Box and Block Test(BBT)とは|実施手順・採点・変化量と臨床での活用
60秒の「運べた」を、
暮らしの「使える」へ。
Box and Block Test(BBT)
準備・実施・採点から、個数の変化と生活支援の読み解きまで。

01|BBTとは|60秒で、つかむ・運ぶ・離すを捉える
Box and Block Test(BBT)は、仕切りのある箱の一方から他方へ、片手でブロックを1個ずつ移す検査です。60秒間に正しく移せた個数から、手を使って物を扱う速さ、すなわち粗大巧緻性を捉えます。左右は別々に記録します。[1][2]
- 用具:一辺約2.5cmのブロック150個と専用箱。
- 練習:片手につき15秒。
- 本測定:片手につき60秒。
- 結果:右○個/分・左○個/分。100点満点の換算ではありません。
両手の練習と本測定は計2分30秒。説明、用具の整理、個数確認も含め、臨床では5〜10分程度の枠を取ると進めやすくなります。これは運用上の目安で、休憩や理解確認に応じて調整します。
速く運べたかは分かりますが、ボタン操作、感覚障害、生活での使用頻度まで1つの数字で決まるわけではありません。個数とともに「どの段階で時間がかかったか」を見ます。
02|準備|箱・姿勢・測る順番をそろえる
専用箱、ブロック150個、ストップウォッチ、記録用紙を準備します。箱は長辺を机の縁に沿わせ、中央の仕切りが本人の正面になるよう配置。測る手の側の区画にブロックを入れ、座った状態で届く高さに整えます。検者は対面から、指先が仕切りを越える様子を見ます。[2][3]
原著に基づく公開手順は利き手から非利き手の順です。国内メーカーの案内では非麻痺側・健側から始める説明もあります。利き手と非麻痺側は同じとは限らないため、採用した手順と実際の順番を記録し、再評価でそろえましょう。
椅子・机、足底支持、車椅子、装具、痛み、疲労も確認します。測定中に検者が腕を支える、仕切りを低くする、ブロックを大きくする変更を行った場合は、標準条件のBBTとは区別して記録します。
03|実施手順|新人が迷いやすいところまで
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1.説明し、3個で実演する
「この手で1個ずつ取り、仕切りの向こうへ運んで離してください。指先も向こう側まで運びます」と伝え、検者が3個で示します。以下の声かけは内容を伝えるための説明例です。
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2.15秒練習する
開始前は両手を箱の側面に置き、合図で始めます。複数をまとめて運ぶ、指先が仕切りを越えないなどの誤りは練習後に確認します。
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3.ブロックを戻し、60秒測る
練習で移したブロックを元の区画へ戻します。「できるだけ速く、1個ずつ」と確認し、準備の合図から約3秒後に開始。60秒で止めます。
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4.運搬の条件を確認して数える
受け側の個数だけでなく、複数同時運搬の余分な個数、指先が越えなかった運搬、箱外に出た有効な運搬を反映します。
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5.反対の手も、練習から行う
反対の手の側にブロックを戻し、15秒練習と60秒本測定を行います。左右の結果を別々に記録します。
実施手順の原資料は参考文献2を参照してください。[2]

04|採点|「運べた」の条件を統一する
| 起きたこと | 数え方 |
|---|---|
| 1個を持ち、指先も仕切りを越えて反対側へ離した | 1個として数える |
| 2個以上を同時に運んだ | その運搬は1個。2個なら余分な1個を差し引く |
| 指先が仕切りを越えず、ブロックだけ投げ入れた | 数えない |
| 指先が越えた後、ブロックが机や床へ跳ね出た | 数える。測定中に拾わせない |
採点例:受け側に32個あり、2個同時の運搬が1回、指先が越えない投げ入れが1個、正しく運んだ後に箱外へ出たものが2個なら、32−1−1+2=32個/分です。検者は修正が必要な出来事をその場でメモします。[2]
同じ出来事を二重に差し引かないよう、記録欄では「受け側に残った余分な個数」「無効運搬で入った個数」「箱外へ出た有効個数」を分けます。60秒を完了できなかった場合は、測定時間・理由・運べた個数を残し、短時間の個数を単純に1分へ換算しません。

05|結果を読む|正常値・変化量・生活の予測
年齢・性別・左右を踏まえて比較する
成人の原著は20歳以上628人を対象に基準値を提示しています。年齢や性別、左右で分布が異なるため、「○個未満なら異常」という全年齢共通の値にはまとめません。原著の該当区分と照合し、対象集団の違いも考慮します。[1]
5.5個という値は、改善の合格点ではない
脳卒中患者の再検査研究では、麻痺側の最小可検変化として5.5個/分が報告されています。整数なら6個程度の変化が一つの目安になりますが、これは測定誤差を超えた変化を判断するための値で、生活自立や本人に重要な改善を保証する値ではありません。対象の重症度や測定条件を合わせて読みます。[4][7]
慢性期脳卒中53人の研究では、開始時FMA-UEが18点以下の群にBBTの床効果がみられ、変化を検出する目安も運動障害の程度に依存しました。また、検査値の変化と本人が感じる変化との関連は限定的でした。したがって、重度例の0個を「回復していない」と読み切ったり、一律の変化量を全例へ適用したりせず、運動機能や生活場面を併せて確認します。この18点は当該研究の所見で、実施可否を決める普遍的な境界ではありません。[5]
何が予測できるのか
BBTは、同じ条件での物品運搬能力を経時的に捉えるのに役立ちます。一方、単独得点から「食事が自立する」「復職できる」「何週間で回復する」と個人の結末を決めるものではありません。本人が必要とする作業の実測を重ねることで、支援量の判断に近づけます。
06|個数の先を見る|観察から介入へ
国内の研究では、回復過程に伴うBBT中の手先軌道の滑らかさの変化も検討されています。標準BBTの得点は個数ですが、臨床では運搬の質を別欄に残すと、次の介入を考えやすくなります。[6]
| 見えた事実 | 追加で確かめること | 練習・支援の例 |
|---|---|---|
| ブロックに触れても、つかむまでが長い | 指の開き、感覚、見え方、課題理解 | 練習ではつかみやすい大きさ・位置から始め、把持を安定させる |
| 運ぶ時に体を大きく倒す | 肩・肘の運動、痛み、座位支持 | 練習では距離や支持面を調整し、届く範囲を段階的に広げる |
| 手が向こうへ届いても離せない | 手指の伸展、過剰な力、感覚 | 物を置く面を広くし、把持から手放しへつなぐ |
| 後半で明らかに減速する | 疲労、痛み、注意、力の入れすぎ | 生活作業を短い単位に分け、休息や道具配置を調整する |
これらは観察に基づく介入例です。練習条件は変えても、効果を比較する再評価では標準条件へ戻すことを忘れないようにします。
07|臨床ストーリー|24個から31個、その次に確認すること
説明用の架空例:右片麻痺の方が、同条件の再評価で24個から31個へ増えました。「7個増えた」という結果に加え、前回は離すまでに止まっていた手が、今回は滑らかに次のブロックへ向かっています。
まず疼痛、装具、座位、順番などの条件差を確認します。そのうえで変化量を関連研究と照合し、本人の目標である「食卓のコップを片づける」を実際に確認。空の軽いコップから始め、把持、移動、置く動作、疲労、介助の有無を記録します。
BBTが改善しても、生活で使っていなければ、配置や時間の余裕、家族の見守り方を調整します。逆にBBTが0個のままでも、手の開きや支えとしての使い方が変化することがあります。変化が現れる評価を併用します。

08|STEF・ARAT・FMA-UEとの使い分け
| 評価 | 主に確認したいこと | BBTとの関係 |
|---|---|---|
| BBT | 同じブロックを繰り返し運ぶ速さ | 短時間で左右と経時変化を捉える |
| STEF | 形・大きさが異なる物品の操作 | どの物品で難しさが増すかを補う |
| ARAT | 把握・握り・つまみ・粗大運動の遂行 | 異なる動作課題をどの程度行えるかを補う |
| FMA-UE | 上肢の運動障害の程度 | 運べない理由や重度例の運動変化を補う |
| 生活作業の観察・本人の報告 | 必要な場面で実際に手を使えるか | 生活上の意味と支援量を確認する |
評価間で点数を換算したり、片方の改善をもう片方の改善とみなしたりせず、目的に応じて組み合わせます。
09|評価・記録PDFと原資料
手順、採点の注意点、左右の結果、動作の観察、生活目標と再評価を2ページにまとめました。原資料へのリンクもPDF内に掲載しています。
実施・採点の詳細は原資料をご確認ください。イラストは検査場面を伝える説明用です。
参考文献・原資料
- Mathiowetz V, et al. Adult norms for the Box and Block Test of manual dexterity. AJOT. 1985;39:386–391.
- Mathiowetz提供:Box and Blocks Test Instructions(実施手順・記録用紙)
- 酒井医療:ボックス&ブロックテスト(用具・実施方法)
- Chen HM, et al. Test-retest reproducibility and smallest real difference of 5 hand function tests in patients with stroke. Neurorehabil Neural Repair. 2009;23:435–440.
- Aaby D, et al. Minimum Detectable Change and Minimal Clinically Important Difference for the Box and Block Test and Fugl-Meyer Assessment in Moderate to Severe Chronic Stroke. 2026;8:100623.
- 榊原時生・仰木裕嗣.脳卒中患者の回復過程におけるBox and Block Testの手先軌跡の滑らかさの変化.2023;47:172–179.
- Rehabilitation Measures Database:Box and Block Test(研究特性の整理)
資料確認日:2026年10月31日。手順・用具は原資料とメーカー資料、研究結果は原著・公開抄録を照合しています。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)