高い所を極端に怖がる子|感覚過敏と姿勢不安を分けて考える
慎重な性格だけでなく、足元の不安定さや視覚情報への反応も影響しています
高い場所の近くで足が止まる、公園の遊具だけ極端に嫌がる、抱き上げられると強く拒否する。そんな様子を見ると、「怖がりなのかな」「発達の問題かな」と迷う保護者の方も多いと思います。ただ、高さへの不安は一つの原因では説明できません。 見え方、足元の安定性、姿勢の保ちやすさ、動きの予測しやすさ、不安の強さを分けて見ると、家庭での支え方も、相談のタイミングも整理しやすくなります。

足が止まる場所に、子どもの不安が表れる
高い場所の近くで止まる行動は、単なる「怖がり」とは言い切れません。子どもは、自分の体で安全に進めるかどうかを、見え方や足元の情報から判断しています。高さのある場所でいったん立ち止まること自体は、危険を避けるための自然な反応でもあります。
一方で、年齢に比べて極端に強い拒否が続いたり、公園、階段、園庭、遠足など複数の場面で参加が大きく制限されたりする場合は、見え方、姿勢の保ちにくさ、動きの予測の難しさ、不安の強さなどを分けて見ていく必要があります。医療や健診が先、私たちはその先の生活の見方と支え方で併走する立場です。

高さへの怖さを、5つの条件に分けてみる
縁の下が見える、背景が広く抜ける、遠くを見たときに体が不安定に感じる。こうした場面で止まるなら、視覚的な高さ情報が強く働いている可能性があります。
高さそのものよりも、足場が狭い、柔らかい、揺れる、手すりがないといった条件で不安が増えることがあります。この場合は、支持面と姿勢制御の課題が前景に出ているかもしれません。
抱き上げられる、足が床から離れる、体が傾くと強く嫌がるなら、自分で止められない動きへの不安が関係している可能性があります。
上ることはできても降りられない、どこへ足を置けばよいか分からない、最初の一歩が出ない。この場合は、動きの予測と組み立ての難しさが隠れていることがあります。
以前に落ちそうになった、周囲が混雑している、急かされる、後ろから押されそうで怖い。こうした心理的・環境的要因も反応を強めます。
子どもは経験を重ねるなかで、「自分の体で安全に進める場所」と「まだ難しい場所」を学んでいきます。高い場所を避ける行動は、必ずしも過剰な恐怖だけではなく、安全判断の一部として現れることがあります。
一方で、重力不安は臨床的に報告されている概念ですが、高い所を怖がる行動だけで決められるものではありません。視覚、姿勢制御、予測、不安、環境の影響を分けて確認する必要があります。
参考:Adolph KE, et al. Psychol Sci. 2014;25(8):1513-1523. / May-Benson TA, et al. Am J Occup Ther. 2020;74(4):7404205050p1-7404205050p13. / American Academy of Pediatrics. Pediatrics. 2012;129(6):1186-1189.
この研究から言えるのは、高さへの反応は多因子的に見るべきという点です。対象年齢、発達段階、個人差が大きく、医学的診断の代替にはなりません。

家庭でまず見たい観察ポイント
家庭で大切なのは、「怖がるかどうか」だけを記録することではありません。どの条件なら近づけるのか、止まるのはどの瞬間かを見ると、支え方が変わります。
| 見るポイント | ヒントになる見方 |
|---|---|
| 縁の下が見えると止まるか | 高さそのものより、視覚的な抜け感が不安を強めているかもしれません。 |
| 手すりがあると進めるか | 支持を追加するとできるなら、姿勢制御の難しさが関わっている可能性があります。 |
| 自分で上るのは平気か、抱き上げられると嫌がるか | 自分で開始・停止できるかどうかが大きな要素になっているかもしれません。 |
| 上るより降りるときに困るか | 足の置き場や深さの判断、降り方の予測に難しさがあるかもしれません。 |
| 空いている場所ではできるが、混雑すると難しいか | 不安、見通しのなさ、周囲の人との距離感が反応を強めている可能性があります。 |
無理に慣らさない家庭対応
家庭では、「高い所に慣れさせる」ことを目的にしすぎない方が安全です。まずは、子どもが自分で始められ、途中で止まり、必要なら戻れる条件を作ります。
| おすすめしたい関わり | 避けたい関わり |
|---|---|
| 低い段差や広い足場から始める | いきなり高い場所へ連れていく |
| 「ここまででいいよ」とやめどきを伝える | 泣いたまま続ける |
| 自分で上る、下りる、戻る選択肢を残す | 後ろから押す、急に抱き上げる |
| 高さ、足場、混雑、速さを一つずつ変える | 条件を同時にたくさん変える |

相談の目安
| 様子を見やすいケース | 相談を考えたいケース |
|---|---|
| 初めての高い遊具では慎重だが、慣れると少しずつ試せる | 公園、階段、園庭など複数場面で強い回避が続く |
| 自分でやめる、戻る、助けを求めることができる | 外出や園生活への参加が大きく制限される |
| 低い段階では挑戦でき、成功経験が積めている | 転倒が多い、以前できていたことができなくなった |
| 嫌がる理由がある程度読める | めまい、吐き気、痛み、左右差、強いパニック、生活全体への広がりがある |
高い所への苦手さだけでなく、急なふらつき、歩き方の大きな変化、めまい、吐き気、頭痛、視線の異常、痛み、以前できていた動きの後退がある場合は、様子見より先に医療機関で相談してください。
診断、投薬、検査、医学的判断は主治医や医療機関の領域です。私たちは、その後の生活機能と参加の回復を併走します。
専門施設で、さらに期待できること
ここで目指すのは、「怖がらなくする」ことだけではありません。どの条件で体が固まり、どの支えが入ると動き出せるのかを見極め、必要に応じて感覚、姿勢、動作の予測、不安、環境を組み合わせて介入します。診断や医学的管理は主治医の領域であり、私たちはその評価にもとづくリハビリ設計を担います。
高い所を極端に怖がる子を前にすると、「感覚過敏だから」「怖がりな性格だから」と一つにまとめたくなります。しかし実際には、視覚的な高さ情報で体幹が固まる子、足場が狭くなると不安定になる子、抱き上げられて自分で止められないときに強く拒否する子、降り方が分からず最初の一歩が出ない子など、ボトルネックはさまざまです。
専門施設では、子ども本人と家族が目指したい場面を出発点にします。たとえば「公園の遊具に近づけるようになりたい」「遠足で展望台に行けるようになりたい」「園庭の遊具で友だちと遊びたい」といった目標です。そのうえで、身体機能だけでなく、活動、参加、環境、家族の負担まで含めて整理します。
支持面が変わったときの姿勢反応、体幹や股関節の安定、降りるときの足の置き方、視線を変えたときの揺れ方を見ます。ここでの所見は、足場設定や支持の入れ方、課題の順番を変える手がかりになります。
縁の下が見えるかどうか、自分で動くのか他者に動かされるのか、頭の位置が変わると反応がどう変わるかを確認します。ここでの違いは、視覚条件を先に調整するのか、予測可能性を高めるのかという介入選択を左右します。
次にどこへ足を置くか、どこで止まるか、降り方を頭の中で組み立てられるかを見ます。ここでつまずく場合は、動作を細かく分けた練習や、見通しを作る声かけが重要になります。
止まった後にどのくらいで戻れるか、助けを求められるか、成功体験のあとに再挑戦しやすいかを見ます。ここでの反応は、練習量、休憩、成功率の設定に関わります。
空いている時間帯ならできるのか、園では難しいのか、兄弟がいると焦るのかを確認します。ここでの差は、般化の設計、家庭や園での実装方法を決める材料になります。
| 観察される困りごと | 考えられるボトルネック | 選ぶ介入の方向 |
|---|---|---|
| 縁の下が見えると固まる | 視覚的な高さ情報と姿勢脅威 | 高さを上げる前に、見える範囲や視線の置き方を調整して重心移動を練習する |
| 抱き上げられると泣くが、自分で上るのはできる | 自分で止められない動きへの不安 | 開始と停止を子どもが選べる課題設定にする |
| 上れるが降りられない | 深さの判断と動作の予測 | 低い段差で「降りる」局面そのものを分けて練習し、足の置き場を学習する |
高い所を怖がる子に対して、「前庭感覚を鍛える」「慣れれば大丈夫」と一足飛びに進むのは危険です。問題は、怖さの強さそのものより、どの条件で体が固まり、どの条件で自分から再開できるかにあります。
私たちはまず、縁の下が見える量を変えたときの反応、自分で動く場合と他者に動かされる場合の差、上りと下りの違い、混雑の有無による変化を見ます。ここで大切なのは、診断名を当てることではなく、目の前の子どもにとってのボトルネックを分けることです。
そのうえで、視覚条件の調整、支持面の設定、降り方の学習、開始と停止を自分で選べる課題設定を組み合わせます。一定時間のあいだに何回できたかだけではなく、表情、回復時間、次の挑戦への移りやすさ、その場での成功率を確認しながら進めます。
最終的には、訓練室で一度できることではなく、公園、園庭、遠足、家族のお出かけで再現できるかを見ます。家庭ではできるのに園で崩れる、空いている場所ではできるのに混雑で止まる、といった差こそ、介入を生活へつなぐヒントになります。
ここで重要なのは、ただ回数を増やすことではありません。失敗が続きすぎない課題の難易度、子どもが自分で選べる余地、短い成功体験の反復、必要な休憩がそろってはじめて学習が進みます。
たとえば、低い段差で「乗る・止まる・降りる」を数回くり返し、成功率が保てるなら、次に見え方だけを変える、次に手すりの量を変える、というように一つずつ条件を上げます。研究で細かな標準量が示されているテーマではないため、数値を機械的に当てはめるより、質を保てる量を設定することが現実的です。
保護者コーチングは、親が療法士になることではありません。子どもが自分で止まれる声かけ、混雑を避ける時間帯の工夫、成功した条件の共有など、短く続けやすい形で実装します。
疾患・状態に近い知見:重力不安は臨床的に観察される概念ですが、単一行動だけで判定するものではなく、評価の中で条件差を確認する必要があります。
May-Benson TA, et al. Am J Occup Ther. 2020;74(4):7404205050p1-7404205050p13.
介入原理の知見:子どもの介入では、本人と家族が選んだ目標、目標動作そのものの練習、十分に調整された反復、環境とのつながりが重要です。
Jackman M, et al. Dev Med Child Neurol. 2022;64(5):536-549. / Novak I, et al. Occup Ther Int. 2019;2019:7057084.
生活実装の知見:感覚を用いた支援は、包括的な介入の一部として位置づけるべきで、目標と期間を定めて成果を確認する必要があります。
American Academy of Pediatrics. Pediatrics. 2012;129(6):1186-1189.
この研究から言える範囲は、評価にもとづいて課題を組み立てる重要性までです。対象年齢、診断、重症度、介入量、生活への般化には研究間差があり、感覚統合的な介入や前庭刺激だけで効果を断定することはできません。医学的治療の代替でもありません。

高い所への苦手さが続くときは、一人で抱え込まずご相談ください。感覚だけでなく、姿勢や動作の組み立て、園や外出での参加まで含めて整理します。
よくある質問
私たちは、子どもの動きの困りごとを「できる・できない」で終わらせず、どの場面で、どの条件で、何がボトルネックになるのかを丁寧に見ていきます。高い所への苦手さも、感覚、姿勢制御、予測、不安、環境の関係として整理し、家庭や園で使える形へつなげます。
小児リハの詳しい内容は、下記ページからご覧いただけます。

臨床と機能解剖の視点から解説します
STROKE LABでは、子どもの発達と生活のつながりを大切にしながら、評価にもとづく支援を行っています。高い所への苦手さについても、単純な性格や感覚の問題にせず、生活の中で意味のある変化へつなげていきます。

- 動きがぎこちない・運動が苦手|運動制御の視点で「なぜ」を分析する
- 階段を怖がる子|一段ごとの予測と姿勢の準備
- 平均台を怖がる子|狭い支持面でのバランスと視線の使い方
- すべり台を怖がる子|姿勢保持と感覚の苦手さをどう支えるか
- American Academy of Pediatrics. Sensory Integration Therapies for Children With Developmental and Behavioral Disorders. Pediatrics. 2012;129(6):1186-1189.
- May-Benson TA, et al. An Investigation of Gravitational Insecurity in Children. Am J Occup Ther. 2020;74(4):7404205050p1-7404205050p13.
- Adolph KE, et al. Learning in the Development of Infant Locomotion. Psychol Sci. 2014;25(8):1513-1523.
- Jackman M, et al. The effectiveness of interventions for children and young people with cerebral palsy: state of the evidence. Dev Med Child Neurol. 2022;64(5):536-549.
- Novak I, et al. A systematic review of interventions for children with cerebral palsy: state of the evidence. Occup Ther Int. 2019;2019:7057084.
- 金子唯史. 脳の機能解剖とリハビリテーション. 医学書院; 2024.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)