つまずく・足首が上がらない…シャルコー・マリー・トゥース病【2026最新】
ゆっくり進むからこそ、できることがあります。
シャルコー・マリー・トゥース病は、生まれもった体質による末梢神経(まっしょうしんけい)の病気です。多くは進行がとてもゆっくりで、寿命への影響は少ないとされています。だからこそ、今できる備えがあります。
続きをお読みください。
こんなお悩みはありませんか。
最近、つまずきが増えた。靴の減り方が片寄る。足の形が変わってきた。そんな小さな変化に、戸惑っておられるかもしれません。
ご家族としては、不安が尽きないと思います。これからどうなるのか。何をしてあげられるのか。情報が少なく、孤独を感じる方も多くいらっしゃいます。
この記事では、病気のしくみから、ご家族にできる支え方、公的な制度までを、できるだけやさしくお伝えします。
シャルコー・マリー・トゥース病とは。
シャルコー・マリー・トゥース病(略してCMT)は、生まれもった体質による末梢神経(まっしょうしんけい:脳や脊髄から手足へ信号を運ぶ神経)の病気です。
この神経の働きが少しずつ低下します。すると、手足の筋力(きんりょく)と感覚が、ゆっくりと弱まっていきます。世界で最も多い、遺伝性の神経の病気とされています。
— 画像引用元:Springer Link
多くの方で、進行はとてもゆっくりです。長い年月をかけて、少しずつ変化していきます。
そして、寿命への影響は少ないとされています。焦らず、長く付き合うという見方が、何より助けになります。
あらわれやすい3つの変化。
多くは、足やふくらはぎから力が弱まります。足首が上がりにくく、つまずきやすくなります。
手足の先の感覚が、にぶくなることがあります。温度やケガに気づきにくく、注意が必要です。
土踏まずが高くなる凹足(おうそく)や、指が縮こまる変形が出ることがあります。靴選びの工夫が役立ちます。
CMT1(脱髄型):ミエリン鞘の異常が主体。神経伝導速度の著明な低下を示し、上肢運動NCVはおおむね38m/s未満が目安。PMP22重複によるCMT1Aが最多。
CMT2(軸索型):軸索障害が主体で、伝導速度は比較的保たれる。CMAP振幅の低下が特徴。
CMTX:GJB1変異によるX連鎖型。男性で症状が強く出やすい。原因遺伝子は100以上が報告される。
2つの大きなタイプ。
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
STROKE LABは、脳神経系を専門とする自費リハビリ施設です。歩き方やバランスを動作の視点から評価し、その方に合った練習をご提案します。まずはお気持ちをお聞かせください。
なぜ起こるのか。
神経は、電気の信号を運ぶ電線のようなものです。芯を包む被覆を、ミエリン鞘(しょう)と呼びます。
この被覆や芯が傷むと、信号がうまく届きません。結果として、力が入りにくく、感覚もにぶくなります。
原因は、生まれもった遺伝子の変化です。
この病気は、特定の遺伝子の変化(へんか)で起こります。遺伝子は、神経を正しく作るための設計図です。
設計図の一部に変化があると、神経が傷つきやすくなります。代表的な遺伝子に、PMP22・MPZ・GJB1などがあります。
常染色体優性:最多。片方の親由来の変異1つで発症しうる。
常染色体劣性:両親由来の変異が揃うと発症。比較的重症化しやすい型を含む。
X連鎖性:X染色体上の変異。男性で表現型が強い。発症程度には著明な個人差があり、家系内でも一様でない点に留意。
他の病気との違い。
手足の力が弱る病気は、他にもあります。脳卒中(のうそっちゅう)や、ギラン・バレー症候群などです。違いを知ると、見通しが立てやすくなります。
| 項目 | CMT | 脳卒中後の麻痺 | ギラン・バレー |
|---|---|---|---|
| 傷む場所 | 末梢神経 | 脳(中枢) | 末梢神経 |
| 起こり方 | とてもゆっくり | 突然 | 数日〜数週で急に |
| 左右差 | ほぼ左右対称 | 片側に多い | 左右対称が多い |
| 原因 | 遺伝子の変化 | 血管の障害 | 免疫の反応 |
評価の方法。
診断は、いくつかの方法を組み合わせて行います。問診と診察に加え、神経の検査や遺伝子の検査が用いられます。
— 画像引用元:Frontiers
MRIでは、神経や筋肉の状態を確かめます。神経の肥大や、筋肉のやせ細りが見えることがあります。
診断が難しい時に、補助として使われます。多くは問診・診察と神経検査が中心です。
NCV:上肢運動NCVが概ね38m/s未満なら脱髄型を示唆。軸索型では伝導速度が保たれCMAP低下が主体。
MRI:CMT1Aでは坐骨・脛骨神経などの神経肥大、T2高信号、下肢遠位筋の萎縮と脂肪浸潤(T1高信号)が観察されうる。
重症度評価:CMT Neuropathy Score(CMTNS)などが経過観察に有用。
進行への向き合い方。
今のところ、遺伝そのものを治す方法はありません。けれども、症状を管理し、生活の質を保つ手立てはあります。リハビリは、その中心になります。
大切なのは、強すぎる負荷を避けることです。軽めの運動を、長く続けることが向いています。次の4つの流れで考えると、整理しやすくなります。
歩き方、バランス、足の形を確かめます。困りごとを見える化すると、対策が決めやすくなります。
ウォーキングや水中運動が向いています。ストレッチで体の硬さも防ぎます。疲れすぎない範囲が目安です。
研究では、特にバランス練習が役立つと報告されています。転びにくさにつながり、自信を支えます。
足首が下がる場合は、足の装具(AFO)が歩行を助けます。手すりや段差解消も、安全を高めます。

なお、薬での痛みの管理が役立つ場合もあります。ビタミンCの効果は、十分な検証では確認されていません。過度な期待は禁物です。

同じ歩く力でも、使い方で疲れやすさは変わります。私たちは動作を細かく分析し、ムダの少ない動きへ導きます。無理のない範囲で、できることを一緒に増やしていきましょう。
ご家族ができるサポート。
日々の暮らしで、できること。
こんな声かけが、励みになります。
「焦らなくて大丈夫。少しずつでいいよ。」
「今日はここまでできたね。すごいね。」
「つらい時は、いつでも教えてね。」
してよいこと・控えたいこと。
| 場面 | してよいこと | 控えたいこと |
|---|---|---|
| 運動 | 軽めを毎日少しずつ | 疲れ果てるまでの無理 |
| 足のケア | 毎日傷の確認 | 熱さの放置 |
| 気持ち | できたことを認める | 他人と比べて急かす |
在宅生活と公的支援制度。
暮らしの土台を整えることも、大切な支えです。住まいの工夫と、使える制度を知っておきましょう。負担をひとりで抱えこまずに済みます。
在宅生活の整え方チェックリスト。
主な公的支援制度。
| 制度 | 主な内容 | 窓口 |
|---|---|---|
| 身体障害者手帳 | 装具・税の軽減・各種割引など | 市区町村の福祉窓口 |
| 障害福祉サービス | 居宅介護・移動支援など(年齢を問わず) | 市区町村の福祉窓口 |
| 介護保険 | 福祉用具・住宅改修など(主に65歳以上) | 市区町村・地域包括支援センター |
| 自立支援医療 | 対象医療費の自己負担を軽減 | 市区町村の窓口 |
| 高額療養費 | 月の医療費が上限を超えた分を払い戻し | 加入する健康保険 |
| 障害年金 | 一定の障害状態で支給される年金 | 年金事務所・市区町村 |
※利用できる制度や条件は、お住まいの自治体や状態によって異なります。難病医療費助成の対象になるかを含め、主治医や自治体の窓口でご確認ください。
これからの見通し。
見通しは、型や症状の重さで変わります。ただ、共通して言えることがあります。多くは進行がゆっくりで、寿命への影響は少ないという点です。
第一に、変化はゆっくりです。今日明日で急変する病気ではありません。
第二に、個人差が大きいです。軽いまま長く過ごす方も多くいます。
第三に、適切なケアで生活の質を保てます。多くの方が、自分らしい生活を続けています。
よくあるご質問。
遺伝のしかたは型によって異なります。最も多い形では、片方の親から受け継ぐと発症することがあります。
ただし発症の程度には大きな差があります。ご心配な場合は、遺伝カウンセリングで整理できます。
多くの方は、進行がとてもゆっくりです。長い年月をかけて、少しずつ変化します。
装具や手すり、リハビリの組み合わせで、移動の力を長く保てる方が多くいます。
遺伝そのものを治す方法は、現時点ではありません。ただしリハビリは、症状を管理する中心的な手段です。
研究では、特にバランス練習が歩行や転倒予防に役立つと報告されています。
強すぎる負荷は、筋肉を傷める心配があります。歩行や水中運動など、軽めの運動が向いています。
疲れを翌日に残さない範囲が目安です。専門職と相談して決めましょう。
全員に必要なわけではありません。足首が下がってつまずく場合などに、足の装具が歩行を安定させます。
合わない装具はかえって負担になります。専門職に相談して選びましょう。
多くの方が、工夫をしながら続けています。段差を減らす、握りやすい道具を使うなどが助けになります。
職場や学校に相談し、無理のない過ごし方を整えることが大切です。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは、脳神経系を専門とする自費リハビリ施設です。脳科学と徒手(としゅ:手で行う)技術を土台に、動作の質を高めます。病気そのものを治すものではなく、生活を支える補完的なリハビリです。
— STROKE LABでの歩行・バランスリハビリの実際の様子です。
「つまずきが減り、外出が前より怖くなくなりました。歩き方のクセを教えてもらえたのが大きかったです。」— 50代・男性・CMT・発症から約20年
「家族として、何を手伝えばいいかが分かりました。本人のペースを尊重できるようになりました。」— 60代・女性・ご家族(配偶者)
あわせて読みたい:STROKE LABのリハビリを徹底解説
諦めないでください。

診断を受けた直後は、不安でいっぱいになります。ご家族も、同じように揺れていると思います。
けれど、この病気は時間をかけて進みます。今できる備えが、これからの暮らしを支えます。
私たちは、動作の視点からその一歩をお手伝いします。どうか、ひとりで抱えこまないでください。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)