つかまり立ち・伝い歩きが遅い子|足・体幹・バランスの見方
立ち上がる準備は、
足だけでなく全身で育ちます
周りの子はつかまり立ちを始めたのに、うちの子はまだ立とうとしない。立たせると膝が曲がって沈む。つま先だけで立つ。家具につかまっても横へ進めない——。そんなとき、足の力だけを見てしまいがちですが、つかまり立ち・伝い歩きには、足裏・股関節・体幹・手の支持・横方向のバランスが関わります。

立ち上がらない姿を見ると、不安になります。
低い台やソファにつかまっても、膝が曲がったまま沈む。手の力で引っ張っているように見える。立たせるとつま先だけになり、かかとが浮く。立てても横へ足が出ず、伝い歩きが始まらない。
検索すると「つかまり立ち いつから」「伝い歩き 遅い」「歩かない」などの言葉が出てきて、余計に心配になることがあります。でも、立位の発達は足の筋力だけで決まりません。大切なのは、足裏で床を感じ、骨盤と体幹を支え、手を使いながら重心を移せるかを分けて見ることです。
つかまり立ち・伝い歩きが遅いように見えるとき、まず確認したいのは「立つ意欲がない」のか、「立つための土台がまだ育っている途中」なのかです。座位、四つ這い、膝立ち、足裏で床を押す経験、横への重心移動が少しずつ重なって、立つ動きにつながります。
この記事では、つかまり立ち・伝い歩きの発達の流れ、遅く見える理由、家庭で見るポイント、相談の目安を整理します。STROKE LABらしく、姿勢・筋緊張・感覚・運動学習の視点から、日常で見られるサインに落とし込んで解説します。
つかまり立ち・伝い歩きとは。
つかまり立ちは、赤ちゃんが家具や大人の体などにつかまり、自分の力で体を立ち上げる動きです。伝い歩きは、立った姿勢で家具や壁などを支えにしながら、横方向へ足を運ぶ動きです。
この段階では、まだ手の支えが必要です。手を離して歩く前に、足裏で床を押す、膝と股関節を伸ばす、体幹を保つ、横へ体重を移す、倒れそうになったときに戻る、という経験を積んでいきます。つまり、伝い歩きは「歩く練習」というより、立位バランスを学ぶ大切な通過点です。
独歩は前へ進む動きですが、伝い歩きは横へ重心を移しながら足を出す動きです。片足に少し体重を乗せ、反対の足を横へ動かす。これが難しいと、立ててもその場で固まったり、家具にお腹を預けたまま動けなかったりします。

立つために育つ、4つの力。
つかまり立ちは、足で立つ動きに見えますが、実際には全身の連携です。足裏で床を感じ、股関節と膝で体を支え、骨盤と体幹を保ち、手で支えながら視線と重心を動かします。
足裏全体で床に触れることで、体重の位置を感じやすくなります。つま先だけでは支持面が狭く、立位が不安定になりやすくなります。
立位では、股関節・膝・足首が連動して体重を支えます。膝が曲がって沈み込む、片足だけ体重をかけにくい場合は、支え方の偏りを見ます。
お腹を家具に預けすぎる、腰が反る、背中が丸いなどがあると、足で支える経験が入りにくくなります。骨盤と体幹が足の上に乗ることが大切です。
伝い歩きでは、片足に体重を乗せ、反対の足を横へ出します。横へ体重を移すことが怖い、または難しいと、立ててもその場から動けません。

遅く見える理由を、分解します。
つかまり立ち・伝い歩きが遅く見える理由は一つではありません。足の力が弱いだけでなく、足裏の感覚が入りにくい、体幹を家具に預けすぎる、横へ体重を移すのが怖い、手の支えに頼りすぎる、床での移動経験が少ないなど、いくつかの要素が重なります。
| 見られる様子 | 考えやすい背景 | 家庭で見るポイント |
|---|---|---|
| 立たせると膝が曲がって沈む | 股関節・膝で体重を支える経験が少ない、体幹が足の上に乗りにくい | 足裏が床についているか。お腹を台に預けすぎていないか。 |
| つま先だけで立つ | 足裏全体で床を感じにくい、ふくらはぎの緊張、体が前へ行きすぎる | かかとが一瞬でも床につくか。片側だけつま先にならないか。 |
| お腹を家具に預ける | 体幹と骨盤で姿勢を保つより、家具に寄りかかって安定している | 低い台の高さが合っているか。手だけでなく足へ体重が落ちているか。 |
| 横へ足が出ない | 片足に体重を乗せる経験が少ない、横方向のバランスが不安 | おもちゃを左右へ少しずつ動かしたとき、体重移動が出るか。 |
| 片側の足に乗らない | 左右差、向き癖、片側の足裏感覚や筋緊張の違い | いつも同じ足を浮かせるか。片手・片足の使い方に差がないか。 |
STROKE LABの視点:「足が弱い」より先に、「足裏に体重が落ちているか」を見る
つかまり立ちのご相談では、「足の力が弱いのでは」と心配される保護者の方が多くいらっしゃいます。しかし、当施設で赤ちゃんの立位を丁寧に確認すると、足そのものよりも、足裏に体重が落ちず、手やお腹で家具に寄りかかっているケースが目立ちます。
立つためには、足裏で床を感じ、股関節と膝で体重を受け、骨盤と体幹が足の上に乗る必要があります。ここが整うと、赤ちゃんは手を少し自由に使いながら、おもちゃへ手を伸ばしたり、横へ一歩移動したりしやすくなります。
足・体幹・バランスを、分けて見ます。
つかまり立ちを観察するときは、「立てたか」だけではなく、どのように立っているかを見ます。足裏、膝、股関節、骨盤、手の支え、視線、怖がり方を分けると、家庭での関わり方も具体的になります。
足指だけ、つま先だけ、片足だけで支えていないかを見ます。足裏全体が床につくと、体重の位置が分かりやすくなります。
膝が過度に曲がって沈む、逆に突っ張りすぎる場合は、体重を受ける調整がまだ不安定なことがあります。
家具にお腹を強く預けていると、足で支えるより、体をもたれかけて安定している状態になります。台の高さやおもちゃの位置を調整します。
伝い歩きでは、横へ体重を移す力が重要です。左右へおもちゃを動かしたとき、体重が移るか、足が横に出るかを見ます。


様子見でよい場合、相談した方がよい場合。
つかまり立ち・伝い歩きが遅いかどうかは、月齢だけで判断するより、変化の経過と全身の様子で見ます。立つことに興味が出ているか、足で体重を支えようとしているか、左右差が強くないかを確認します。
| 観察ポイント | 様子を見ながら関われることが多い | 相談を考えたい |
|---|---|---|
| 立つ意欲 | 膝立ち、台に手を伸ばす、立とうとする様子が少しずつ増えている | 月齢が進んでも、足で支える・立とうとする様子がほとんどない |
| 足裏 | つま先になることはあるが、足裏全体で床を押す時間もある | いつもつま先だけ、かかとがつかない、片側だけつま先になる |
| 左右差 | 左右どちらの足にも少しずつ体重を乗せる | いつも片足を浮かせる、片側だけ足が出ない、片手・片足の動きが少ない |
| 筋緊張 | 機嫌や疲労で変化し、抱っこや床遊びでは力が抜ける | 常に強く反る、突っ張る、またはぐにゃっと崩れて支えにくい |
| 全身状態 | 哺乳・睡眠・体重増加がおおむね順調 | 哺乳が弱い、体重増加が心配、ぐったりしている、発達の後戻りがある |
高い椅子や不安定な家具でつかまり立ちをさせると、転倒のリスクがあります。練習は、床に足裏がしっかり届く場所、安定した低い台、保護者がすぐ支えられる距離で行います。立つ時間を長くするより、安全な環境で短く、楽しく、繰り返すことが大切です。
月齢別に、見方を変えます。
つかまり立ち・伝い歩きは、赤ちゃんによって時期に幅があります。大切なのは、月齢そのものより、床での移動、膝立ち、足裏接地、横への重心移動が少しずつ増えているかです。
| 月齢の目安 | 見たいポイント | 関わり方 |
|---|---|---|
| 7〜9か月頃 | 四つ這い、膝立ち、低い台へ手を伸ばす準備 | 床遊びを中心に、低い台で膝立ち・手を伸ばす遊びを入れる |
| 9〜11か月頃 | つかまり膝立ち、つかまり立ち、足裏で床を押す経験 | 安定した低い台におもちゃを置き、手で支えながら立つ経験を作る |
| 11〜13か月頃 | つかまり立ちの安定、しゃがむ、横へ足を出す | おもちゃを左右へ少し動かし、横への重心移動を促す |
| 12〜15か月頃 | 伝い歩き、数歩の独歩、しゃがんで立つ動き | 焦って手を引き続けず、床と低い家具で自分から動く機会を増やす |

※月齢は目安です。早産の場合は修正月齢で見ることがあります。気になる場合は乳幼児健診やかかりつけ医で相談してください。
家庭でできる、やさしい遊び。
家庭で大切なのは、早く歩かせることではありません。赤ちゃん自身が床から立ち上がる準備をし、足裏で床を押し、体を横へ移す経験を安全に積むことです。

低い台の前で膝立ちになると、股関節と体幹を使う準備になります。すぐ立たせるより、膝立ちでおもちゃに手を伸ばす遊びも大切です。
立ったまま固まるより、立つ・しゃがむ・また立つ経験が大切です。おもちゃを床と台の間で移動させると、自然に上下の動きが出やすくなります。
立つ練習ばかりに偏らず、腹ばい、寝返り、ずりばい、はいはい、四つ這いも続けます。床で体を動かす経験が、立位の安定につながります。
避けたい関わり。
立つことを急ぎすぎると、赤ちゃんが自分で体重を感じる経験が少なくなることがあります。特に、手を引いて長く歩かせる、歩行器で移動させる、高い場所で立たせるといった関わりは注意が必要です。
歩行器は赤ちゃんが自分の足裏で体重を感じ、体幹とバランスを使って移動する経験とは異なります。また、移動速度が速くなり、転倒や衝突など安全面のリスクもあります。立位や歩行の準備は、床での移動、低い台でのつかまり立ち、横への重心移動の中で育てていきます。

| 避けたいこと | 理由 | 代わりにできること |
|---|---|---|
| 手を引いて長く歩かせる | 赤ちゃん自身の重心移動や足裏感覚が入りにくい | 低い台で横へ移る、しゃがむ、床で動く遊びを増やす |
| 歩行器で移動させる | 足裏で体重を感じる経験と異なり、安全面のリスクもある | 床マット、低い台、安定した家具で見守りながら遊ぶ |
| 高い場所で立たせる | 転倒時の危険が大きく、保護者がすぐ支えにくい | 床に足裏が届く安全な環境で短時間行う |
専門家は、どこを見るのか。
専門家は、つかまり立ちができる・できないだけを見ているわけではありません。どこに体重を預けているか、足裏で床を押せているか、片足に乗れるか、横へ移動できるか、怖さや感覚の影響がないかを見ます。
足裏全体が床につくか、つま先立ちが強くないか、足首の硬さや左右差がないかを確認します。
膝が沈む、反張する、骨盤が左右に逃げる、片側に乗れないなど、足で支える土台を見ます。
手で強く引っ張りすぎていないか、片手を離せるか、視線やおもちゃの位置で体がどう動くかを確認します。
立位になると不安が強い、床の感覚を嫌がる、足裏に触れることに敏感など、感覚面も確認します。

STROKE LABでは、足裏、股関節、体幹、手の支持、左右差、感覚、怖さ、家庭環境まで含めて、お子さんの動きを丁寧に確認します。病院や健診での相談とあわせて、家庭でできる関わり方を整理したい方は、小児リハビリのページもご覧ください。
よくある質問。
Q. つかまり立ちが遅いだけで、発達の遅れですか?
Q. 伝い歩きが始まらないときは、何を見ればよいですか?
Q. つま先立ちでつかまり立ちします。大丈夫ですか?
Q. 歩行器を使えば、早く歩けますか?
Q. いつ相談した方がよいですか?
STROKE LABでは、立つ前の準備まで見ます。
STROKE LABの小児リハビリでは、「つかまり立ちができるか」「伝い歩きができるか」だけでなく、なぜ立位が安定しにくいのかを丁寧に見ます。足裏、足首、膝、股関節、骨盤、体幹、手の支持、左右差、感覚、怖さ、家庭環境まで含めて整理します。
赤ちゃんの発達は一人ひとり違います。平均と比べて焦るより、「今この子にとって、安心して立位へ向かえる入口はどこか」を見つけることが大切です。健診や小児科での相談とあわせて、家庭での関わり方を具体的に整理したい場合は、専門評価をご検討ください。
生活の動きから一緒に整理します。

健診や病院で「大丈夫」と言われることは、保護者にとって大きな安心材料です。一方で、毎日お子さんを見ている中で生まれる小さな違和感や不安も、決して軽く扱うものではありません。
私たちは、診断を急ぐのではなく、今のお子さんにとって、安心して経験できる入口を一緒に探すことを大切にしています。
「このまま様子を見てよいのか」「家庭では何を見ればよいのか」と迷われている方は、どうぞお気軽にご相談ください。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、乳児の運動発達・立位バランスに関する一般的な情報と、STROKE LABの小児リハビリにおける臨床経験をもとに構成しています(最終確認日:2026年7月2日)。
- CDC: Milestones by 1 Year
- CDC: Milestones by 15 Months
- American Academy of Pediatrics / HealthyChildren.org: Movement Milestones in Babies 8 to 12 Months Old
- American Academy of Pediatrics / HealthyChildren.org: Developmental Milestones 12 Months
- American Academy of Pediatrics / HealthyChildren.org: Baby Walkers — A Dangerous Choice
- NHS: Baby moves / Tummy time and activity ideas

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)