カルテ記載例/架空
MI左上肢:つまみ22、肘屈曲25、肩外転19。素点66/99、各肢一律+1方式で67/100。
座位で実施。2.5cm立方体を使用。つまみは重力に抗して保持できるが弱い引きでは保持困難。肘屈曲は抵抗に抗するが右より弱い。肩外転は90°を超えるが抵抗には抗せない。
下肢は未実施。理由:今回は上肢評価のみを予定。同側得点なし。
Motricity Index(MI)は、脳卒中後の四肢の筋力・運動障害を、上肢3項目・下肢3項目で評価する尺度です。つまみ動作だけ配点が異なります。動作の範囲、重力、抵抗への反応を確認し、内訳と実施条件を記録します。

開発原著はDemeurisseら(1980)、実施方法の主な参照資料はCollin・Wade(1990)です。本記事は公式日本語版ではありません。原資料の表現が曖昧な箇所や、後年の版との違いは本文で区別します。[1] [2]
高い得点ほど筋力が保たれている方向です。以下は配点と判断の焦点を整理した教育用の要約です。姿勢・可動域・個別項目の条件まで確認して採点します。[2]
| 点 | 確認する反応 |
|---|---|
| 0 | 指・母指の動きがない。 |
| 11 | つまもうとする動きが始まる。指または母指に動きがある。 |
| 19 | 立方体をつかめるが、重力に抗して保持できない。 |
| 22 | 立方体を重力に抗して保持できるが、弱い引きには耐えられない。 |
| 26 | 弱い引きにも保持できるが、反対側より弱い。 |
| 33 | 正常なつまみ力。 |
| 点 | 確認する反応 |
|---|---|
| 0 | 動きがない。筋収縮も確認できない。 |
| 9 | 筋収縮を触知するが、関節の動きはない。 |
| 14 | 動きはあるが、重力に抗した全範囲の運動には達しない。 |
| 19 | 重力に抗して全範囲を動かせるが、抵抗には抗せない。 |
| 25 | 抵抗に抗して動かせるが、反対側より弱い。 |
| 33 | 正常な筋力。 |
14点と19点では、動いた量と重力条件が重要です。肩外転には90°を超える条件、膝伸展には原資料の記述上の曖昧さがあります。上肢の詳細・下肢の詳細も併せて確認してください。
各項目は最大33点なので、上肢・下肢それぞれの3項目合計は0~99点です。Collin・Wadeは各肢に1点を加える方法を記載しています。本記事の計算例は、HAS掲載用紙と同じく各肢の合計に一律1点を加える方式で統一します。この方式では各肢は1~100点です。[2] [4]
一方、2025年のイタリア語版では「素点99のときだけ1点を追加」と明確化しています。0~100という表記だけを見て、異なる集計方式を混ぜないでください。本記事の方式が唯一の公式方式という意味ではありません。研究・施設の採用版に従い、素点と方式を残します。[3]
6項目を単純に合計した198点満点や、左右を独自に合計した得点へ置き換えません。未実施がある肢の得点を推定せず、片肢のみ評価した場合は同側得点を出しません。

PDF | A4縦・2ページ | 印刷・手書き用
1ページ:対象者ID・実施条件・6項目の得点と所見・集計方式。
2ページ:再評価の経過・生活場面・申し送り。
配布物の位置づけ:原用紙・採点基準の日本語転載や再配布の許諾を確認できていないため、PDFは独自の記録補助票です。採点基準表は収載せず、原資料との併用を前提とします。公式・検証済み日本語版ではありません。プレビューは完成PDFの1ページ目から生成しています。
基本は座位です。必要時には臥位での実施も記載されていますが、姿勢変更は記録し、前回と条件が違えばそのまま比較しないようにします。補助具や介助で作られた動きを、本人の抗重力運動として採点しません。[2]
全項目一律の試行回数や抵抗の強さを独自に決めて、MI共通の公式条件とはしません。再指示・練習・反復・休憩を行った場合は記録します。所要時間は患者の状態と検者の経験に左右され、制限時間として扱いません。
痛みや運動制限で評価が成立しない場合は、その理由を残します。新たな脱力など急な神経症状では、採点の完了より医療対応を優先します。

平面上の立方体を、母指と示指でつまみます。19点ではつかめても重力に抗して保持できず、手関節を検者が持ち上げて確認する場合があります。検者が支えた状態を22点の根拠にしません。
保持できたら弱い引きを加えます。耐えられなければ22点、耐えられるが反対側より弱ければ26点です。33点には正常なつまみ力の確認が必要です。[2]
声かけの例:「親指と人差し指でつまんで、持ち上げてください」。必要に応じて「軽く引くので、離さず持っていてください」。握力計や別サイズの物品を、同じ条件の検査として置き換えません。

開始:上腕は垂直、肘は90°屈曲、前腕は水平。手を肩へ近づけるように曲げます。
検者:上腕二頭筋の収縮を確認し、必要に応じ手関節に手を置いて抵抗を加えます。動きがなければ、上腕が水平になるよう肘を支えて条件を変え、動きが現れるか確認します。この条件での動きは14点の確認に用います。
開始:肘を十分に曲げ、胸に寄せた位置から上腕を外へ上げます。
観察:肩甲帯をすくめるだけでなく、肩甲骨に対して上腕骨が動いているかを確認。原資料では、重力に抗して90°を超えて外転できるが抵抗には抗せない場合を19点としています。[2]
必要な可動域を安全に試せない場合、到達角度・疼痛と評価の限界を記録します。体幹の側屈や肩甲帯の挙上で生じた高さを、肩外転の到達範囲に読み替えません。

足を底屈方向に自然に下げた位置から、つま先をすねへ近づけるよう足関節を背屈します。前脛骨筋の収縮を確認します。
足指だけを反らした動きと区別します。原資料では、背屈の全範囲に達しない場合は14点。全範囲・抵抗への反応は共通基準に照らします。装具が運動を助けたり制限したりする場合、その条件のまま通常値と同一視しません。[2]
膝90°屈曲、足を支持しない位置から膝を伸ばします。検者は膝の高さに手を示し、大腿四頭筋の収縮を確認します。
完全に伸展できるが容易に押し下げられる状態は19点。原資料は14点を「全伸展の半分未満」と記載しており、半分以上でも全範囲未満の場合には記述上の隙間があります。[2]
2025年イタリア語版は、この曖昧さを検討し「全範囲未満を14点」と明確化しています。これは後年の版の説明です。原資料に最初から同じ文言があるとは扱わず、採用版を統一して角度と判定理由を残してください。[3]

股関節90°屈曲の座位から、膝を顎の方向へ近づけるように太ももを持ち上げます。検者は後方への体幹の傾きを確認し、必要に応じ背中に手を添えて後ろへ反らないよう伝えます。
可能な全範囲に届かない場合は14点。全範囲まで屈曲できても太ももが容易に押し下げられる場合は19点です。可動域の限界は他動運動も確認して判断します。[2]
避ける読み違い:上体を後ろへ倒して膝が高く見えることと、股関節屈曲による運動を区別します。
痛み、理解の難しさ、医学的制限で検査が成立しないときは、運動がないと確認した0点とは区別します。本記事では正式な評価不能コードを新設せず、「未実施」「判定不能」と理由を文章で記録する運用を勧めます。
抵抗をかけたというだけで33点にはなりません。抵抗に抗せても反対側より弱ければ25点(つまみは26点)です。両側に障害がある場合は、反対側と同じ強さでも正常とは限らず、判定の限界を明記します。
他動可動域が制限される場合の扱いや声かけの促しは、1990年資料で十分に規定されていない点があります。2025年研究では「許される他動可動域内を動けば全範囲とする」「必要時の励ましを許す」と検者間で合わせていますが、これはその研究の運用です。MI全版に共通の追加規則とはせず、施設内で条件をそろえます。[3]
架空例:左片麻痺のAさんを座位で評価。左上肢は、つまみ22点、肘屈曲25点、肩外転19点でした。上肢素点は66点、本記事の一律+1方式では上肢67点です。下肢は実施していないため、同側得点は算出しません。

MI左上肢:つまみ22、肘屈曲25、肩外転19。素点66/99、各肢一律+1方式で67/100。
座位で実施。2.5cm立方体を使用。つまみは重力に抗して保持できるが弱い引きでは保持困難。肘屈曲は抵抗に抗するが右より弱い。肩外転は90°を超えるが抵抗には抗せない。
下肢は未実施。理由:今回は上肢評価のみを予定。同側得点なし。
「左上肢は67点(素点66、各肢+1方式)です。立方体の保持はできますが、弱い引きでは離れます。肘屈曲は抵抗に抗せますが右より弱く、肩外転は90°を超えますが抵抗には抗せません。物品操作への影響は、次に実際の課題で確認します」
例に書かれていない疼痛、感覚、日常生活での使用頻度は推測で追加しません。実際の記録では、確認した範囲を追記してください。
Demeurisseらは限られた動作を選び、回復経過に基づいて重み付けしたMIを報告しました。単純なMMTの0~5点の足し算ではありません。[1]
Collin・Wadeの予備研究では、脳卒中後6・12・18週でMIとRivermead Motor Assessmentなどを比較し、信頼性と関連を検討しています。一方、動作の質や痙縮・感覚障害・失行を十分に表さない限界も論じています。[2]
2025年のイタリア語版研究では、脳卒中後の対象者について、検者間51人・再検査50人のデータを解析しました。より障害の強い側の各合成得点の検者間Spearman相関は0.965~0.970でした。ただし測定誤差は残り、反対側では一致の特徴も異なりました。これはイタリア語版の結果で、本記事の日本語要約の検証値ではありません。[3]
MIは順序尺度に基づきます。67点を「正常の67%の筋力」「67%回復」とは読みません。特定の得点を歩行自立・上肢実用性の普遍的カットオフにせず、同条件の項目別変化と実際の活動を確認します。
つまみの改善を認めたら、実際の物品の把持・持ち替え・離す動作、リーチ、感覚、疲労を別に確認します。立方体を持てることだけで、箸やボタンの操作が自立したとはしません。
足背屈や膝伸展の変化は、足の引っかかりや支持性を観察する手がかりになります。移乗・歩行は体幹、バランス、感覚、装具、介助条件を含めて別に評価します。
同じではありません。MIは選択した6動作を重み付き得点で整理します。つまみには独自の配点があり、MMTの総点をそのままMIと呼ぶことはできません。
代用しません。MIのつまみは母指と示指による立方体の保持と抵抗への反応を確認します。握力測定は別の情報として併記できます。
本記事の各肢一律+1方式ではそうなります。素点は0/99です。満点時だけ加点する版もあるため、加点方式を明記してください。1点を随意運動がある証拠とは扱いません。
上肢3項目の得点として記録できます。下肢を測っていなければ、同側得点は計算しません。右・左、上肢・下肢を明記します。
失語の診断名だけで決めず、説明を理解して動作を試せるかを確認します。検査が成立しなければ、0点ではなく理由と観察できた内容を残します。
満点でも巧緻性、感覚、協調性、持久力、バランスなどの問題は残り得ます。目的とする生活動作を別に確認してください。
相談時には、評価の点数だけでなく、現在困っている動作、主治医からの注意事項、使用している装具や補助具を共有してください。筋力と実際の活動の違いを整理することが、練習を考える出発点になります。
本文・図は教育用の編集解説です。公式日本語版の存在・利用許諾は今回確認できていません。配布PDFは原用紙を再現しない独自の記録補助票です。実施・採点では原資料と所属施設の採用版を確認し、版による相違を混在させないでください。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)