手足を突っ張る・体が硬い赤ちゃん|筋緊張の高さを運動発達から考える
手足の突っ張りは、伸ばす前に「なぜ硬くなるか」を見る
抱っこをすると背中が反る。足をピーンと伸ばす。手をぎゅっと握ったまま開きにくい。おむつ替えや着替えで体が硬く感じる——。赤ちゃんの「突っ張り」や「硬さ」は、保護者にとってとても不安になりやすいサインです。多くの場合、泣く・眠い・驚いたなどの一時的な反応もありますが、いつも硬い、左右差がある、動きの幅が広がらない場合は、運動発達の視点で整理してみることが大切です。

こんな場面で、心配になります。
おむつ替えで足が伸び切って曲げにくい。抱っこすると背中を反らせて、体が板のように硬くなる。手をぎゅっと握って、親指が中に入りやすい。寝かせるとつま先が下に向き、足が交差するように見える。
検索すると「筋緊張」「脳性麻痺」「発達の遅れ」などの言葉が出てきて、不安が一気に強くなることがあります。けれど、赤ちゃんの突っ張りは、場面による一時的な反応なのか、運動発達上のサインなのかを分けて見ることが大切です。
赤ちゃんの体は、大人のように自分で力を抜いたり、姿勢を言葉で調整したりできません。驚いたとき、泣いたとき、眠いとき、抱き上げられたときに、手足へ力が入りやすくなることがあります。これは発達の途中で見られる自然な反応として説明できることもあります。
一方で、体の硬さがいつも強い、左右で動きが違う、月齢が進んでも手足の動きに広がりが出にくい、手を開きにくい、足が交差しやすい、哺乳や体重増加にも心配がある場合は、早めに相談した方が安心です。この記事では、保護者が日常で観察しやすいポイントを、筋緊張と運動発達の視点から整理します。
筋緊張とは、体を動かすための「張り」です。
筋緊張とは、筋肉にある程度の張りがあり、姿勢を保ったり、動き出したりするための準備状態のことです。筋緊張は低すぎても体を支えにくく、高すぎても手足が自由に動きにくくなります。大切なのは、筋緊張を「ある・ない」ではなく、「その子の姿勢や動きにどう影響しているか」で見ることです。
赤ちゃんの筋緊張は、泣く、眠る、空腹、環境の変化、抱っこの支え方、頭の向き、骨盤の位置などで変わります。同じ赤ちゃんでも、落ち着いているときは柔らかいのに、急に抱き上げると足が突っ張ることがあります。つまり、硬さは「筋肉だけの問題」ではなく、脳・脊髄・感覚・姿勢の反応として現れることがあります。
ずっと硬いのか、泣いたときだけ硬いのか。両手両足なのか、片側だけなのか。ゆっくり動かしても硬いのか、急に動かすと強く突っ張るのか。筋緊張の高さを考えるときは、この3つを分けて観察すると、必要な相談や支援につなげやすくなります。

突っ張りを、4つに分けて見ます。
「体が硬い」と一言で言っても、現れ方はさまざまです。足がピーンと伸びる子もいれば、手を握り込む子、背中を反らせる子、抱っこで体を預けにくい子もいます。家庭で見るときは、どの動きに出ているのかを分けて観察します。
おむつ替えで膝が曲げにくい、抱き上げると足が棒のように伸びる、つま先が下に向く、足が交差するように見える場合です。骨盤が後ろに倒れ、背中が反る姿勢と一緒に出ることがあります。
新生児期は手を握ること自体は珍しくありません。ただし、月齢が進んでも片手だけ強く握る、親指が中に入り続ける、手を口へ持っていきにくい、左右で手の開き方が違う場合は観察が必要です。
抱っこで頭が後ろに倒れる、背中が反って丸まりにくい、寝かせると体が弓なりになる場合です。首・背中・骨盤・足が一緒に伸びるパターンとして現れることがあります。
保護者の胸に体を預けにくい、肩がすくむ、足が開きにくい、体の向きを変えると強く嫌がる場合です。筋緊張に加えて、感覚の敏感さや姿勢の支え方も関係します。

筋緊張のうち、痙縮は古くから「速く伸ばすほど抵抗が強くなる」速度依存性の特徴として説明されてきました。これは成人だけでなく、小児の運動を考えるときにも重要な視点です。つまり、硬いからといって強く・速く伸ばすと、かえって体が守ろうとして突っ張りが強く見えることがあります。
また、脳性麻痺などの早期診断では、病歴、神経画像、標準化された神経学的評価・運動評価を組み合わせ、必要な場合は早期介入につなげることが推奨されています。家庭で大切なのは、診断名を決めつけることではなく、「どの場面で、どの動きが、どの程度続いているか」を記録し、専門家へ伝えやすくすることです。
無理に伸ばすと、逆に突っ張ることがあります。
赤ちゃんの手足が硬いと感じると、「伸ばして柔らかくした方がよいのでは」と考えたくなります。しかし、筋緊張が高い場合、速く・強く動かされるほど、体が反射的に守ろうとして抵抗が強くなることがあります。これは、バンドで言えばアンプのゲインが上がりすぎて、小さな入力にも大きく反応してしまう状態に似ています。
家庭でまず目指したいのは、関節を無理やり伸ばすことではありません。赤ちゃんが安心して呼吸し、視線を向け、肩と骨盤が近づき、手足を少しずつ動かせる姿勢を作ることです。力を抜ける姿勢が増えると、突っ張り以外の動きが出やすくなります。
足を無理に開く、膝を急に曲げる、手を強く開く、泣いているのに続ける。赤ちゃんが不快になり、さらに力が入りやすくなることがあります。
肩と骨盤を近づける、背中を少し丸める、足裏を軽く触れさせる、左右どちらにも向ける環境を作る。安心した状態で、動きの選択肢を増やします。
様子見でよい場合、相談した方がよい場合。
赤ちゃんの突っ張りは、状況によって判断が変わります。泣いたときだけ、眠いときだけ、抱き上げた一瞬だけ力が入る場合は、経過を見ながら関わり方を整えることで変化することがあります。一方で、いつも硬い、左右差が強い、月齢とともに動きが広がらない場合は、相談の目安になります。
- 泣いたときや眠いときだけ力が入る
- 抱っこの姿勢を変えると少し力が抜ける
- 左右差は目立たず、両手両足を動かしている
- 機嫌がよい時間には手足の動きが広がる
- 哺乳や体重増加に大きな心配がない
- 体の硬さがいつも強く、抱っこでも力が抜けにくい
- 片手だけ握り込みが強い、片足だけ突っ張る
- 足が交差する、つま先が強く伸びる状態が続く
- 首すわり・寝返り・手を伸ばす動きが気になる
- 哺乳、むせ、体重増加、全身状態にも心配がある
「これくらいで相談してよいのかな」と迷う段階でも、動画やメモを持って乳幼児健診や小児科で相談して構いません。早く相談することは、病気を決めつけることではありません。安心材料を増やし、必要な支援に早くつながるための行動です。
月齢と場面で、見え方は変わります。
赤ちゃんの発達は個人差があります。同じ「硬い」でも、新生児期の反射的な動き、2〜4か月頃の姿勢の変化、寝返りや手を伸ばす準備の中で出る力の入り方では意味が変わります。ここでは、月齢ごとに観察しやすい視点を整理します。
| 月齢の目安 | 見たいポイント | 相談のヒント |
|---|---|---|
| 0〜2か月 | 手足を左右とも動かすか。抱っこで少し丸まれるか。強い反り返りが続かないか。 | 左右差、哺乳不良、極端な反り返り、泣き続ける不快感があれば相談。 |
| 3〜4か月 | 手を口へ持っていく、胸の前で手を合わせる、頭を左右に向ける動きが増えるか。 | 片手だけ使わない、手を開きにくい、足の突っ張りが常に強い場合は相談。 |
| 5〜6か月 | 寝返りの準備、手を伸ばす、足を口へ近づける、うつ伏せで肘をつく動きが見られるか。 | 体が反って寝返りが一方向だけ、足が交差する、手の左右差が目立つ場合は相談。 |
| 7か月以降 | 座る、寝返り返り、ずりばいの準備で、手足を分けて使えるか。 | つま先立ち様の突っ張り、片側への偏り、座位で強く反る場合は専門評価が有用。 |
家庭でできる、やさしい関わり。
家庭での関わりは、硬いところを直接伸ばすより、赤ちゃんが力を抜きやすい条件を整えることから始めます。ポイントは、肩と骨盤が離れすぎないこと、背中が反りすぎないこと、左右どちらにも顔を向けやすいこと、手足が安心して動かせることです。
頭だけを後ろへ倒さず、肩と骨盤が近づくように支えます。足がピーンと伸びる場合は、膝を無理に曲げるのではなく、骨盤を少し丸めるように抱くと力が抜けやすいことがあります。
仰向けで反りやすい場合は、丸めたタオルで背中や骨盤の横を軽く支え、真正面だけでなく左右へ視線を向けやすい環境を作ります。タオルは高くしすぎず、必ず見守りながら使用します。
足が突っ張る子は、空中で足が伸び続けるより、足裏がタオルや保護者の手に軽く触れる方が落ち着くことがあります。押し返させるのではなく、足の場所が分かる程度の軽い接触にします。
顔、声、おもちゃを左右どちらにも出して、頭や目がどちらにも向けるかを見ます。片側だけ極端に向きにくい、片手だけ開きにくい場合は、無理に向けず相談の材料にします。

避けたい関わり。
筋緊張が高い赤ちゃんに対しては、「たくさん動かせば柔らかくなる」と考えすぎないことが大切です。刺激が強すぎると、赤ちゃんは体を守るためにさらに力を入れることがあります。
泣き続けているときは、筋緊張も高まりやすくなります。まず落ち着ける姿勢に戻し、短く、やさしく、安心できる条件から再開します。
股関節や膝を急に開いたり曲げたりすると、反射的な抵抗が出ることがあります。おむつ替えでは、足首を引っ張るより、骨盤ごと軽く横へ向ける方が楽な場合があります。
筋緊張の高さは筋力不足だけでは説明できません。力を入れる経験ばかり増えると、かえって同じ突っ張りパターンを使いやすくなることがあります。
SNSや動画の情報は参考になりますが、赤ちゃんの月齢、出生歴、左右差、哺乳、全身状態によって見方は変わります。不安が続く場合は、動画を撮って専門家に見せる方が安全です。
専門家は、どこを見るのか。
専門家は、赤ちゃんの体が硬いか柔らかいかだけを見ているわけではありません。姿勢を変えたときに緊張がどう変わるか、左右差があるか、手足を分けて動かせるか、視線や頭の向き、呼吸、哺乳、保護者の抱き方まで含めて評価します。
仰向け、横向き、抱っこ、うつ伏せなどで、手足の突っ張りがどう変わるかを見ます。姿勢を整えるだけで力が抜ける場合、家庭での関わりに反映できます。
片手だけ握る、片足だけ突っ張る、片側へ寝返りやすい、片側を見にくいなど、左右の違いを確認します。早期の左右差は、運動発達を見るうえで重要な手がかりになります。
ゆっくり動かしたときと、少し速く動かしたときで抵抗が変わるかを見ます。家庭では無理に試す必要はありませんが、専門評価では緊張の性質を見分ける重要な視点です。
同じ突っ張りだけでなく、手を開く、足を曲げる、体を丸める、左右を見る、手を口へ持っていくなど、別の動きが増えているかを見ます。
よくある質問。
Q. 手足を突っ張るだけで、発達の遅れですか?
Q. 家でストレッチをした方がよいですか?
Q. 足をピーンと突っ張るのは、脳性麻痺のサインですか?
Q. 抱きにくい赤ちゃんは、筋緊張が高いのでしょうか?
Q. どんな場合に専門家へ相談した方がよいですか?
Q. 家庭では何から始めればよいですか?
STROKE LABでは、硬さの背景まで見ます。
STROKE LABの小児リハビリでは、「体が硬いかどうか」だけでなく、なぜその突っ張りが出ているのかを丁寧に見ます。脳と脊髄の反応、感覚の受け取り方、肩甲帯と骨盤の位置、左右差、手足の使い方、保護者の抱き方まで含めて整理します。
赤ちゃんの発達は一人ひとり違います。だからこそ、平均と比べて焦るより、「今この子にとって、力が抜けやすく、動きやすい入口はどこか」を見つけることが大切です。健診や小児科での相談とあわせて、家庭での関わり方を具体的に整理したい場合は、専門評価をご検討ください。
筋緊張と姿勢の視点から見つけます。

健診や病院で「大丈夫」と言われることは、保護者にとって大きな安心材料です。一方で、毎日お子さんを見ている中で生まれる小さな違和感や不安も、決して軽く扱うものではありません。
STROKE LABでは、手足だけを見るのではなく、脳、脊髄、感覚、肩甲帯、体幹、骨盤までを一つの姿勢連鎖として評価します。手足を突っ張る背景を分解し、今のお子さんが安心して動ける入口を一緒に探すことを大切にしています。
「このまま様子を見てよいのか」「家庭では何を見ればよいのか」と迷われている方は、診断名を急ぐ前に、姿勢と動きの観察から整理してみてください。
代表取締役 金子 唯史

脳の領域別の働きから、臨床で行うリハビリテーション方法を提案する専門書です。手足の突っ張りを「筋肉の硬さ」だけで判断せず、感覚入力、姿勢連鎖、脊髄反射、運動発達の変化として捉えることで、家庭での関わり方が変わります。
本記事は、乳児の運動発達、筋緊張、早期相談に関する一般的な情報と、STROKE LABの小児リハビリにおける臨床経験をもとに構成しています(最終確認日:2026年7月7日)。
- CDC: Developmental Milestones by 2 Months
- CDC: Developmental Milestones by 4 Months
- CDC: Developmental Milestones by 6 Months
- WHO: Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep for children under 5 years of age
- Trompetto C, Marinelli L, Mori L, et al. Pathophysiology of Spasticity: Implications for Neurorehabilitation. BioMed Research International. 2014.
- Novak I, Morgan C, Adde L, et al. Early, Accurate Diagnosis and Early Intervention in Cerebral Palsy. JAMA Pediatrics. 2017;171(9):897-907.
- AACPDM: Early Detection of Cerebral Palsy Care Pathway
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。脳の領域別の働きからリハビリテーション方法を提案する専門書として参照。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)