8か月でずりばいしない赤ちゃん|腹ばい移動の準備と家庭遊び
前へ進む前には、腕で支える、片側へ体重を移す、骨盤を動かす経験が必要です
「8か月なのに前へ進まない」「お座りはするけれど、ずりばいをしない」――周りの赤ちゃんと比べると、心配になることがあります。けれども、腹ばい移動は前進だけで決まるものではありません。胸を支える、片手を伸ばす、体を回す、足で床を押すなど、前へ進む前の準備を一緒に見ることが大切です。

8か月でずりばいしないのは遅い?
生後8か月は、腹ばいで前へ進む赤ちゃんが増える時期です。一方で、回転する、後ろへ下がる、お尻で移動する、腹ばい移動をあまりせず四つ這いの準備へ進むなど、移動の形には幅があります。
そのため、8か月でずりばいをしないという一点だけで、発達が遅れているとは判断できません。どの姿勢で何ができているか、動きの種類が増えているかを見ます。
ただし、移動の形に個人差があることと、何も確認しなくてよいことは同じではありません。腹ばいで胸を支えられるか、片手を伸ばせるか、左右差がないか、寝返りや座位などほかの発達も含めて整理します。
| 月齢の目安 | 腹ばいで見られやすい変化 | 一緒に見たい準備 |
|---|---|---|
| 4〜6か月 | 肘や手で胸を持ち上げる | 頭部保持、前腕支持、手支持 |
| 6〜7か月 | 回転、後退、片手リーチが増える | 片手支持、体重移動、胸郭回旋 |
| 7〜9か月 | 腹ばい前進や四つ這い準備がみられる | 骨盤移動、股関節・膝の屈伸、足で床を押す反応 |
| 8〜10か月 | ずりばい、四つ這い、お尻移動など移動方法が広がる | 方向転換、左右交互性、目的物への接近 |
月齢は幅のある目安です。早産のお子さんでは修正月齢を使います。表に完全一致するかではなく、数週間から数か月の中で動きの種類が増えているかを見ます。
前進前に育つ6つの準備
ずりばいは、腕だけで体を引っ張る運動ではありません。興味のある方向へ体重を移し、支える側と動かす側を分け、胸郭と骨盤、下肢へ力をつなぐ動きです。

前進しなくても見たい動き
前へ進んでいないと「動けていない」と感じますが、腹ばい移動の前にはさまざまな試行錯誤が見られます。次の動きが増えているかを観察してください。
腕で床を押すと、体は後ろへ下がりやすくなります。そこから片側へ体重を移す、手を斜め前へ出す、骨盤や足を動かす経験が組み合わさると、前方移動へつながることがあります。

STROKE LABの視点|前進距離より、重心の移り方を見る
ずりばいを評価するとき、何センチ進んだかだけでは不十分です。前へ進むには、支持側へ体重を預け、反対側の手や足を自由にし、再び支持を作り直す必要があります。STROKE LABでは、その途中で重心がどこまで移り、どの部位で止まっているかを見ます。
- 乳児期のタミータイムは、寝返りや腹ばい移動を含む粗大運動発達と関連することが報告されています。
- 健康な赤ちゃんでも移動の順番や方法には幅があり、全員が同じ発達経路を通るわけではありません。
- 発達が気になる場合は、ひとつの動作ではなく、姿勢・筋緊張・左右差・全体的な発達を組み合わせて評価します。
出典:Hewitt L, et al. Pediatrics. 2020;145(6):e20192168. / WHO Motor Development Study. Acta Paediatr Suppl. 2006;450:86-95.
限界:タミータイムと運動発達の関連は、ずりばいが必ず獲得できることを示すものではありません。研究対象、家庭環境、実施時間、月齢、個人差があり、医療的な評価の代わりにはなりません。
家庭でできる腹ばい遊び
家庭では、ずりばいの形を作るのではなく、赤ちゃんが自分から試したくなる条件を整えます。睡眠時は仰向けを守り、腹ばい遊びは起きていて機嫌がよく、大人が見守れる時間だけにしてください。
| 避けたい関わり | 避けたい理由 |
|---|---|
| 足を強く押して前へ滑らせる | 赤ちゃん自身の体重移動や床を押す経験になりにくいため |
| 両腕を前へ引っ張る | 肩や肘へ負担がかかり、自分で支持を作る機会が減るため |
| 泣いても長時間続ける | 疲労や不快感が強くなり、腹ばい遊びを避けやすくなるため |
| 柔らかい布団だけで行う | 手足で床を押した力が逃げやすくなるため |
| ずりばいの形を一つに矯正する | 移動方法には個人差があり、形だけを合わせても準備動作が育つとは限らないため |

相談の目安と健診メモ
前進していなくても、支持や回転、リーチなどの準備が増えていれば、経過を見られる場合があります。一方、ずりばい以外の発達や全身の様子にも気になる点がある場合は、早めに相談する方が安心です。
| 経過を見やすい状態 | 相談したい状態 |
|---|---|
| 前進しないが、回転や後退がある | 首すわりや寝返りも不安定 |
| 腹ばいで胸を持ち上げられる | 腹ばいで胸をほとんど持ち上げられない |
| 片手を離して玩具へ触れられる | 片側の手足だけを使い、左右差が強い |
| 左右へ寝返りできる | 体が極端に硬い、または柔らかく支えにくい |
| 数週間の中で動きの種類が増えている | 手足をほとんど使わない、またはできていた動きが減った |
- 在胎週数と現在の月齢、修正月齢
- 寝返り、ひとり座り、姿勢変換の様子
- 腹ばいで胸をどのくらい持ち上げられるか
- 回転、後退、方向転換があるか
- 片手リーチや足の動きに左右差があるか
- 視線、玩具への興味、哺乳、睡眠など運動以外で気になること
- 横から全身が映る腹ばい動画を、開始直後と数分後に撮影する
できていた寝返りや座位が減った、けいれんのような動きがある、顔色・呼吸・哺乳がおかしい、急に片側の手足を動かさなくなった場合は、早めに医療機関へ相談してください。
専門家の評価でわかること
専門家の役割は、ずりばいの完成形を作ることではありません。前進を止めている条件を、支持、体重移動、左右差、骨盤・下肢、疲労、環境へ分け、家庭で観察しやすい遊びに翻訳することです。
| 見える状態 | 比較する条件 | 評価で整理すること |
|---|---|---|
| 両腕を動かすが進まない | 肘支持と手支持 | 胸を持ち上げる支持の段階 |
| 手を伸ばすと倒れる | 玩具の高さ、左右、距離 | 片手支持と体重移動の関係 |
| 足をバタバタするだけ | 膝の曲がり、足底接触 | 下肢の力が骨盤へ伝わるか |
| 後ろへ進む | 肩の位置、玩具の高さ | 腕で押す力と前方重心移動の関係 |
| 片側へしか回らない | 左右同じ距離・姿勢 | 胸郭・骨盤・手足の左右差 |
| 開始後すぐ姿勢が崩れる | 開始直後と数分後 | 支持の持続性、呼吸、疲労 |
たとえば、玩具へ手を伸ばした瞬間に支持側の肩がつぶれれば、まず片手支持の条件を調整します。足を押しても骨盤が動かなければ、下肢の力を増やす前に胸郭と骨盤の分節、股関節の位置、床面を見直します。
その場で姿勢や玩具の位置を変え、リーチ距離、左右差、骨盤移動が変わるかを確認します。変化が出た条件を家庭で短く再現し、一定期間後に同じ腹ばい動画で再評価します。
8か月で前進しないことだけでは、発達を判断できません。小児リハでは、支持、リーチ、骨盤、足の使い方、左右差を確認し、ご家庭で観察しやすいポイントへ整理します。診断や医学的判断は小児科・健診が担い、私たちは生活と動きの側から併走します。
よくある質問
回転、後退、片手リーチ、骨盤の動きも発達の一部です。家庭では、赤ちゃんが自分から試せる安全な環境を短時間つくります。ほかの発達や左右差も気になる場合は、健診や小児科へ相談し、必要に応じて小児リハで動きの条件を整理すると安心です。

機能解剖と動作分析を基盤に、赤ちゃんの「できる・できない」を、姿勢、支持、体重移動、感覚、環境へ分けて整理します。保護者の不安を、家庭で観察できる情報へ翻訳することを大切にしています。

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- ずりばい・はいはいの発達|移動方法と体の使い方 ※公開URL差し替え
- 小児リハ本体ページ /therapy/polio
- Centers for Disease Control and Prevention. Developmental Milestones: 9 Months.
- American Academy of Pediatrics, HealthyChildren.org. Movement: 8 to 12 Months.
- Hewitt L, Kerr E, Stanley RM, Okely AD. Tummy Time and Infant Health Outcomes: A Systematic Review. Pediatrics. 2020;145(6):e20192168.
- WHO Multicentre Growth Reference Study Group. WHO Motor Development Study: Windows of Achievement for Six Gross Motor Development Milestones. Acta Paediatr Suppl. 2006;450:86-95.
- 厚生労働省. 乳幼児身体発育調査.
- 厚生労働省. 乳幼児健康診査身体診察マニュアル.
- 金子唯史. 脳の機能解剖とリハビリテーション. 医学書院, 2024.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)