うつ伏せを嫌がる赤ちゃん|腹ばいが苦手な理由と家庭でできる関わり
うつ伏せが苦手でも、焦らなくて大丈夫。赤ちゃんに合う関わり方があります
うつ伏せにするとすぐ泣く。顔を上げずに床に突っ伏してしまう。練習した方がよいと聞くけれど、嫌がる姿を見ると不安になる——。腹ばいは、首・肩・体幹を育てる大切な経験ですが、無理に長く行うことより、安心して少しずつ慣れることが大切です。

こんな場面で、心配になります。
健診や育児情報で「うつ伏せ遊びが大切」と聞いた。けれど、実際にマットに寝かせると、顔を上げずに泣いてしまう。胸の下に手が入らず、苦しそうに見える。数秒で嫌がるので、練習を続けてよいのか分からない。
検索すると「タミータイム」「首すわり」「発達の遅れ」などの言葉が出てきて、余計に不安になることもあります。でも、腹ばいが苦手な赤ちゃんは珍しくありません。大切なのは、嫌がる理由を一つに決めつけず、姿勢・感覚・タイミング・体の使い方を分けて見ることです。
うつ伏せを嫌がる赤ちゃんは、単に「根性がない」「練習不足」という話ではありません。首を持ち上げる力、肩や腕で床を押す力、胸やお腹にかかる圧の感じ方、眠気や空腹、げっぷ、逆流のしやすさなど、さまざまな要素が重なります。
この記事では、腹ばいが発達の中でどんな役割を持つのか、なぜ嫌がるのか、家庭ではどのように関わるとよいのかを、保護者の方に向けて整理します。STROKE LABらしく、姿勢・筋緊張・感覚・運動学習の視点から、日常で見られるポイントに落とし込んで解説します。
腹ばい・タミータイムとは。
腹ばい、またはタミータイムとは、赤ちゃんが起きている時間に、保護者が見守りながらうつ伏せ姿勢で過ごす遊びのことです。眠るときにうつ伏せにすることではありません。寝るときは仰向け、起きているときに見守りながら腹ばい遊びをする、という区別がとても大切です。
腹ばいでは、赤ちゃんが重力に逆らって頭を少し持ち上げたり、左右を見たり、胸や腕で床を感じたりします。この経験は、首すわり、寝返り、手で体を支える力、ずりばい、はいはいへとつながる準備になります。はじめから床で長く行う必要はなく、保護者の胸の上や膝の上など、安心しやすい姿勢から始めても構いません。
赤ちゃんにとって、腹ばいは筋トレではありません。顔を上げる、音のする方を見る、保護者の顔を探す、手で床を押す。こうした小さな経験が、姿勢と運動の土台を作ります。嫌がる場合は、時間を伸ばすより、安心できる姿勢に調整することが先です。

腹ばいで育つ、4つの力。
腹ばいは、ただ首を鍛える姿勢ではありません。赤ちゃんの体は、頭、目、肩、腕、体幹、骨盤がつながって働くことで、少しずつ自由に動けるようになります。腹ばいが苦手なときは、「首だけ」の問題として見るより、全身のつながりで見ることが大切です。
腹ばいでは、赤ちゃんが重力に逆らって頭を少し持ち上げます。これは首すわりの準備であり、視線を上げて周囲を見る経験にもつながります。
胸の下に手を置き、肘や前腕で床を押すことで、肩甲帯の安定性が育ちます。これは後の寝返り、ずりばい、はいはい、手を使った遊びにも関係します。
腹ばいでは、首だけでなく背中、お腹、骨盤周囲も働きます。ぐにゃっと崩れず、少しだけ姿勢を保つ経験が、座る・立つ前の土台になります。
胸、お腹、手、前腕に圧が入ることで、自分の体の位置を感じる経験が増えます。これは後の手の使い方や姿勢調整にも関係します。

うつ伏せを嫌がる理由を、分解します。
赤ちゃんがうつ伏せを嫌がる理由は一つではありません。よくあるのは、首や肩の力がまだ弱くて顔を上げにくい、胸やお腹に圧がかかるのが不快、腕が体の下に入り込んでしまう、眠い・空腹・授乳直後でお腹が苦しい、といったケースです。
| 見られる様子 | 考えやすい背景 | 家庭での工夫 |
|---|---|---|
| 顔を上げずに泣く | 首・肩・背中の抗重力活動がまだ育っている途中 | 胸の下に丸めたタオルを入れる、胸の上で短時間行う |
| 腕が後ろに流れる | 肩の前方支持が作りにくい、胸の下に手を置く経験が少ない | 肘を肩の少し前に置き、手が見える位置でおもちゃを見せる |
| 胸やお腹が苦しそう | 授乳直後、げっぷ、ガス、逆流しやすさ、不快感 | 授乳直後を避け、機嫌がよい時間に短く行う |
| 床に置くとすぐ泣く | 床の冷たさ・硬さ・視界の変化・不安 | 保護者の胸の上、膝の上、顔が近くに見える位置から始める |
| 片側ばかり向く | 向き癖、首の回旋差、視線・頭の使い方の偏り | 好きなおもちゃや声かけを左右に分け、無理のない範囲で誘導する |
STROKE LABの視点:「首の力」より先に、「肘の置き場所」を見る
腹ばいが苦手というご相談では、「首の筋力が弱いのでは」と心配される保護者の方が多くいらっしゃいます。しかし、当施設で赤ちゃんの姿勢を丁寧に確認すると、首そのものよりも、肘が肩より後ろに流れて「支えの土台」が作れていないことが目立ちます。頭を持ち上げる動きは首だけで行うものではなく、肘と前腕が床を押す支え、肩甲帯の安定、胸と骨盤の接地が連なって初めて成立します。私たちはこの全身のつながりを「姿勢連鎖」という視点で評価しています。
この見方に立つと、家庭での工夫も変わります。「頑張って顔を上げさせる」のではなく、肘を肩の少し前に置き直す、胸の下に薄く丸めたタオルを入れて支えやすくする、といった「土台を整える」関わりの方が、結果として顔が上がりやすくなります。この後の観察ポイントや家庭での工夫も、この考え方に沿って構成しています。


様子見でよい場合、相談した方がよい場合。
うつ伏せを嫌がるかどうかだけで判断する必要はありません。大切なのは、月齢に応じて少しずつ変化があるか、他の発達や全身状態に心配が重なっていないかです。下の表は、家庭で観察するときの目安として使ってください。
| 観察ポイント | 様子を見ながら関われることが多い | 相談を考えたい |
|---|---|---|
| 嫌がり方 | 最初は泣くが、胸の上や短時間なら少しできる | いつも強く泣き続け、姿勢を変えても落ち着かない |
| 頭の持ち上げ | 短い時間でも、少し顔を横に向けたり上げようとする | 月齢が進んでも、頭をまったく持ち上げようとしない |
| 左右差 | 左右どちらにも少しずつ顔を向けられる | いつも同じ方向だけ向く、片手・片足の動きが少ない |
| 体の硬さ | 機嫌によって力が抜けたり入ったりする | 常に突っぱる、強く反り返る、逆にだらんとしている |
| 全身状態 | 哺乳・睡眠・体重増加がおおむね順調 | 哺乳が弱い、むせる、体重増加が心配、ぐったりしている |
うつ伏せ中に顔色が悪い、呼吸が苦しそう、意識がぼんやりしている、けいれんのような動きがある、哺乳が極端に悪い場合は、家庭で様子を見るより医療機関へ相談してください。この記事は診断の代わりではなく、日常の観察と関わり方を整理するためのものです。
月齢別に、関わり方を変えます。
腹ばいは、月齢によって目的が変わります。新生児期は「うつ伏せに慣れる」「保護者の近くで安心する」ことが中心です。2〜3か月頃は、少し顔を上げる、左右を見る経験が増えます。4〜6か月頃になると、肘や手で床を押して、胸を少し持ち上げる力が育ってきます。
| 月齢の目安 | 見たいポイント | 関わり方 |
|---|---|---|
| 新生児〜1か月頃 | 保護者の胸の上で安心して過ごせるか | 胸の上で数十秒から。眠らないよう見守り、無理に床で行わない |
| 2〜3か月頃 | 短く頭を上げる、左右を見る、声や顔に反応する | 床・膝・胸の上を組み合わせ、1回を短く回数を増やす |
| 4〜5か月頃 | 肘で支える、胸が少し浮く、手を見たり触ったりする | 肘の位置を整え、おもちゃを近くに置いて視線と手を誘う |
| 6か月前後 | 腕を伸ばして支える、寝返り、体を左右に動かす | 少し離れたおもちゃへ手を伸ばす遊びへ広げる |

※月齢は目安です。早産の場合は修正月齢で見ることもあります。気になる場合は乳幼児健診やかかりつけ医で相談してください。
家庭でできる、やさしい関わり。
うつ伏せを嫌がる赤ちゃんには、「床で何分できたか」よりも、「安心して体を支えられたか」を見ます。最初から床の上で頑張らせる必要はありません。保護者の体、タオル、声かけ、おもちゃを使って、少しずつ腹ばいを楽しい経験に変えていきます。

床での腹ばいが苦手な場合、丸めたタオルを胸の下に入れると、顔を上げやすくなることがあります。タオルが高すぎると苦しくなるため、赤ちゃんの顔色や呼吸を見ながら短時間で行います。
赤ちゃんは、見たいもの・聞きたい声があると、少し顔を上げたり左右を向いたりしやすくなります。おもちゃは遠くではなく、顔の近くに置き、赤ちゃんが「見つけられる」距離から始めます。
最初から長く行う必要はありません。数十秒で泣くなら、そこで終えて大丈夫です。機嫌のよい時間に短く行い、「嫌な時間」ではなく「少しできた時間」として終えることが大切です。
避けたい関わり。
腹ばいは大切ですが、赤ちゃんが強く嫌がっているのに無理に続ける必要はありません。苦しい、怖い、不快という経験が重なると、うつ伏せそのものへの抵抗が強くなることがあります。
腹ばい遊びは、赤ちゃんが起きている時間に、保護者が見守りながら行うものです。眠そうになったら仰向けに戻します。やわらかい布団、枕、クッションの上で顔が埋もれるような姿勢は避けてください。

| 避けたいこと | 理由 | 代わりにできること |
|---|---|---|
| 泣いても長く続ける | 嫌な経験として残りやすい | 数十秒でも終えてよい。次は姿勢や時間を変える |
| 授乳直後に行う | お腹の圧迫で苦しくなりやすい | げっぷ後、少し時間を空け、機嫌のよいタイミングにする |
| 顔が埋もれる柔らかい場所で行う | 呼吸や安全面のリスクがある | 硬めで安全なマット、保護者の胸や膝の上で見守る |
専門家は、どこを見るのか。
専門家は、うつ伏せができる・できないだけを見ているわけではありません。赤ちゃんがどのように頭を動かすか、腕をどこに置くか、胸や骨盤がどのように床に接しているか、左右差があるか、触れられたときの反応はどうかを見ます。
顔を左右に向けられるか、音や顔に反応して視線が動くか、いつも同じ方向だけを向いていないかを確認します。
肘が肩の近くに置けるか、腕が後ろへ流れすぎないか、手を床につけることに抵抗がないかを見ます。
胸やお腹がどのように床に接しているか、骨盤が左右に偏っていないか、体が過度に反り返っていないかを確認します。
床に触れること、胸やお腹に圧が入ること、姿勢が変わることへの反応を見ます。腹ばいが嫌いに見えても、実は感覚の受け取り方や不安が背景にあることがあります。

STROKE LABでは、姿勢、筋緊張、感覚、左右差、目線、手の使い方まで含めて、お子さんの動きを丁寧に確認します。病院や健診での相談とあわせて、家庭でできる関わり方を整理したい方は、小児リハビリのページもご覧ください。
よくある質問。
Q. うつ伏せを嫌がるだけで、発達の遅れですか?
Q. タミータイムはいつから始めればよいですか?
Q. 何分できればよいですか?
Q. 泣いたらすぐやめた方がよいですか?
Q. 反り返りが強い場合も、腹ばい練習をしてよいですか?
STROKE LABでは、動きの背景まで見ます。
STROKE LABの小児リハビリでは、「うつ伏せができるか」だけでなく、なぜ苦手なのかを丁寧に見ます。首の力、肩や腕の支持、体幹と骨盤の安定、反り返りや筋緊張、左右差、感覚の受け取り方、保護者の関わり方まで含めて整理します。
赤ちゃんの発達は一人ひとり違います。だからこそ、平均と比べて焦るより、「今この子にとって、安心して経験できる入口はどこか」を見つけることが大切です。健診や小児科での相談とあわせて、家庭での関わり方を具体的に整理したい場合は、専門評価をご検討ください。
生活の視点で整理します。
健診や病院で「大丈夫」と言われることは、保護者にとって大きな安心材料です。一方で、毎日お子さんを見ている中で生まれる小さな違和感や不安も、決して軽く扱うものではありません。
私たちは、診断を急ぐのではなく、
今のお子さんにとって、安心して経験できる入口を一緒に探すこと
を大切にしています。
「このまま様子を見てよいのか」「家庭では何を見ればよいのか」と迷われている方は、どうぞお気軽にご相談ください。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、乳児の運動発達・安全な腹ばい遊びに関する一般的な情報と、STROKE LABの小児リハビリにおける臨床経験をもとに構成しています(最終確認日:2026年7月1日)。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)