【2026年版】10m歩行テストの完全ガイド:詳細な手順、助走の重要性、結果の解釈、転倒リスク評価と臨床活用法
10m歩行テストの採点・基準値・プロトコルを完全理解する。
「助走は何メートル?」「通常速度と最大速度はどう使い分ける?」「0.8m/sを超えたら何が変わる?」——新人セラピストが10MWTで最初に詰まるすべての疑問に、最新エビデンス(Uddin et al. 2019・Tilson et al. 2010)と疾患別MCID・採点基準の完全テーブルで答えます。

要点5項目。
臨床現場で、10MWTにはじめて向き合う。
発症3か月後、回復期リハビリ病棟。左中大脳動脈領域梗塞による右片麻痺(中等度)・軽度失語。BRS上肢3・手指2・下肢4。T字杖使用で歩行可能。FIM歩行3点。「早く家に帰りたい」と本人・家族が希望。担当PTが10MWTを実施した。
初回評価:10MWT通常速度(2回平均)0.55 m/s、最大速度 0.76 m/s。Speed Reserve = 0.21 m/s。TUG 22.4秒(転倒リスク高)。BBS 38点(補助具必要レベル)。「この数字が何を意味するか、どう伝えるか」——新人には難題だ。

上のケースは、臨床でよく遭遇する場面です。10m歩行テストは「ストップウォッチで計るだけ」に見えますが、数値の意味・基準値との比較・目標設定・患者へのフィードバックまでをセットで理解していないと、宝の持ち腐れになります。この記事では、測定の実施から臨床判断まで一気通貫で解説します。
10MWTとは何か——目的・対象疾患・「第6のバイタルサイン」の意味。

10m歩行テスト(10-Meter Walk Test:10MWT)は、患者が10mの直線を歩く時間を計測し、歩行速度(m/s)を定量化する臨床評価ツールです。必要な器具はストップウォッチとメジャーのみ。測定時間はわずか1〜2分。それでいながら、転倒リスク・ADL予測・退院先判断・リハビリ効果測定の主要指標として国際的に使用されています。
Fritz & Lusardi(2009, J Geriatr Phys Ther)が提唱したこの概念は、歩行速度が単なる運動能力の指標ではなく、筋力・バランス・心肺機能・認知機能・神経学的状態・社会的活動性のすべてを統合的に反映することを示します。Studenski et al.(2011, JAMA、n=34,485)の大規模メタ解析 [SR/MA] では、高齢者の通常歩行速度が低いほど生存率が低く、0.8 m/s以上の歩行速度が長寿と関連することが示されています。
10MWTが臨床で担う4つの役割
「歩けている」を「0.55 m/sで歩いている」に変換する。多職種・患者・家族と共通の数値言語を持つことが議論の土台になります。
0.8 m/s未満は転倒リスク上昇のカットオフ。退院先・介護度の判断材料としても使われます。
MCID(0.16 m/s)を指標に「改善が測定誤差を超えた真の変化か」を判定。2週間ごとの再評価が推奨されます。
国際的多施設共同研究でも主要アウトカムとして採用。標準化プロトコルが施設間比較を可能にします。
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
STROKE LABでは10MWTをはじめとする標準化評価を用いて、患者さまの現在の歩行速度から「地域歩行1.2 m/s」までの最短ルートを設計します。脳卒中・パーキンソン病など幅広い疾患に対応。まずはお気軽に無料相談をご利用ください。
なぜ「助走区間」が必要か——プロトコルの物理的根拠と測定手順。
人が歩き始める直後は加速相にあり、速度が定常状態に達していません。同様に終わり際は減速相に入ります。この非定常区間を計測に含めると、患者の「安定した歩行速度」が正確に測れません。そのため計測区間(10m)の前後に「助走(ウォームアップ)区間」を設けて、加速・減速の影響を除外します。
助走距離の比較:エビデンスが示す答え
Uddin et al.(2019, PLoS ONE、n=78)[単独RCT相当・横断研究] は、健常成人・健常高齢者・歩行能力低下者を対象に「助走なし」「助走4m」「助走10m」の3条件で計測値を比較しました。
結果① [観察研究]:Uddin MM, et al. PLoS ONE. 2019;14(1):e0211072. n=78(健常成人33・高齢者29・歩行低下者16)。助走なし条件では、助走あり条件と比較して歩行速度が0.05〜0.11 m/s 低く測定された。歩行障害群ほどこの差が大きくなった(最大0.11 m/s)。
結果② [観察研究]:助走4m条件と助走10m条件の間に統計的有意差なし。すなわち臨床スペースが限られた環境でも4mの助走区間で十分。
臨床的結論 [専門家合意]:推奨プロトコルは「前後各2〜4mの助走区間を設けた10m計測」。全長14〜18mのスペースが必要。使用した助走距離は必ず記録に明記する。

5ステップ実施手順——計測タイミングまで詳解
平坦・障害物なし・十分な照明の直線コースを確保。テープで「スタートライン」「計測開始ライン(10m区間入口)」「計測終了ライン(10m区間出口)」「終了ライン」の4箇所をマーキング。推奨全長:18m(助走4m+計測10m+減速4m)。スリッパ禁止。
「普段通りのペースで歩いてください。杖はいつも通り使ってください。」と伝える。「速く!」「頑張って!」などの励ましは速度変化を招くため禁止。
患者の「かかと(踵部)」が計測開始ラインを通過した瞬間にストップウォッチをスタート。かかとが計測終了ラインを通過した瞬間に停止。評価者の視線は常に患者の足元へ。
歩行速度(m/s)=10(m)÷ 計測時間(秒)。例:12秒 → 10÷12 = 0.83 m/s。2〜3回測定の平均値を使用。使用補助具・日時・評価者名も記録。
3〜5分の休憩後、「安全な範囲でできるだけ速く歩いてください(走らなくて大丈夫)」と指示して同プロトコルで実施。評価者は患者の利き手と反対側に位置し転倒に備える。
10MWT vs 類似評価——何を測るか・どう使い分けるか。
「10MWTだけやれば十分」という認識は危険です。歩行速度は歩行能力の「一断面」に過ぎず、バランス・持久力・動的機動性は別の評価が必要です。下表で類似評価との使い分けを整理します。
| 評価ツール | 測定内容 | 鑑別ポイント(10MWTとの違い) | 10MWTと組み合わせる理由 |
|---|---|---|---|
| TUG Timed Up & Go |
動的移動・方向転換 起立動作を含む |
「直線速度」ではなく「方向転換を含む実用移動能力」。20秒以上で転倒リスク高。 | 10MWTが速いがTUGが遅い→方向転換に問題。両方のズレが介入点を示す。 |
| 6MWT 6分間歩行 |
歩行持久力・心肺機能 | 「瞬間的な速度」ではなく「長距離歩行の耐久性」。脳卒中目安:400m以上で比較的自立。 | 10MWT速度は良いが6MWT距離が短い→持久力の問題。有酸素訓練が必要と判断できる。 |
| BBS Berg Balance Scale |
静的・動的バランス 14タスク包括評価 |
「速度」ではなく「バランス能力の多面的評価」。41点未満で補助具必要。 | 10MWT低速+BBS低スコア→バランス改善が歩行速度向上の鍵。介入の優先度が決まる。 |
| 5STS 5回立ち上がり |
下肢筋力(大腿四頭筋)・動的バランス | 「速度」ではなく「下肢推進力の源泉となる筋力」。15秒以上で低下・転倒リスク高。 | 10MWT低速+5STS遅い→筋力強化(スクワット・ステップアップ)が速度向上の直接手段。 |
| Dual-Task 二重課題歩行 |
認知負荷下の歩行安定性 | 「単一課題速度」ではなく「実生活的な歩きながら考える能力」。DTC(二重課題コスト)で評価。 | 10MWTは問題ないが日常で転倒する患者に追加。認知訓練との組み合わせ介入を検討。 |
採点基準・カットオフ値・MCIDを完全網羅する。
10MWTは「計測された速度(m/s)」そのものが採点結果です。スコア換算はありませんが、機能区分・カットオフ値・MCID・年代別規範値・疾患別閾値を正確に把握することで、数値に臨床的意味を与えることができます。
歩行速度の5段階機能区分(採点基準)
| 速度(通常:m/s) | 機能的解釈 | 転倒リスク | 退院先の目安 |
|---|---|---|---|
| < 0.4 m/s | 屋内歩行のみ。ADL全般に介助が必要。 | 非常に高い | 療養・施設 |
| 0.4〜0.8 m/s | 制限的地域歩行。外出に同伴者が必要。横断歩道は危険なことが多い。 | 高い(閾値:0.8) | 施設・在宅(要介護) |
| 0.8〜1.0 m/s | 日常生活おおむね自立。複雑な環境では注意が必要。 | やや高め | 在宅(軽度支援) |
| 1.0〜1.2 m/s | 地域内のほぼすべての移動が可能。横断歩道(最低1.0 m/s基準)クリア。 | 低い | 在宅(自立) |
| ≥ 1.2 m/s | 活動的・社会参加レベル。余裕ある横断歩道渡行が可能(Hoxie & Rubenstein 1994)。 | 非常に低い | 在宅(完全自立) |
出典:Perry et al. 1995 / Fritz & Lusardi 2009 / Bohannon 2019 等を総合。
疾患別MCID・カットオフ値(臨床ですぐ使える早見表)
| 疾患・病期 | MCID(通常速度) | 転倒リスク閾値 | 主要出典 |
|---|---|---|---|
| 脳卒中(慢性期) | 0.16 m/s | 0.8 m/s未満 | Tilson et al. 2010, Phys Ther |
| 脳卒中(亜急性期) | 0.10〜0.14 m/s | 0.6 m/s未満 | Duncan et al. 2011 |
| パーキンソン病 | 0.18 m/s | 1.0 m/s未満(PD特有) | Huang et al. 2011 |
| 脊髄損傷(不完全) | 0.13 m/s | 0.4 m/s未満 | Musselman et al. 2011 |
| 健常高齢者 | 0.10 m/s | 0.8 m/s未満 | Perera et al. 2006 |
評価者間信頼性 [複数RCT]:ICC ≥0.90(Peters et al. 2013 / Flansbjer et al. 2005)。訓練された評価者間では0.90〜0.99の範囲。複数回(2〜3回)の平均値がより信頼性が高い。
試験再試験信頼性 [単独RCT]:ICC 0.97(慢性期脳卒中:Flansbjer et al. 2005)。1週間後の再検査でも非常に高い安定性を示す。
最小検出可能変化(MDC) [観察研究]:脳卒中での通常速度MDC = 0.13〜0.17 m/s。MDCを下回る変化は測定誤差の範囲内として解釈する。MCIDと重複するグレーゾーンに注意。
MCID(最小臨床重要差) [複数RCT]:脳卒中慢性期 0.16 m/s(Tilson et al. 2010)。PD 0.18 m/s(Huang et al. 2011)。脊髄損傷 0.13 m/s(Musselman et al. 2011)。疾患別の値を使用すること。
構成概念妥当性 [観察研究]:10MWT通常速度はFIM・BBS・6MWTと有意な相関(r = 0.60〜0.88)。歩行速度が多面的な機能指標を部分的に反映することが確認されている。
年代別規範値(Bohannon & Andrews 2011)
| 年代 | 通常速度(男性) | 通常速度(女性) | 最大速度(男性) | 最大速度(女性) |
|---|---|---|---|---|
| 20〜29歳 | 1.37 m/s | 1.31 m/s | 1.90 m/s | 1.78 m/s |
| 40〜49歳 | 1.40 m/s | 1.35 m/s | 1.87 m/s | 1.77 m/s |
| 60〜69歳 | 1.31 m/s | 1.24 m/s | 1.72 m/s | 1.59 m/s |
| 70〜79歳 | 1.20 m/s | 1.11 m/s | 1.56 m/s | 1.42 m/s |
| 80歳以上 | 1.08 m/s | 0.97 m/s | 1.38 m/s | 1.22 m/s |
出典:Bohannon RW, Andrews AW. Normal walking speed: a descriptive meta-analysis. Physiotherapy. 2011;97(3):182-189. ※健常者規範値。患者との直接比較は行わず、疾患別カットオフを優先すること。
「0.16 m/s」を動かすエビデンスのある介入とは。
10MWTの速度(CWS・MWS)を改善するための介入は、エビデンスレベル・パラメータとともに覚えてください。漠然と「歩行練習をする」では不十分です。
Veerbeek et al.(2014, PLOS ONE、SR/MA):タスク特異的な歩行訓練が脳卒中後の歩行速度向上に最もエビデンスが強い。頻度:週3〜5回、時間:30〜45分/回、強度:最大速度の60〜80%。廊下・平行棒・トレッドミルを組み合わせる。
Pak & Patten(2008, J Rehabil Res Dev、複数RCT):スクワット・レッグプレス・ステップアップなどの下肢筋力強化が歩行速度を有意に改善。頻度:週2〜3回、3セット×10〜12回、最大筋力の50〜70%。特に5STSと組み合わせた評価で効果確認。
片脚立位・タンデム歩行・不安定面訓練など。BBS低スコア患者では歩行速度向上より先にバランス訓練を優先する。頻度:週3〜5回、20〜30分/回。Mini-BESTestで4領域別の問題を特定してから介入を絞る。
歩行しながら認知課題(逆唱・物の名前列挙)を同時に行う訓練。Kyoung et al.(2019, Neurorehabilitation):デュアルタスク歩行訓練が歩行速度・認知機能を同時改善。頻度:週2〜3回、20〜30分/回。10MWTは問題ないが日常で転倒する患者に特に有効。
SR/MAエビデンス:Veerbeek JM, et al. What is the evidence for physical therapy poststroke? A systematic review and meta-analysis. PLOS ONE. 2014;9(2):e87987. n=467試験。タスク特異的歩行訓練が10MWT速度に最大の効果量(ES = 0.52〜0.78)を示した。
介入パラメータ推奨 [専門家合意]:歩行訓練は週3〜5回・1回30〜45分・最低4週間継続が推奨。強度は患者の最大速度の60〜80%を目安とし、週ごとに漸増させる。

「数字が良くなっても生活が変わらない」——そう感じたことはありませんか?STROKE LABでは10MWTの速度をゴールではなく出発点として使います。歩行速度が0.16 m/s改善することで、実際に外出できる機会・信号を渡れる場面が増えます。まずは現状を一緒に確認させてください。
10MWT結果を、チームでどう使うか。
多職種連携テーブル——「誰が・何を評価・介入・連携するか」
| 職種 | 歩行に関する評価項目 | 主な介入内容 | 他職種との連携ポイント |
|---|---|---|---|
| PT 理学療法士 |
10MWT(主担当)・TUG・6MWT・BBS・5STS・筋力(MMT)・ROM・歩行分析 | 歩行訓練(高強度タスク練習)・下肢筋力強化・バランス訓練・歩行補助具の選定・装具の検討 | 測定値と目標速度をカンファレンスで共有。退院先・介護度の根拠として数値を提示。 |
| OT 作業療法士 |
ADL場面での歩行(台所・浴室・段差)・上肢機能評価・IADL・FIM(歩行項目) | ADL・IADL場面での応用歩行訓練・上肢片手動作練習・住環境調整の提案 | 「訓練室の速度」と「生活場面の速度」のギャップをPTと共有。在宅調査に反映。 |
| ST 言語聴覚士 |
失語症患者への10MWT実施可能性の判断・コミュニケーション評価・デュアルタスク歩行との関連 | 失語症患者へのパントマイム対応・視覚的説明方法の提案・嚥下リハ(体力・移動能力に影響) | 指示理解が困難な場合のプロトコル変更をPTに提案。認知機能が歩行速度に影響する機序を共有。 |
| 看護師 | 病棟での歩行自立度(夜間・食事・トイレ移動)・転倒リスクアセスメント・バイタル変化 | 転倒予防環境の整備(手すり・照明・スリッパ管理)・早期離床の促進・服薬管理 | 前回10MWT値より0.16 m/s以上の低下があればPTへ即報告するプロトコルを設ける。 |
| 医師 | 神経学的所見(NIHSS・BRS等)と10MWT値の対応・医学的禁忌の確認 | 痙縮に対するボツリヌス療法の適応判断・装具・補装具の処方・退院時期の決定 | 10MWT値と退院時速度目標を数値で共有し、医学的判断とリハビリ目標を整合させる。 |
| MSW 医療ソーシャルワーカー |
10MWT値と介護保険申請・退院先・社会資源活用の整合性確認 | 退院先の環境アセスメント・介護サービス申請・通所リハ・外来リハへの引き継ぎ調整 | 「0.6 m/s未満→施設候補、0.8 m/s以上→在宅目標」という数値基準を退院先判断に活用。 |
「10MWTの数値を『PTの記録』にしてはいけません。0.55 m/sという数字をカンファレンスで提示したとき、看護師が『夜間の歩行は0.55 m/s出ていないかも』と言い出したことがある。そこから夜間の歩行確認が始まって、転倒を未然に防げました。」
「速度の数字より大事なのは『それが患者の生活に何を意味するか』を全員で共有すること。退院先を考えるMSWにとって0.7 m/sという数字は、施設か自宅かの分岐点になり得ます。」
新人が10MWTで陥りやすい落とし穴と、臨床判断のコツ。
測定手順を覚えただけでは、臨床では使えません。先輩たちが経験してきたつまずきポイントを先取りして、最初から「使える10MWT」を習得してください。
急性期・パーキンソン病で特に注意すること
「急性期では日ごとに数値が変わります。『昨日より0.1 m/s落ちた』に一喜一憂せず、7日・14日・退院時のタイムポイントで傾向を見ることが大事。それと、値が急に落ちたとき——特に意識や麻痺の変化が同時にあるなら——神経学的悪化を最初に疑って、すぐ医師に報告してください。」
「PDの患者さんは服薬タイミングで全然違う人になります。ON状態で1.0 m/s出ていた人が、OFFでは0.4 m/sになることも珍しくない。測定記録には必ず『服薬後〇時間・ON/OFF状態』を書いてください。それがないと、縦断比較が全く意味をなさなくなります。」
10MWTを起点に予後を語り、ゴールを数値で設定する。
10MWT値は単なる現状記録ではなく、「どこに向かうか」を示す羅針盤でもあります。Speed Reserve・MCIDを使ったゴール設定の考え方を解説します。

Step 1:現状把握 — 通常速度(CWS)と最大速度(MWS)を測定し、Speed Reserve(MWS−CWS)を計算する。
Step 2:改善余地の判断 — Speed Reserveが0.2 m/s以上あれば集中的な歩行訓練で速度向上が見込める。0.1 m/s未満であれば、速度より安全性・持久力・バランスに目標をシフトする。
Step 3:MCIDを単位にした段階目標 — 「3か月で0.55→0.71 m/s(+0.16 m/s)」「6か月で0.85 m/s(転倒リスクライン超え)」のように具体的数値目標を患者・家族と共有する。
SR/MAエビデンス:Studenski S, et al. Gait speed and survival in older adults. JAMA. 2011;305(1):50-58. n=34,485(9コホート)。高齢者の通常歩行速度が低いほど生存率が低く、速度が0.1 m/s上昇するごとに死亡リスクが12%低下。0.8 m/s以上の歩行速度が長寿と関連。「歩行速度を改善することは、患者の寿命を延ばすことに直結するかもしれない」という視点でリハビリを位置づけることができる。
よくある質問——新人が実際に詰まる6問。
前後各2〜4mの助走区間が推奨されます。Uddin et al.(2019)の研究では「助走4mと10mの間に有意差はない」と示されており、4m助走が精度・スペース効率のバランスから最も実用的です。助走なしは歩行速度を0.05〜0.11 m/s過小評価するため、縦断比較には不向きです。施設内でプロトコルを統一し、記録用紙に助走距離を明記することが最重要です。
原則として両方を測定することが最も有用です。通常速度(CWS)は日常生活でのリアルな歩行速度を反映し、ADL自立度・転倒リスク・退院先判断に使えます。最大速度(MWS)は患者の神経筋能力の潜在的上限を示します。Speed Reserve(MWS-CWS)が大きい患者は集中的な介入で改善が見込めます。時間的制約があれば転倒リスク評価・退院判断には通常速度を優先してください。
普段使用している補助具をそのまま使用させて測定します。日常生活での実際の歩行速度を反映させるためであり、補助具を除去することは禁止です。使用した補助具の種類を必ず記録に残してください。例:「T字杖使用で0.65 m/s」のように記載します。同一患者の縦断的比較では同じ補助具を使用することが前提です。
程度によりますが多くの場合に実施可能です。パントマイムと視覚的デモンストレーション(評価者が実際に歩いて見せる)を活用することで、言語理解が困難な患者にも対応できます。コースをゴール地点を指差して視覚的に示し、評価者がデモ歩行を見せることで意図が伝わります。認知症が重度で指示理解が著しく困難な場合は、自発的歩行(食事・トイレへの移動など)の観察記録に切り替えることも選択肢です。
脳卒中患者では通常速度0.16 m/sの変化が最小臨床重要差(MCID)です(Tilson et al. 2010, Physical Therapy)。この値以上の改善が「臨床的に意味のある変化」の目安です。ただしMCIDは疾患によって異なります:パーキンソン病0.18 m/s(Huang et al. 2011)、脊髄損傷0.13 m/s(Musselman et al. 2011)。数値の変化とADLの実際の改善を合わせて評価してください。
主に3点の注意が必要です。①すくみ足(FOG)への対処:床テープ等の視覚的手がかりを活用するか、FOGが出た場合はやり直しルールを設けます。②服薬タイミング(ON/OFF状態)の記録:PDはON/OFFで0.3 m/s以上の差が生じることがあるため、服薬後の時間と状態を必ず記録します。③PDでのMCIDは0.18 m/s(Huang et al. 2011)であり、脳卒中基準(0.16 m/s)とは異なります。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは、脳卒中・パーキンソン病をはじめとする神経疾患の自費リハビリ専門施設です。10MWTを起点とする標準化評価で「今どこにいるか」を明確にし、MCID(0.16 m/s)を単位として「どこへ向かうか」を患者・家族と一緒に設計します。

— STROKE LABの実際のリハビリセッション。
「入院時、患者さんの10MWT通常速度は0.52 m/sで、ご本人は『信号が変わる前に渡れない』と不安がっていました。最初の2週間はSpeed Reserveが0.28 m/sあることを確認して、高強度歩行訓練を週4回で実施。4か月後には0.89 m/sを達成し、本人の第一声は『近所のスーパーに行けた』でした。数字が生活に変わる瞬間は、何年経っても忘れられません。」— 理学療法士・臨床経験8年・脳卒中リハビリ専門
「パーキンソン病の患者さんで、最初のカルテには10MWT 0.65 m/sと書いてあったのですが、実際に測ったらOFF状態での計測だったことがわかりました。ON状態で測り直したら0.98 m/s。介入の出発点が全く変わりました。ON/OFF状態の記録がなければ、的外れな介入を続けていたはずです。引き継ぎ情報に必ず服薬状態を書く習慣を全員でつくったことが、その後のチーム全体のレベルアップにつながりました。」— 理学療法士・臨床経験12年・パーキンソン病リハビリ専門
諦めないでください。

10m歩行テストの数字が示すのは「今の現実」です。しかしその数字は、正しいリハビリで必ず変えられます。0.55 m/sが0.71 m/sになったとき、患者さんが「信号を渡れるようになった」と話してくれる瞬間——それがリハビリテーションの存在意義だと、私は信じています。
STROKE LABでは初回評価で10MWTを含む標準化評価セットを実施し、どこが問題でどう変えるかを数値で示します。「なんとなくリハビリをする」時代は終わりにしましょう。
まずは無料相談で、現在の歩行速度と目標速度を一緒に確認させてください。あなたの「歩きたい」という気持ちに、私たちは全力で応えます。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)