脳卒中後の頚部筋安定化は呼吸を改善する?評価・介入・エビデンス
頚部筋の安定化は、脳卒中後の呼吸を変えられるのか。
首の力みは、呼吸や歩行に響いているのか。新人のあなたが抱くこの疑問に、慢性期脳卒中30名のRCTを軸に答えます。効果の大きさと限界、評価と介入の手順、つまずきやすい点までを整理しました。結論は「有望だが、根拠はまだ小規模」です。
要点5項目。
歩くと息が上がる。首がすくんでいないか。
70歳男性。脳卒中による右片麻痺で、生活期(発症後8か月の例示設定)です。重症度は、Brunnstrom stage(BRS)が上肢Ⅳ・手指Ⅳ・下肢Ⅳ、FIM運動項目が例示で72点です。主訴は「歩くと息が苦しくなり、首が疲れる」です。
初回評価では、頭部前方位と頚部筋の過緊張を認めました。努力呼吸のとき、胸鎖乳突筋と斜角筋の活動が目立ちます。安静時の呼吸数は18回/分でした。
※元記事の症例記述を教育用に再構成しました。BRS・FIM・発症後期間は例示値で、元記事に記載はありません。実症例に差し替えて使ってください。
臨床では、体幹の弱さを補うために首を固めている患者さんに出会います。頭頚部の位置のせいか、歩行が長くなると息が苦しくなる方もいます。
頚部筋は、補助呼吸筋(努力呼吸のときに呼吸を助ける筋:胸鎖乳突筋・斜角筋など)としても働きます。首の状態は、呼吸と動作の両方に関わる可能性があります。
この記事は、先輩から後輩への引き継ぎメモです。根拠になる研究と、その限界の両方をお伝えします。
頚部筋は、首を支えるだけの筋ではない。
頚部筋には、呼吸と姿勢の2つの役割があります。
胸鎖乳突筋や斜角筋は、補助呼吸筋として働きます。安静呼吸ではほとんど活動せず、努力呼吸のときに活動が高まります。
頚部筋は、頚椎の安定性にも関わります。全身の姿勢制御にも寄与し、頭部の位置異常は脊柱全体に影響しうるとされます。

脳卒中後の頚部筋は、収縮が足りない「低緊張」と、収縮が続く「過緊張」の両方向に崩れます。どちらも頭部の位置を変え、呼吸と動作に影響すると考えられています。
脳卒中後に起こりうる3つの変化[専門家合意]
頚部筋が十分に収縮せず、頭部が前方へ落ち込みます。呼吸効率の低下や、視覚情報の取得しにくさにつながると説明されます。
頚部筋の持続的な収縮で、硬直や動作の妨げが生じます。斜角筋が過緊張だと胸郭が広がりにくく、呼吸が浅くなるとされます。
麻痺側では筋力が低下し、非麻痺側では過緊張が目立つことが多いとされます。左右を必ず比べて評価します。
動作への影響として語られる4点[専門家合意]
頚部筋異常の有病率などの疫学データは、本記事の根拠には含まれていません。数値は確立していないため、ここでは示しません。
呼吸筋力の低下[観察研究]:Teixeira-Salmela LFら(Arch Phys Med Rehabil, 2005)の報告です。地域在住の慢性期脳卒中者で、最大吸気圧・最大呼気圧の低下と、胸腹部運動の変化がみられました。対象者数は原著で確認してください。頚部筋との関連は、直接検討されていません。
原著の背景[単独RCT]:不安定な頚部姿勢や筋のアンバランス、分節の不安定性は、頚部痛につながります。呼吸機能も下げる可能性があるとされています(原著RCTの背景記述)。
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首の力みが呼吸を浅くする、その仮説。
脳卒中後の頚部筋と呼吸の関係を、直接示した研究は限られます。以下は臨床で使われる説明モデルとして読んでください。
神経学的な視点[専門家合意]
大脳皮質や脳幹の損傷は、頚部筋の緊張制御を乱す可能性があります。呼吸中枢は延髄にあり、その障害は呼吸リズムや補助呼吸筋の活動パターンを変えるとされます。
筋紡錘(筋の長さのセンサー)やゴルジ腱器官(筋の張力のセンサー)の活動異常も、関わると考えられます。
責任病巣は、一つに特定されていません。皮質・皮質下・脳幹のどの損傷でも、頚部筋の緊張は変わりうるとされます。
バイオメカニクスの視点[専門家合意]
頚部筋が過緊張だと、肋骨の拡張が妨げられ、胸郭の動きが小さくなる可能性があります。頭部前方位が、横隔膜や外肋間筋の負担を増やすという説明もあります。
脳の可塑性の視点[専門家合意]
急性期の過剰な代償が、慢性期に固定化するという見方があります。慢性的な過緊張が、皮質-脳幹回路の異常を強めるという説明もあります。
ただし、これらを脳卒中患者で直接確かめた研究は、本記事で確認できた範囲では多くありません。
深部頚部屈筋の役割[専門家合意]:Jull GAら(J Manipulative Physiol Ther, 2008)の報告です。頭長筋・頸長筋などの深部頚部屈筋は、頚椎の分節的な安定に関わります。その機能を見る頭頚部屈曲テスト(CCFT)が整理されました。対象は主に頚部痛者で、脳卒中での検証は限られます。
「首が力んでいる=首が原因、と決めないでください。まず、何が先かを1つずつ分けて確かめます。」
「呼吸数、触診、姿勢。この3つを別々に見ると、仮説と事実の境目が見えてきます。」
頚部の力みは、本当に頚部が原因か。
頚部の力みや頭部前方位を見たら、まず原因を切り分けます。頚部は、原因ではなく結果のことも多いからです。

| 鑑別疾患 | 共通点 | 鑑別ポイント | 参考検査 |
|---|---|---|---|
| 体幹機能低下による代償 | 頭部前方位・頚部を固める | 体幹を支持すると力みが減る。座位保持で力みが増す | 体幹支持の前後での比較、Trunk Impairment Scale |
| 呼吸・循環器の問題 | 息切れ・努力呼吸 | 安静時から呼吸数やSpO2に異常がある。聴診で所見がある | SpO2、呼吸数、聴診。胸部画像は医師に確認 |
| 頚椎疾患・頚部痛 | 頚部のこわばり・可動域制限 | 疼痛部位が明確。上肢のしびれなど神経症状を伴う | 頚椎可動域、Spurling test。必要時は医師へ |
| 中枢性の筋緊張異常(痙縮など) | 筋緊張の亢進・動作の妨げ | 速度依存性の抵抗がある。他部位にも痙縮がある | MAS(頚部への適用は限定的)、他部位の筋緊張評価 |
| 視覚・前庭・空間認知の問題 | 頭部の傾き・回旋・力み | 注視や追視で頭位が変わる。垂直判断に偏りがある | 追視・注視の観察、SVV(主観的視覚的垂直位) |
整形外科的要因の参考[観察研究]:Jull GAら(J Manipulative Physiol Ther, 2008)の報告です。頚部痛のある人は、深部頚部屈筋の活動が低下し、表層筋で代償しやすいとCCFTで整理されました。頚部痛の合併は、力みの原因を考える手がかりになります。脳卒中への直接の適用は未検証です。
評価は、緊張・姿勢・呼吸の3方向から。
評価は、緊張・姿勢・呼吸の3方向から行います。頚部だけを点数化するより、複数の情報を同じ条件で追うほうが実用的です。

尺度1:修正アシュワーススケール(MAS)[専門家合意]
MAS(筋緊張の抵抗を6段階で評価する尺度)は、主に四肢で使われてきました。頚部筋への適用は限定的なので、経過を追う補助として使います。
| 項目 | 採点基準 | カットオフ値 | 解釈 |
|---|---|---|---|
| 0 | 筋緊張の増加なし | 公式のカットオフ値はなし | 抵抗なし。正常範囲 |
| 1 | 可動域の終わりで、引っかかりと解放、または最小の抵抗 | 1以上で「抵抗あり」とみなす運用が多い(専門家合意) | 軽度の緊張亢進 |
| 1+ | 引っかかりの後、可動域の半分未満で最小の抵抗が続く | — | 軽度〜中等度。抵抗が可動域の中盤まで及ぶ |
| 2 | 可動域の大部分で緊張が明らかに増加。他動運動は容易 | — | 中等度の緊張亢進 |
| 3 | 緊張が著しく増加。他動運動が困難 | — | 高度の緊張亢進 |
| 4 | 患部が屈曲位または伸展位で硬直 | — | 固縮に近い状態。医師へ報告 |
尺度2:頭頚部屈曲テスト(CCFT)[専門家合意]
CCFT(圧バイオフィードバックユニットで、深部頚部屈筋の選択的な活動を段階的に見る検査)です。背臥位で頚部の後ろに圧計を置き、20mmHgに設定します。頷き運動で目標圧まで上げ、10秒保持します。

| 項目 | 採点基準 | カットオフ値 | 解釈 |
|---|---|---|---|
| 準備 | 背臥位・膝立て。頚部後面に圧計を置き、20mmHgに設定 | — | ベースライン |
| 段階1(22mmHg) | 頷き運動で22mmHgまで上げ、10秒保持(最大10回) | 脳卒中での基準値は未確立 | 深部屈筋の最小限の活動 |
| 段階2(24mmHg) | 同様に24mmHgで10秒保持(最大10回) | 同上 | 活動が徐々に高まっている |
| 段階3(26mmHg) | 同様に26mmHgで10秒保持(最大10回) | 目安:健常者は26〜30mmHgまで保持できるとされる(専門家合意) | 臨床上の目安ライン |
| 段階4(28mmHg) | 同様に28mmHgで10秒保持(最大10回) | 同上 | 選択的な活動が高い |
| 段階5(30mmHg) | 同様に30mmHgで10秒保持(最大10回) | 同上 | 最高段階 |
| 代償の判定 | 胸鎖乳突筋・前斜角筋の収縮、頭部の引き込み、息こらえがないか観察 | 代償が出たら、その段階を上限とする | その人の現在の上限を示す |
呼吸・動作の指標[専門家合意]
| 項目 | 採点基準(測定方法) | カットオフ値 | 解釈 |
|---|---|---|---|
| 安静時呼吸数 | 座位で30〜60秒観察し、1分間の回数を計測 | 健常成人の安静時は、概ね12〜20回/分 | 増加は努力呼吸や呼吸負荷のサイン。前後で比較する |
| SpO2 | パルスオキシメータで、安静時と呼吸練習中に測定 | 中止基準は施設・医師の指示に従う | 低下があれば中止し、報告する |
| MVV(最大随意換気量) | 12〜15秒間の最大努力呼吸を、1分換算する(L/分) | 脳卒中での基準値は未確立 | 個人内の前後比較。原著の主要アウトカム |
| 呼吸補助筋の活動 | 努力呼吸時の胸鎖乳突筋・斜角筋を視診・触診 | 基準値なし | 過活動は代償の指標(専門家合意) |
MAS[観察研究]:Bohannon RW, Smith MB(Phys Ther, 1987)が評価者間信頼性を報告しました。検討は主に肘屈筋など四肢筋で、頚部筋の信頼性は示されていません。MCID(臨床的最小変化量)は確立していません。
CCFT[専門家合意]:Jull GAら(J Manipulative Physiol Ther, 2008)が手技と解釈を整理しました。頚部痛者や健常者での検討が中心で、脳卒中での妥当性とMCIDは未検証です。
MVV[単独RCT]:原著(慢性期脳卒中30名)が主要アウトカムに用いました。脳卒中でのMCIDは確立していません。個人内の前後比較で解釈します。
頚部安定化と呼吸再訓練を、どう組み合わせるか。
根拠の中心は、慢性期脳卒中患者30名を対象にしたRCTです。実験群には、通常の運動治療と呼吸再訓練に、頚部安定化運動を加えました。
原著は、The effects of the neck stabilization exercise on the muscle activity of trunk respiratory muscles and maximum voluntary ventilation of chronic stroke patients(PubMed PMID:30958329)です。
慢性期脳卒中患者40名を、20名ずつの2群にランダム化しました。各群5名が脱落し、15名ずつ計30名で解析しています。
実験群は、リハビリ運動治療に加えて、頚部安定化運動15分と呼吸再訓練15分を行いました。対照群は、同じ運動治療に加えて呼吸再訓練30分です。頻度は1日30分、週5回、6週間でした。
深部頚部屈筋(頭長筋・頸長筋)の強化運動です。胸鎖乳突筋と前斜角筋は、弛緩した状態に保ちます。具体的な回数と強度は原著で確認してください。臨床では、頷き運動を圧バイオフィードバックで行う方法が使えます。開始は20mmHgです。22mmHgから30mmHgまで、2mmHgずつ上げます。各段階で10秒保持を最大10回行います(CCFTの手順、専門家合意)。疲労や呼吸数の上昇があれば、段階を戻します。
横隔膜呼吸を先に行い、補助呼吸筋の過活動を抑えます。次に、座位や立位で頭部の中立位を保ったまま、体幹を回旋します。目安は5〜10回×2セットです(本記事の提案)。ゆっくり始め、速度と負荷を上げます。
原著の結果[単独RCT]:慢性期脳卒中30名(実験群15名・対照群15名)。両群で、呼吸筋活動とMVVが介入前後で有意に増加しました。増加は実験群で有意に大きい結果でした。介入は1日30分・週5回・6週間です。
解釈上の限界[単独RCT]:小規模で、40名中10名(25%)が脱落しています。歩行や息切れなどの臨床アウトカムは、元記事に記載がありません。追試が望まれます。
呼吸筋トレーニングの系統的レビュー[SR/MA]:Menezes KKら(J Physiother, 2016)の報告です。脳卒中後の呼吸筋トレーニングは、呼吸筋力を高め、呼吸器合併症を減らすとされました。Fabero-Garrido Rら(Ann Phys Rehabil Med, 2022)の報告では、短期の運動耐容能と呼吸筋機能が改善しました。統合対象数は原著で確認してください。これらは負荷デバイスを使う呼吸筋トレーニングが中心で、頚部安定化の根拠ではありません。

補助的アプローチ(根拠は限定的)[専門家合意]
| 手技 | パラメータ | 狙い | 注意点 |
|---|---|---|---|
| リラクゼーション(静かな環境+呼吸リズム。スローテンポの音楽を併用可) | 1回10〜15分、1日1〜2回(元記事) | 補助呼吸筋の過活動を下げる | 頚部への圧迫は軽く。頚動脈や腕神経叢に配慮する |
| 筋膜リリース(ソフトローラー等) | 1日2回、各部位5分(元記事) | 胸鎖乳突筋・斜角筋の緊張を下げる | リリース後は、必ず動作練習まで行う |
| セラバンドによる軽負荷の協調練習 | 5〜10回×2セット(本記事の目安) | 頭部の屈曲・伸展・回旋の制御向上 | 可動範囲を制限し、過伸展を避ける |
| 鏡を使った視覚フィードバック | 1回約5分(本記事の目安) | 頚部の中立位と左右の偏位を修正 | 頭部をゆっくり回旋し、変化を観察する |
| タッピング・ブラッシング | 1部位1〜2分(本記事の目安) | 感覚入力で筋活動を引き出す | 動作練習と組み合わせる |

「歩くと息が苦しい」「首が力んでしまう」。そんな小さな違和感の裏に、動作の手がかりが隠れていることがあります。いまの状態を、一緒に整理してみませんか。
首と呼吸は、多職種で分けて見る。
頚部と呼吸の問題は、1つの職種だけでは見えにくいテーマです。場面ごとに、見る人を分けると原因が浮かび上がります。
職種ごとの役割分担[専門家合意]
| 職種 | この症状における評価項目 | 主な介入内容 | 他職種との連携ポイント |
|---|---|---|---|
| PT | 頚部・体幹・骨盤のアライメント、呼吸数、歩行時の息切れ、SpO2 | 頚部安定化運動、横隔膜呼吸、歩行と呼吸の同期 | 中止基準(SpO2・疼痛)を看護師・医師と共有する |
| OT | 座位や作業中の頭頚部姿勢、上肢使用時の肩甲帯の固定 | 姿勢調整、机上・食事動作の環境調整 | 姿勢が崩れる場面をPTに伝える |
| ST | 嚥下・発声時の頚部姿勢、呼気の支え | 姿勢を整えたうえでの嚥下・発声練習 | 頚部の力みで嚥下や発声が変わる場面を共有する |
| 看護師 | 日中の呼吸数、SpO2、ベッドや車いす上の頭頚部の位置 | 体位調整、ポジショニング、病棟での呼吸観察 | 病棟で息が上がる場面をリハに伝える |
| 医師 | 呼吸器・循環器・頚椎疾患の除外、痙縮治療の適応 | 必要な検査、リスク管理、薬剤の調整 | 運動負荷の許容範囲と中止基準を確認する |
| MSW | 退院後の継続リハの資源、家族背景、費用の相談 | 制度・サービスの調整、社会資源の紹介 | 生活期の継続手段(通所・訪問・自費リハ)を共有する |
環境調整と自主トレ
「首の力みに気づいたら、看護師さんに『病棟でも息が上がる場面はありますか』と聞いてみてください。」
「PTは動作中、STは食事中の首の位置を共有すると、原因が見えやすくなります。」
チーム医療の位置づけ[専門家合意]:日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023]」の内容です。脳卒中ユニットなど、組織化された多職種による医療とリハビリテーションを推奨しています。頚部と呼吸に特化した役割分担の研究は、本記事では確認できていません。上の表は専門家合意です。
頚部アプローチで、新人がつまずく場面。
頚部筋へのアプローチで、新人がつまずきやすい場面を先に共有します。ここを知っておくだけで、遠回りが減ります。

臨床判断のコツ:10の視点[専門家合意]
| 視点 | 確認すること | 実践例 |
|---|---|---|
| 頚部と胸郭の連動 | 胸郭の柔軟性・動きも併せて評価する | 頚部ストレッチに、胸郭のモビリティ運動を組み合わせる |
| 横隔膜との連携 | 呼吸と頚部筋の緊張を同時に評価する | 横隔膜呼吸を先に行い、頚部の補助呼吸を最小化する |
| 左右差 | 麻痺側の筋力低下と非麻痺側の過緊張 | 麻痺側は筋の再教育、非麻痺側はリラクゼーションを行う |
| 頚椎の安定性 | 中立位を保持できるか | 頚部屈筋・伸筋の中立位保持練習と、静的・動的な姿勢調整 |
| 頚部伸展筋の過緊張 | 後頭部から肩甲骨上部の緊張 | 姿勢調整と組み合わせた動的ストレッチ |
| 呼吸と歩行の同期 | 歩行中の呼吸のリズム | 呼吸を意識したステップ練習、ペーストレーニング |
| 先行随伴性姿勢調整(APA:動作の直前に姿勢が自動的に整う働き) | 歩行時に頚部が過剰に働いていないか | 歩行前のリーチ動作で、骨盤と体幹の準備を促す |
| 固有受容感覚 | 頚部の位置を感じ取れるか | 閉眼で頚部の動きを感じる練習を行う |
| 呼吸補助筋の協調 | 頚部・僧帽筋・胸鎖乳突筋・斜角筋の協調 | 胸郭と頚部の共同運動。軽い抵抗バンドや小負荷ダンベルを使う |
| 患者教育 | 自己管理ができているか | 簡単な頚部ストレッチと深呼吸を自主トレにし、資料を渡す |
「首は『緩めれば終わり』ではありません。緩めた直後に、その首で動いてもらってください。」
「うまくいかない日は、強度を1段階戻します。戻せるのが、いい臨床家です。」
頚部屈筋の先行活動[観察研究]:Falla D, Jull G, Hodges PW(Exp Brain Res, 2004)の報告です。慢性頚部痛のある人では、上肢運動時の頚部屈筋のフィードフォワード活動が遅れました。対象は頚部痛者で、脳卒中では未検証です。動作前の準備という考え方の参考にとどめます。
現場で聞かれる6つの疑問。
慢性期脳卒中患者30名(解析対象)のRCTがあります。頚部安定化運動と呼吸再訓練を併用した群を、呼吸再訓練のみの群と比べました。併用群は、呼吸筋活動と最大随意換気量(MVV)の増加が大きい結果でした。介入は1日30分、週5回、6週間でした。ただし小規模な単独研究のため、追試が必要です。
MASは主に四肢の筋で信頼性が検討されてきた尺度で、頚部筋への適用は確立していません。触診、姿勢観察、努力呼吸時の補助呼吸筋の観察と併用し、同じ条件で経時的に比べる使い方が現実的です。
負荷を下げて、頷き運動の強さを小さくします。胸鎖乳突筋を触診しながら、圧バイオフィードバックで20mmHgから22mmHgへ段階的に進めます。表層筋の収縮が触れたら、段階を戻して再開します。
原著の対象は慢性期脳卒中患者で、急性期での有効性は検証されていません。実施する場合は、医師の指示と全身状態、血圧、SpO2の確認のもと、低負荷から始めます。この点は専門家合意にとどまります。
必要です。呼吸練習中はSpO2を測定し、低下がないことを確認します。痛みや不快感も頻繁に確認します。中止基準は、施設や医師の指示に従ってください。
本記事で扱った原著は運動介入の研究で、徒手的介入単独の根拠は示されていません。筋膜リリースは補助的手段と位置づけ、実施後に動作練習まで続ける構成を勧めます。この点は専門家合意です。
STROKE LABのプログラム。
ここからは、ご本人・ご家族に向けた案内です。退院後も「もっと良くしたい」と考える方のために、STROKE LABのプログラムをご紹介します。
公的保険のリハビリには、日数や時間の上限があります。「もう数か月たったから」とあきらめる前に、自費リハビリ(保険外リハビリ)という選択肢があります。時間・内容・頻度を自由に設計できるリハビリです。

— STROKE LABの施設の様子。オーダーメイドのプランで、集中的にサポートします。
Hatem SMら(2016)のレビューでは、発症後6か月以降でも、リハビリで上肢機能が有意に改善したと報告されています。David FJら(2015)は、パーキンソン病の24か月RCT(n=48)を報告しました。運動によって、注意力とワーキングメモリが有意に改善しています。
— 利用者様の変化を撮影した動画です。実際のリハビリと変化をご覧いただけます。

— 当施設は、脳神経疾患や整形外科疾患のスペシャリストが対応します。詳しくはHPメニューをご参照ください。
「【場面】歩行練習の10分ごろに首がすくみ、息が上がる方を担当しました。【判断】首だけでなく体幹の支えも疑い、座位で体幹を支持して、頭部の位置と呼吸数を比べました。頷き運動と横隔膜呼吸は、別々に練習しました。【結果・学び】力みを自分で確認できるようになり、休憩を挟む間隔が延びました。首の力みは、原因ではなく結果かもしれません。」— STROKE LAB 理学療法士(脳卒中・神経リハビリ領域)
「【場面】非麻痺側の首と肩が、常に固まっている方でした。【判断】筋膜リリースだけでは戻りが早いため、リリース後すぐに、頭部を中立に保つ体幹回旋の練習へ切り替えました。【結果・学び】緩めた直後に動作で使うと、力みが再発しにくくなりました。緩めるだけで終わらせないことが大切です。」— STROKE LAB 理学療法士(脳卒中・神経リハビリ領域)
諦めないでください。

脳卒中のリハビリは、退院で終わりではありません。保険リハビリの上限が来ても、身体と向き合う時間を続けたい方がいます。
STROKE LABは、そんな方のための自費リハビリ施設です。神経疾患に精通した療法士が、あなたの状態と生活に合わせて、リハビリを設計します。「まだ間に合うかもしれない」という直感を、大切にしてください。
まずは初回20分の無料体験で、お悩みをお聞かせください。1回ごとのお支払いで、やめたいときにやめられます。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)