vol.345:脳卒中者の運動回復とβ-oscillationsの自己制御能の強化学習 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
脳科学
タイトル
脳卒中者の運動回復とβ-oscillationsの自己制御能の強化学習
Reinforcement learning of self-regulated β-oscillations for motor restoration in chronic stroke?PubMed Naros G et al.(2015)
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・脳という可変の「柔軟性」を有する部位に興味があり、学習の一助として本論文に至る。
内 容
内容抜粋
・脳卒中などの運動技能を獲得・再学習するには、運動学習を誘発する練習が必要である。Motor imagery(MI)はSensory-Motor システムを駆動させることが出来、代替のトレーニング方法として効果的である。
・MI中の脳活動の自己調節は、BCIまたはBMI(brain-computer/brain-machine interfaces)のいずれかを使用し、使用者の現在の脳状態に関する視覚的または独自のフィードバックを提供することによってサポートすることができる。健常者と脳卒中者の両方を対象とした研究では、BCI / BMI技術を忠実に利用してMIトレーニングを行う事は、Sham群・No feedback群介入よりも優れていることが示された。
・治療的介入は、その潜在能力を最大限発揮するための強化学習の概念によって実施されるべきである。
・このような効果的なMIの介入が、理学療法前に適用された場合、プライミングメカニズムのようにその後の理学療法に対する脳の反応性を高め、それによって一般的な臨床結果を改善する可能性があることは驚くべきことではないと思われる。(補足:プライミング効果とは、先行する刺激(プライマー)の処理が後の刺激(ターゲット)の処理を促進または抑制する効果のことを指す。 )
・BMI技術は、厳しいリハビリテーション訓練にもかかわらず、手・上肢機能の十分な改善が不十分な脳卒中患者のために、集中的なリハビリを超えた機能的な利益が達成可能であることが期待される。
・sensory-motor cortex に対するβ-band oscillations activityは、皮質および末梢筋活動間の自然な伝達を媒介し、感覚運動制御・運動学習・皮質脊髄路の興奮性および脳卒中後の機能障害の程度を反映するので、このアプローチにおいて特に適切である。
・α-oscillations(8-12Hz)およびβ-oscillations(15-35Hz)のbrain oscillationsは、実際の運動およびMIの間に調節される。高度に相関するパターンを示しているにもかかわらず、それらは別個の機能的メカニズムを提供する。
・ α-activityは大脳皮質があまり働いていない状態に対応し、β-activityは、sensorimotor cortexの脱抑制および筋肉との密な相互作用を介在する。
・ERDは,運動の想起時や実際の運動時の直前から運動野付近で検出される。α波やβ 波の周波数帯での電位低下に特徴がある。脳卒中者では、対側M1における運動関連のβ-ERDは、健常対照群と比較し運動障害がより重症であるほど損われる。この文脈より、多くの脳卒中者の運動関連脳状態を区別するための分類目的にβ-oscillationsがあまり最適ではないという事実は、この生理学的マーカーを治療標的として妥協する(却下)するのではなくむしろ認定すると主張する。
・BCI / BMIは、患者が運動器具を最良に制御することを可能にする脳状態を訓練することを目指すよりも、改善されたβ-band modulationを介してsensorimotor loopを回復させるという治療目標に従うべきである。
・手の機能が残存していない脳卒中患者でさえも、強化学習の概念に基づいて神経フィードバック訓練を受けると、β-modulation range を訓練し拡張する可能性がある。 十分な時間および適切な強度で適用される場合、この介入そのものは、機能的修復のための治療的アプローチを構成し得る。
・脳卒中リハビリテーションにおいてこれらのアプローチを適用する研究は有望である。
私見・明日への臨床アイデア
・脳の「Range」という考え方は興味がある。脳卒中者では、リラックスが苦手であったり、イメージするだけで体の至る所が力んでしまったり、メリハリやグラデーションの様に運動単位の動員をコントロールすることが難しい方が多い。「~筋が・・」というのも大切だと思うが、脳のそのようなコントロールも大切と感じる。
職種 理学療法士
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)