。腹部の筋の疲労を防ぐためにトライアル間に最低20秒の休憩を挟んだ(Fig. 5)。
RESULTS
・AHをしてからの階段昇降はAHなしよりにより、MFとTrA-IOはより強く働いた(Fig.6)。
・しかし、他の筋については有意差が無かった(Table 1)。
・体幹のローカル筋とグローバル筋の活動の比を計算したものをTable 2に要約した。
・体幹のローカル筋/グローバル筋の活動比はAHありの階段昇降でより高く、TrA-IO/EOは有意に高かった(p<0.05)。
私見・明日への臨床アイデア
・勤務先の施設では介護士による歩行訓練を行うことがあるが、筋の促通を目的にする場合には階段昇降の方がより適切であると考えられる。セラピストがAHを行ってから介護士に階段昇降訓練を行ってもらうことで機能の向上を目指すのも有効と考える。
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)