【2026年版】BHA・THAの手術・脱臼肢位・リハビリテーション・自主トレまで解説
人工股関節置換術後、脱臼を防ぎながら、どこまで回復できるのか。
BHA(大腿骨頭置換術)またはTHA(全股関節置換術)を受けた後、「どんな動きが危険なのか」「いつまで気をつければいいのか」と不安を感じるご家族は多くいらっしゃいます。この記事では、術後リハビリの全段階と脱臼リスクの正しい知識を、ご家族にもわかりやすく解説します。
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こんなお悩みはありませんか?
「手術は無事に終わったのに、退院してからの生活が不安で仕方ない。」
そんな声をご家族からよく伺います。股関節の手術後は、傷口の回復だけでなく、「どう動いていいか」「脱臼はいつ起きるか」という恐怖が日常生活に影を落とします。
この記事では、手術の種類・脱臼リスクの仕組み・リハビリの進め方を、ご家族の目線でわかりやすくまとめました。
BHA・THAとは何か。
人工股関節置換術には、大きく2種類あります。股関節は「大腿骨頭(骨盤に収まる球)」と「臼蓋(受け皿)」から成り立っており、どこを置き換えるかで手術の内容が変わります。
BHA(大腿骨頭置換術)は、骨盤側の受け皿はそのままにして、大腿骨の頭部だけを人工物に置き換えます。主に高齢者の大腿骨頸部骨折(転倒による股関節近くの骨折)に使われます。
THA(全股関節置換術)は、骨盤側の受け皿と大腿骨頭の両方を置き換えます。重度の変形性股関節症(こわばりや痛みを引き起こす軟骨の摩耗)、リウマチ性関節炎、先天性の股関節疾患などに適応されます。手術はより複雑ですが、長期的な安定性と生活の質の向上が期待できます。
人工股関節の構成要素。
THA後の安定性を理解するために、人工股関節の3つの部品を知っておきましょう。
骨盤の臼蓋に設置され、人工関節の受け皿として機能します。カップの角度設定が不適切だと関節の安定性が低下し、脱臼リスクが高まります。
大腿骨頭の代替として機能し、臼蓋カップに収まって股関節の動きを再現します。頭部のサイズが小さいと脱臼リスクが高まります。大きすぎると周囲の組織と干渉することもあります。
大腿骨に挿入されて人工関節を固定します。ステムの固定が不安定だと関節全体の安定性が損なわれ、脱臼リスクが増加します。骨と融合する表面処理(骨成長領域)が施されています。
— 全股関節置換術(THA)のX線画像(左)と人工股関節の模式図(右)。画像引用元:ResearchGate
術前計画:立位・座位双方での骨盤X線が必要です。矢状面・冠状面・横断面を考慮した計画ソフトウェアにより、患者固有の機能的安全ゾーンを決定します(BioMed Central, 2023)。
カップ設置角度:臼蓋カップの傾斜角(abduction angle)と前傾角(anteversion)が脱臼リスクに直結します。個別化されたアライメント評価が術後経過を大きく左右します。
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
STROKE LABは脳神経・整形外科疾患に特化した自費リハビリ施設です。人工股関節置換術後の専門的なリハビリプログラムをご提供しています。まずはお気軽にご相談ください。
なぜ脱臼が起きるのか。
人工股関節は「球(ボール)」が「受け皿(カップ)」に収まる構造です。術後の初期は、周囲の筋肉や靭帯がまだ安定していないため、特定の角度に股関節を動かすとボールが受け皿から外れてしまいます。これが脱臼です。
手術のアプローチ(どの方向から股関節に入ったか)によって、どの姿勢が危険かが変わります。担当医・療法士に必ず確認しましょう。
アプローチ別の禁忌肢位。
手術の進入経路(アプローチ)は3系統あり、それぞれで避けるべき姿勢(禁忌肢位)が異なります。どのアプローチが使われたかは、退院時の書類か担当医師に確認してください。
| アプローチ(進入経路) | 禁忌肢位(避けるべき姿勢) | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 前方系 (DAA・ALS・OCM) |
伸展+内転+外旋の組み合わせ | 筋肉・腱を傷つけないため回復が早い。術後の痛みが少ない傾向。 |
| 側方系 (DLA) |
屈曲+内転+外旋の組み合わせ | 安定性が高い。中臀筋(お尻の筋肉)の回復が必要。 |
| 後方系 (PLA・PA) |
深い屈曲(90度以上)+内転+内旋の組み合わせ | 最も一般的なアプローチ。視野が広く操作が容易。外旋筋群(梨状筋含む)を切除。 |
固有感覚(プロプリオセプション)の影響:人工股関節置換術により関節内の機械受容器が影響を受け、深部感覚(位置覚・運動覚)が低下することがあります。これはバランスや歩行の質に影響し、術後リハビリの重要な課題となります。
介入の観点:固有感覚再教育を含むバランス訓練が推奨されます。恐怖回避行動(痛みへの過剰な回避)が可動域制限を招く場合があり、適切な段階的暴露が重要です(SpringerLink, 2019)。
BHAとTHAの違い。
2つの手術の適応・特徴・予後の違いを比較します。ご家族が医師と話し合う際の参考にしてください。
術前・術後の評価。
手術の前後には、複数の検査が行われます。それぞれの目的を知ることで、検査に対する不安が軽減されます。
担当医に「どのアプローチで手術をしましたか?」「術後に避けるべき姿勢はどれですか?」と確認することが、ご家族にとって最も重要な情報収集になります。退院サマリーにも記載されていることが多いので、保管しておきましょう。
回復への道のり。
術後のリハビリは、脱臼リスクが高い時期を安全に乗り越えながら、段階的に機能を回復させることが基本方針です。以下の4つのステップで進めていきます。
術後の早期から体重をかける練習(荷重訓練)を開始します。研究では、早期の完全荷重訓練(FWB)が部分荷重訓練(PWB)と比較して術後合併症リスクを低減させることが示されています(BioMed Central)。歩行器や杖を使用しながら徐々に進めます。
痛みは荷重訓練の大きな障害です。適切な鎮痛薬の使用・冷却療法・療法士指導のもとでの緩やかな運動が推奨されます。また、術後に固有感覚(プロプリオセプション:関節の位置感覚)が低下することがあります。この時期の脱臼リスクが最も高いため、禁忌肢位の徹底が必要です。
新しい関節を体に馴染ませるためのバランス訓練(立位での体重移動・片足立ち等)を進めます。可動域訓練は脱臼リスクを考慮しながら慎重に行います。脱臼を恐れるあまり可動域制限が残るケースも多いため、定期的な角度評価と脱臼リスクを天秤にかけながら進めることが重要です。
正常な日常生活への復帰が可能になります。ただし、急激な動作・転倒・無理な姿勢には引き続き注意が必要です。個別化された運動プログラムの継続が、長期的な生活の質を維持します(最新の研究より)。
自主トレーニング:段階的な荷重練習。
退院後に自宅でできるリハビリをご紹介します。必ず担当療法士の指導のもとで開始し、痛みがある場合はすぐに中止してください。
効果:術側の股関節へ直接体重をかける練習ができます。また股関節の可動域訓練にもなります。術側への荷重が苦手な方の入り口として有効です。
手順:マットを敷いて四つ這いになります。背中をまっすぐに保ち、ゆっくりと股関節に体重をかけます。数秒から始め、徐々に時間を延ばします。体重が均等に分散されていることを確認してください。
応用:慣れてきたら、反対側の下肢を持ち上げてバランス要素を取り入れます。お尻が外方に流れないよう姿勢を保ちながら実施してください。
四つ這いから体を起こした「膝立ち」の姿勢です。実際の立位・歩行と同様に体が起きた状態で股関節に床からの反力がかかるため、より実用的な練習になります。
応用:膝立ちから片足を前に出す「ステップ練習」や「膝歩き」に挑戦します。体が大きくふらつかないよう注意し、左右の違いを感じながら実施してください。壁や家具でバランスをサポートするのも有効です。

適切な知識で「安全への注意」に変えましょう。
術後に脱臼を恐れるあまり、可動域が制限されたまま退院後の生活を送るケースを多く見てきました。STROKE LABでは、アプローチごとの禁忌肢位を正確に把握したうえで、回復段階に応じた安全なリハビリプログラムを提供しています。まずはご相談ください。
ご家族ができるサポート。
脱臼予防指導のポイント。
ご家族が患者さんの脱臼予防を支援するために、以下のポイントを覚えておきましょう。
ご家族からの声かけ例。
「椅子に座るとき、90度以上に膝を曲げないように気をつけてね。」
「脚を組んだり、床に座ったりするのはまだ早いから、ちょっと待ってね。」
「少しずつできることが増えているよ。無理せず一緒に進もう。」
在宅復帰と公的支援制度。
退院後の在宅生活では、住宅環境の整備と公的な支援制度の活用が回復の大きな助けになります。早めに確認し、必要な手続きを進めましょう。
在宅復帰チェックリスト。
主な公的支援制度。
| 制度名 | 主な内容・使えるサービス | 申請窓口 |
|---|---|---|
| 介護保険 | 訪問リハビリ・デイケア・福祉用具貸与・住宅改修費補助(最大20万円) | 市区町村の介護保険窓口 |
| 身体障害者手帳 | 障害の程度に応じた各種サービス・税制優遇・補装具費支給 | 市区町村の障害福祉窓口 |
| 高額療養費制度 | 1ヶ月の医療費が一定額を超えた場合、超過分が後から払い戻される | 加入中の健康保険組合・国保窓口 |
| 障害福祉サービス | 居宅介護・移動支援・日中活動支援など(障害者総合支援法) | 市区町村の障害福祉窓口 |
回復期間と予後。
BHAとTHAでは、回復のスピードと長期的な予後に違いがあります。どちらも術後のリハビリの質が回復の鍵となります。
BHA(大腿骨頭置換術):数週間から数ヶ月で日常生活に戻ることができます。術後回復が早い傾向がありますが、長期的な安定性はTHAよりやや劣る場合があります。リハビリ次第で早期回復が可能です。
THA(全股関節置換術):回復には数ヶ月から半年かかります。リハビリが重要で長期的な経過観察が必要ですが、適切に進めれば長期にわたって生活の質が向上し、安定した日常生活が送れます。
よくあるご質問。
BHAは大腿骨の頭部のみを人工物に置き換える手術で、主に高齢者の大腿骨頸部骨折に使われます。THAは大腿骨頭と骨盤側の受け皿(臼蓋)の両方を置き換える手術で、重度の変形性股関節症や広範な損傷に適応されます。
BHAのほうが手術時間が短く回復が早い傾向がありますが、THAのほうが長期的な安定性と生活の質の向上が見込まれます。
最もリスクが高いのは術後0〜3ヶ月の初期です。関節の安定性がまだ確立されていないため、禁忌肢位(深い屈曲・内転・内旋など)を避けることが非常に重要です。
3〜6ヶ月の中期はリハビリが進むにつれてリスクが低下しますが引き続き注意が必要です。6ヶ月以降は日常生活に戻ることができますが、転倒や急激な動作には注意が必要です。
はい、アプローチによって脱臼しやすい姿勢(禁忌肢位)が異なります。前方系アプローチでは伸展・内転・外旋の組み合わせを避け、側方系では屈曲・内転・外旋を避け、後方系では深い屈曲・内転・内旋の組み合わせを避ける必要があります。
手術を受けた病院に必ず確認してください。
人工股関節置換術では、関節内にあるプロプリオセプション(深部感覚・固有感覚:関節の位置や動きを感知する能力)受容器に影響が及ぶことがあります。これにより関節の位置感覚や動きの感知能力が低下し、バランスや歩行に支障が出ることがあります。
神経の炎症や損傷も関与することがあります。リハビリで段階的に固有感覚を再獲得することが重要です。
はい、四つ這い姿勢での股関節荷重訓練・膝立ち(kneeling)訓練・膝歩き訓練などが自主トレーニングとして有効です。段階的に負荷を増やすことが重要です。
痛みがある場合はすぐに中止して医師・理学療法士に相談してください。専門家の指導のもとで行うことが安全です。
STROKE LABでは脳神経・整形外科疾患のスペシャリストが個別プログラムを立案します。早期荷重訓練・バランス・固有感覚訓練・関節可動域訓練・脱臼予防指導・歩行練習など、回復段階に応じた専門的なリハビリを提供しています。
無料相談も受け付けていますので、まずはご相談ください。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは、脳神経疾患・整形外科疾患に特化した自費リハビリ施設です。人工股関節置換術後の患者さんに対して、アプローチの種類・回復段階・生活環境を踏まえた個別プログラムをご提供しています。
— STROKE LABでのリハビリの実際の様子です。

「退院してから、どこまで動かしていいか分からずに過ごしていました。STROKE LABのスタッフが脱臼リスクを丁寧に説明してくれて、やっと安心してリハビリに取り組めるようになりました。今では杖なしでゆっくり歩けるようになっています。」— 70代・女性・大腿骨頭置換術(BHA)・術後3ヶ月
「母が全股関節置換術を受け、退院後のリハビリ先に悩んでいました。STROKE LABでは母の手術アプローチに合わせた禁忌肢位を家族にも教えてもらえて、自宅での介助に自信が持てるようになりました。」— 40代・女性(患者の娘・介護者)・患者はTHA術後4ヶ月
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諦めないでください。

「脱臼が怖くて動けない」「病院のリハビリが終わったのに、まだ思うように歩けない」——そのような状態でご相談に来られる患者さんとご家族に、私は毎日向き合っています。
人工股関節置換術後の回復には、「正しい知識」と「段階的なリハビリ」の両方が欠かせません。脱臼リスクを正確に把握したうえで、安全に可動域と筋力を回復させることが私たちの使命です。
あなたのご家族の回復を、ともに歩み続けたいと思っています。まず一度、ご相談ください。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)