階段昇降時の下肢・体幹筋活動とは?ドローインの効果と脳卒中リハビリを解説 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
  1. HOME
  2. ブログ
  3. 一般
  4. 階段昇降時の下肢・体幹筋活動とは?ドローインの効果と脳卒中リハビリを解説
一般

階段昇降時の下肢・体幹筋活動とは?ドローインの効果と脳卒中リハビリを解説

Stroke Rehabilitation — Stair Training & Trunk Stability
"

ドローインをしながら階段を昇ると、体幹のローカル筋はどう変わるのか。

階段昇降は「足腰を鍛える運動」として知られますが、体幹深層筋への効果は長らく不明でした。Shibataら(2018)は、腹横筋・多裂筋などのローカル筋が、ドローインとの組み合わせで有意に増強されることを示しました。脳卒中後片麻痺患者への応用まで、エビデンスと実践を体系的に解説します。

UPDATED2026
READ約12分
FORPT / OT / ST
BYSTROKE LAB
脳卒中後の高齢男性が理学療法士と階段昇段訓練を行う様子。腹横筋・大殿筋・大腿四頭筋・下腿筋の活動を可視化

LOCAL MUSCLE RATIO
有意増大
ドローイン+階段でTrA-IO/EO比が有意に上昇(p<0.05)。深層安定化筋が優先的に動員される(Shibata 2018)。
STAIR TRAINING EFFECT
6週間
高さ10cmステップを用いた週5回・30分の階段課題で、麻痺側遊脚相時間が有意改善(PMC5332978)。
ENERGY COST PREDICTOR
6MWTが鍵
6分間歩行距離が長いほど、階段昇降のエネルギーコストが低下。脳卒中55名で実証(Polese 2015)。

Quick Reference
忙しい臨床家のための
要点5項目。
01
ドローイン(腹部引き込み:腹横筋の意識的収縮)+階段昇降で、多裂筋とTrA-IOのローカル筋活動が有意に増大する(Shibata 2018, エビデンスレベル:横断研究)。
02
片麻痺患者への階段課題トレーニングのパラメータ:高さ10cmステップ・週5回・30分/回・6週間。麻痺側遊脚相時間の有意な改善が得られる(PMC5332978, RCT)。
03
6分間歩行テスト(6MWT)の速度・距離が、階段昇降のエネルギーコストの有力な予測因子。6MWT低下=階段疲労リスク大と評価できる(Polese 2015)。
04
足尖ひっかかりの原因は「麻痺側足部」だけではない。非麻痺側の抗重力活動不全→COM上方移動障害→遊脚クリアランス低下という連鎖を見落とさないこと。
05
ドローインの段階的習得手順:①背臥位(安静)→②背臥位(片脚挙上)→③立位→④歩行中→⑤階段昇降中。各段階でTrA収縮の触診確認を行う。

01
Clinical Encounter

臨床現場でこう出会う。

Case Vignette
右片麻痺・発症1年・60代男性。
「足が引っかかる」と訴えるAさんの場合。

Aさんは退院後も外来リハビリを継続しています。歩行は自立していますが、「階段を上るときに右足の先が引っかかる」と訴えます。担当の若手PTは最初、麻痺側足部の内反・底屈が原因と判断し、足首へのアプローチを続けましたが改善は限定的でした。

よく観察すると、非麻痺側の立脚期に体幹トーンが低下し、COMが十分に持ち上がっていないことが判明しました。足首だけでなく、体幹・重心移動の全体像から介入を再設計することで、著明な改善が得られた症例です。

新人セラピストがよく直面するのが、「階段昇降の問題=足部の問題」という先入観です。しかし実際には、体幹の安定性や重心移動のメカニズムが複雑に絡み合っています。本記事では、この複雑な問題をエビデンスから整理します。

脳卒中後の片麻痺患者は、姿勢制御と歩行の両方に問題を抱えます。体重支持に非対称性があり、立位での重心は60〜90%が非麻痺側に偏位することが報告されています。この非対称性が歩行サイクル全体に影響し、階段昇降を困難にします。

STROKE LABでの無料相談の様子

— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします

Free Consultation
「もう少し良くなりたい」という
気持ちに、丁寧に応えます。

STROKE LABは脳神経系リハビリに特化した自費施設です。保険リハビリの制限を超えて、エビデンスに基づく個別プログラムを提供します。階段昇降の改善から日常生活の自立まで、専門スタッフがしっかりサポートします。

無料相談を予約する→

02
Biomechanics of Stair Climbing

階段昇降のバイオメカニクスと筋活動。

階段昇降は平地歩行と比較して、多くの筋群がより強力に動員される複合的な動作です。特に膝・股関節・足首の多関節運動と体幹安定が同時に求められます。昇降の各フェーズで活動する筋を理解することが、介入の出発点となります。

階段昇降時に働く筋肉の図解。昇段時の大腿四頭筋・大殿筋と降段時の大腿四頭筋の遠心性収縮、体幹筋の役割を比較

立ち上がりフェーズ(昇段時)の筋活動。

01
大腿四頭筋求心性収縮

膝関節の伸展を担い、体重を前上方へ押し上げます。昇段開始直後から強く活動し、体重支持の中心的役割を果たします。

02
大殿筋・ハムストリングス股関節伸展

大殿筋は股関節伸展に寄与し、重心の持ち上げに主要な役割を果たします。ハムストリングスは膝安定性を保ちながら股関節伸展にも協力します。

03
腓腹筋・ヒラメ筋プランタフレクション

ステップ最終局面で足首の底屈(プランタフレクション)をサポートし、推進力を生み出します。片麻痺では特にこの筋群の機能低下が顕著です。

降下フェーズ(降段時)の筋活動。

01
大腿四頭筋(遠心性)エキセントリック

重力に対して体重をコントロールしながら降段します。エキセントリック収縮(遠心性収縮)は筋への負荷が大きく、片麻痺患者では特に指導が必要な局面です。

02
腸腰筋・股関節屈筋群バランス制御

ステップを降りる際に股関節をコントロールし、バランスを維持します。腓腹筋もエキセントリックに機能し、足の着地を柔らかくする役割を担います。

Core Muscles in Stair Climbing
体幹筋が果たす「縁の下の力持ち」の役割。

体幹の安定化に関与する主な筋は、腹直筋・多裂筋(MF:脊柱の分節安定)・外腹斜筋(EO)・内腹斜筋(IO)・腹横筋(TrA:腹圧生成の中心)・腰方形筋です。これらは骨盤と脊柱の安定性を維持し、下肢の動きを効率的にサポートします。

特に、片脚支持の場面では体幹筋が姿勢を安定させるために非常に重要です。体幹筋が不十分だと下肢の動きに不安定さが生じ、転倒リスクが高まります。

臨床でこう使える:昇段時は求心性収縮、降段時はエキセントリック収縮と認識することで、患者の問題点がどのフェーズにあるかを素早く特定できます。「昇段は問題ないが降段が怖い」という訴えがあれば、大腿四頭筋のエキセントリック制御に着目しましょう。

階段昇降と歩行時の類似相図

— 階段昇降と歩行の類似相。体幹安定性が両動作の基盤となる。

03
Neuroscience & Biomechanics of Abdominal Hollowing

ドローインの神経・バイオメカニクス機序。

ドローイン(Abdominal Hollowing: AH)とは、深層腹筋・特に腹横筋(TrA:Transversus Abdominis)を意識的に収縮させ、腹部を内側へ引き込む技術です。腰背部痛(LBP)の予防・治療に活用されてきましたが、近年は歩行や階段昇降への応用も広がっています。

Mechanism — Biomechanics
腹横筋の収縮が体幹を「コルセット」のように守る。

ドローインを行うと腹横筋が収縮し、腹圧(IAP:Intra-Abdominal Pressure)が上昇します。これにより体幹が安定し、脊柱の過度な動きが抑制されます。特に階段昇降や歩行時には重心の移動が頻繁に起こるため、この体幹安定性が不可欠です。

歩行時にドローインを行うと、腰椎の過剰な動きを防ぎ骨盤が安定します。片脚支持期のバランスが改善し、腸腰筋など下肢筋群の働きが効率的になることで、歩行速度や安定性の向上につながります。

ドローインによる腹横筋・多裂筋・内腹斜筋の活動と体幹安定性の関係を解説したイラスト図解

脳科学的視点:ドローインが脳に何をするか。

ドローインを意識的に行うことで、前頭前野(運動計画)や小脳(バランス・協調動作)などの脳領域が活性化されます。これらの領域は運動の計画や協調に関与しており、訓練によって脳内のバランス制御システムが強化されます。

また、脳幹は姿勢反射を司ります。腹圧の上昇によって姿勢制御が強化されると、歩行や階段昇降時の姿勢安定性も向上します。脳卒中後の患者では、この神経系の再教育という観点からも、ドローインの段階的習得が重要な意味を持ちます。

EVIDENCE — KEY STUDY
Shibata S, Takemura M, Miyakawa (2018)「AHが体幹安定化筋の活動に与える影響:横断研究」

研究デザイン:横断研究(Cross-Sectional Study)。エビデンスレベル:観察研究。

対象:健康な右利き男性20名(腰背部痛の既往なし)。理学療法士によりAHを正しく行えるよう事前訓練(触覚フィードバック・超音波フィードバック使用)。

方法:高さ0.17m・奥行0.27mの12段の階段を使用。AHあり・なしの2条件でEMGを測定(MF・LES・TES・EO・IO・RA・TrA-IOの7筋)。%MVCで標準化。

結果:AHあり群でMF(多裂筋)とTrA-IO(腹横筋-内腹斜筋)の筋活動が有意に増大。他の筋(LES・TES・EO・RA)には有意差なし。ローカル/グローバル比(TrA-IO/EO)はAHあり群で有意に高値(p<0.05)。

臨床的含意:AHをしながら階段昇降することで、グローバル筋を過度に使わずにローカル安定化筋を選択的に動員できる。LBP予防・体幹安定化訓練としての有効性が示唆される。

AH条件と非AH条件での体幹筋EMG結果

Fig.6 AHあり・なし条件での各筋活動量(Shibata 2018より)

ローカル筋・グローバル筋活動比の比較

Table 2 ローカル/グローバル比の比較(Shibata 2018より)

04
Local vs Global Trunk Muscles

ローカル筋とグローバル筋:臨床での使い分け。

体幹筋は機能的に「ローカル筋」と「グローバル筋」に分類されます。この区別を理解することが、ドローインの指導や体幹評価の前提となります。

体幹のローカル筋とグローバル筋の違いを比較。腹横筋・多裂筋と腹直筋・外腹斜筋・脊柱起立筋の機能を示す図解

LOCAL MUSCLES
ローカル筋(深層安定化筋)
— 分節安定・姿勢維持
→腹横筋(TrA)
→多裂筋(MF)
→腸腰筋の深部繊維
→特徴:先行的に活動・低負荷・持続的収縮
GLOBAL MUSCLES
グローバル筋(表層動作筋)
— 大きな動作・力の発揮
→外腹斜筋(EO)
→腹直筋(RA)
→胸部・腰部脊柱起立筋(TES・LES)
→特徴:高負荷時に活動・瞬発力・疲労しやすい
AHは体幹のグローバル筋の活動を弱め、ローカル筋を優先的に動員する技術として、LBP予防・治療の基本となっている。

臨床でこう使える:脳卒中後患者では、痙縮の影響でグローバル筋が過剰に活動することがあります。AHによってローカル筋を先行的に活性化することで、より効率的な体幹制御が期待できます。ただし、AHの習得には段階的な訓練が必要であることを忘れないでください。

05
Assessment & Outcome Measures

評価の視点と使える臨床テスト。

階段昇降能力を評価するためには、単に「できる・できない」の二値評価にとどまらず、エネルギーコスト・遊脚相時間・筋力・バランスなど複数の視点からアセスメントすることが重要です。

階段昇降リハビリの評価方法。6分間歩行テスト、10m歩行テスト、MASによる痙縮評価、腹横筋の収縮確認を図解

評価項目 推奨テスト・方法 臨床的含意
歩行持久力・エネルギーコスト 6分間歩行テスト(6MWT) 6MWT距離が短いほど階段昇降のエネルギーコストが高い(Polese 2015)。在宅復帰の可否判断にも活用可能。
歩行速度 10m歩行テスト(10MWT) 至適歩行速度も階段エネルギーコストと相関。歩行速度向上が間接的に階段能力改善に寄与する。
下肢筋力 膝伸展筋力(HHD / MMT)
足関節底屈筋力
麻痺側の膝伸展筋力がエネルギーコストと正の相関。筋力強化の優先度を判断する根拠となる(Polese 2015)。
痙縮の程度 Modified Ashworth Scale(MAS) 下肢MAS grade 2未満が階段訓練の適応基準の一つ(PMC5332978のスクリーニング基準)。
認知機能 MMSE(Mini-Mental State Exam) MMSEスコア24以上が訓練参加基準(PMC5332978)。ドローインの指示理解のためにも認知機能確認が重要。
TrA収縮の確認 触診(腸骨稜から2cm中央)
または超音波フィードバック
ドローイン習得確認の標準的手法。AHが正しく行えているかを確認してから階段訓練に進む(Shibata 2018の方法論に準拠)。

歩行時のCOMの上下移動

歩行時のCOM(重心)は立脚中期と反対側のtoe-off時に最も高くなる(Clinical kinesiology より)

06
Intervention Protocol & Evidence

段階的介入プロトコルとエビデンス。

介入は4つのフェーズで構成します。各フェーズで患者のTrA収縮を確認しながら進めることがポイントです。無理にステップアップしないことが、安全と効果の両立につながります。

ドローインと階段昇降リハビリの段階的練習方法。背臥位・立位・歩行・階段昇降・日常生活への応用を5段階で解説

P1
ドローイン習得フェーズ背臥位→立位

背臥位・膝立て位でTrAを意識的に収縮させる練習から開始。腸骨稜から2cm中央への触診フィードバックを使用。上腹部や背部を動かさず、臍より下の下腹部のみをゆっくり引き込むよう指示します。咳により腹部の動きを確認させるのも有効です。

P2
立位・基本動作でのドローイン統合立位・歩行

AHを維持しながら立位・平地歩行を実施します。片脚立ちや重心移動を加え、動的なバランス訓練に発展させます。手すり使用下での安全確保を優先し、段階的に補助を減らします。

P3
ドローイン+階段課題トレーニング高さ10cm / 週5回 / 30分

エビデンスに基づくパラメータ(高さ10cmステップ・週5回・30分/回・6週間)で実施。昇段前にTrAの収縮を確認してから開始。昇段は健側から、降段は麻痺側から行う基本手順を徹底。各セット間に最低20秒の休憩を挟みます(筋疲労防止)。

P4
実環境への般化在宅・地域

実際に患者が使用する自宅・公共施設の階段でトレーニングを行います。段差の高さや段数を変化させ、様々な状況に対応できる汎化を目指します。メトロノームや音刺激を用いたリズミカルな昇降も有効です。

EVIDENCE — RCT
「階段課題訓練は脳卒中患者の歩行能力を改善する」PMC5332978

エビデンスレベル:RCT(ランダム化比較試験)。

対象:脳卒中後6か月以上経過・補助具なしで15m以上歩行可能・下肢MAS grade 2未満・MMSE 24以上の患者40名。実験群18名 vs 対照群18名(ランダム割付)。

介入:高さ10cmステップを用いた階段課題訓練(週5回・30分/回・6週間)。対照群は麻痺側体重免荷・バランストレーニング。側面に高さ1mの机を配置し転倒防止。

評価:ビデオ記録(Dartfishソフトウェアで分析)による歩行の立脚相・遊脚相の時間測定。

結果:階段課題実施群で麻痺側下肢の遊脚相時間が有意に改善。遊脚時間の改善は①片足立脚時間の改善、②床クリアランスの改善を示唆し、足尖ひっかかりの減少や転倒リスク低減につながる。

STROKE LAB代表 金子唯史
Message from CEO
「階段が怖い」を、
一緒に解決しましょう。

退院後に「階段が不安で外出できない」というご相談を多くいただきます。STROKE LABでは、エビデンスに基づいた段階的な階段トレーニングと体幹安定化プログラムで、一人ひとりに合わせたリハビリを提供しています。保険リハビリとの並行利用も歓迎です。

無料相談を予約する→

07
Interprofessional Collaboration

多職種連携と環境調整。

各職種の役割分担。

職種 主な役割 階段訓練における貢献
PT(理学療法士) 歩行・バランス・筋力訓練 階段課題訓練プロトコルの立案・実施、TrA収縮確認、フェーズ管理
OT(作業療法士) ADL・IADL・上肢機能 手すりの把持方法指導、荷物を持った階段昇降の練習、自宅環境整備の提案
ST(言語聴覚士) 高次脳機能・コミュニケーション ドローイン指示理解のための認知・注意機能評価、指示方法の工夫(失語症患者への視覚的提示など)
看護師 日常生活管理・リスク管理 日常生活での階段場面の観察・報告、疲労管理、転倒後の対応
医師 医学的管理・適応判断 骨粗鬆症・循環器疾患などの合併症を考慮した訓練許可、痙縮への医学的管理(ボトックスなど)
MSW(医療ソーシャルワーカー) 社会資源・環境整備 自宅改修(手すり設置・段差解消)の制度活用支援、施設転帰先での環境確認

環境調整のポイント。

Clinical Insight

「退院前に自宅の階段を実際に確認することが大切です。段差の高さ・手すりの位置・照明の明るさなど、練習環境と異なる点を事前に洗い出しましょう。」

「患者さんが自宅の階段を使うのは、毎日のことです。病院での練習だけでなく、実際の環境に即した練習も必ず組み込んでください。」

「視覚的・聴覚的フィードバックの活用も有効です。鏡で動作確認したり、メトロノームでリズムを取ったりすることで、基底核の活動を促し歩行リズムの安定化が期待できます。」

08
Pitfalls & Clinical Decision Making

Pitfallsと臨床判断のコツ。

新人セラピストが陥りやすい「思い込み」と「手順の誤り」を整理します。どれも臨床で実際に起きやすいパターンです。先輩からの引き継ぎとして、ぜひ頭に入れておいてください。

Pitfalls — Don't make these mistakes
新人臨床家が陥りやすい3つの罠
!
「足首が原因」の思い込み:足尖ひっかかりを麻痺側足部の内反・底屈のみで説明してしまい、非麻痺側の重心移動不全を見落とすことがあります。Bobath conceptの指摘通り、姿勢トーンはtoe-off直前に最高値に達し、非麻痺側のCOM上方移動が次の遊脚期のクリアランスを決定します。「なぜ足首だけへのアプローチで改善しないのか?」と立ち止まることが大切です。
!
AH習得確認なしで階段訓練を開始する:TrAの収縮が正しくできていない状態で階段課題を行っても、Shibata(2018)が示したローカル筋賦活の効果は得られません。「腹横筋を収縮させながら昇降する」という認知的課題が達成できているかを、触診またはバイオフィードバックで必ず確認してから進めましょう。AHは段階的に習得するものです。
!
疲労とリスク管理の過小評価:エネルギーコストの高い脳卒中患者は、「疲れているのに無理して続ける」ケースが多くあります。疲労が蓄積すると誤った動作パターンが学習されるリスクが上がります。訓練中は表情・呼吸・バランスの乱れを観察し、必要に応じて即座に休憩を挟む判断力を磨きましょう。

脳卒中後片麻痺患者の階段昇段時に起こる足尖ひっかかりの原因を、足関節背屈・体幹支持・重心移動・遊脚クリアランスから解説

臨床判断の分岐点:Aさんの症例から学ぶ。

Mentor's Voice

「麻痺側骨盤の後退回旋による分回し歩行は、非麻痺側でCOMを持ち上げられていないサインであることが多い。Weight transferが単なる"重心シフト"になっていないか、つまり抗重力活動を伴った真の"transfer"になっているかを確認してほしい。」

「足尖のひっかかりを解消するには、麻痺側のスタンスだけでなく、非麻痺側スタンスでのCOM上方移動能力が不可欠。体幹トーンを高め、骨盤下垂を防ぐアプローチを合わせて実施してほしい。」

姿勢トーンは立脚相のtoe-off直前、反対側の踵に重心移動する直前に最も高まる(Bobath concept in Adult Neurologyより)。

09
Prognosis & Goal Setting

予後とゴール設定。

「発症から◯か月が過ぎたから回復は難しい」という思い込みは禁物です。研究はその逆を示しています。脳卒中後6か月以降でも適切な介入を継続することで、歩行機能をはじめとする運動機能の改善が得られることが系統的レビューで示されています(Hatem SM et al., 2016)。

Prognosis — Key Evidence
「頭打ち」はない。リハビリは慢性期でも有効。

Hatem SM et al.(2016)のシステマティックレビューでは、発症後6か月以降でもリハビリによりFMA(Fugl-Meyer Assessment)やARAT(Action Research Arm Test)が有意に改善することが示されています。

また、運動学習を効率的に進めるためには週2回以上・3か月以上の継続が推奨されています。週2回が難しい場合でも週1回から開始し、効果が出るにつれて頻度を調整することで、継続的な改善が期待できます。

実践的なゴール設定の考え方。

短期ゴール(4〜6週間):ドローインの習得と、低段差(高さ10cm程度)での介助下昇降の安定化。遊脚相時間の改善を客観的指標として用いる。

長期ゴール(3か月以降):自宅・地域の実際の階段を自立して昇降できること。6MWTのスコア改善と階段昇降時のエネルギーコスト低下を総合評価の指標に含める。

エネルギーコストが高いと疲労感が強くなり、階段を避ける→非活動→二次的障害という悪循環が生まれる。6MWTはこの悪循環の入口を評価する有力ツールだ。

10
Frequently Asked Questions

よくある質問(新人臨床家の疑問)。

Q.ドローイン(腹部引き込み運動)とはどんな運動ですか?
A.

ドローイン(Abdominal Hollowing: AH)とは、深層腹筋・特に腹横筋(TrA)を意識的に収縮させる体幹安定化運動です。臍より下の下腹部を優しく引き込むように収縮させ、腹圧を高めることで脊柱・骨盤を安定させます。

上腹部や背部を動かさずに実施するのがポイントです。腸骨稜から2cm中央に指を置いての触診フィードバックや、超音波フィードバックで収縮を確認しながら習得します。

Q.ドローインをしながら階段昇降を行うと体幹のどの筋が活性化しますか?
A.

Shibataら(2018)の研究では、ドローイン(AH)を行いながら階段昇降すると、多裂筋(MF)と腹横筋-内腹斜筋(TrA-IO)の筋活動が有意に増大しました。

また、ローカル筋/グローバル筋の活動比(特にTrA-IO/EO比)もAHあり群で有意に高く(p<0.05)、深層安定化筋が優位に動員されることが示されています。

Q.脳卒中後片麻痺患者に階段課題トレーニングを行うと歩行はどう改善しますか?
A.

高さ10cmのステップを用いた階段課題トレーニング(週5回・30分・6週間)により、麻痺側下肢の遊脚相時間が有意に改善したことが報告されています(PMC5332978)。

遊脚時間の改善は片脚支持期の安定性向上や床クリアランス改善を反映しており、足尖ひっかかりの軽減や転倒リスク低減にもつながります。

Q.片麻痺患者の階段昇降時のエネルギーコストを予測する指標は何ですか?
A.

Polese JC(2015)の研究では、6分間歩行テスト(6MWT)の歩行速度・距離が階段昇降のエネルギーコストと有意な負の相関を示しました。つまり6MWTのパフォーマンスが低いほど階段昇降の消費エネルギーが高くなります。

また麻痺側膝伸展筋力はエネルギーコストと正の相関がみられました。これらの評価を組み合わせることで、階段昇降時の疲労リスクを事前に把握できます。

Q.片麻痺患者の階段練習で足尖がひっかかる原因と対処法を教えてください。
A.

足尖ひっかかりの原因は麻痺側足部の内反・底屈だけでなく、非麻痺側への重心移動(Weight transfer)の不全が大きく関与します。立脚期に重心を十分に持ち上げられず、COMの上方移動が阻害されることで麻痺側の遊脚が不十分になります。

非麻痺側の体幹トーンを高め、COMの適切な上方移動を促すアプローチと合わせて、麻痺側足部へのアプローチを組み合わせることが有効です。

Q.新人セラピストが片麻痺患者の階段練習で注意すべきリスク管理のポイントは?
A.

①事前評価(麻痺側筋力・バランス・MAS)の確認、②初期は必ず手すりと側方介助の確保、③健側から昇り・麻痺側から降りる基本手順の徹底、④疲労蓄積前の休憩挿入(セット間最低20秒)が重要です。

⑤ステップ高さは10cm程度から開始し段階的に増加させること、⑥補助具(ロフストランドクラッチなど)を必要に応じて適切に活用することも大切です。

11
Our Program

STROKE LABのプログラム。

STROKE LABは脳卒中・パーキンソン病・脊髄損傷など神経疾患に特化した自費リハビリ施設です。「リハビリの成果は誰に行ってもらうかで大きく変わる」という信念のもと、神経リハビリに精通した専門スタッフが在籍しています。保険リハビリとの併用も可能で、1回ごとのお支払い制なので必要な分だけ柔軟にご利用いただけます。

OUR STRENGTHS
STROKE LABの強み
— 神経リハ特化の専門施設
→ベストセラー著者監修の神経リハ特化メソッド
→エビデンスに基づく熟練技術者による個別プラン
→変化を動画で「見える化」
→御茶ノ水・大阪梅田・オンライン・訪問対応
WHAT WE CAN DO
取り組める内容
— 脳神経疾患全般に対応
→階段昇降・体幹安定化・歩行改善
→脳卒中・パーキンソン・脊髄損傷・脳性麻痺
→保険リハビリとの並行利用・1回からOK
→オンラインリハビリ(Zoom・LINE・FaceTime)

— STROKE LABでの神経リハビリの実際の様子です。変化の過程を動画でご確認いただけます。

Voice from Mentors

「階段の練習を重ねる中で、患者さんが『怖くなくなった』とおっしゃった瞬間が一番うれしい。単純に筋力がついたというより、自分の体への信頼感が戻ってきた、という感覚だと思う。ドローインで体幹を整えて始めると、その変化が早く出やすい印象があります。」— PT・臨床経験12年・神経リハビリ専門

「新人の頃は、階段練習=足首を鍛えるもの、と思っていました。でも非麻痺側の体幹が先に機能しないと、麻痺側がどれだけ動いても遊脚が出ない。重心移動の全体像を見るようになってから、介入の精度が格段に上がりました。」— OT・臨床経験8年・脳卒中リハビリ専門

Message from CEO
「もう一度、あの階段を自分で上りたい」、
諦めないでください。

STROKE LAB代表 金子唯史 ポートレート

脳卒中後の「階段が怖い」という悩みは、決して特別なことではありません。多くの方が退院後も同じ壁に直面しています。ただ、その壁を越えていくための正しいアプローチが、まだ届いていないだけです。

STROKE LABでは、体幹安定化から始まり、段階的な階段訓練へとつなぐ個別プログラムを提供しています。エビデンスに基づく介入で、患者さん一人ひとりに合わせた回復の道筋を一緒に描きます。

「発症からもう時間が経ちすぎた」と感じているご家族の方へ。脳の神経可塑性はそんなに早く諦めません。ぜひ一度、無料相談でお話しください。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

無料相談を予約する→

References

参考文献。

01 Shibata S, Takemura M, Miyakawa. Effects of abdominal hollowing during stair climbing on the activations of local trunk stabilizing muscles: a cross-sectional study. 2018. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=Effects+of+Abdominal+Hollowing+During+Stair+Climbing
02 Effects of stair task training on walking ability in stroke patients. PMC5332978. J Phys Ther Sci. 2017;29(2):215-218.
03 Polese JC. Predictors of energy cost during stair ascent and descent in individuals with chronic stroke. J Phys Ther Sci. 2015 Dec;27(12):3739-43. doi: 10.1589/jpts.27.3739.
04 Hatem SM et al. Rehabilitation of Motor Function after Stroke: A Multiple Systematic Review Focused on Techniques to Stimulate Upper Extremity Recovery. Front Hum Neurosci. 2016;10:442.
05 David FJ et al. Progressive resistance exercise restores some properties of the triphasic EMG pattern and improves bradykinesia in PD: a double-blind randomized controlled trial. J Neurophysiol. 2015;114(1):63-76.
06 Bobath B. Adult Hemiplegia: Evaluation and Treatment. 3rd ed. Butterworth-Heinemann. 1990. (Bobath concept in Adult Neurology)
07 Akuthota V, Ferreiro A, Moore T, Fredericson M. Core stability exercise principles. Curr Sports Med Rep. 2008;7(1):39-44.
08 金子唯史. 脳卒中の動作分析. 医学書院. 2018.
CATEGORY

 

FOLLOW US

STROKE LABの記事は各種ソーシャルメディアでも配信中。今すぐフォローして最新情報をチェックしてください。

FOLLOW US

STROKE LABの記事は各種ソーシャルメディアでも配信中。今すぐフォローして最新情報をチェックしてください。

CATEGORY

関連記事

誠心誠意の機能向上に向けたリハビリ支援
脳卒中・パーキンソン病に特化した個別リハビリ支援。
病院で培った機能をつなぎ、可能性を広げる施設です。
〒113-0033 東京都文京区本郷2-8-1 寿山堂ビル3階・5階
03-6887-5263
〒158-0082 東京都世田谷区等々力7-2-31 The Room 等々力West 201号 2026.3 OPEN
03-6887-5263
〒530-0047 大阪府大阪市北区西天満6-3-16 梅田ステートビル202号
06-7220-4733
ACCESS
会社案内
事業案内
その他