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vol.407:脊髄損傷受傷の運動回復と脳は関係するのか?-機能的再組織化との関連    脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー

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カテゴリー

脳科学・脊髄損傷
 
 
 

タイトル

脊髄損傷受傷後6か月後の運動回復と脊髄-脳の構造・機能的再組織化との関連
 
 
Motor recovery at 6 months after admission is related to structural and functional reorganization of the spine and brain in patients with spinal cord injury.  Hou J, Xiang Z, Yan R, Zhao M, Wu Y, Zhong J, Wu J (2016)
 
 
 

なぜこの論文を読もうと思ったのか?

・近年の脳科学研究により、脊髄損傷や切断など、脳実質の損傷がなくとも受傷後に脳が大きく変化することが明らかとなっている。一方、臨床場面では脳卒中者に対する神経科学的根拠に基づいた介入体系は構築されつつあるものの、その他疾患においてその重要性は認識されていない。
・今回、脊髄損傷者を対象とした受傷後の脳再組織化に関する最新の知見を知ることで、運動療法や生活指導の考案に神経学的知見を盛り込みたいと考えた。
 
 
 

内 容

概 要

・脊髄損傷者は、受傷後に多様な脳変化が生じることが知られている。構造的には、一次運動感覚野における下肢支配領域の灰白質容積の縮小(Freund et al., 2011; Henderson et al., 2011 )や、機能的には手部・顔面刺激時の賦活ピーク地点の内側偏移(Henderson et al., 2011)などが報告されている。
 
・しかし、これらの変化は実際の運動機能とどう関係があるのか、は検討されていなかった。本研究では、受傷時点から6か月後のAISの改善率(Motor recovery rate)と、MRIにより計測した
①脊髄厚(Cross-Sectional Spinal Cord Area Analysis)
②大脳皮質厚(Cortical thickness analysis)
③白質結合強度(DTI)
④機能的結合性(Functional Connectivity Analysis)
との関係を明らかにすることを目的とした。
 
・対象は10人の機能回復良好群(C6~T12損傷、AIS: A~D)、15人の機能回復不良群(C5~T12損傷、AIS: A~D)および25人の健常者として、MRIガントリー内にて上記4項目の計測を行った。
 
・結果は、
①脊髄厚は機能回復不良群のみ有意に低値
②大脳皮質厚は特にSMAやPMCにおいて機能回復不良群が有意に低値
③白質結合強度は機能回復不良群の下肢支配領域および内包後脚において有意に低値
④機能的結合性は機能回復良好群において健常者よりもM1やSMA、PMCを含む運動ネットワークにおける半球間結合性が高値となった。また、Motor recovery rateと右一次運動野のDTI値(FA)ならびに右補足運動野の大脳皮質厚は強い正の相関を示した。これらのことから、SMAやPre motorcortexからM1を介さず直接脊髄に投射する繊維が、運動機能回復に関与する可能性が示唆された。
 
 
 

目 的

・受傷時点から6か月後のAISの改善率(Motor recovery rate)と、MRIにより計測した①脊髄厚(Henderson et al., 2011)、②大脳皮質厚(Cortical thickness analysis)、③白質結合強度(DTI)、④機能的結合性(Functional Connectivity Analysis)との関係を明らかにすること
 
 
 

方 法

●対象:損傷高位がC6~T12の脊髄損傷者25名を、10人の機能回復良好群(AIS: A~D)、15人の機能回復不良群(C5~T12損傷)の2群に振り分けた。また、25人の健常者に対しても同計測を行い、3群間での比較を行った。
 
●手順:
1.被検者を対象としてbaselineのAISを計測した。
 
2.その後、平均して受傷後9週間の時点で、MRIで下記の4項目を計測した。
①脊髄厚(Cross-Sectional Spinal Cord Area Analysis)
②大脳皮質厚(Cortical thickness analysis)
③白質結合強度(DTI)
④機能的結合性(Functional Connectivity Analysis)
 
3.受傷後6か月が経過した時点で、再度AISを計測した。また、差分 / 100-1st motor score ×100 によりMotor recovery rate を算出した。
 
4.AISが1段階以上向上した被検者を機能回復良好群、改善しなかった被験者を機能回復不良群に振り分けた。
5.3群間で結果を群間比較した。また、Motor recovery rateと各測定の結果の相関を算出した。
 
 
 

結 果

①C2レベルの脊髄厚(Cross-Sectional Spinal Cord Area Analysis)
AのC2レベルの断面積を比較した。脊髄厚は機能回復不良群のみ有意に低値であった。

 
 
②大脳皮質厚(Cortical thickness analysis)
大脳皮質厚は、M1は健常群が有意に暑く、脊髄損傷者は有意に低下していた。
機能回復不良群はSMAやPMCにおいて有意に低値であった。
機能回復良好群と不良群の比較を行うと、右SMA、右PMCの皮質厚が、不良群において低値であった。

 
 
③白質結合強度(DTI)
Aは健常者-回復不良群、Bは回復良好群-健常群、Cは回復良好群-不良群、の比較である。
一次運動野の下肢領域と、右内包後脚に有意な違いが見られた。

 
 
④機能的結合性(Functional Connectivity Analysis)
機能的結合性は機能回復良好群において健常者よりもM1やSMA、PMCを含む運動ネットワークにおける半球間結合性が高値となった。

 
 
⑤Motor recovery rateと各測定の結果の相関
Motor recovery rateと右M1のDTI値(FA)ならびに右SMAの大脳皮質厚は強い正の相関を示した。

 
また、Motor recovery rateと右SMAと右M1間の機能的結合性、右SMAと左SMA間の機能的結合性は強い正の相関を示した。

 
 
 

考 察

●脊髄損傷の回復には脳の力が必要である
脊髄損傷により身体に麻痺領域を抱えることは、脳-脊髄-末梢間を連絡する遠心性信号出力および求心性信号入力の絶対量が減少する。本研究においても、これにより特に回復不良群において、脊髄や大脳皮質の厚さが減少したと考えられる。
 
C2レベルの脊髄や、大脳皮質自体に直接の損傷はなくとも、入出力する信号が増減することにより、その形態学的な変化や、運動関連ネットワークの機能的な結合性に変化が生じることは重要な知見である。
 
一方、運動機能回復良好群は異なる結果を示し、脳と機能回復との関係が示唆された。Isa(2017)によるレビュー論文にも、”The brain is needed to cure spinal cord injury.”というタイトルがつけられている。すなわち、多くの研究者が脊髄損傷者の機能回復に脳の関与が重要であることを示唆している。このような点を患者様に説明しつつ、トレーニングや自主練習を共に考案していくことが必要であると考えられる。
 
 
●SMAとPMCは運動機能回復に重要な役割を果たす
SMAとPMCは脳卒中後の運動機能回復に寄与する領域とされている(Pantanoet al., 1996; Riecker et al., 2010)。これは、SMAは“運動の開始”に関わり、かつ脊髄への直接投射経路を形成しているため、皮質脊髄路損傷後に代償的に機能すると考えられるためである。
 
また、PMCは”運動企画” に関わり、同じように脊髄への直接投射経路を形成している。回復良好群はこれらの経路が代償的に作用し、機能向上に寄与したと考えられる。瞬間的に力発揮をしたり、協調性が必要とされる運動要素を取り組んだ運動療法が有効と考えられるが、この点はあくまで推測であり、今後の検討が必要である。
 
 
 

私見・明日への臨床アイデア

・SMAやPMCは内発的な運動制御と関連するとされている。脊髄損傷者のリハビリテーションにおいて十分な効果検証が必要であるが、単調な筋力トレーニングを反復し筋量を増加させるのみでなく、課題志向型な要素や協調運動的な要素を取り入れ、運動関連ネットワークを十分に賦活させるようなメニューを組む必要もあると、本研究から推察される。
 
・また、スポーツ場面でも体幹筋が持続的に安定していると、上下肢のパフォーマンスも向上することが知られている。運動療法やハンドリングへ応用するには療法士の技術が問われるところであるが、例えば上肢のプレーシング行い、骨盤のtiltingにより体幹筋の賦活を行う。その状態で立ち上がりや歩行の運動を行うと、効率よく運動が行えることが考えられる。
 
・逆に脳卒中者や高齢者では皮質脊髄路の損傷や機能低下により、間接的に一次運動野内の連関にも影響を及ぼすことが考えられる。このような脳状態を推測しながら介入できれば、まさしく療法士の強みではないだろうか。
 
 
 

氏名 中西 智也

職種 理学療法士

 
 
 
 
 
 
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