しゃがめない子|足首・股関節・体幹から見る運動発達
しゃがみ方を見ると、子どもの「苦手の場所」が見えてきます
「かかとが浮く」「後ろへ倒れそう」「すぐ立ってしまう」。しゃがめない様子を見ると、足首の硬さを心配する方は多いと思います。でも、しゃがみは足首・股関節・体幹・バランスが、重心を足の上に保ちながら協力する動きです。この記事では、病名を決めるのではなく、「どこで崩れるか」「何を変えるとできるか」から、家庭で見るポイントと相談の目安を整理します。

「しゃがめない」を、結果だけで見ない。
一見すると「足首が硬いのかな」と見えます。でも、足幅を少し変える、手を前へ出す、支えを使う——条件を一つ変えただけで急にしゃがめる子もいます。だから、まず見るのはできない原因ではなく、でき方が変わる条件です。
しゃがみは、足首・膝・股関節を曲げながら、身体全体の重心を足の上に残す動作です。そのため、足首の動きが小さくても、股関節や体幹の使い方で補える子がいます。逆に、関節はよく動くのに、後ろへ倒れそうになって深くしゃがめない子もいます。
ここで大切なのは、体幹を「強い・弱い」の一言で説明しないことです。体幹の前傾は、足首の動きを補って重心を前へ運ぶ戦略にもなります。したがって、体幹が傾くこと自体より、傾き方を変えても安定してしゃがめるかを見る方が、原因の切り分けにつながります。
しゃがみを、5つの観察点に分ける。
特に最後の「止まる・戻る」は重要です。床の玩具を拾う、砂場で遊ぶ、靴を履くといった生活では、最も深くしゃがめることより、必要な高さで止まり、次の動作へ移れることの方が役立ちます。

研究でわかっていること。
2026年の日本の研究では、56名の児童・生徒を対象に、しゃがみ込みの可否と足首の背屈角度、長座体前屈、片脚立ち時間などを調べています。しゃがみ込み能力は、足首背屈・前屈柔軟性・片脚立ち時間と有意に関連しました。
また、日本整形外科学会も、しゃがみにくい子どもでは足首だけでなく、股関節・膝の可動性、筋肉の硬さ、片脚立ちなどの安定性を合わせて確認する考え方を示しています。
この研究から言える範囲:しゃがめない理由を一つの関節だけに決めず、複数の身体条件を確認する根拠になります。一方、研究対象・課題条件には限りがあり、「この所見ならこの原因」と診断できるものではありません。痛みや明らかな可動域制限がある場合は医療評価が優先されます。
AAPの保護者向け情報では、19〜24か月頃の幼児が遊びの中で物を拾うためにしゃがむことが、発達中の運動スキルの一例として紹介されています。ただし、これは厳密な合格時期ではありません。幼児期以降も、しゃがみ方は身体の成長、遊び経験、環境によって変わります。本記事では「何歳だから」より、痛み・左右差・他の運動との組み合わせを重視します。
様子見と相談を、「他の動き」も含めて考える。
| 経過を観察しやすい変化 | 医療相談を優先したい変化 |
|---|---|
| 痛みがなく、遊びの中では時々しゃがめる 足幅や支えを変えるとできる 何度か経験すると動きが滑らかになる 走る・階段・ジャンプなどは大きく困っていない |
痛み、腫れ、荷重を嫌がる かかとをつけると膝が十分曲がる前に毎回転ぶ 左右差が強い、片側だけ使いにくい 走る・階段・片脚立ちなど複数の動作でも困る 以前できた動きができなくなった |
日本整形外科学会は、かかとをつけたしゃがみで膝が90度も曲がらない段階で転ぶ場合は整形外科専門医への受診を勧めています。また、かかとを上げればできるのに、つけるとできない場合は、ふくらはぎや足首の動きが関係している可能性があります。

□ 後ろ・左右のどちらへ崩れるか
□ 痛みや嫌がりがあるか
□ 片側だけ使いにくそうか
□ 疲れる前後で変わるか
□ 正面と横から普段のしゃがみを動画撮影
家庭では、「直す」より遊びの中で見る。
しゃがむ姿勢だけを何度も練習するより、床の玩具を拾う、低い箱へ物を入れる、砂場で遊ぶなど、目的のある遊びの中で自然にしゃがむ機会を作る方が、子ども自身の試行錯誤を観察できます。
深くしゃがませるために肩や腰を上から押す、かかとを力で床へ押しつける、痛みを我慢させる、左右差を無視して回数だけ増やす、といった関わりは避けます。練習で改善する子もいますが、痛みや明らかな可動域制限がある場合は先に医療評価が安心です。
専門評価では、「何を変えると動きが変わるか」まで見る。
専門家の評価は、足首の角度を測って終わりではありません。同じしゃがみでも、足幅、つま先の向き、支持物、速度、開始姿勢を少し変え、どの条件で「できる」に切り替わるかを見ます。この反応が、何を優先して考えるかを変えます。
たとえば、かかとが浮く子でも、足幅を少し広げると安定するなら、足首の可動域だけでなく、股関節の折りたたみ方や重心の通り道を考えます。手を前へ伸ばすと深くしゃがめるなら、体幹筋力不足と決める前に、後方へ落ちる重心をどのように前へ戻しているかを見ます。
もう一つ重要なのが、降りる時と戻る時を分けることです。ゆっくりしゃがめるのに立ち上がりで手を使うなら、深さの問題と、下肢で身体を持ち上げる課題は別に評価します。逆に、立てるのに降りる途中で急に崩れるなら、力を出すことより、速度を調整しながら支える能力がボトルネックかもしれません。
さらに、元気な時にはできても外遊びの後だけ膝が内へ入り、かかとが浮くなら、単純な可動域制限では説明しきれません。疲労後の再現性まで確認し、家庭や園で実際に困る場面とつなげます。
| 観察される動き | 条件を変えて確認 | 臨床で考えること |
|---|---|---|
| かかとが早く浮く | 足幅・つま先方向・支持物を変える | 足首背屈だけでなく、股関節と重心移動の組み合わせ |
| 後ろへ倒れそう | 腕の位置・軽い支持・速度を変える | 重心を前へ保つ戦略と、体幹・足部の協調 |
| 降りられるが戻れない | しゃがむ深さ・開始高さを段階化 | 下降制御と立ち上がり能力を別課題としてみる |
| 疲れると膝・かかとが崩れる | 遊び前後で同じ課題を比較 | 固定的な可動域だけでなく、持久性と運動制御の再現性 |

STROKE LABでは、子どもの動きを一つの筋肉や姿勢だけで決めず、実際の遊び・生活場面とつなげて評価します。まず医療や健診で確認すべき状態を見逃さず、そのうえで運動発達の側から整理します。
よくある質問。
Q. しゃがめないのは、足首が硬いからですか?
Q. しゃがむとかかとが浮くのは異常ですか?
Q. 家でしゃがむ練習をさせてもよいですか?
Q. 何歳までしゃがめなければ相談した方がよいですか?
Q. しゃがめないとき、小児科と整形外科のどちらに相談すればよいですか?
Q. 相談するとき、どんな動画があると役立ちますか?
観察できる言葉へ。

「しゃがめない」と気づいたとき、保護者の方が知りたいのは、正しい姿勢を覚えさせる方法より、「なぜ、この子はこの動きになるのか」だと思います。
私たちは、一つの関節や筋力だけで決めず、動きの途中と条件差から、今育とうとしている運動の選択肢を見ることを大切にしています。
医療・健診で確認すべき状態を優先しながら、家庭や園での動きを整理したい方はご相談ください。子ども自身が無理なく試せる方法を、一緒に考えていきます。
代表取締役 金子 唯史

動きを「できる・できない」で終わらせず、機能解剖と姿勢・運動の連鎖から臨床推論するための専門書です。子どもの運動発達を見るときにも、一つの部位に原因を固定せず、課題全体を分解して考える視点につながります。
- 動きがぎこちない・運動が苦手|運動制御の視点で「なぜ」を分析する
- 正座ができない子|足首・膝・股関節の動きをどう見るか
- 立ち上がり方がぎこちない子|床から立つ動作を分解する
- STROKE LABの小児リハビリ
本記事は、公的情報と研究知見を、STROKE LABの臨床的な動作分析の枠組みと区別して構成しています。研究で示されていない個別の原因や効果を断定するものではありません。痛み、急な変化、明らかな関節可動域制限がある場合は医療機関へご相談ください(情報確認日:2026年8月15日)。
- American Academy of Pediatrics, HealthyChildren.org. How Active Is Your Toddler? Updated 2026.(幼児期の遊びの中で、しゃがむ・走る・登るなどの運動経験を紹介)
- 公益社団法人 日本整形外科学会:保護者・養護教諭・学校医向けFAQ「肥満でしゃがみこみができない子どもは?」「かかとはつけたまま? あがってもいい?」(しゃがみと足首・股関節・膝・バランス、受診目安)
- Shiramizu I, Nakazato H, Kitamura H, Umeda S. Effects of locomotive exercises for children on squatting. The Journal of the Japanese Clinical Orthopaedic Association. 2026;51(1):25-32. doi:10.15107/jcoa.2025-0005.
- Kim SH, Kwon OY, Park KN, Jeon IC, Weon JH. Lower Extremity Strength and the Range of Motion in Relation to Squat Depth. J Hum Kinet. 2015;45:59-69. doi:10.1515/hukin-2015-0007.(成人対象の補助的な生体力学研究であり、小児へ直接外挿しない)
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)