vol:381.失語症に対する音楽療法の効果とは?脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
脳卒中
タイトル
非流暢性失語の治療における音楽療法の効果
Effective music therapy techniques in the treatment of nonfluent aphasia.Concetta M. Tomaino (2012)
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・自発的な発話はないが歌は復唱できる患者をしばしば見かける。このような患者に歌を復唱させ、失語の改善や口腔機能維持ができないかと考え本論文を読むに至った。
内 容
BACKGROUND
・非流暢性失語患者に対する音楽療法で呼吸・口腔機能の向上、発音・発話の音律の改善、言語的・非言語的な意思疎通の増加など様々な利点が明らかになってきている。
・本論文では我々の最近の音楽療法の治療効果を要約した。
METHODS StudyⅠ
・脳卒中発症後9ヶ月〜20年以上の非流暢性患者7人(男性2・女性5)を対象とし、8〜12
回の個別リハビリ(30分 週3回 4週間)を行った。
・音楽を基盤とした様々な発話技術(発音・流暢さ・音律・息の支え)について66個のビ
デオを解析し、7個の効果的な方法から成るプロトコルを作った。
プロトコル
・馴染みのある歌を歌う…歌い出しは音楽療法士が行う(復唱が最も簡単)。発話リズム
は強く障害されているが、歌のリズムは比較的保たれている患者は頻繁に認められる。
・呼吸と単音節音…患者の呼吸パターンに注目することで患者をリラックスさせることが出来る。患者の残存機能を引き出し、発展させる。例えば一呼吸から、ため息やあくびに、更に母音一音に、最終的に単音節まで発展させる。
・音楽的に補助された発話…日常会話のフレーズは患者の馴染みのある音楽のメロディーと関連がある。馴染みのある旋律であるほど意欲が増し、良い結果が得やすい。
・ダイナミックに合図されて歌う…歌のダイナミクスを馴染みの歌唱に導入する。様々な歌の流れやフレーズの最後で止まるなどの方法も含まれている。このことによって患者は正しい語でフレーズを完成することができる。これにより患者の意欲を高め、効果的な会話のような文脈により音楽以外への応用を促進することができる。
・リズミカルな合図…患者は会話のリズムを手で叩いた音で導かれながらフレーズを練習する。歌詞のフレーズや日常会話のフレーズを用いる。自分でリズムをとる場合は左右いずれかの機能の良い方の上肢で行う。
・口腔の運動機能訓練…馴染みのある歌の一部を示して口と舌の動きを強調する。患者は近くで見て療法士の顔と口の動きを真似る。
・声の抑揚…抑揚をつけたフレーズは患者が会話の音律のメロディーの側面を改善するのに役立つ。抑揚をつけたフレーズを繰り返し練習する。
RESULTS StudyⅠ
・Table1にそれぞれの患者の結果を要約した。合図で上手くいった患者は正しいリズム
で歌うことも成功した。
METHODS StudyⅡ
・音楽を基盤とした非流暢性失語に対する会話療法の技術
・被験者40人を音楽療法群と写真による会話介入群にランダムに分け、30分の治療を週3回、12週間行った。全ての患者が一度は一通りの言語療法を受け、終了していた。
・the Western Aphasia Batteryとthe Test of Adult and Adolescent Word Findingを用いて初期評価、6週間経過後、最終評価を行った。
RESULTS StudyⅡ
・音楽療法は18人全員が、写真による介入は8人のみが最後まで行えた。
・音楽療法では介入前後で60.6から67.2と有意に改善した。写真による介入でも46.8から53.6と同様に改善した。サンプルが少なく2群間で有意差は認められなかった。
私見・明日への臨床アイデア
●音楽の利用により口腔機能の維持と失語の改善が行えそうである。
職種 言語聴覚士
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)