vol.210:肩関節前方不安定症に対する三角筋の動的安定性を説明します。 脳卒中/脳梗塞/片麻痺のリハビリ論文サマリー
目次
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カテゴリー
バイオメカニクス
タイトル
三角筋の動的安定性を考える
Dynamic glenohumeral stability provided by three heads of the deltoid muscle.?PubMed Lee SB et al.(2002)
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・肩の安定化機構のイメージをより鮮明とし、治療に繋げるため、その一助として本論文に至る。
内 容
背景
・肩関節前方不安定症は、依然として正確な原因が生体力学的に十分に理解されていないトピックです。
・静的(関節包および靭帯)および動的(筋収縮)要素は、肩関節の安定性に重要で、動的安定性への関心が高まっています。
・三角筋は、肩の筋肉の約20%を占める大きな筋肉です。肩を安定させる役割として三角筋の機能は重要であると考えられています。三角筋の最も重要な機能は、肩甲骨面上における前方挙上である。しかし、三角筋の上肢位置に対する前~後部の活動の差異は、筋電図の解析によって観察されている。
目的
・研究目的は、動的安定性指数を用いて三角筋によって提供される動的肩関節安定性を定量化することであった。
方法
・本研究では、三角筋の前・中・後部によってもたらされる肩関節の動的安定性指数により定量化した。動的安定性指数が高いほど、動的安定性は大きくなる。動的安定性指数は、個々の筋によって生成される力ベクトルだけでなく、凹面の圧迫メカニズムも考慮する。
・10人の献体(年齢48〜74歳)が用意された。
結果
・三角筋すべて、AP方向に圧縮力および剪断力を有するようであった。上腕骨がROM最終域まで回転するにつれ、剪断力は方向および大きさを有意に変化させた。三角筋の三つの部位では、腕が外転・伸展した時の外旋の程度に関わらず、関節を不安定にする前方剪断力成分を生じることが明らかになった。
・三角筋前部による前方剪断力は、他の中後部による前方剪断力よりも有意に大きかった。
・三角筋前部よりも中部・後部はより高い圧縮力およびより低い剪断力を生成し、より安定性を提供するので、肩前方不安定性に対し保存的および手術的処置においてより強化されるべきである。
・三角筋は、関節面の圧縮を作り出すことで安定性に寄与したが、ローテーターカフによるものよりはその効果は有意に低かった。また、前方不安定位置では、その圧縮力は有意に低下した。
・肩甲骨面上で肩甲上腕関節が60°外転し90°外旋すると、三角筋すべての線維が正の動的安定性指数値を示した。三角筋がこの特定の位置で肩を安定させることができることを意味する。
私見・明日への臨床アイデア
・rounded postureの方などでは、三角筋前部が大胸筋と共に縮まったまま遠心的活動が低下しており、後部線維は不活性になっている方が多いと思われる。前方の遠心的活動と中・後部を活性させていくことが文献上からも大切と感じる。しかし、文献から関節の圧縮力による安定化はrotator cuffには及ばず、三角筋は前方剪断力を生むため、動的安定化を図るには三角筋操作はインナーのrotator cuffの筋を活性させた上で行われるべきであると考えられる。
氏名 覚正 秀一
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 4万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018)