赤ちゃんが片方の手ばかり使う・左右差がある|片麻痺の入口として知っておきたいこと
早すぎる左右差を、足先だけでなく全身の連鎖から見る
おもちゃを出すと、いつも同じ手だけ伸ばす。片方の手は握ったまま、反対の手ばかり口へ持っていく。寝返りや向き癖も一方向に偏っている気がする——。赤ちゃんの左右差は、姿勢や向き癖だけで説明できることもあります。一方で、早い時期から片手だけを使う様子が続く場合、運動発達の左右差を見逃さないことが大切です。

こんな場面で、左右差が気になります。
おもちゃを右側に出しても左手で取りにくる。片方の手は握ったままで、反対の手ばかり口に入れる。抱っこでも片側だけ体を預けにくい。寝返りも同じ方向ばかり。
このような左右差は、姿勢の癖として説明できることもあります。一方で、片側の手が開きにくい、片側だけ動きが少ない、月齢が進んでも左右差が残る場合は、早めに相談してよいサインです。
赤ちゃんは、成長の途中で一時的に向きやすい方向や使いやすい側が見えることがあります。眠い、空腹、機嫌、首の向き、抱っこの支え方によって、片側の手を使いやすく見えることもあります。
ただし、乳児期の早い段階から「いつも片方の手ばかり」「反対の手は握ったまま」「手だけでなく足や寝返りも同じ方向に偏る」という状態が続く場合、単なる利き手ではなく、運動発達の左右差として整理する必要があります。
赤ちゃんに「早い利き手」はあるのでしょうか。
大人には利き手がありますが、赤ちゃんの手の使い方は発達の中で少しずつ変化します。月齢が低い時期は、両手を口へ持っていく、胸の前で手を合わせる、左右から見せたおもちゃに手を伸ばすなど、左右を試しながら使う経験が大切です。
乳児期の手の好みには個人差があります。ただし、片手だけを一貫して使い、もう片方の手が開きにくい・動きにくい・体の近くに残る場合は、「利き手が早い」で済ませず、観察と相談につなげる視点が必要です。
見るべきポイントは、使う手が右か左かではありません。使いにくそうな手があるか、開きにくいか、口へ持っていけるか、体の外側へ伸ばせるか、左右から誘ったときに反応が変わるかを見ます。

左右差を、4つに分けて見ます。
左右差は「手だけ」を見ると見落としやすくなります。手の偏りがある赤ちゃんでは、頭の向き、体幹、骨盤、足の動きにも小さな偏りが重なっていることがあります。家庭では、次の4つに分けて観察します。
片方の手だけ握り込みが強い、親指が中に入りやすい、手のひらを開きにくい場合です。眠いときだけでなく、起きて遊んでいる時にも続くかを見ます。
左右どちらからおもちゃを出しても同じ手で取ろうとする、片方の手が体の近くに残る、片手を口へ持っていきにくい場合です。
いつも同じ方向を向く、寝返りが一方向に偏る、抱っこで片側へ倒れやすいなど、手以外の姿勢の左右差を見ます。
片足だけよく蹴る、片足が伸びやすい、両足を同じように持ち上げにくいなど、上肢だけでなく下肢の動きも合わせて見ます。

片麻痺の入口として知っておきたいこと。
片麻痺とは、体の左右どちらか一側に運動の使いにくさが出る状態です。小児では、出生前後の脳血管障害、脳の形成や発達の問題、周産期の脳損傷など、さまざまな背景で片側の運動発達に差が出ることがあります。
ここで大切なのは、「片手ばかり使う=片麻痺」と決めつけることではありません。むしろ、片麻痺の可能性を過度に怖がるのではなく、早期の左右差を見逃さず、必要な評価と支援につなげるための入口として知っておくことです。
脳性麻痺または高リスク児は、病歴、神経画像、標準化された神経学的評価・運動評価を組み合わせることで、より早期に検出できることが示されています。早期発見の目的は、診断名を急ぐことではなく、発達の可塑性が高い時期に、その子に合った介入へつなぐことです。
特に、12か月未満の明らかな手の好み、4か月以降も続く運動の非対称、手の握り込みなどは、専門家への相談を考えるサインとして扱われます。家庭での観察動画は、こうした評価の入り口として役立ちます。
様子見でよい場合、相談した方がよい場合。
左右差があるように見えても、抱っこの向き、寝る向き、環境の配置で変わることがあります。まずは、左右どちらからも声をかける、左右どちらにもおもちゃを出す、抱っこの向きを変えるなどで、反応が変わるかを見ます。
機嫌のよい時は両手を動かす。左右から誘うと両側に目を向ける。片側の手も開く時間がある。抱っこや寝かせ方を変えると左右差が目立ちにくくなる。
いつも同じ手だけ使う。反対の手が握り込んだまま開きにくい。片側の足の蹴りが少ない。寝返りや向きが一方向に偏る。4か月以降も非対称な動きが続く。哺乳や全身状態にも心配がある。
相談は、病気を決めつけるためではありません。動画やメモを持って小児科・乳幼児健診で相談することで、安心できる場合もあれば、早めにリハビリや発達支援へつながれる場合もあります。
月齢・場面別に、観察するポイント。
手の左右差は、月齢によって見方が変わります。ここでは、保護者が日常で観察しやすい場面を整理します。発達には個人差があるため、表に当てはまるかどうかだけで判断せず、持続性と左右差の強さを見ます。
| 月齢の目安 | 見たいポイント | 相談のヒント |
|---|---|---|
| 0〜3か月 | 両手を体の前で感じる、手を口に近づける、左右に顔を向ける様子。 | 片手だけ強く握る、片側の腕が体の下に入りやすい、頭の向きが極端に偏る場合は相談材料にします。 |
| 4〜6か月 | 両手を口へ持っていく、胸の前で手を合わせる、左右から出したおもちゃに反応する様子。 | 4か月以降も手の握り込みや動きの非対称が続く場合は、動画を残して相談すると安心です。 |
| 7〜9か月 | 片手だけでなく両手でおもちゃを持つ、持ち替える、うつ伏せや座位で手を支える様子。 | 片手だけ使い続ける、反対手を体の下に敷く、手を開きにくい場合は専門評価が有用です。 |
| 10〜12か月 | 両手で遊ぶ、片手で支えながら反対手を使う、左右へ体を向ける様子。 | 明らかな手の好みが強く、片側の手足の使いにくさを伴う場合は、片麻痺を含めた評価につなげます。 |
家庭でできる、やさしい関わり。
家庭での関わりは、「使わない手を無理に使わせる」ことではありません。まず、使いにくい側にも目線と体が向きやすい姿勢を作り、安心して手を出せる環境を整えます。
いつも同じ側から話しかけると、頭と体の向きが偏りやすくなります。左右どちらにも顔を向けられるよう、声やおもちゃの位置を少しずつ変えます。
おもちゃを体の真ん中に出し、両手が近づきやすい姿勢を作ります。手だけでなく、肩と骨盤が安定していると、両手を使いやすくなります。
いきなり使いにくい手だけを使わせず、見やすい位置、届きやすい距離、触りやすいおもちゃから始めます。成功しやすい経験を増やします。
同じ場面を左右から撮ると、専門家へ伝えやすくなります。短い動画でよいので、右から誘った時と左から誘った時を残します。

避けたい関わり。
左右差があると、「使わない手を鍛えないと」と焦りやすくなります。しかし、赤ちゃんにとって不快な強制は、手を使う経験そのものを嫌なものにしてしまうことがあります。
自己判断で使いやすい手を押さえ続ける必要はありません。専門的な方法が必要な場合も、時期や方法を評価したうえで行います。
握り込みを強く開こうとすると、さらに力が入りやすくなることがあります。開くことより、肩・体幹・骨盤が安定した状態を作ることを優先します。
乳児期早期からの強い手の偏りは、発達の左右差を示すことがあります。心配な場合は動画を残し、相談する方が安心です。
手の左右差は、頭の向き、体幹、足の動きとつながっています。手だけを鍛えるのではなく、全身の姿勢連鎖として見ます。
専門家は、どこを見るのか。
専門家は、片方の手を使うかどうかだけを見ているわけではありません。手の開き、肩甲帯、体幹、骨盤、足の動き、感覚、視線、姿勢を変えた時の反応を組み合わせて見ます。
同じおもちゃを右から・左から・中央から提示し、視線、頭の向き、手の伸ばし方がどう変わるかを見ます。
手を開けるか、床や保護者の体に手をつけるか、肩がすくみすぎないかを確認します。手の問題に見えても肩甲帯が関係することがあります。
片側へ倒れやすい、同じ方向へ反る、骨盤が片側に逃げるなど、全身の偏りを見ます。
今できるかどうかだけでなく、数週間〜数か月で両手の使い方が広がっているかを見ます。動画記録は経過を確認する助けになります。
よくある質問。
Q. 赤ちゃんが片方の手ばかり使うのは、利き手ですか?
Q. 何か月頃まで様子を見てよいですか?
Q. 片手を使わないと脳性麻痺ですか?
Q. 家庭では使わない手を無理に使わせた方がよいですか?
Q. 動画を撮るなら、どんな場面がよいですか?
Q. 専門家は何を評価しますか?
STROKE LABでは、左右差の背景まで見ます。
STROKE LABの小児リハビリでは、「片方の手を使っているか」だけでなく、なぜその手を使いやすいのか、もう片方の手が使いにくい背景に何があるのかを丁寧に見ます。手指だけでなく、視線、頭頸部、肩甲帯、体幹、骨盤、足の動きまで、全身の連鎖として整理します。
赤ちゃんの左右差は、早く気づくほど、家庭での関わりを具体的に調整しやすくなります。診断名を急ぐのではなく、「今この子が両側を使いやすくなる入口はどこか」を一緒に探すことが大切です。
脳と姿勢連鎖から整理します。

「片方の手ばかり使う」という気づきは、保護者だからこそ分かる大切な情報です。健診では短時間で見えにくい左右差も、日常の動画や観察から見えてくることがあります。
STROKE LABでは、脳、感覚、肩甲帯、体幹、骨盤、手指を一つの発達連鎖として評価し、家庭での関わりまで具体化します。左右差を不安のまま抱え込まず、まずは動きの質を整理することから始めましょう。
「このまま様子を見てよいのか」「片麻痺の可能性を考えた方がよいのか」と迷われている方は、診断名の前に、姿勢と手の使い方の評価をご検討ください。
代表取締役 金子 唯史

脳の領域別の働きから、臨床で行うリハビリテーション方法を提案する専門書です。赤ちゃんの左右差を「手だけの問題」として見ず、視線、姿勢、感覚、肩甲帯、体幹、手指の発達連鎖として捉えることで、家庭での関わり方が変わります。
本記事は、乳児の手の左右差、片麻痺型脳性麻痺の早期発見、運動発達マイルストーンに関する一般的な情報と、STROKE LABの小児リハビリにおける臨床経験をもとに構成しています(最終確認日:2026年7月7日)。
- AACPDM: Early Detection of Cerebral Palsy Care Pathway
- Novak I, Morgan C, Adde L, et al. Early, Accurate Diagnosis and Early Intervention in Cerebral Palsy. JAMA Pediatrics. 2017.
- Panet-Raymond D. Case 2: The 10-month-old right-hander. Paediatrics & Child Health. 2007.
- CDC: Developmental Milestones by 4 Months
- CDC: Developmental Milestones by 6 Months
- Hornby B, et al. Identifying Opportunities for Early Detection of Cerebral Palsy. 2024.
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。脳の領域別の働きからリハビリテーション方法を提案する専門書として参照。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)