Vitality Index(意欲の指標)とは?評価方法・採点基準・PDF
Vitality Indexの評価方法生活の中の反応から、
意欲と支援の手がかりを見つける。
起床、意思疎通、食事、排泄、リハビリ・活動。5つの生活場面を観察する「意欲の指標」を、採点基準・判定上の注意・カルテ記載例とともに解説します。

Vitality Indexとは|生活行動からみる意欲の指標
Vitality Index(VI/バイタリティ・インデックス)は、日常生活に関連する意欲を行動の観察から評価する指標です。鳥羽らが開発し、2002年の原著では認知症のある高齢者を対象に信頼性・妥当性が検討されました。本人への質問に答えてもらう方法だけに頼らず、日常を知る医療・介護職などが生活の様子を確認します。[2]
起床・意思疎通・食事・排泄・リハビリ/活動の5項目を、それぞれ0〜2点で評価し、合計は0〜10点です。高い得点ほど、評価対象となる生活場面で意欲を示す行動・反応が保たれていると解釈します。[3]
手が動かず食事介助が必要でも、積極的に食べようとする人がいます。発語が難しくても、表情や身振りで働きかける人がいます。動作の自立度や発語量だけを点数へ置き換えず、各項目の基準と例外を確認します。
評価の進め方|一場面の印象で決めない
公開票には、意識障害、重い臓器障害、発熱を伴う肺炎などの急性疾患が除外規定として挙げられています。急な反応低下や体調変化を「意欲低下」で片づけず、病態の確認を優先します。睡眠薬等の影響も考慮します。[1]
| 手順 | 確認すること | 残す情報 |
|---|---|---|
| 1.条件を確認 | 意識・全身状態、薬剤、視聴覚、言語・運動の制限 | 評価日、状態、適用可否 |
| 2.生活を観察 | 朝の様子、対人反応、食事、排泄、活動への関わり | 観察した期間・場面・情報提供者 |
| 3.基準に照合 | 自発的か、促しで反応するか。項目固有の注意点も確認 | 各項目0〜2点と根拠となる行動 |
| 4.共有する | 前回との変化、本人の希望、支援条件を整理 | 内訳・総点・背景・対応 |
短い面接や訓練室での1回の反応だけでは、起床や排泄などを十分に把握できません。必要に応じて看護・介護職や家族から普段の情報を集めます。未観察・未確認の項目を0点で埋めず、理由を残して確認してください。
本記事が参照した公開票には、全員共通の固定された観察日数は示されていません。施設や研究の運用に沿って観察範囲をそろえ、いつの生活を評価したかを明記します。点数を得るために必要な声かけ・介助を控えたり、本人に強く働きかけ続けたりしません。
採点早見表|5項目をそれぞれ0〜2点で評価
以下は公開票の内容を説明用に要約した表です。正式な表現と詳細は日本老年医学会の原資料で確認してください。特に起床・排泄は、単純な「自発性あり2点/促し1点」の一律ルールでは判定できません。
| 項目 | 2点 | 1点 | 0点 |
|---|---|---|---|
| 起床 | 普段の決まった時刻に自ら起きる | 起こす必要がある日もある | 自発的には起きない |
| 意思疎通 | 本人から挨拶・会話を始める | 声をかけると返事や笑顔を示す | 呼びかけへの反応を認めない |
| 食事 | 自発的に食べる意向・行動を示す | 勧めると食べようとする | 食への関心や摂取しようとする様子がない |
| 排泄 | 常に自ら尿便意を知らせる、または自分で排泄する | 尿便意を知らせることが時々ある | 排泄への関心を認めない |
| リハビリ・活動 | 自ら参加に向かう、または活動を求める | 誘いかけによって参加する | 拒否、または関心を示さない |
5項目の実施場面と、間違えやすい判定
1.起床

起き上がる筋力のテストではありません。いつもの起床時の覚醒と、起こす必要があるかを確認します。朝の1回だけでなく、普段の様子を情報源とともに残します。
起座できない人でも、開眼して覚醒している場合は2点とする注意書きがあります。薬剤の影響を除いて判断することも必要です。
2.意思疎通

相手が声をかける前に本人から働きかけるか、呼びかけた後にどんな反応が返るかを観察します。大きな声で流暢に話せるかを競う検査ではありません。
失語がある場合も、笑顔、視線や身振りなどの言語以外の表現を確認します。自分からの働きかけと、呼びかけに応じる反応は分けて記録します。
3.食事

食具を自分で使えるか、食事を何割食べたかだけで判定しません。食べようとする様子と促しの必要性を観察します。
麻痺による介助があっても、口元に運ばれた食物を積極的に食べようとする反応があれば2点になり得ます。食事の安全性や嚥下機能を判定する点数ではありません。原資料では器質的な消化器疾患を除外して判断するとされています。禁食・経管栄養などで通常の食事場面がない場合は、食べさせて試さず採用票の運用を確認します。
4.排泄

尿便意の知らせ方、その頻度、排泄への関心を確認します。トイレ動作を一人で完了できるか、失禁があるかというADL評価とは区別します。
失禁があっても自動的に0点ではありません。尿意が分からない場合でも、失禁後の不快をいつも伝えるなら2点とする注意があります。尿道カテーテル等で状況が異なる場合は、推測で点を埋めず評価条件を共有します。
5.リハビリ・活動

訓練室への参加だけでなく、本人が求める日常活動も観察します。誘われて参加する場合と、自ら活動を求める場合を分けます。
散歩、レクリエーション、テレビなども原資料の対象です。寝たきりの人は受動的な運動への反応も手がかりになります。ただし、テレビがついているだけで2点とはせず、本人の関わりを確認します。
項目別の判定上の注意は原資料[1]を参照。疾患・環境・安全面の補足は臨床での確認事項として併記しています。
点数の解釈|7点以下は何を意味するか
VIの低得点は、生活場面の反応を詳しく確認する手がかりになります。ただし、意欲の点数だけで、うつ病・アパシーの診断やリハビリの適応を決めることはできません。体調、痛み、眠気、気分、聞こえ、理解、活動の機会、本人の好みなどを合わせて確認します。
「7点以下」と「7点未満」を混同しない
回復期病棟の高齢患者62人を対象とした学会抄録では、8点以上と7点以下に分けて検討しています。一方、その報告では両群のFIM利得に有意差は認められませんでした。これは特定の対象・研究方法による報告であり、「7点以下なら改善しない」という意味ではありません。[4]
研究の群分けを、全疾患・全施設共通の診断基準や訓練中止基準にしません。7点以下は7点を含み、7点未満は含みません。原資料の不等号を確認し、総点より先に、どの反応が変わったかを見ます。
10点でも、困りごとがないとは限らない
VIは5つの基本的な生活場面を捉えるため、満点付近では細かな意欲や参加の違いが点数に出ないことがあります。開発関連の学位論文要旨でも天井効果が論じられています。本人の興味、生活満足、役割への参加は別に確認してください。[5]
評価PDF|採点表・観察メモ・経過記録

点数と、そう判断した反応を残す。
A4縦・3ページ/印刷・手書き用
01 5項目の採点早見表・得点欄
02 判定の注意点・行動観察メモ
03 前回・今回・次回の比較記録
配点を保ち、説明を要約して記録欄を加えた学習・記録用の編集版です。公式配布票そのものではありません。自動採点機能はありません。
臨床例|同じ7点でも、支援は異なる
| 架空例 | 起床 | 意思疎通 | 食事 | 排泄 | 活動 | 総点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A | 2 | 1 | 2 | 1 | 1 | 7/10 |
| B | 1 | 2 | 1 | 2 | 1 | 7/10 |
Aさんは朝の覚醒と食事への積極性が保たれ、意思疎通と活動は促しへの反応が中心です。Bさんは自分から交流しますが、起床と食事では促しが必要な場面があります。同じ総点でも、観察すべき生活場面が違います。
介助があっても、食べる意欲は保たれている。
11月4日、病棟での起床・食事・排泄情報と対人・活動場面を確認。VI 7/10点(起床2、意思疎通1、食事2、排泄1、活動1)。起床時は通常時刻に開眼・覚醒。挨拶に笑顔で応答するが、自分からの働きかけはみられない。上肢麻痺により食事介助を要するが、積極的に摂取しようとする。尿便意の申告は時々あり。活動は誘いかけに応じて参加。本人が選べる活動を提示し、自発的な働きかけの有無を継続観察する。
実際の記録では観察期間・情報提供者、薬剤や体調等の確認内容も追記します。確認していない事項を「問題なし」と補わないでください。
評価後の支援|反応が出やすい条件を探す
低得点を「やる気がない人」という評価にしません。活動が本人にとって意味を持つか、説明が伝わっているか、疲労や痛みで取り組めないかを確認します。支援後は、点数だけでなく反応が変わった条件を共有します。
| 場面 | 支援を考える視点 | 記録例 |
|---|---|---|
| 起床 | 睡眠・日中覚醒・薬剤の影響を医療チームで確認 | いつ覚醒し、声かけが必要だったか |
| 意思疎通 | 聞こえや理解を確認し、反応を待つ | 自発的な視線・身振り、呼びかけ後の表情 |
| 食事 | 摂取許可と嚥下条件、姿勢、食具、本人の好み | 介助内容と本人の摂取反応を分ける |
| 排泄 | 伝えやすい手段とタイミングを整える | 自発的な申告、不快の表出 |
| 活動 | 本人が選べる活動、課題量、休憩を調整 | 自分から求めたか、促しに応じたか |
本人が断る理由には痛み、疲れ、好み、プライバシーなどもあります。採点上の拒否と、拒否の理由や本人の意思を分けて残し、参加を強制しません。新しい意識変化や急な体調悪化があれば、意欲を高める働きかけより医療的な確認を優先します。
エビデンス|何が検証され、何は分からないか
2002年の原著では、長期ケア施設等の高齢者を対象に、再検査相関0.98、内的一貫性を表すCronbachのα0.88が報告されています。観察による意欲評価の信頼性を支持する結果ですが、すべての病期・疾患で同じ精度を保証する数字ではありません。[2]
開発関連研究では短時間で採点できることも検討されています。ただし、採点用紙を埋める時間と、十分な生活情報を得る時間は別です。初対面の数十秒の印象だけで5項目を確定する根拠にはなりません。[5]
| 指標 | 主な視点 | VIとの違い |
|---|---|---|
| Barthel Index・FIM | 日常生活動作の自立度・介助量 | 動作をどの程度一人で行えるか |
| Vitality Index | 生活行動に表れる意欲・反応 | 自発性や促しへの反応を観察 |
| やる気スコア等 | 意欲・興味などに関する質問 | 回答可能性と各尺度の手順を確認 |
| GDS等 | 抑うつ症状 | VIの低得点をうつ病診断に置き換えない |
よくある質問
7点以下ならリハビリの効果はありませんか?
そのようには判断できません。研究の群分けと個人の改善可能性は別です。項目別の反応、病状、実際の生活と本人の目標を確認します。
失語があると意思疎通は0点ですか?
いいえ。言葉以外の表現も判定に使えます。本人からの働きかけか、呼びかけへの応答かを分けて観察してください。
全介助の食事なら食事項目は0点ですか?
介助量だけで決まりません。麻痺により介助が必要でも、積極的に食べようとする場合は2点になり得ます。食べる意欲と嚥下の安全性は別に評価します。
失禁している人の排泄は0点ですか?
失禁の有無自体では判定しません。尿便意の申告や不快の表出を確認します。原資料では、尿意不明でも失禁後にいつも不快を伝える場合は2点です。
テレビを見ていれば活動は2点ですか?
テレビも対象になり得ますが、ついているだけでは判定できません。本人が活動を求めているのか、促しに応じているのかを確認します。
1点上がったら、臨床的に意味のある改善ですか?
1点の変化を全員共通の意味のある改善と決めません。どの行動が変わったか、評価者・観察範囲・体調・支援条件が同じかを確認します。
STROKE LAB|本人が参加しやすいリハビリを考える
退院後、声かけや練習の進め方に迷うときは、反応が得られる場面、本人の興味、疲れやすさ、主治医からの注意事項を共有してください。生活の中で取り組める課題と環境を一緒に整理します。
本人の反応と希望に合わせて、
練習の入り口を見つける。
STROKE LABは脳神経系に特化した自費リハビリ施設です。医学的に状態が安定した方の生活動作や練習方法について、ご本人・ご家族からご相談いただけます。
参考資料・原著論文
- 日本老年医学会.意欲の指標(Vitality index).採点と判定上の注意。 原資料を確認 ↗
- Toba K, et al. Vitality Index as a useful tool to assess elderly with dementia. Geriatr Gerontol Int. 2002;2:23–29. 原資料を確認 ↗
- 国立長寿医療研究センター.研究情報公開No.1816:評価尺度の説明。 原資料を確認 ↗
- 有竹洋平ほか.回復期病棟高齢入院患者の意欲とADLの改善度の関連性.第45回日本理学療法学術大会抄録.2010. 原資料を確認 ↗
- 中居龍平.高齢者の意欲を客観的に測定する「意欲の指標」の開発.東京大学学位論文要旨.1999. 原資料を確認 ↗
文献確認:2026年11月4日。採点の説明は公開票をもとに要約しています。臨床例・イラストは説明用で、特定の方の状態や効果を示すものではありません。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)