【2026年版】脳卒中の評価法SIASとは?評価項目・評価表・カットオフ・使い方を徹底解説 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2026年版】脳卒中の評価法SIASとは?評価項目・評価表・カットオフ・使い方を徹底解説



SIAS記事(修正版)

今回は、脳卒中患者の機能障害を9領域・22項目・76点満点で包括的に定量化できるSIAS(脳卒中機能評価法)について、開発背景から全22項目の採点基準・臨床解釈・介入戦略まで徹底解説します。Fugl-Meyer・Brunnstromでは評価できない感覚・体幹・言語・非麻痺側機能を一度に評価できる日本発の世界標準ツールです。

SIAS(脳卒中機能評価法)の実施方法を動画で確認できます。

SIAS(Stroke Impairment Assessment Set:脳卒中機能評価法)は、千野直一・出江紳一ら慶應義塾大学リハビリテーション科グループが1993年に開発した、脳卒中後の機能障害を9領域・22項目・76点満点で定量評価する包括的評価ツールです。
運動機能だけでなく感覚・体幹・視空間認知・言語・非麻痺側機能を約10分で一度に評価でき、急性期ベッドサイドから生活期まで一貫した機能モニタリングが実現します。各項目は3点または5点満点(高得点=機能良好)で採点し、一部項目にはより詳細な1A・1Bなどのサブカテゴリーが設けられています。

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📊 SIAS:臨床家が必ず知っておくべき数字と事実

  • 正式名称:Stroke Impairment Assessment Set(脳卒中機能評価法)
  • 開発者・年:千野直一・出江紳一ら(慶應義塾大学リハビリテーション科)1993年
  • 項目数・配点:9領域・22項目 / 満点76点(高得点=軽度障害・機能良好)
  • 配点の種類:運動機能5項目=各0〜5点(6段階)、その他17項目=各0〜3点(4段階)。一部項目(手指テスト・筋緊張・腱反射・言語)には1A・1B・1Cのサブカテゴリーあり
  • 所要時間:約10分(急性期ベッドサイドでも実施可能・専門器具不要)
  • 評価領域:①麻痺側運動機能 ②筋緊張 ③腱反射 ④感覚(触覚・位置覚)⑤関節可動域 ⑥疼痛 ⑦体幹機能 ⑧視空間認知 ⑨言語機能 ⑩非麻痺側機能
  • 信頼性:評価者間Kappa係数 0.83〜0.95、Spearman相関 0.84〜0.93(Chino et al., Am J Phys Med Rehabil. 1994)
  • 重症度の目安(参考):≦30点=重度 / 31〜50点=中等度 / ≧51点=軽度(※各施設基準に従ってください)
  • 必要な道具:反射ハンマー・ピンまたは爪楊枝(感覚用)・50cmテープ(視空間認知用)・握力計(任意)

SIAS(脳卒中機能評価法)とは ― 開発背景・9領域の全体像

SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)は、1993年に千野直一・出江紳一らを中心とした慶應義塾大学リハビリテーション科グループが開発した日本発の世界標準評価ツールです(Chino N, et al. Am J Phys Med Rehabil. 1994;日本リハビリテーション医学会誌. 1994)。

🔬 なぜSIASが必要だったのか ― 開発の背景

1990年代以前の脳卒中リハビリ評価は「FIMなどのADL評価」と「Brunnstromステージのような運動機能単独評価」に二極化しており、「どの機能障害がADL制限の主因か」を一つのツールで特定することが困難でした。

開発者らは「脳卒中は運動機能だけが障害されるわけではない」という臨床的事実に立脚し、身体機能障害(インペアメント)の全領域を一度に・定量的に・短時間で評価することを目的としてSIASを設計しました。約10分で実施できる点、ベッドサイドでも使用可能な点が実臨床への普及を後押ししました。

また、Brunnstromステージでは同一ステージ内に留まる患者の回復を捉えられない問題がありましたが、SIASは同一BRSステージの患者を3〜4つの異なるレベルに細分化できることが示されており、回復の微細な変化検出に優れています(Chino et al., 1994)。

SIASの9領域・22項目と配点の全体像

項目番号 評価項目 配点 最大点
① 麻痺側運動機能(Motor Function)
1 上肢近位テスト(knee-mouth test) 0〜5点 5点
2 上肢遠位テスト(finger-function test)※1A/1B/1C 0〜5点 5点
3 下肢近位テスト(股)(hip-flexion test) 0〜5点 5点
4 下肢近位テスト(膝)(knee-extension test) 0〜5点 5点
5 下肢遠位テスト(foot-pat test) 0〜5点 5点
② 筋緊張(Muscle Tone)
6 上肢筋緊張(U/E muscle tone)※1A/1B 0〜3点 3点
7 下肢筋緊張(L/E muscle tone)※1A/1B 0〜3点 3点
③ 腱反射(Deep Tendon Reflex)
8 上肢腱反射(biceps or triceps DTR)※1A/1B 0〜3点 3点
9 下肢腱反射(PTR or ATR)※1A/1B 0〜3点 3点
④ 感覚(Sensation)
10 上肢触覚(U/E light touch:手掌) 0〜3点 3点
11 下肢触覚(L/E light touch:足底) 0〜3点 3点
12 上肢位置覚(U/E position:母指or示指) 0〜3点 3点
13 下肢位置覚(L/E position:母趾) 0〜3点 3点
⑤ 関節可動域(Range of Motion)
14 上肢ROM(肩関節他動外転角度) 0〜3点 3点
15 下肢ROM(足関節他動背屈角度) 0〜3点 3点
⑥ 疼痛(Pain)
16 疼痛(脳卒中に由来する疼痛) 0〜3点 3点
⑦ 体幹機能(Trunk Control)
17 垂直性テスト(verticality test) 0〜3点 3点
18 腹筋テスト(abdominal MMT) 0〜3点 3点
⑧ 高次脳機能(Higher Brain Function)
19 視空間認知(visuo-spatial deficit:線分二等分テスト) 0〜3点 3点
20 言語(speech:失語症評価)※1A/1B 0〜3点 3点
⑨ 健側(非麻痺側)機能(Non-paretic Function)
21 握力(grip strength:健側) 0〜3点 3点
22 健側大腿四頭筋力(quadriceps MMT) 0〜3点 3点
合計(22項目) 76点

💡 SIAS採点の基本原則と配点の計算

高得点=軽度障害(機能良好)、0点=最重度障害が基本原則です。運動機能5項目(項目1〜5)は各0〜5点の6段階、残り17項目は各0〜3点の4段階で採点します。

配点計算:運動機能(5×5=25点)+筋緊張(3×2=6点)+腱反射(3×2=6点)+感覚(3×4=12点)+ROM(3×2=6点)+疼痛(3点)+体幹(3×2=6点)+高次脳機能(3×2=6点)+健側(3×2=6点)=合計76点

1A・1B・1Cサブカテゴリーについて:手指テスト(項目2)・筋緊張(項目6・7)・腱反射(項目8・9)・言語(項目20)では「1点」の中にサブカテゴリー(1A・1B・1C)が設定されています。スコア計算上はいずれも1点ですが、障害の種類・パターンを臨床的に詳細記録するために使用します。

専門家向け:SIASの国際的位置づけと他言語版・主要研究

SIASは英語版(SIAS-E)が存在し、国際的な研究でも使用されています。原著はChino N et al.(Am J Phys Med Rehabil. 1994;73(6):383-392)と千野直一ら(日本リハビリテーション医学会誌. 1994;30(5):310-315)の2論文として発表されました。

FIMとの相関研究では、SIAS総スコアとFIM総スコアのPearson相関はr=0.72〜0.85(複数研究の範囲)、特に「SIAS運動スコア+体幹スコア」の組み合わせがFIM移動項目の予測に有用です。SIASは機能障害(インペアメント)を評価するものであり、FIM(活動制限評価)との組み合わせにより「どの機能障害がどのADL制限につながっているか」を分析する縦断的フレームワークとして機能します。

発症2〜4週時点の運動サブスコアと退院時歩行自立度の相関についても複数の研究報告があり、特に「下肢近位テスト(股関節屈曲)≧3点かつ体幹スコア≧2点」の組み合わせが自立歩行獲得の有力な予測パターンとして注目されています。

SIAS 22項目の詳細な実施方法と採点基準

各項目は高得点=軽度または正常・低得点=重度障害で採点します。0点は「全く機能しない、または評価不能」を意味します。1A・1Bなどのサブカテゴリーはスコア計算上はすべて1点ですが、障害パターンの臨床記録として重要です。評価中は代償動作・異常パターンも記録として残してください。

領域 1

麻痺側運動機能(Motor Function)— 項目1〜5

随意運動の質・量・代償の有無を上肢近位・遠位・下肢近位(股)・近位(膝)・遠位に分けて評価します。全項目0〜5点の6段階で採点します。3〜5点の基準は項目1(knee-mouth test)の定義と同一です。

1

上肢近位テスト(knee-mouth test)

姿勢座位
配点0〜5点
回数3回繰り返す
課題内容患肢の手部を対側膝(大腿)上より挙上し、手部を口まで運ぶ(肩は90°まで外転させる)。膝上まで戻す。拘縮存在時は可動域内での運動をもって課題可能と判断。

点数 採点基準
5点 健側と変わらず、正常
4点 課題可能。軽度のぎこちなさあり
3点 課題可能。中等度のあるいは著明なぎこちなさあり
2点 肩肘の共同運動があるが手部が口に届かない
1点 肩のわずかな動きがあるが手部が乳頭に届かない
0点 全く動かない
【臨床的意義】 肩関節屈曲・肘屈曲の協調的随意運動を評価します。代償パターン(体幹の側屈・肩甲骨の過剰挙上・鼻口部への接近のみ)を観察・記録することで、Brunnstromでは捉えにくい「質的な運動変化」を追跡できます。3〜5点の基準はほかの運動機能項目(3〜5)でも共通して用いられます。急性期1〜2点から回復期3〜4点への移行は歩行・ADL回復の先行指標として有用です。

2

上肢遠位テスト(finger-function test)※1A・1B・1Cサブカテゴリーあり

姿勢座位または仰臥位
配点0〜5点(1点はサブカテゴリー1A・1B・1Cで詳細記録)
課題内容手指の分離運動を、母指〜小指の順に屈曲、小指〜母指の順に伸展することにより行う

点数 採点基準
5点 健側と変わらず、正常
4点 課題可能。軽度のぎこちなさあり
3点 課題可能(全指の分離運動が十分な屈曲伸展を伴って可能)。中等度のあるいは著明なぎこちなさあり
2点 全指の分離運動は可能なるも屈曲伸展が不十分である
1点 1A:わずかな動きがある。または集団屈曲可能
1B:集団伸展が可能
1C:分離運動が一部可能
0点 全く動かない
【臨床的意義・サブカテゴリーの使い方】 1Aは最も重度(集団屈曲のみ)、1Bは伸展方向の出現(痙縮優位から離脱のサイン)、1Cは分離運動の萌芽を示します。スコアの計算上はすべて「1点」ですが、1A→1B→1C→2点という回復経過をサブカテゴリーで追跡することで、Brunnstromステージの変化では捉えられない細かな進歩を記録・共有できます。手指の個別伸展は皮質脊髄路(直接路)の機能を最もよく反映します。

3

下肢近位テスト(股)(hip-flexion test)

姿勢座位(必要ならば座位保持の介助可)
配点0〜5点
課題内容股関節を90°より最大屈曲させる。3回行う。

点数 採点基準
5点 健側と変わらず、正常
4点 課題可能。軽度のぎこちなさあり
3点 課題可能。中等度のあるいは著明なぎこちなさあり
2点 股関節の屈曲運動あり、足部は床より離れるが十分ではない
1点 大腿にわずかな動きがあるが足部は床から離れない
0点 全く動かない
【臨床的意義】 腸腰筋の随意収縮を評価します。「足部が床から離れるか(2点以上)」が大きな分岐点です。2点はBrunnstrom III〜IVステージの共同運動優位期に相当することが多く、より分離した運動の促通へ介入方針を立てるサインとなります。歩行開始判断にも重要な項目です。

4

下肢近位テスト(膝)(knee-extension test)

姿勢座位(膝関節90°屈曲位、必要ならば座位保持の介助可)
配点0〜5点
課題内容膝関節を90°屈曲位から十分伸展(−10°程度まで)させる。3回行う。

点数 採点基準
5点 健側と変わらず、正常
4点 課題可能。軽度のぎこちなさあり
3点 課題可能。中等度のあるいは著明なぎこちなさあり
2点 膝関節の伸展運動あり、足部は床より離れるが十分ではない
1点 下腿にわずかな動きがあるが足部は床から離れない
0点 全く動かない
【臨床的意義】 大腿四頭筋の随意収縮・保持能力を評価します。立脚期の膝折れ予防に直結する項目で、歩行補助具(AFO・ステッキ)の選択の判断基準の一つになります。座位での膝伸展は立位が困難な急性期でも実施できる利点があります。

5

下肢遠位テスト(foot-pat test)

姿勢座位または臥位(座位は介助可)、踵部を床につけたまま実施
配点0〜5点
課題内容踵部を床につけたまま、足部の背屈運動を協調しながら背屈・底屈を3回繰り返し、その後なるべく早く背屈を繰り返す

点数 採点基準
5点 健側と変わらず、正常
4点 課題可能。軽度のぎこちなさあり
3点 課題可能。中等度のあるいは著明なぎこちなさあり
2点 背屈運動あり、足部は床より離れるが十分ではない
1点 わずかな背屈運動があるが前足部は床から離れない
0点 全く動かない
【臨床的意義】 足関節の反復的・速い交互運動を評価します。歩行中の踵接地(背屈)・蹴り出し(底屈)の機能的予備力の指標です。健側との比較で相対的低下度を把握し、AFO(短下肢装具)の適応判断にも活用します。

領域 2

筋緊張(Muscle Tone)— 項目6〜7 ※各0〜3点・1A/1Bサブカテゴリーあり

麻痺側上肢・下肢の他動運動に対する抵抗(筋緊張)を評価します。各0〜3点の4段階で採点します。痙縮(亢進)も弛緩(低下)も正常からの逸脱として低くスコアリングされます。「1点」には1A(筋緊張亢進)と1B(筋緊張低下)の2種類のサブカテゴリーがあります。

6

上肢筋緊張テスト(U/E muscle tone)※1A/1B

評価法肘関節を他動的に伸展屈曲させ、筋緊張の状態を評価
姿勢仰臥位(完全リラックス状態)
配点0〜3点(最高点3点=正常)

点数 採点基準
3点 正常、健側と対称的
2点 上肢の筋緊張が軽度(わずかに)亢進している
1点 1A:上肢の筋緊張が中等度(はっきりと)亢進している
1B:他動的筋緊張の低下(弛緩性麻痺)
0点 上肢の筋緊張が著明に亢進している(強直レベル)
【臨床的意義・サブカテゴリーの使い方】 1Aは痙縮優位(回復期以降に多い)、1Bは弛緩性麻痺(急性期に多い)を示します。両者とも1点ですがリハビリアプローチは全く異なります。
痙縮(1A・2点):ボツリヌス毒素注射・持続ストレッチ・NMES・ポジショニングを検討
弛緩(1B):FES・感覚入力促通・タッピングを優先
他動運動は一定の中等速度で行い、評価者間で速度を統一することが信頼性維持に重要です。

7

下肢筋緊張テスト(L/E muscle tone)※1A/1B

評価法膝関節の他動的伸展屈曲により評価(「上肢」を「下肢」に読み替える)
姿勢仰臥位(完全リラックス状態)
配点0〜3点(最高点3点=正常)

点数 採点基準
3点 正常、健側と対称的
2点 下肢の筋緊張が軽度(わずかに)亢進している
1点 1A:下肢の筋緊張が中等度(はっきりと)亢進している
1B:他動的筋緊張の低下(弛緩性麻痺)
0点 下肢の筋緊張が著明に亢進している(強直レベル)
【臨床的意義】 下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)の痙縮は尖足歩行・蹴り出し不全の直接原因です。下肢緊張スコアと歩行パターン(観察)を並行記録することで、痙縮が歩行制限の主因かどうかを評価できます。足関節クローヌスの有無も記録に加えてください。

領域 3

腱反射(Deep Tendon Reflex)— 項目8〜9 ※各0〜3点・1A/1Bサブカテゴリーあり

麻痺側上肢・下肢の腱反射を評価します。各0〜3点の4段階で、正常(3点)が最高点です。亢進も消失も正常からの逸脱として低スコアとなります。「1点」には亢進系(1A)と消失系(1B)のサブカテゴリーがあります。道具は反射ハンマーを使用してください。

8

上肢腱反射(U/E DTR:biceps or triceps)※1A/1B

評価部位上腕二頭筋腱反射(biceps)または上腕三頭筋腱反射(triceps)
姿勢座位または仰臥位(上肢リラックス)
道具反射ハンマー
配点0〜3点(正常=3点が最高点)

点数 採点基準
3点 bicepsあるいはtriceps反射とも正常。健側と対称的
2点 bicepsあるいはtriceps反射が軽度(わずかに)亢進
1点 1A:bicepsあるいはtriceps反射が中等度(はっきりと)に亢進している
1B:bicepsあるいはtriceps反射がほぼ消失している
0点 bicepsあるいはtriceps反射が著明に亢進している。あるいは容易にclonus(肘・手関節)が誘発される
【臨床的意義・サブカテゴリーの使い方】 1Aは上位運動ニューロン障害(錐体路障害)、1Bは下位運動ニューロン・末梢神経障害または急性期の脊髄ショックを示します。0点(著明亢進・clonus)はボツリヌス療法・バクロフェン適応検討のサインとなります。急性期は弛緩性(1B〜0点)、亜急性〜慢性期は痙縮性(1A〜2点)へ移行するのが一般的であり、腱反射の経時的変化が神経学的回復段階の指標になります。

9

下肢腱反射(L/E DTR:PTR or ATR)※1A/1B

評価部位膝蓋腱反射(PTR)または足底腱反射(アキレス腱反射:ATR)
姿勢座位または仰臥位
道具反射ハンマー
配点0〜3点(正常=3点が最高点)

点数 採点基準
3点 PTRあるいはATRとも正常。健側と対称的
2点 PTRあるいはATRが軽度(わずかに)亢進
1点 1A:PTRあるいはATRが中等度(はっきりと)に亢進している。unsustained clonusを認める
1B:PTRあるいはATRがほぼ消失している
0点 PTRあるいはATRが著明に亢進している。あるいは容易にclonus(足関節)が誘発される
【臨床的意義】 膝蓋腱反射(主にL3〜L4支配)・アキレス腱反射(主にS1支配)を評価します。下肢1AのUnsustained clonusは中等度の上位運動ニューロン障害を示し、0点(sustained clonus)との鑑別が重要です。足クローヌス(0点)は痙縮治療の積極的適応を示すサインです。Babinski反射の所見も合わせて記録してください。

領域 4

感覚(Sensation)— 項目10〜13 各0〜3点

触覚(項目10・11)と位置覚(項目12・13)は別々の4項目として評価します。それぞれ0〜3点の4段階で採点します。必ず閉眼した状態で実施してください。触覚は手掌・足底、位置覚は母指(または示指)・母趾で評価します。

10

上肢触覚テスト(U/E light touch:手掌)

評価部位手掌(閉眼下)
道具綿棒または指先(触覚)・ピン(痛覚の参考)
配点0〜3点
指示文「目を閉じてください。触れた場所がわかったら教えてください」

点数 採点基準
3点 正常(健側と同等の触覚認知)
2点 軽度低下、あるいは主観的低下、または異常感覚あり
1点 重度あるいは中等度低下
0点 強い皮膚刺激もわからない
【臨床的意義】 上肢の表在感覚(脊髄視床路)を評価します。触覚障害は手指の巧緻動作回復の主要な制限因子の一つです。異常感覚(dysesthesia)の有無も記録してください。

11

下肢触覚テスト(L/E light touch:足底)

評価部位足底(閉眼下)
道具綿棒または指先(触覚)
配点0〜3点(上肢触覚の定義と同一)

点数 採点基準
3点 正常(健側と同等)
2点 軽度低下、あるいは主観的低下、または異常感覚あり
1点 重度あるいは中等度低下
0点 強い皮膚刺激もわからない
【臨床的意義】 足底の触覚は歩行時の接地感覚・バランス制御に関与します。足底触覚障害は特に不整地・暗所での歩行不安定の一因となります。

12

上肢位置覚テスト(U/E position:母指または示指)

評価部位母指または示指(閉眼下・他動的に運動させる)
指示文「目を閉じてください。指が動いたらどちらの方向に動いたか教えてください」
配点0〜3点(ROMに対する割合で判断)

点数 採点基準
3点 ROMの1割未満の動きでも方向がわかる(正常)
2点 ROMの1割以上の動きなら方向がわかる
1点 全可動域(ROM全体)の動きなら方向がわかる
0点 全可動域の動きもわからない(位置覚消失)
【臨床的意義】 上肢の深部感覚(後索路:薄束・楔状束)を評価します。位置覚障害は手指の巧緻動作・リーチング動作の回復の最大制限因子の一つです。SIAS上肢位置覚スコアが低いほど手指テスト(項目2)の回復予後が不良な傾向があります。

13

下肢位置覚テスト(L/E position:母趾)

評価部位母趾(閉眼下・他動的に運動させる)
配点0〜3点(ROMに対する割合で判断)

点数 採点基準
3点 ROMの5割未満の動きでも方向がわかる(正常)
2点 ROMの5割以上の動きなら方向がわかる
1点 全可動域(ROM全体)の動きなら方向がわかる
0点 全可動域の動きもわからない(位置覚消失)
【臨床的意義・上肢との違い】 下肢位置覚は「5割」基準(上肢は「1割」基準)です。母趾の位置覚は歩行安定性に直結します。視覚補償で歩行できている患者でも、暗所・不整地・閉眼時に著明なふらつきを呈します。Mini-BESTestの感覚の方向づけスコアとの組み合わせで感覚統合障害のパターンを詳細分析できます。

領域 5

関節可動域(Range of Motion)— 項目14〜15 各0〜3点・角度基準あり

麻痺側の他動関節可動域を具体的な角度基準で評価します。上肢は肩関節他動外転、下肢は膝伸展位での足関節他動背屈で評価します。

14

上肢関節可動域テスト(U/E ROM:肩関節他動外転)

評価関節肩関節他動外転角度
配点0〜3点(角度で判断)

点数 採点基準(他動外転角度)
3点 150°以上(正常範囲)
2点 150°以下(90°〜150°未満)
1点 90°以下(60°〜90°未満)
0点 60°以下(重度制限)
【臨床的意義】 肩関節外転ROMの制限+疼痛スコア低下のパターンは肩手症候群(CRPS type 1)の早期サインです。ROM制限の原因が「痙縮(動的制限)」か「拘縮(固定的制限)」かの鑑別が介入選択に直結します(痙縮→ボツリヌス・ストレッチ、拘縮→装具・腱延長術も検討)。

15

下肢関節可動域テスト(L/E ROM:足関節他動背屈)

評価関節膝伸展位にて他動的足関節背屈角度
配点0〜3点(角度で判断)

点数 採点基準(他動背屈角度)
3点 10°以上(正常範囲)
2点 10°以下(0°〜10°未満)
1点 0°以下(−10°〜0°未満)
0点 −10°以下(重度制限:尖足位固定レベル)
【臨床的意義】 足関節背屈ROM制限(正常10°以上)は尖足歩行・つまずき転倒の直接原因です。腓腹筋・ヒラメ筋の痙縮による制限か、固定した拘縮かを鑑別することが必須です。AFO(短下肢装具)の適応判断にも活用します。

領域 6

疼痛(Pain)— 項目16 0〜3点

脳卒中に由来する疼痛を評価します。既往としての整形外科的(腰痛など)・内科的(胆石など)疼痛は含めません。また過度でない拘縮伸長時のみの痛みも含めません。

16

疼痛テスト(pain:脳卒中由来の疼痛)

評価法問診(安静時・運動時疼痛)
除外整形外科的疼痛(腰痛等)・内科的疼痛(胆石等)・拘縮伸長時のみの痛みは含めない
配点0〜3点

点数 採点基準
3点 疼痛の問題がない
2点 加療を要しない程度の軽度の疼痛
1点 中等度の疼痛
0点 睡眠を妨げるほどの著しい疼痛
【臨床的意義】 脳卒中後疼痛の主な原因:①肩関節亜脱臼(棘上筋の弛緩による下方牽引)②肩手症候群(CRPS type 1:自律神経障害性疼痛)③痙縮による関節破綻④中枢性疼痛(視床痛:「何もしていないのに熱い・しびれる」)。0点(睡眠障害レベル)はリハビリ参加の最大の障壁となります。特に視床痛は通常の鎮痛薬が効きにくく、抗てんかん薬(プレガバリン等)・抗うつ薬の適応を医師と検討してください。

領域 7

体幹機能(Trunk Control)— 項目17〜18 各0〜3点

体幹の垂直定位(項目17:垂直性テスト)と腹筋力(項目18:腹筋テスト)を評価します。垂直性テスト(17)が先に行われます。体幹機能は発症早期のFIM移動項目と高い相関を示し、退院時ADL・転帰先の有力な予測因子です。

17

垂直性テスト(verticality test)

姿勢椅子座位(静的座位保持)
配点0〜3点
判断基準15°以上の側方傾斜を「側方性の姿勢異常あり」とみなす

点数 採点基準
3点 静的座位は正常(垂直位を自然に保持できる)
2点 静的座位にて側方性の姿勢異常(傾斜15°以上)があるが、指示にてほぼ垂直位に修正・維持可能
1点 静的座位にて側方性の姿勢異常があり、指摘・指示にても修正されず、介助を要する
0点 座位がとれない
【臨床的意義】 垂直定位(空間的垂直認識:SVV)の障害を伴うPusher syndromeはこの項目が著明に低下します(0〜1点)。Pusherには視覚フィードバック(鏡・カメラモニター)と正中線定位の再教育が特異的に有効で、「指示にても修正されない(1点)」か「指示にて修正できる(2点)」かの鑑別が重要です。急性期の垂直性スコアは退院先(自宅 vs 施設)の有力な予測因子です。

18

腹筋テスト(abdominal MMT)

姿勢・セッティング車椅子または椅子に座り、臀部を前にずらし、体幹を45度後方へ傾け背もたれによりかかる。大腿部が水平になるように検者が押さえる。
課題体幹を垂直位まで起き上がらせる(検者が抵抗を加える場合は胸骨上部を押さえる)
配点0〜3点(MMT準拠)

点数 採点基準
3点 強い抵抗に抗して起き上がれる(正常:MMT 5相当)
2点 軽度の抵抗に抗して起き上がれる(MMT 4相当)
1点 抵抗を加えなければ起き上がれる(MMT 3相当:重力に抗して可能)
0点 垂直位まで起き上がれない(MMT 2以下)
【臨床的意義】 腹直筋・腹斜筋群の随意収縮力を評価します。体幹屈曲力の向上は座位バランス・起き上がり・移乗動作・歩行立脚期の骨盤コントロールに直結します。発症2週時点での腹筋テストスコアは退院時歩行自立度との関連が報告されており、早期評価による転帰予測に活用できます。

領域 8

高次脳機能(Higher Brain Function)— 項目19〜20 各0〜3点

視空間認知(半側空間無視)と言語機能(失語症)を評価します。視空間認知は50cmテープによる線分二等分テスト、言語は失語症のみ(構音障害は含まない)を評価します。

19

視空間認知テスト(visuo-spatial deficit:線分二等分テスト)

道具50cmのテープ(眼前約50cmに提示)
方法50cmのテープを眼前約50cmに提示し、中央を健側指で示させる。2回行い、中央よりのずれの大きい値を採用する。
配点0〜3点(ずれのcm数で判断)

点数 採点基準(中央からのずれ:大きい方の値を採用)
3点 ずれが3cm未満(正常)
2点 ずれが3cm以上5cm未満
1点 ずれが5cm以上15cm未満
0点 ずれが15cm以上(重度半側空間無視)
【臨床的意義】 SIASの視空間認知テストは50cmテープを用いた線分二等分法が正式な評価法です。右半球損傷後に多く見られ(報告によって20〜40%)、健側(右)方向へのずれが大きいほど左半側空間無視が重度です。「見えていない」のではなく「意識が向かない」神経学的症状であり、患者が自覚していないケースが多いため観察・テストで確認することが重要です。詳細評価はBIT(行動性無視検査)をSTANDARDとして追加してください。

20

言語機能テスト(speech:失語症評価)※1A/1B・構音障害は含まない

評価内容失語症に関して評価する。構音障害はこの項目には含めない。
配点0〜3点(1点には1A・1Bのサブカテゴリーあり)

点数 採点基準
3点 失語症なし(正常なコミュニケーションが可能)
2点 軽度失語症(日常会話はほぼ成立するが言語障害あり)
1点 1A:重度感覚性失語症(重度混合性失語症も含む)
1B:重度運動性失語症
0点 全失語症。まったくコミュニケーションがとれない
【評価の注意点・サブカテゴリーの使い方】 1Aの重度感覚性失語(Wernicke型:理解が著しく障害・流暢だが意味をなさない発話)と1Bの重度運動性失語(Broca型:理解は比較的保たれるが非流暢・発話困難)は予後・リハビリアプローチが大きく異なります。両者とも計算上は1点ですが、ST(言語聴覚士)への依頼時にサブカテゴリーを伝えることで適切な詳細評価(SLTA・WAB)につながります。構音障害(発音が不明瞭だが言語内容は正常)はこの項目に含めない点に注意してください。

領域 9

健側(非麻痺側)機能(Non-paretic Function)— 項目21〜22 各0〜3点

健側の握力(項目21)と大腿四頭筋力(項目22)を評価します。廃用・低栄養・加齢・サルコペニアにより健側も機能低下します。握力は具体的なkg数で記録することが求められています。

21

握力テスト(grip strength:健側)

評価法座位で握力計の握り幅を約5cmにして計測。健側の具体的kg数を記録すること。
配点0〜3点(kg数で判断)

点数 採点基準(握力kg数)
3点 握力 25kg以上(正常範囲)
2点 握力 10kg超〜25kg未満(軽〜中等度低下)
1点 握力 0kg超〜10kg以下(重度低下)
0点 握力 0kg(測定不能・全く把持できない)
【臨床的意義】 SIASの握力はkg数による絶対値基準(25kg以上が3点)を用います。参考として、サルコペニア診断基準(AWGS 2019)では男性28kg・女性18kg未満がカットオフですが、SIASでは性別区分なく25kgを基準としている点に注意してください。健側握力の低下は全身性の廃用進行・サルコペニアを示すサインです。栄養管理との並行介入が重要です。

22

健側大腿四頭筋力テスト(quadriceps MMT)

評価法座位における健側膝伸展筋力をMMTで評価
配点0〜3点(MMT準拠)

点数 採点基準(MMT対応)
3点 正常(MMT 5相当:強い抵抗に抗して完全伸展・保持可能)
2点 わずかな筋力低下(MMT 4相当)
1点 中等度に筋力低下(MMT 3相当:重力には抗するが抵抗に負ける)
0点 重力に抗しない(MMT 2以下)
【臨床的意義】 健側大腿四頭筋は立ち上がり・歩行・階段昇降の主動力です。長期入院・低活動によって著明な廃用性筋力低下が生じます。健側スコアの低下は退院後の転倒リスク増大と関連します。早期離床・活動量の確保・漸進的筋力トレーニングが廃用予防の基本です。

SIAS スコア解釈 ― 重症度分類・カットオフ値の使い方

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重症度の目安(カットオフ値)

重度障害
≦30点
ADLに大きな支援が必要
多くの領域に重度障害
中等度障害
31〜50点
部分的な支援が必要
中等度の機能障害
軽度障害
≧51点
日常生活はほぼ自立
わずかな支援のみ

⚠️ カットオフ値の使い方に関する重要な注意

上記の重症度分類はあくまで臨床的な目安です。SIASの単一の公式カットオフ値は定められておらず、脳卒中の病型(梗塞 vs 出血・部位)・年齢・発症前機能・合併症・評価時期によって大きく異なります。

最も重要なのは経時的なスコア変化の追跡です。絶対値よりも「どの領域がどれだけ改善・低下したか」を分析することが、リハビリ計画修正の根拠となります。

📊 疾患・回復時期別の参考スコア帯(臨床的目安)

対象・時期 総スコア目安 運動サブスコア目安 備考・活用ポイント
急性期(発症1〜2週)重度 10〜25点 5〜12点 廃用予防・転帰予測の基準値
回復期入棟時(中等度) 25〜45点 12〜24点 集中リハビリ介入で改善を期待
回復期退院時(軽度〜中等度) 45〜65点 22〜25点 自宅復帰レベル・残存課題の特定
生活期(軽微残存障害) 60〜72点 23〜25点 社会参加・就労・生活の質向上を目標
正常(参考値) 76点 25点 全領域で障害なし(運動機能5項目×5点=25点)

※あくまで参考値です。個々の患者を単一の数値のみで判断せず、転帰歴・環境要因と合わせて総合的に判断してください。

専門家向け:SIASサブスコア分析と転帰予測への応用

運動サブスコアの構成(最大25点):上肢近位5点+上肢遠位5点+下肢近位(股)5点+下肢近位(膝)5点+下肢遠位5点=25点。筋緊張・腱反射は別領域として計上します。

歩行予測に特に有用な項目の組み合わせ:発症2〜4週時点の「①下肢近位(股)テスト(股関節屈曲)②体幹腹筋テスト③健側四頭筋筋力」の3項目スコアは歩行自立の有力な予測パターンとして複数の研究で報告されています。「下肢近位(股)テスト≧3点かつ体幹(垂直性または腹筋)≧2点」を自立歩行の目安として活用できます。

FIMとの連携:SIAS総スコアとFIM総スコアの相関はr=0.72〜0.85(複数研究の範囲)。「SIASのどの機能障害がFIMのどのADL制限につながっているか」を分析する縦断的フレームワークとしてSIASとFIMを組み合わせることで、機能回復→ADL自立への経路を患者・家族・多職種チームで共有できます。

SIAS・Fugl-Meyer・BRS・FIM の徹底比較

比較項目 SIAS Fugl-Meyer (FMA) Brunnstrom FIM
評価対象 機能障害(9領域・包括) 運動機能・感覚(特化) 運動回復段階 ADL(活動制限)
配点 76点満点・22項目 226点満点 Ⅰ〜Ⅵ段階 126点満点
所要時間 約10分 30〜45分 5〜10分 15〜20分
運動機能評価 ✅ 上下肢各2〜3項目 ✅✅ 最も詳細 ✅ 段階評価 ❌ ADL評価
感覚評価 ✅ 触覚・位置覚各2項目=4項目 ✅ FMAに含む
体幹・バランス ✅ 2項目(垂直性・腹筋) △ 一部含む △ 間接的のみ
言語機能 ✅ 失語症(スクリーニング) ✅ コミュニケーション
健側機能 ✅ 握力・四頭筋の2項目 △ 間接的
回復の細かな変化 ✅ 1A/1B/1Cで微細変化を記録 ✅✅ 最も鋭敏 △ 段階間が粗い △ 動作の質は見ない
急性期ベッドサイド ✅ 対応(専門器具不要) △ 時間がかかる ✅ 対応 ✅ 対応
最適な使用場面 包括的機能評価・経時追跡 上肢機能の精密評価 運動段階のチーム共有 ADL自立度・介護量評価

💡 推奨:評価ツール組み合わせのフロー

急性期(発症〜2週):SIAS(包括的機能把握・転帰予測)+ FIM(ADL基準値の設定)→ 重症度分類・多職種チームへの情報共有

回復期(集中リハビリ期):SIAS定期評価(2〜4週ごと)+ Brunnstromステージ(チームでの運動回復段階共有)+ Mini-BESTest(バランス詳細評価:BBS高得点でも転倒歴あり患者に追加)

退院前・生活期:SIAS+ FIM+ 転倒リスク評価(TUG・BBS)→ 退院後サービス計画・自主トレーニング処方・フォローアップ計画の立案

⚠️ SIASの限界と注意点(臨床で重要)

ADLを直接評価しない:SIASは「機能障害(インペアメント)」の評価ツールです。日常生活動作の自立度はFIMやBIを別途使用してください。

認知機能の詳細評価は含まない:言語(失語症)はスクリーニングレベル、構音障害は非対象です。HDS-R・MMSEなど認知機能評価は別途追加してください。

評価者間のキャリブレーションが必要:特に運動機能(0〜5点)と筋緊張評価のサブカテゴリー(1A/1B)は経験による差が生じやすいため、施設内での採点基準の統一と定期的な確認が推奨されます。

脳卒中以外の疾患への適用:SIASは脳卒中患者向けに開発されており、PD・MSなど他の神経疾患への適用は注意が必要です。

ここまでお読みいただいた方へ

SIASスコアを
「個別リハビリ計画」に落とし込めていますか?

9領域のサブスコアを読み解き、どの機能が回復の鍵を握っているかを特定することが最短の機能回復ルートです。STROKE LABでは包括的評価から介入まで一貫して対応しています。

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SIASスコアからリハビリ計画へ ― 9領域別介入戦略

1
麻痺側運動機能が低い患者への介入(項目1〜5が低い)

課題指向型トレーニング(Task-oriented Training)・CI療法(麻痺側強制使用)・神経筋電気刺激(NMES)・鏡療法(Mirror Therapy)・ロボット支援訓練が有効。上肢遠位(手指)テストで1A(集団屈曲のみ)の場合は1B(集団伸展)→1C(分離運動の萌芽)への移行を目標とした細かな段階設定が重要です。下肢機能低下には部分免荷トレッドミル訓練・歩行補助ロボットを検討してください。

2
筋緊張(痙縮・弛緩)異常がある患者への介入(項目6〜7が低い)

痙縮(1A・2点):ポジショニング・持続ストレッチ・ボツリヌス毒素注射・バクロフェン・NMES・水治療法。弛緩性麻痺(1B):NMES・機能的電気刺激(FES)・感覚入力促通・タッピング。ボツリヌス療法は運動機能訓練と組み合わせることで最大効果が期待できます。1Aと1Bは同じ1点でもアプローチが全く異なるため、サブカテゴリーの記録が介入選択に直結します。

3
感覚障害が残存している患者への介入(項目10〜13が低い)

感覚再教育(sensory re-education)・段階的な質感識別訓練・閉眼下での関節位置再現訓練・体性感覚フィードバック訓練・鏡療法が有効。触覚(項目10・11)と位置覚(項目12・13)それぞれのスコアを確認し、障害の種類(表在 vs 深部)によってアプローチを変えてください。「視覚代償戦略(視覚でフィードバックを取りながら動く)」の習得も並行して進めることが実用的ADL回復に重要です。

4
ROM制限・疼痛がある患者への介入(項目14〜16が低い)

肩手症候群の予防・治療:早期ポジショニング(肩甲骨前傾位保持)・TENS・温熱療法・段階的他動ROM訓練・CRPSへの星状神経節ブロック(重症例)。足関節背屈ROM制限:腓腹筋・ヒラメ筋の痙縮(動的制限)か拘縮(固定的制限)かを鑑別し介入を選択。視床痛(中枢性疼痛):通常の鎮痛薬が無効なことが多く、抗てんかん薬(プレガバリン等)・抗うつ薬の適応を医師と検討してください。

5
体幹機能が低い患者への介入(項目17〜18が低い)

段階的座位バランス訓練・コアスタビライゼーション・不安定面での体幹活性化・垂直認識訓練が有効。Pusher syndromeへの特異的アプローチ:垂直性テスト1点(指示で修正されない)の場合は視覚フィードバック(鏡・カメラモニター)と正中線定位の再教育が有効で、「麻痺側へ体重をかけさせる」通常のアプローチでは効果が限られます。腹筋テスト0点(起き上がれない)には重力除去位からの体幹屈曲運動から段階的に開始してください。

6
視空間認知・言語障害がある患者への介入(項目19〜20が低い)

半側空間無視(項目19低下):プリズム適応訓練(最も多くのRCTで支持)・視覚走査訓練・環境調整(ベッドの向き変更・家族への指導)・VR訓練。失語症(項目20低下):ST(言語聴覚士)による集中的言語訓練・会話訓練・AAC(代替コミュニケーション)導入・家族への心理教育が不可欠です。1Aの重度感覚性失語と1Bの重度運動性失語ではアプローチが異なりますのでSTへサブカテゴリーを伝えて連携してください。

7
健側機能が低下している患者への介入(項目21〜22が低い)

早期離床・廃用予防・漸進的筋力トレーニング・栄養管理(低アルブミン血症・サルコペニアへの対応)・転倒予防プログラムが有効。握力が0〜1点(0〜10kg)の場合は重篤な廃用・低栄養を示すサインとして栄養サポートチーム(NST)と連携してください。健側四頭筋0点(重力に抗しない)は立ち上がり・歩行の主要制限因子となります。

SIASのエビデンス ― 信頼性・妥当性・転帰予測

信頼性研究

高い評価者間・評価者内信頼性 ― Kappa 0.83〜0.95・Spearman 0.84〜0.93

Chino et al.(Am J Phys Med Rehabil. 1994)の原著研究において、SIAS運動機能評価項目の評価者間信頼性はKappa統計量 0.83〜0.95・Spearman相関係数 0.84〜0.93という高い値が示されました。これは「同一患者を異なる2名の評価者が独立して評価してもほぼ同じ結果が得られる」ことを意味します。評価者内信頼性(同一評価者による再現性)も同等の高さが確認されています。

妥当性研究

BRSを上回る感度 ― 同一BRSステージを3〜4レベルに細分化

SIASの運動機能スコアはBrunnstromステージ(BRS)・Motricity Indexと高い相関(Spearman r=0.76〜0.95)を示し、同時妥当性が確認されています(Chino et al., 1994;千野ら, 日リハ医学会誌 1994)。特に重要な知見として、同一BRSステージの患者がSIASによって3〜4つの異なるレベルに細分化されることが示されており、BRSでは検出できない回復の微細な変化の把握に優れていることが証明されています。1A/1B/1Cサブカテゴリーはさらにこの細分化を補完します。

転帰予測研究

急性期SIASスコアによる退院時ADL・転帰先の予測

複数の研究で、発症初期(2〜4週)のSIAS総スコアおよびサブスコア(特に下肢近位(股)・腹筋・垂直性)が退院時FIMスコア・歩行自立・転帰先(自宅 vs 施設)を有意に予測することが報告されています。特に「垂直性テスト≧2点かつ下肢近位(股)スコア≧3点」のパターンは歩行自立の有力な予測パターンとして知られています。転帰予測においてはSIASを単独で使用するよりFIM・年齢・発症前ADLと組み合わせた多変量予測が精度を高めます。

臨床ケーススタディ ― SIASを活用したリハビリ計画の立案

📋 症例:石川さん(56歳・男性)右内包後脚脳梗塞 発症後6ヶ月

左片麻痺(右利き)、自宅退院後にSTROKE LABを受診。「左手がまだ動かない」「夜間暗い場所でよくふらつく」「会話の言葉がたまに出にくい」という主訴。

項目番号・評価領域 スコア 状態・サブカテゴリー 介入優先度
1. 上肢近位(膝口テスト) 3/5 課題可能・著明なぎこちなさあり
2. 上肢遠位(手指テスト) 1A/5 集団屈曲のみ可・個別指×(1A) ★最優先
3. 下肢近位(股) 3/5 課題可能・ぎこちなさあり
4. 下肢近位(膝) 4/5 課題可能・軽度ぎこちなさ
5. 下肢遠位(足パット) 3/5 遅いが背屈運動は可能
6. 上肢筋緊張 2/3 軽度亢進(MAS相当)
7. 下肢筋緊張 3/3 正常
8. 上肢腱反射 2/3 軽度亢進(++相当)
9. 下肢腱反射 3/3 正常
10. 上肢触覚 2/3 主観的低下・異常感覚あり
11. 下肢触覚 2/3 軽度低下
12. 上肢位置覚 2/3 ROM1割以上の動きなら方向わかる
13. 下肢位置覚 2/3 ROM5割以上の動きなら方向わかる ◎(夜間ふらつきの原因)
14. 上肢ROM(肩外転) 3/3 150°以上・正常
15. 下肢ROM(足背屈) 3/3 10°以上・正常
16. 疼痛 2/3 加療不要レベルの軽度疼痛(肩)
17. 垂直性テスト 2/3 15°未満の軽度傾斜・指示で修正可
18. 腹筋テスト 3/3 強い抵抗に抗して起き上がれる
19. 視空間認知(50cmテープ) 3/3 ずれ3cm未満・正常
20. 言語機能 2/3 軽度失語症(語想起困難) ○(ST紹介)
21. 健側握力 3/3 30kg・正常範囲
22. 健側四頭筋 3/3 強い抵抗に抗して可・正常
合計(22項目) 57/76点 軽度〜中等度残存障害

分析と介入優先順位の設計:

上肢遠位(手指)1A点が最大の課題→ 集団屈曲から集団伸展(1B)→分離運動(1C)→2点への移行を目標に感覚再教育・鏡療法・課題指向型手指訓練を最優先。上肢感覚(位置覚2点)と連動するため感覚と運動を統合したアプローチを選択。② 下肢位置覚低下(2点)が夜間ふらつきの原因→ 閉眼下での母趾位置覚訓練・Mini-BESTest感覚の方向づけ評価を追加して詳細分析。③ 言語機能2点(軽度失語症)→ ST(言語聴覚士)へ詳細評価(SLTA)を依頼・語想起訓練の家庭プログラムを処方。④ 垂直性テスト2点(指示で修正可)→ 座位・歩行時の正中線定位訓練を継続。

よくある質問(FAQ)― SIAS評価について

SIASとFugl-Meyer(FMA)はどう使い分けますか?
SIAS:9領域を包括的に約10分で評価。体幹・感覚(触覚・位置覚4項目)・言語・健側機能まで含めた総合的な機能把握とチームでの共有に最適。急性期から生活期まで一貫して使用できます。
FMA:上下肢の運動機能・感覚のみを226点満点で極めて詳細に評価(30〜45分)。上肢機能回復の微細な変化を最も鋭敏に捉えられます。研究目的・上肢リハビリの精密モニタリングに適しています。

推奨フローとして:日常臨床の包括的モニタリング→SIAS上肢機能特化の精密評価→FMAを状況に応じて組み合わせることが理想的です。

1A・1B・1Cのサブカテゴリーはスコアに含まれますか?
はい、すべてスコア計算上は1点として扱います。サブカテゴリーは「1点の中でどのような状態か」を臨床的に詳細記録するためのものです。例えば手指テストで1Aから1Cに変化した場合、スコアは変わりませんが障害パターンの改善(集団屈曲のみ→分離運動の萌芽)として記録・共有できます。Brunnstromステージの変化では捉えられない回復の経過を追跡するのに非常に有用です。
SIASは急性期でも実施できますか?
はい。急性期ベッドサイドでの実施を想定して設計されており、仰臥位で実施できる項目が多く専門器具も不要なため発症直後から開始できます。ただし意識障害が重度(JCS 100以上)・バイタルサイン不安定・指示理解が全くない場合は一部項目の実施が困難です。その際は実施可能な項目のみ評価し「評価困難」と記録して後日再評価してください。急性期SIASは転帰予測・リハビリチームへの情報共有として非常に価値があります。
筋緊張と腱反射の採点方向を混乱してしまいます。コツはありますか?
筋緊張(項目6・7)と腱反射(項目8・9)はどちらも正常が3点(最高点)で、亢進も低下・消失も3点未満となります。覚え方のポイントは2つです。

「0点は極端な亢進(強直・著明亢進・clonus)」と覚えてください。消失・低下は0点にはならず「1B」(1点)です。
「1A=亢進系、1Bで=低下・消失系」として区別してください(Aの方が数字が小さく亢進が多い急性期を連想しやすい)。

施設内でSIASの採点基準表を印刷して壁に掲示する、電子カルテのテンプレートに注意書きを入れるなど、可視化した環境を作ることを推奨します。

言語テストで構音障害のある患者はどう採点しますか?
SIASの言語テスト(項目20)は失語症のみを評価対象とし、構音障害はこの項目に含めません。構音障害(発音が不明瞭だが言語内容は正常)の患者は、失語症がなければ言語スコアは3点となります。一方、失語症を合併している患者では失語症の重症度でスコアを判断してください。構音障害の詳細評価は別途STへ依頼することを推奨します。
SIASは何週間ごとに実施しますか?
一般的には急性期で1〜2週ごと、回復期では2〜4週ごとの定期評価が目安です。ただし状態が急速に変化している時期は毎週評価する価値があります。退院前・退院後のフォローアップでも実施することで生活期の機能変化(回復・低下)を客観的に把握できます。同一患者の評価は可能な限り同一評価者が担当することで評価者間誤差を最小化できます。
失語症患者にSIASを実施する際はどうすれば?
言語指示が伝わりにくい患者への対応策として:①ジェスチャー・実演で動作を視覚的に示す、②身体的ガイダンス(評価者が軽く誘導して動作を伝える)、③非言語的反応(うなずき・表情・視線)で理解を確認する、が有効です。どうしても実施できない項目は「評価困難」として記録し、無理に0点を与えないことが重要です(0点は「動きなし・感覚消失・全失語症」を意味するため)。言語機能の詳細評価は必ずSTへ依頼してください。
患者さんにSIASの点数をそのまま伝えてもよいですか?
点数をそのまま告知するよりも、「どの機能がどれだけ改善したか」の変化として伝えることが患者モチベーションに有効です。例:「3ヶ月前は45点でしたが今は57点に上がっています。特に下肢の力と体幹バランスが大きく改善しました。手指の動き(1Aから2点への回復)がまだ課題なので、そこに集中して訓練を続けましょう」のように改善点+今後の目標をセットで伝えてください。低スコアをそのまま告知することで患者の意欲が低下する場合があるため、チームで伝え方の方針を決めることを推奨します。

STROKE LABのSIAS活用 ― 評価から介入まで

STROKE LABでは、SIASを単なる「点数の記録ツール」ではなく「どの機能回復に集中すべきかを特定する地図」として活用しています。9領域のサブスコアをレーダーチャートで可視化し、最も回復可能性が高く・ADL自立に直結する領域を優先介入ターゲットとして特定。1A/1Bサブカテゴリーも含めた精密なプロファイリングで脳神経科学に基づくオーダーメイドプログラムを設計します。

STROKE LAB式

SIAS起点の脳卒中リハビリ設計フロー

Step 1 評価:SIAS(9領域・22項目包括)+ Mini-BESTest(バランス詳細)+ FIM(ADL自立度)の3本柱で初回評価を実施

Step 2 分析:9領域のサブスコアをレーダーチャートで可視化。1A/1Bサブカテゴリーも記録し「回復の壁」となっている領域・パターンを特定して介入優先順位を決定

Step 3 介入設計:課題特異的トレーニング・神経科学的アプローチ・認知神経リハビリを組み合わせ。患者の生活目標(「また料理したい」「孫と歩きたい」)に直結した意味のある訓練を設計

Step 4 効果判定:4〜6週ごとにSIASを再評価。サブカテゴリーの変化(例:手指1A→1C)も含めて記録し、変化のないスコア領域はアプローチ見直しのシグナルとして活用

Step 5 共有:患者・家族・多職種チームにSIASのレーダーチャートを共有。「どこが改善したか」が一目で伝わる可視化によりリハビリへの参加意識を高めます

リハビリを受けた方の声

退院後も「麻痺した手が全然動かない」と諦めていました。STROKE LABでSIASを受けたところ、手指の運動は集団屈曲のみ(1A)だけど感覚と上肢近位の機能は残っているとわかり、そこを活かした訓練を続けました。今では集団的な開閉ができるようになり(1B相当)、食事のとき補助として左手が使えるようになっています。

60代男性・脳梗塞発症後9ヶ月

病院では「歩けているから大丈夫」と言われていましたが、SIASで評価してもらったら下肢の位置覚が思ったより低下していることがわかりました(位置覚スコア2点:ROM5割以上の動きしかわからない)。暗い場所でふらつく理由がわかって安心しました。感覚訓練を続けて、今は夜間の歩行も安心してできています。

70代女性・脳出血発症後6ヶ月

参考文献・引用文献

  • 1) Chino N, et al. The Stroke Impairment Assessment Set (SIAS): A new evaluation instrument for stroke patients. Am J Phys Med Rehabil. 1994;73(6):383-392.
  • 2) 千野直一ら:脳卒中機能評価法(SIAS)の開発と信頼性の検証. 日本リハビリテーション医学会誌. 1994;30(5):310-315. J-STAGE
  • 3) Chino N, et al. Validity of the Stroke Impairment Assessment Set (SIAS). SpringerLink
  • 4) Chen HM, et al. Clinimetric comparisons of 4 measures for spasticity in patients with stroke. J Rehabil Med. 2005;37(1):46-53.
  • 5) Cruz-Jentoft AJ, et al. Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis. Age Ageing. 2019;48(1):16-31.
  • 6) 出江紳一ら:脳卒中機能評価法(SIAS)の妥当性と脳卒中ADL評価との相関. 総合リハビリテーション. 1996.

SIASで「どこが問題か」を特定したら、
次は「どう変えるか」です。

9領域のサブスコア分析から的確な介入へ。運動・感覚・体幹・言語・健側のどれが
回復の鍵を握るかを見極め、脳神経科学に基づいたアプローチで根本から改善します。
STROKE LABではSIAS起点のオーダーメイドリハビリを提供しています。

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