vol.237:呼吸と姿勢保持は関連するのか? 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
目次
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カテゴリー
バイオメカニクス
タイトル
呼吸共同作用の老化
The effect of aging on respiratory synergy?PubMed Migyoung Kweon J Phys Ther Sci. 2015 Apr; 27(4): 997–999.
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・呼吸条件の違いで姿勢保持に影響が生じるということに興味を持ち、本論文を読もうと思った。
内 容
背景・目的
・Respiratory synergy(呼吸共同作用)は呼吸時における身体体節の代償運動で、特に股関節に顕著にみられる。これは呼吸状態が姿勢保持に影響を与えることを表しており、特に腰痛患者、高齢者、脳卒中者でこの傾向がみられることが多いと言われている。
・これらの研究は若年成人で行われてきた経緯があるが、高齢者ではまだ十分に研究されていない。したがって、本研究では呼吸状態の違いが姿勢保持に与える影響を若年成人と高齢者で比較検討する。
方法
・10人の高齢者と10人の若年成人
・床反力計の上に裸足で立ち、静的立位を取らせた。安静時呼吸(Quiet breathing: QB)と無呼吸(Apnea: AP)の2条件で足圧中心の総移動距離を計測し比較した。
・3次元動作解析装置を用いて矢状面上の身体各関節・体節の総移動量を角度で計測した。
結果
表:実験結果 Migyoung Kweon (2015)より引用
・若年成人群において、股・膝・足関節、骨盤、胸郭の総移動量は無呼吸に比べて安静時呼吸で有意に大きかった。身体重心の軌跡長は安静時呼吸がわずかに短い値を示したが、有意差はなかった。
・高齢者群では、股関節、骨盤の移動量に呼吸の違いによる有意差がみられた。どちらも無呼吸で移動量が減少した。また身体重心の軌跡長は安静時呼吸がわずかに長い値を示したが、有意差はなかった。
・群間比較では安静時呼吸の頭部、胸郭のみ有意差がみられた。若年成人群と高齢者群を比較すると、身体体節・重心軌跡ともに移動量が少ないのは高齢者群だった。
私見・明日への臨床アイデア
・高齢者では若年成人群に比べて身体各関節・体節の移動量が少なかった。姿勢保持時の重心動揺が乏しく、身体を固めるように保持していると予想される。この状態は無呼吸状態でより顕著になることが今回の研究からわかった。自分自身で呼吸を止めてみると頸部胸郭がこわばる感じがするため、おそらく全身的に筋緊張が亢進し、重心動揺がより乏しく安定性限界が小さい状態となってしまうのだろう。呼吸状態の悪化している患者に対してアプローチする際は頸部体幹の筋緊張を緩め、内乱を用いたバランス練習などをすると効果的かもしれない。
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 4万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018)