6か月で寝返りしない赤ちゃん|運動発達の遅れをどう見るか
月齢だけで結論を出さず、動きの種類が増えているか、左右へ広がっているかを捉えます
「もう6か月なのに、まだ寝返りをしない」——周りの赤ちゃんと比べると、不安になるのは自然なことです。ただ、発達は寝返りの有無だけでは判断できません。大切なのは、横向きになろうとする、手を伸ばす、足を持ち上げる、うつ伏せで支えるなど、寝返りへ向かう動きが増えているかを見ることです。月齢データ、安全な家庭での関わり、相談の目安を整理します。

6か月で寝返りしないのは遅い?
同じ月齢の赤ちゃんが次々と寝返りを始めると、「うちの子だけ遅いのでは」と感じることがあります。けれども、発達は一つの動作だけで決められるものではありません。
まず見るのは、寝返りが完成しているかではなく、寝返りへ向かう変化が増えているかです。
令和5年乳幼児身体発育調査では、「ねがえりができる」と回答された割合は、5〜6か月未満で89.7%、6〜7か月未満で97.6%でした。つまり、多くの赤ちゃんがこの時期までに寝返りを経験しますが、全員が同じ日に獲得するわけではありません。
この数字は集団の通過率であり、個々の赤ちゃんを診断する境界線ではありません。また、調査票は「ねがえりができる/できない」という回答で、寝返りの方向や動作の質までは示していません。月齢の数字と、目の前の赤ちゃんの動きは分けて見る必要があります。
予定日より早く生まれた場合、暦月齢だけでなく、予定日を基準にした修正月齢で発達を見ることがあります。健診や小児科で、どちらの月齢を基準に観察するか確認してください。
「寝返り」の方向と、月齢データを分ける。
日本で「寝返り」というと、仰向けからうつ伏せになる動きを思い浮かべることが多い一方、英語圏の発達チェックでは方向を明示することがあります。CDCの6か月マイルストーンに掲載されているのは、うつ伏せから仰向けへ転がる動きです。同じページには、うつ伏せで腕を伸ばして体を支えること、手で支えて座ることも挙げられています。
CDCは、マイルストーン表を診断やスクリーニング検査として使うものではないと説明しています。掲載される項目は、多くの子ども、およそ75%以上がその年齢までに示す動きです。できない項目があるときは、単独で診断するのではなく、保護者と医療者が詳しく話すきっかけにします。
| 見方 | 確認する内容 |
|---|---|
| 国内の通過率 | 「ねがえりができる」と回答した割合。方向や動作の質は示していない |
| CDCの6か月項目 | うつ伏せから仰向けへ転がる、うつ伏せで腕を伸ばして支える、手で支えて座る |
| 家庭での観察 | 仰向けから/うつ伏せから、右へ/左へを分け、どこまで動きが進むかを見る |

寝返りの前に育つ、5つの動き。
寝返りは、体を横へ倒せば完成する単純な動作ではありません。興味のある方向を見ることから始まり、手を伸ばし、体重を移し、胸と骨盤の向きを変え、最後にうつ伏せで姿勢を支え直します。
同じ「寝返りをしない」でも、視線だけで止まる赤ちゃん、横向きまで進む赤ちゃん、骨盤は回るのに肩と腕が残る赤ちゃんでは、必要な環境が異なります。完成動作の有無だけでは、この違いは見えません。
さらに、寝返り直前だけでなく、寝返り直後に頭・胸・腕で姿勢を支えられるかを見ます。うつ伏せで安定できないと、赤ちゃん自身が回転を選びにくくなることがあるためです。

まだ寝返りをしない背景は、一つではありません。
赤ちゃんが寝返りをしない理由を、体重、性格、練習不足など一つに決めることはできません。覚醒状態、興味、姿勢の経験、床面、衣服、首や肩の支持、体幹の動き、左右差など、複数の条件が重なります。
| 観察される様子 | 見方 |
|---|---|
| 玩具を見るが、体がついてこない | 視線と頭の動きが、手のリーチや胸の回旋につながるかを見る |
| 足は上がるが横向きにならない | 骨盤が傾き、左右への体重移動へつながるかを見る |
| 横向きになるが戻ってしまう | 横向きで上側の手を使えるか、下側の肩がつぶれすぎないかを見る |
| 骨盤は回るが腕が残る | 胸郭の回旋、上側の手のリーチ、下側の肘と手の位置を見る |
| うつ伏せになるとすぐ泣く | 頭と胸の高さ、腕の支持、呼吸、疲れ方を確認する |
| 一方向だけ動き始める | 視線、向きやすい方向、リーチ、体重移動の左右差を確認する |
健康な0〜12か月児を対象とした系統的レビューでは、起きていて見守り下で行ううつ伏せ遊びは、粗大運動の発達や、寝返りを含む姿勢移動とよい関連が報告されました。
ただし、完成した寝返りを大人が何度も行わせれば早く獲得できる、という研究ではありません。赤ちゃん自身が頭を上げ、手を使い、周囲へ興味を向ける姿勢経験を増やすことが大切です。
限界:健康な乳児を中心とした観察研究が多く、うつ伏せ時間だけが発達を決めるとは言えません。寝返りをしない原因を診断する研究ではなく、医療評価の代わりにはなりません。
家庭では、完成させるより「動きたくなる条件」をつくる。
家庭での目標は、寝返りの回数を増やすことではありません。安全な床面で、赤ちゃんが自分から見て、手を伸ばし、横向きになり、姿勢を変える機会をつくります。短時間でも、機嫌よく試せることを優先します。
- 仰向けで足を持ち上げ、手を足へ伸ばす
- 真横ではなく、斜め方向の玩具へ手を伸ばす
- 背中へ軽く手を添え、横向きで玩具を見る
- 胸の下を支えた短いうつ伏せで遊ぶ
- 赤ちゃんが動き始めたときだけ、骨盤や背中を少し支える
- 腕や脚を強く引いて回転を完成させる
- 泣いている状態で何度も反復する
- ソファ、ベッド、台の上で練習する
- うつ伏せのまま目を離す
- 睡眠環境に枕、クッション、位置保持具を残す
寝返りを促すために、睡眠中の姿勢をうつ伏せへ変えることはしません。赤ちゃんが自分で寝返りを始める時期は、ベッド周囲の柔らかい物を除き、安全な睡眠環境を改めて確認してください。

相談の目安と、専門評価でわかること。
寝返りをしていないという一点だけで急いで結論を出す必要はありません。一方で、他の姿勢や手足の動きにも気になる点が重なる場合は、健診まで長く待たず、小児科や地域の相談窓口へ共有することが大切です。
| 経過を記録しながら相談しやすい様子 | 早めに相談したい様子 |
|---|---|
| 横向きになろうとする動きが増えている | 横向きになろうとする動きがほとんどない |
| 左右へ顔を向け、両手で玩具へ伸ばす | 一方の手足をほとんど使わない |
| 足を持ち上げ、手を足へ伸ばす | 手足の自発的な動きが極端に少ない |
| うつ伏せで頭や胸を持ち上げる | 首が安定しにくい、うつ伏せで頭を上げにくい |
| 機嫌や玩具の位置で動きが変わる | 強いこわばり、極端な柔らかさが続く |
| 新しい姿勢や遊びが少しずつ増えている | 以前できていた動きをしなくなった |
顔色が悪い、呼吸が苦しそう、哺乳量が急に減った、けいれんのような動きがある、呼びかけへの反応が弱い、急に片側の手足を使わなくなった場合は、寝返りの経過を観察するのではなく医療機関へ相談してください。
専門評価では、左右それぞれで視線と頭が向くか、上側の手が伸びるか、胸郭と骨盤がどの順番で回るか、下側の腕を抜けるか、寝返り後に頭と胸を支えられるかを確認します。玩具の位置や床面など、条件を一つだけ変えたときの反応も見ます。
その結果を、家庭で続けられる短い遊びへ置き換え、同じ動作を一定期間後に見直します。診断や医学的検査は小児科・専門医が担い、リハビリでは姿勢と動きの側から併走します。
- 在胎週数と修正月齢
- 首が安定してきた時期
- 左右それぞれへ顔を向けるか
- 左右の手で玩具へ伸ばすか
- 足を持ち上げる、手を足へ伸ばすか
- うつ伏せで頭・胸を上げ、腕で支えられるか
- 仰向けから横向きになる様子を、左右それぞれ動画で撮る
健診や小児科で医学的な確認を行ったうえで、姿勢や動きの左右差、家庭での遊び方を詳しく整理したい方は、小児リハビリの相談をご利用ください。
よくある質問。
Q. 6か月で寝返りをしないのは遅いですか?
Q. うつ伏せから仰向けに戻る動きも寝返りですか?
Q. 寝返りの練習は毎日した方がよいですか?
Q. 体重が重いと寝返りが遅くなりますか?
Q. 寝返りをしないままお座りすることはありますか?
Q. どのような様子があれば小児科や専門家へ相談すべきですか?
6か月で寝返りをしていないことだけで、発達の遅れとは判断できません。視線、リーチ、横向き、胸郭と骨盤の回旋、うつ伏せでの支持が少しずつ増えているかを見ます。気になる所見が重なる場合は、医療・健診を先に、姿勢や家庭での関わりは専門家と一緒に整理することが安心です。
わが子を知る観察へ。

赤ちゃんの発達を月齢表と比べるほど、「できないこと」が大きく見えることがあります。しかし、発達には完成前の小さな変化があります。
私たちは、寝返りをさせることよりも、赤ちゃんがどこを見て、どの手を伸ばし、どこまで体重を移せるかを丁寧に見ます。その観察から、家庭で無理なく続けられる遊びを組み立てます。
まずは小児科や健診で医学的な確認を行い、そのうえで姿勢や動きの見方を整理したいときはご相談ください。
代表取締役 金子 唯史

動きを「できる・できない」で終わらせず、姿勢、感覚、運動の連鎖として見る視点をまとめた専門書です。乳児の発達を見る際にも、一つの動作を複数の条件へ分ける考え方が土台になります。
- 首すわり・お座り・歩き始めが遅い|運動発達の遅れを神経の視点で見る
- 寝返りが片方向だけの赤ちゃん|左右差と体の使い方をどう見るか
- うつ伏せで頭を上げにくい赤ちゃん|首・肩・背中の発達を促す関わり
- うつ伏せで腕が前に出ない赤ちゃん|肘支持と肩甲帯の育て方
本記事は、国内外の公的情報と研究、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。発達の診断や治療に代わるものではありません。お子さんの状態についての判断は、必ず小児科医・健診担当者へご相談ください(最終確認日:2026年7月27日)。
- こども家庭庁:令和5年乳幼児身体発育調査(運動機能通過率:5〜6か月未満89.7%、6〜7か月未満97.6%)
- CDC. Milestones by 6 Months.(うつ伏せから仰向けへの回転、うつ伏せでの手支持など)
- CDC. Key Points about Developmental Milestone Checklists.(診断・スクリーニング検査ではないこと、75%基準)
- American Academy of Pediatrics. Back to Sleep, Tummy to Play.(睡眠時は仰向け、覚醒時・見守り下でうつ伏せ遊び)
- Hewitt L, Kerr E, Stanley RM, Okely AD. Tummy Time and Infant Health Outcomes: A Systematic Review. Pediatrics. 2020;145(6):e20192168.
- Novak I, Morgan C, Adde L, et al. Early, Accurate Diagnosis and Early Intervention in Cerebral Palsy: Advances in Diagnosis and Treatment. JAMA Pediatrics. 2017;171(9):897-907.(本記事の寝返り未獲得を脳性麻痺と結びつけるものではなく、複数の気になる所見がある乳児を早期評価へつなぐ考え方の参考)
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)