お座りで手をつかないと倒れる赤ちゃん|保護反応と体幹の発達
手を使うこと自体は大切な発達であり、そこから少しずつ支え方の選択肢を増やします
「手をついていれば座れるけれど、手を離すと倒れる」「横へ倒れそうになっても手が出ない」——そんな姿を見ると、体幹が弱いのではないかと心配になるかもしれません。ただ、最初から手をついて支えることと、倒れそうなときに手を出して守ることは、少し役割が違います。この記事では、保護反応にしぼって、家庭で見たいポイントと相談目安を整理します。

手をつかないと倒れるのは遅い?
月齢や座る経験によっては、両手を床について座る姿勢はよく見られます。生後6か月の発達の目安としても、座ったときに両手で支えることが含まれています。つまり、手を使って支えること自体が、すぐに異常を意味するわけではありません。
一方で、月齢が進んでもまったく変化がない、片手を離すとすぐ崩れる、倒れそうなときにどの方向でも手が出ない、いつも同じ側だけ反応しにくいなどが続く場合は、少し丁寧に見ていく価値があります。大切なのは「今できているか」だけではなく、少しずつ変化しているかです。
- 月齢は目安であり、個人差があります
- 早産のお子さんは修正月齢で考えます
- 「座れるか」だけでなく、姿勢を戻す動きや左右差も見ます
- 以前できていた動きが減る場合は、月齢よりも変化そのものを重視します

支持する手と守る手の違い
この記事で一番大切なのは、手をついて支えることと、倒れそうなときに手を出すことを分けることです。見た目はどちらも「手をつく」ように見えますが、役割は同じではありません。
| 支持する手 | 守る手 |
|---|---|
| 最初から床について、座位を保つ | 倒れそうになったときに出て、転倒を防ぐ |
| 支持面を広くして安定をつくる | 新しい支持面を追加して頭や胸を守る |
| 左右の両手を同時に使うことが多い | 倒れる方向へ片手が出ることが多い |
| 安定すると少しずつ手を離せるようになる | 必要なときにすばやく出て、体重を受け止める |
「手を離せない」という心配があっても、それが支持の段階の話なのか、保護反応の話なのかで見方は変わります。保護者の方が見分けにくいときは、座っているだけのときと、玩具に手を伸ばしたり少し傾いたりしたときを分けて観察すると整理しやすくなります。
STROKE LABの視点|手が出たかだけではなく、その前後のつながりを見る
保護反応は、腕だけの反応ではありません。視線が向き、頭が立ち直り、胸と骨盤が傾きに合わせて調整し、最後に肩や肘、手が働いて床へつながります。だからこそ、手が出ない=腕が弱い、体幹が弱いと単純には言えません。
私たちが見るのは、次のような流れです。
また、手が出るタイミングと、手をついたあとに戻れるかも重要です。床につけたとしても、遠すぎる位置や近すぎる位置ではうまく支えられません。手で体重を受け止め、そのあとに顔や胸を守れるか、必要なら座位へ戻れるかまで見ていくと、今どの力が育っているのかが分かりやすくなります。
専門評価でも、私たちはいきなり「訓練」を勧めるのではなく、まず不安を観察へ翻訳します。家庭では生活を守る工夫を、医療・健診では診断や全身状態の確認を、そして必要に応じて専門評価では姿勢の連鎖を確認する、という役割分担が安心につながります。

研究でわかっていること
赤ちゃんのお座りは、ただ筋力がつけば完成するものではありません。座ったまま少し傾く、玩具へ手を伸ばす、手で支える、姿勢を戻すといった経験の中で、課題に合わせた姿勢調整が少しずつ育っていきます。
座位の経験や手を伸ばす課題に関する研究では、赤ちゃんは環境や課題に合わせて頭・体幹の使い方を変えながら座位を学習していくことが示されています。つまり、座位は「止まっていられるか」だけでなく、動きながら保てるかが大切です。
出典:Kyvelidou A, et al. Pediatric Research. 2009;65(5):553-558./van Balen LC, et al. Experimental Brain Research. 2012;220(2):109-119.
限界:これらの研究は、健康な乳児の姿勢調整や学習の特徴を示したもので、家庭で特定の練習を行えば保護反応が早く完成すると断定するものではありません。個人差が大きく、健診や医学的評価の代わりにはなりません。
家庭でできること|反応を試すより、自然な姿勢経験を増やす
家庭では、保護反応を「検査」のように確かめる必要はありません。強く押したり、急に傾けたりせず、安全な床で、自然に手や体を使う機会を増やすことが大切です。
| おすすめの関わり | 避けたい関わり |
|---|---|
| 安全な床で短時間座る | ソファやベッドの上で練習する |
| 少し左右に置いた玩具へ手を伸ばす | 強く押して反応を見る |
| 横向き、寝返り、腹ばいも続ける | 座位だけを長時間繰り返す |
| 左右の違いを動画に残す | 泣いていても続ける |
倒れそうな場面を無理に作るより、玩具へ手を伸ばす、少し向きを変える、横向きから戻るなどの中で、姿勢調整が増えていくかを見守るほうが安全です。家庭では生活を守る工夫を、医療・健診では全身状態や発達の確認を先に考えることが基本です。

相談目安と健診相談メモ
| 経過を見やすい様子 | 相談したい様子 |
|---|---|
| 両手をついて座り、少しずつ片手を離す場面が増える | 月齢が進んでも変化がほとんどない |
| 倒れそうなときに、方向によっては手が出る | どの方向へ倒れても手がほとんど出ない |
| 日によって左右差が小さく変わる | いつも同じ側だけ出にくい、同じ側の手を使いにくい |
| 疲れると崩れやすいが、休むと戻る | 強い反り返り、突っぱり、極端な柔らかさがある |
| 新しい動きが少しずつ増えている | 以前できていた動きが減った、急な片側の動かしにくさがある |
- 在胎週数と修正月齢
- いつ頃から座位をとるようになったか
- 両手をついて座るか、片手を離せるか
- 前・横・後ろのどの方向で崩れやすいか
- 左右差があるか
- 寝返り、腹ばい、手伸ばしの様子
- 短い動画を正面・左右から撮っておく
| 月齢 | 見られやすい姿 |
|---|---|
| 6〜7か月頃 | 手で支えながら座る、短時間の座位が増える |
| 7〜9か月頃 | 片手で支え、反対の手を使う場面が増える |
| 8〜10か月頃 | 支えなし座位が安定し、姿勢の崩れに合わせた調整が増える |
月齢は目安です。早産のお子さんは修正月齢で見ます。できる・できないだけでなく、変化の方向を見ることが大切です。
よくある質問
記事だけでは判断できない左右差や姿勢の崩れ方があるときは、まず健診や小児科へご相談ください。そのうえで、動きの見え方を整理したい場合は、初回相談をご利用いただけます。

「今できないこと」ではなく「次に育とうとしていること」を見ます。
STROKE LABでは、姿勢や動作を細かく見ながら、保護者の不安を整理し、家庭で見守れるポイントを分かりやすくお伝えします。診断や医学的判断は主治医と連携しながら、生活に根ざした視点で併走します。

- Centers for Disease Control and Prevention. Developmental Milestones. 6 Months / 9 Months.
- WHO Multicentre Growth Reference Study Group. Acta Paediatrica Supplement. 2006;450:86-95.
- Kyvelidou A, et al. Pediatric Research. 2009;65(5):553-558.
- van Balen LC, et al. Experimental Brain Research. 2012;220(2):109-119.
- 国立成育医療研究センター. 乳幼児健診身体診察マニュアル.
- こども家庭庁. 令和5年乳幼児身体発育調査.
- 金子唯史. 『脳の機能解剖とリハビリテーション』医学書院, 2024.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)