脳卒中後の頚部筋安定化は呼吸を改善する?評価・介入・エビデンス – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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脳卒中後の頚部筋安定化は呼吸を改善する?評価・介入・エビデンス

Neck Stabilization & Respiration After Stroke
“

頚部筋の安定化は、脳卒中後の呼吸を変えられるのか。

首の力みは、呼吸や歩行に響いているのか。新人のあなたが抱くこの疑問に、慢性期脳卒中30名のRCTを軸に答えます。効果の大きさと限界、評価と介入の手順、つまずきやすい点までを整理しました。結論は「有望だが、根拠はまだ小規模」です。

UPDATED2026
READ約22分
FORPT / OT / ST
BYSTROKE LAB
Sample
30名
解析対象(実験群15名+対照群15名)。40名で開始し、10名が脱落しました。
Duration
6週間
介入期間。通常のリハビリ運動治療に加えて実施しました。
Dose
30分/日
頚部安定化15分+呼吸再訓練15分。週5回です。
Quick Reference
忙しい臨床家のための
要点5項目。
01
頚部の力みは呼吸や動作に関わりうる。ただし脳卒中での直接根拠は、小規模な単独RCTが中心です。
02
原著は慢性期30名。頚部安定化15分+呼吸再訓練15分を、週5回・6週間実施しました。
03
深部頚部屈筋(頭長筋・頸長筋)を狙い、胸鎖乳突筋と前斜角筋は脱力したまま行います。
04
MASは四肢筋向けの尺度です。頚部筋には触診・姿勢・呼吸の観察を併用します。
05
呼吸練習中はSpO2と痛みを確認し、2週間ごとに再評価します。
01
Clinical Encounter

歩くと息が上がる。首がすくんでいないか。

Case Vignette
70歳男性・右片麻痺。頭部前方位で、歩くと息が浅くなる。

70歳男性。脳卒中による右片麻痺で、生活期(発症後8か月の例示設定)です。重症度は、Brunnstrom stage(BRS)が上肢Ⅳ・手指Ⅳ・下肢Ⅳ、FIM運動項目が例示で72点です。主訴は「歩くと息が苦しくなり、首が疲れる」です。

初回評価では、頭部前方位と頚部筋の過緊張を認めました。努力呼吸のとき、胸鎖乳突筋と斜角筋の活動が目立ちます。安静時の呼吸数は18回/分でした。

※元記事の症例記述を教育用に再構成しました。BRS・FIM・発症後期間は例示値で、元記事に記載はありません。実症例に差し替えて使ってください。

臨床では、体幹の弱さを補うために首を固めている患者さんに出会います。頭頚部の位置のせいか、歩行が長くなると息が苦しくなる方もいます。

頚部筋は、補助呼吸筋(努力呼吸のときに呼吸を助ける筋:胸鎖乳突筋・斜角筋など)としても働きます。首の状態は、呼吸と動作の両方に関わる可能性があります。

この記事は、先輩から後輩への引き継ぎメモです。根拠になる研究と、その限界の両方をお伝えします。

02
Definition & Background

頚部筋は、首を支えるだけの筋ではない。

頚部筋には、呼吸と姿勢の2つの役割があります。

胸鎖乳突筋や斜角筋は、補助呼吸筋として働きます。安静呼吸ではほとんど活動せず、努力呼吸のときに活動が高まります。

頚部筋は、頚椎の安定性にも関わります。全身の姿勢制御にも寄与し、頭部の位置異常は脊柱全体に影響しうるとされます。

Key Concept
低緊張と過緊張、どちらにも呼吸への影響がある。

脳卒中後の頚部筋は、収縮が足りない「低緊張」と、収縮が続く「過緊張」の両方向に崩れます。どちらも頭部の位置を変え、呼吸と動作に影響すると考えられています。

脳卒中後に起こりうる3つの変化[専門家合意]

01
低緊張型:頭部が前方へ落ちる低緊張

頚部筋が十分に収縮せず、頭部が前方へ落ち込みます。呼吸効率の低下や、視覚情報の取得しにくさにつながると説明されます。

02
過緊張型:持続収縮で硬く、動きを妨げる過緊張

頚部筋の持続的な収縮で、硬直や動作の妨げが生じます。斜角筋が過緊張だと胸郭が広がりにくく、呼吸が浅くなるとされます。

03
左右差:麻痺側は弱く、非麻痺側は力む非対称

麻痺側では筋力が低下し、非麻痺側では過緊張が目立つことが多いとされます。左右を必ず比べて評価します。

動作への影響として語られる4点[専門家合意]

→頭部コントロールの低下:視覚とバランス情報の統合が乱れ、歩行や起立が不安定になる
→肩甲帯の固定:頚部の過緊張が肩甲帯を固め、上肢運動の自由度が下がる
→骨盤前傾と重心移動の制限:頚部の緊張異常が骨盤にまで波及する
→歩行の非対称:対側下肢の推進力が下がり、非対称な歩行が固定化する

頚部筋異常の有病率などの疫学データは、本記事の根拠には含まれていません。数値は確立していないため、ここでは示しません。

EVIDENCE
根拠と限界(第2章)

呼吸筋力の低下[観察研究]:Teixeira-Salmela LFら(Arch Phys Med Rehabil, 2005)の報告です。地域在住の慢性期脳卒中者で、最大吸気圧・最大呼気圧の低下と、胸腹部運動の変化がみられました。対象者数は原著で確認してください。頚部筋との関連は、直接検討されていません。

原著の背景[単独RCT]:不安定な頚部姿勢や筋のアンバランス、分節の不安定性は、頚部痛につながります。呼吸機能も下げる可能性があるとされています(原著RCTの背景記述)。

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03
Mechanisms

首の力みが呼吸を浅くする、その仮説。

Important
この章は「仮説」の章です。

脳卒中後の頚部筋と呼吸の関係を、直接示した研究は限られます。以下は臨床で使われる説明モデルとして読んでください。

神経学的な視点[専門家合意]

大脳皮質や脳幹の損傷は、頚部筋の緊張制御を乱す可能性があります。呼吸中枢は延髄にあり、その障害は呼吸リズムや補助呼吸筋の活動パターンを変えるとされます。

筋紡錘(筋の長さのセンサー)やゴルジ腱器官(筋の張力のセンサー)の活動異常も、関わると考えられます。

責任病巣は、一つに特定されていません。皮質・皮質下・脳幹のどの損傷でも、頚部筋の緊張は変わりうるとされます。

バイオメカニクスの視点[専門家合意]

頚部筋が過緊張だと、肋骨の拡張が妨げられ、胸郭の動きが小さくなる可能性があります。頭部前方位が、横隔膜や外肋間筋の負担を増やすという説明もあります。

脳の可塑性の視点[専門家合意]

急性期の過剰な代償が、慢性期に固定化するという見方があります。慢性的な過緊張が、皮質-脳幹回路の異常を強めるという説明もあります。

ただし、これらを脳卒中患者で直接確かめた研究は、本記事で確認できた範囲では多くありません。

EVIDENCE
根拠と限界(第3章)

深部頚部屈筋の役割[専門家合意]:Jull GAら(J Manipulative Physiol Ther, 2008)の報告です。頭長筋・頸長筋などの深部頚部屈筋は、頚椎の分節的な安定に関わります。その機能を見る頭頚部屈曲テスト(CCFT)が整理されました。対象は主に頚部痛者で、脳卒中での検証は限られます。

Mentor’s Voice

「首が力んでいる=首が原因、と決めないでください。まず、何が先かを1つずつ分けて確かめます。」

「呼吸数、触診、姿勢。この3つを別々に見ると、仮説と事実の境目が見えてきます。」

04
Differential Screening

頚部の力みは、本当に頚部が原因か。

頚部の力みや頭部前方位を見たら、まず原因を切り分けます。頚部は、原因ではなく結果のことも多いからです。

鑑別疾患 共通点 鑑別ポイント 参考検査
体幹機能低下による代償 頭部前方位・頚部を固める 体幹を支持すると力みが減る。座位保持で力みが増す 体幹支持の前後での比較、Trunk Impairment Scale
呼吸・循環器の問題 息切れ・努力呼吸 安静時から呼吸数やSpO2に異常がある。聴診で所見がある SpO2、呼吸数、聴診。胸部画像は医師に確認
頚椎疾患・頚部痛 頚部のこわばり・可動域制限 疼痛部位が明確。上肢のしびれなど神経症状を伴う 頚椎可動域、Spurling test。必要時は医師へ
中枢性の筋緊張異常(痙縮など) 筋緊張の亢進・動作の妨げ 速度依存性の抵抗がある。他部位にも痙縮がある MAS(頚部への適用は限定的)、他部位の筋緊張評価
視覚・前庭・空間認知の問題 頭部の傾き・回旋・力み 注視や追視で頭位が変わる。垂直判断に偏りがある 追視・注視の観察、SVV(主観的視覚的垂直位)
頚部は「原因」とは限らない。代償の結果かもしれない、と一度疑います。
EVIDENCE
根拠と限界(第4章)

整形外科的要因の参考[観察研究]:Jull GAら(J Manipulative Physiol Ther, 2008)の報告です。頚部痛のある人は、深部頚部屈筋の活動が低下し、表層筋で代償しやすいとCCFTで整理されました。頚部痛の合併は、力みの原因を考える手がかりになります。脳卒中への直接の適用は未検証です。

05
Assessment & Scoring

評価は、緊張・姿勢・呼吸の3方向から。

評価は、緊張・姿勢・呼吸の3方向から行います。頚部だけを点数化するより、複数の情報を同じ条件で追うほうが実用的です。

Observation
観察・触診で見る
— 尺度がなくても今日からできる
→筋硬結・圧痛点(トリガーポイント)の有無
→頚部筋の対称性・柔軟性・筋の質感
→頭部前方位・側屈・回旋などの変位
→頚部・体幹・骨盤のアライメント
→努力呼吸時の胸鎖乳突筋・斜角筋の活動
Measurement
尺度・測定で見る
— 経過を数字で追う
→MAS(筋緊張の抵抗)
→CCFT(深部頚部屈筋の選択的活動)
→頚部の屈曲・伸展・回旋・側屈の可動域
→呼吸数・SpO2・MVV
→腹式呼吸か胸式呼吸かの観察

尺度1:修正アシュワーススケール(MAS)[専門家合意]

MAS(筋緊張の抵抗を6段階で評価する尺度)は、主に四肢で使われてきました。頚部筋への適用は限定的なので、経過を追う補助として使います。

項目 採点基準 カットオフ値 解釈
0 筋緊張の増加なし 公式のカットオフ値はなし 抵抗なし。正常範囲
1 可動域の終わりで、引っかかりと解放、または最小の抵抗 1以上で「抵抗あり」とみなす運用が多い(専門家合意) 軽度の緊張亢進
1+ 引っかかりの後、可動域の半分未満で最小の抵抗が続く — 軽度〜中等度。抵抗が可動域の中盤まで及ぶ
2 可動域の大部分で緊張が明らかに増加。他動運動は容易 — 中等度の緊張亢進
3 緊張が著しく増加。他動運動が困難 — 高度の緊張亢進
4 患部が屈曲位または伸展位で硬直 — 固縮に近い状態。医師へ報告

尺度2:頭頚部屈曲テスト(CCFT)[専門家合意]

CCFT(圧バイオフィードバックユニットで、深部頚部屈筋の選択的な活動を段階的に見る検査)です。背臥位で頚部の後ろに圧計を置き、20mmHgに設定します。頷き運動で目標圧まで上げ、10秒保持します。

項目 採点基準 カットオフ値 解釈
準備 背臥位・膝立て。頚部後面に圧計を置き、20mmHgに設定 — ベースライン
段階1(22mmHg) 頷き運動で22mmHgまで上げ、10秒保持(最大10回) 脳卒中での基準値は未確立 深部屈筋の最小限の活動
段階2(24mmHg) 同様に24mmHgで10秒保持(最大10回) 同上 活動が徐々に高まっている
段階3(26mmHg) 同様に26mmHgで10秒保持(最大10回) 目安:健常者は26〜30mmHgまで保持できるとされる(専門家合意) 臨床上の目安ライン
段階4(28mmHg) 同様に28mmHgで10秒保持(最大10回) 同上 選択的な活動が高い
段階5(30mmHg) 同様に30mmHgで10秒保持(最大10回) 同上 最高段階
代償の判定 胸鎖乳突筋・前斜角筋の収縮、頭部の引き込み、息こらえがないか観察 代償が出たら、その段階を上限とする その人の現在の上限を示す

呼吸・動作の指標[専門家合意]

項目 採点基準(測定方法) カットオフ値 解釈
安静時呼吸数 座位で30〜60秒観察し、1分間の回数を計測 健常成人の安静時は、概ね12〜20回/分 増加は努力呼吸や呼吸負荷のサイン。前後で比較する
SpO2 パルスオキシメータで、安静時と呼吸練習中に測定 中止基準は施設・医師の指示に従う 低下があれば中止し、報告する
MVV(最大随意換気量) 12〜15秒間の最大努力呼吸を、1分換算する(L/分) 脳卒中での基準値は未確立 個人内の前後比較。原著の主要アウトカム
呼吸補助筋の活動 努力呼吸時の胸鎖乳突筋・斜角筋を視診・触診 基準値なし 過活動は代償の指標(専門家合意)
MEASUREMENT PROPERTIES
測定特性(信頼性・妥当性・MCID)

MAS[観察研究]:Bohannon RW, Smith MB(Phys Ther, 1987)が評価者間信頼性を報告しました。検討は主に肘屈筋など四肢筋で、頚部筋の信頼性は示されていません。MCID(臨床的最小変化量)は確立していません。

CCFT[専門家合意]:Jull GAら(J Manipulative Physiol Ther, 2008)が手技と解釈を整理しました。頚部痛者や健常者での検討が中心で、脳卒中での妥当性とMCIDは未検証です。

MVV[単独RCT]:原著(慢性期脳卒中30名)が主要アウトカムに用いました。脳卒中でのMCIDは確立していません。個人内の前後比較で解釈します。

06
Intervention Evidence

頚部安定化と呼吸再訓練を、どう組み合わせるか。

根拠の中心は、慢性期脳卒中患者30名を対象にしたRCTです。実験群には、通常の運動治療と呼吸再訓練に、頚部安定化運動を加えました。

原著は、The effects of the neck stabilization exercise on the muscle activity of trunk respiratory muscles and maximum voluntary ventilation of chronic stroke patients(PubMed PMID:30958329)です。

01
対象と割り付け単独RCT

慢性期脳卒中患者40名を、20名ずつの2群にランダム化しました。各群5名が脱落し、15名ずつ計30名で解析しています。

02
実験群と対照群の介入15分+15分

実験群は、リハビリ運動治療に加えて、頚部安定化運動15分と呼吸再訓練15分を行いました。対照群は、同じ運動治療に加えて呼吸再訓練30分です。頻度は1日30分、週5回、6週間でした。

03
頚部安定化運動の中身深部頚部屈筋

深部頚部屈筋(頭長筋・頸長筋)の強化運動です。胸鎖乳突筋と前斜角筋は、弛緩した状態に保ちます。具体的な回数と強度は原著で確認してください。臨床では、頷き運動を圧バイオフィードバックで行う方法が使えます。開始は20mmHgです。22mmHgから30mmHgまで、2mmHgずつ上げます。各段階で10秒保持を最大10回行います(CCFTの手順、専門家合意)。疲労や呼吸数の上昇があれば、段階を戻します。

04
呼吸再訓練から動作へ動作へ

横隔膜呼吸を先に行い、補助呼吸筋の過活動を抑えます。次に、座位や立位で頭部の中立位を保ったまま、体幹を回旋します。目安は5〜10回×2セットです(本記事の提案)。ゆっくり始め、速度と負荷を上げます。

EVIDENCE
介入のエビデンス

原著の結果[単独RCT]:慢性期脳卒中30名(実験群15名・対照群15名)。両群で、呼吸筋活動とMVVが介入前後で有意に増加しました。増加は実験群で有意に大きい結果でした。介入は1日30分・週5回・6週間です。

解釈上の限界[単独RCT]:小規模で、40名中10名(25%)が脱落しています。歩行や息切れなどの臨床アウトカムは、元記事に記載がありません。追試が望まれます。

呼吸筋トレーニングの系統的レビュー[SR/MA]:Menezes KKら(J Physiother, 2016)の報告です。脳卒中後の呼吸筋トレーニングは、呼吸筋力を高め、呼吸器合併症を減らすとされました。Fabero-Garrido Rら(Ann Phys Rehabil Med, 2022)の報告では、短期の運動耐容能と呼吸筋機能が改善しました。統合対象数は原著で確認してください。これらは負荷デバイスを使う呼吸筋トレーニングが中心で、頚部安定化の根拠ではありません。

原著論文の結果図:介入前後・群間での呼吸筋活動とMVVの比較(1)

補助的アプローチ(根拠は限定的)[専門家合意]

手技 パラメータ 狙い 注意点
リラクゼーション(静かな環境+呼吸リズム。スローテンポの音楽を併用可) 1回10〜15分、1日1〜2回(元記事) 補助呼吸筋の過活動を下げる 頚部への圧迫は軽く。頚動脈や腕神経叢に配慮する
筋膜リリース(ソフトローラー等) 1日2回、各部位5分(元記事) 胸鎖乳突筋・斜角筋の緊張を下げる リリース後は、必ず動作練習まで行う
セラバンドによる軽負荷の協調練習 5〜10回×2セット(本記事の目安) 頭部の屈曲・伸展・回旋の制御向上 可動範囲を制限し、過伸展を避ける
鏡を使った視覚フィードバック 1回約5分(本記事の目安) 頚部の中立位と左右の偏位を修正 頭部をゆっくり回旋し、変化を観察する
タッピング・ブラッシング 1部位1〜2分(本記事の目安) 感覚入力で筋活動を引き出す 動作練習と組み合わせる

STROKE LAB代表 金子唯史
Message from CEO
首や呼吸のことも、一緒に考えましょう。

「歩くと息が苦しい」「首が力んでしまう」。そんな小さな違和感の裏に、動作の手がかりが隠れていることがあります。いまの状態を、一緒に整理してみませんか。

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07
Team Approach

首と呼吸は、多職種で分けて見る。

頚部と呼吸の問題は、1つの職種だけでは見えにくいテーマです。場面ごとに、見る人を分けると原因が浮かび上がります。

職種ごとの役割分担[専門家合意]

職種 この症状における評価項目 主な介入内容 他職種との連携ポイント
PT 頚部・体幹・骨盤のアライメント、呼吸数、歩行時の息切れ、SpO2 頚部安定化運動、横隔膜呼吸、歩行と呼吸の同期 中止基準(SpO2・疼痛)を看護師・医師と共有する
OT 座位や作業中の頭頚部姿勢、上肢使用時の肩甲帯の固定 姿勢調整、机上・食事動作の環境調整 姿勢が崩れる場面をPTに伝える
ST 嚥下・発声時の頚部姿勢、呼気の支え 姿勢を整えたうえでの嚥下・発声練習 頚部の力みで嚥下や発声が変わる場面を共有する
看護師 日中の呼吸数、SpO2、ベッドや車いす上の頭頚部の位置 体位調整、ポジショニング、病棟での呼吸観察 病棟で息が上がる場面をリハに伝える
医師 呼吸器・循環器・頚椎疾患の除外、痙縮治療の適応 必要な検査、リスク管理、薬剤の調整 運動負荷の許容範囲と中止基準を確認する
MSW 退院後の継続リハの資源、家族背景、費用の相談 制度・サービスの調整、社会資源の紹介 生活期の継続手段(通所・訪問・自費リハ)を共有する

環境調整と自主トレ

→静かな環境を整えると、リラクゼーションが行いやすくなります。
→座位では、頭部が前方へ落ちない高さのヘッドレストやクッションを検討します。
→鏡を置くと、頚部の中立位を本人が確認できます。
→自主トレは、簡単な頚部ストレッチと深呼吸から始め、教育資料を渡します。
Clinical Insight

「首の力みに気づいたら、看護師さんに『病棟でも息が上がる場面はありますか』と聞いてみてください。」

「PTは動作中、STは食事中の首の位置を共有すると、原因が見えやすくなります。」

EVIDENCE
根拠と限界(第7章)

チーム医療の位置づけ[専門家合意]:日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023]」の内容です。脳卒中ユニットなど、組織化された多職種による医療とリハビリテーションを推奨しています。頚部と呼吸に特化した役割分担の研究は、本記事では確認できていません。上の表は専門家合意です。

08
Pitfalls & Clinical Reasoning

頚部アプローチで、新人がつまずく場面。

頚部筋へのアプローチで、新人がつまずきやすい場面を先に共有します。ここを知っておくだけで、遠回りが減ります。

Pitfalls — よくある失敗パターン
新人臨床家が陥りやすい3つのつまずきポイント
!
深部を狙うつもりが、表層で代償している:頷きではなく頭部を引き込むと、胸鎖乳突筋が浮き出ます。強度を下げ、20mmHgから22mmHgの段階で、表層筋を触診しながら進めます。
!
MASの数字だけで頚部を評価する:MASは四肢筋向けの尺度で、頚部筋での信頼性は示されていません。触診・姿勢・呼吸の観察を併用し、同じ条件で記録します。
!
頚部だけを見て、体幹と骨盤を見落とす:首の固定は、体幹の弱さの代償かもしれません。体幹を支持したときに力みが変わるかを、必ず確認します。

臨床判断のコツ:10の視点[専門家合意]

視点 確認すること 実践例
頚部と胸郭の連動 胸郭の柔軟性・動きも併せて評価する 頚部ストレッチに、胸郭のモビリティ運動を組み合わせる
横隔膜との連携 呼吸と頚部筋の緊張を同時に評価する 横隔膜呼吸を先に行い、頚部の補助呼吸を最小化する
左右差 麻痺側の筋力低下と非麻痺側の過緊張 麻痺側は筋の再教育、非麻痺側はリラクゼーションを行う
頚椎の安定性 中立位を保持できるか 頚部屈筋・伸筋の中立位保持練習と、静的・動的な姿勢調整
頚部伸展筋の過緊張 後頭部から肩甲骨上部の緊張 姿勢調整と組み合わせた動的ストレッチ
呼吸と歩行の同期 歩行中の呼吸のリズム 呼吸を意識したステップ練習、ペーストレーニング
先行随伴性姿勢調整(APA:動作の直前に姿勢が自動的に整う働き) 歩行時に頚部が過剰に働いていないか 歩行前のリーチ動作で、骨盤と体幹の準備を促す
固有受容感覚 頚部の位置を感じ取れるか 閉眼で頚部の動きを感じる練習を行う
呼吸補助筋の協調 頚部・僧帽筋・胸鎖乳突筋・斜角筋の協調 胸郭と頚部の共同運動。軽い抵抗バンドや小負荷ダンベルを使う
患者教育 自己管理ができているか 簡単な頚部ストレッチと深呼吸を自主トレにし、資料を渡す
Mentor’s Voice

「首は『緩めれば終わり』ではありません。緩めた直後に、その首で動いてもらってください。」

「うまくいかない日は、強度を1段階戻します。戻せるのが、いい臨床家です。」

頚部を変えたいのではなく、息切れせずに動ける時間を延ばしたい。ゴールはいつも動作です。
EVIDENCE
根拠と限界(第8章)

頚部屈筋の先行活動[観察研究]:Falla D, Jull G, Hodges PW(Exp Brain Res, 2004)の報告です。慢性頚部痛のある人では、上肢運動時の頚部屈筋のフィードフォワード活動が遅れました。対象は頚部痛者で、脳卒中では未検証です。動作前の準備という考え方の参考にとどめます。

9
FAQ

現場で聞かれる6つの疑問。

Q. 頚部安定化運動は、脳卒中後の呼吸機能を改善しますか?
A.

慢性期脳卒中患者30名(解析対象)のRCTがあります。頚部安定化運動と呼吸再訓練を併用した群を、呼吸再訓練のみの群と比べました。併用群は、呼吸筋活動と最大随意換気量(MVV)の増加が大きい結果でした。介入は1日30分、週5回、6週間でした。ただし小規模な単独研究のため、追試が必要です。

Q. 頚部筋の過緊張は、修正アシュワーススケール(MAS)で評価できますか?
A.

MASは主に四肢の筋で信頼性が検討されてきた尺度で、頚部筋への適用は確立していません。触診、姿勢観察、努力呼吸時の補助呼吸筋の観察と併用し、同じ条件で経時的に比べる使い方が現実的です。

Q. 深部頚部屈筋の運動で、胸鎖乳突筋が力んでしまいます。どうすればよいですか?
A.

負荷を下げて、頷き運動の強さを小さくします。胸鎖乳突筋を触診しながら、圧バイオフィードバックで20mmHgから22mmHgへ段階的に進めます。表層筋の収縮が触れたら、段階を戻して再開します。

Q. 急性期でも頚部安定化運動を行ってよいですか?
A.

原著の対象は慢性期脳卒中患者で、急性期での有効性は検証されていません。実施する場合は、医師の指示と全身状態、血圧、SpO2の確認のもと、低負荷から始めます。この点は専門家合意にとどまります。

Q. 呼吸練習中に、SpO2などのモニタリングは必要ですか?
A.

必要です。呼吸練習中はSpO2を測定し、低下がないことを確認します。痛みや不快感も頻繁に確認します。中止基準は、施設や医師の指示に従ってください。

Q. 筋膜リリースなどの徒手的な介入だけで、呼吸は改善しますか?
A.

本記事で扱った原著は運動介入の研究で、徒手的介入単独の根拠は示されていません。筋膜リリースは補助的手段と位置づけ、実施後に動作練習まで続ける構成を勧めます。この点は専門家合意です。

11
Our Program

STROKE LABのプログラム。

ここからは、ご本人・ご家族に向けた案内です。退院後も「もっと良くしたい」と考える方のために、STROKE LABのプログラムをご紹介します。

公的保険のリハビリには、日数や時間の上限があります。「もう数か月たったから」とあきらめる前に、自費リハビリ(保険外リハビリ)という選択肢があります。時間・内容・頻度を自由に設計できるリハビリです。

STROKE LABのリハビリ施設の様子

— STROKE LABの施設の様子。オーダーメイドのプランで、集中的にサポートします。

Our Strengths
STROKE LABの強み
— 神経リハビリに特化
→数多くのベストセラー著者が監修する、神経リハ特化メソッド
→エビデンスに基づく熟練者の個別プランと、動画フィードバックで変化を「見える化」
→御茶ノ水駅から徒歩6分の東京拠点と、大阪店、オンライン・訪問で対応
What We Support
取り組める内容
— 保険リハビリとの併用も可能
→麻痺や動作を集中的に改善したい
→転倒や再発を予防するための体力をつけたい
→趣味や旅行を目標に、体力をつけたい
→脳卒中・パーキンソン病・脳性麻痺・脊髄損傷など神経疾患全般
Evidence
「もう遅い」とは限らない研究があります。

Hatem SMら(2016)のレビューでは、発症後6か月以降でも、リハビリで上肢機能が有意に改善したと報告されています。David FJら(2015)は、パーキンソン病の24か月RCT(n=48)を報告しました。運動によって、注意力とワーキングメモリが有意に改善しています。

— 利用者様の変化を撮影した動画です。実際のリハビリと変化をご覧いただけます。

STROKE LABの施設・メニュー全体の紹介バナー

— 当施設は、脳神経疾患や整形外科疾患のスペシャリストが対応します。詳しくはHPメニューをご参照ください。

Voice from Mentors

「【場面】歩行練習の10分ごろに首がすくみ、息が上がる方を担当しました。【判断】首だけでなく体幹の支えも疑い、座位で体幹を支持して、頭部の位置と呼吸数を比べました。頷き運動と横隔膜呼吸は、別々に練習しました。【結果・学び】力みを自分で確認できるようになり、休憩を挟む間隔が延びました。首の力みは、原因ではなく結果かもしれません。」— STROKE LAB 理学療法士(脳卒中・神経リハビリ領域)

「【場面】非麻痺側の首と肩が、常に固まっている方でした。【判断】筋膜リリースだけでは戻りが早いため、リリース後すぐに、頭部を中立に保つ体幹回旋の練習へ切り替えました。【結果・学び】緩めた直後に動作で使うと、力みが再発しにくくなりました。緩めるだけで終わらせないことが大切です。」— STROKE LAB 理学療法士(脳卒中・神経リハビリ領域)

Message from CEO
退院後も、変わりたいと思うなら、
諦めないでください。
STROKE LAB代表 金子唯史 ポートレート

脳卒中のリハビリは、退院で終わりではありません。保険リハビリの上限が来ても、身体と向き合う時間を続けたい方がいます。

STROKE LABは、そんな方のための自費リハビリ施設です。神経疾患に精通した療法士が、あなたの状態と生活に合わせて、リハビリを設計します。「まだ間に合うかもしれない」という直感を、大切にしてください。

まずは初回20分の無料体験で、お悩みをお聞かせください。1回ごとのお支払いで、やめたいときにやめられます。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

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References

参考文献。

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10 日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会 編. 脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023]. 協和企画. 2023.
11 金子唯史. 脳卒中の動作分析. 医学書院. 2018.

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