なぜ運動と脳に深く向き合うのか|STROKE LABの子どもリハビリの考え方
動きを見ることは、脳と身体のつながりを読み解くことです
子どもの「動きにくさ」は、筋力だけで説明できるものではありません。姿勢、感覚、筋緊張、遊び、環境、そして脳が身体をどう使おうとしているか。STROKE LABでは、動きの形ではなく、脳が身体を使いやすくなる条件を丁寧に見つけ、その子らしい成長と生活参加へつなげていきます。

子どもの動きは、脳から生まれます。
子どもが座る、手を伸ばす、立つ、歩く、玩具に触れる。その一つひとつの動きは、筋肉だけで起きているわけではありません。脳が身体の位置を感じ、姿勢を整え、必要な筋肉にタイミングよく指令を出すことで、はじめて動きになります。
だから私たちは、見えている動作だけではなく、その動きがどのような脳と身体の関係から生まれているかを見ます。
たとえば、同じ「座位が不安定」という状態でも、背景は一つではありません。体幹が使いにくい子もいれば、骨盤の支えが弱い子、視線の使い方が不安定な子、手を使おうとすると姿勢が崩れる子、感覚が入りにくく体の位置が分かりにくい子もいます。
STROKE LABの子どもリハビリでは、こうした背景を「運動と脳」の視点から丁寧に整理します。動作をただ反復するのではなく、その子が動きやすくなる条件を見つけ、生活や遊びの中で使える動きへつなげていきます。
診断名だけで、子どもを見ない理由。
脳性麻痺、発達性協調運動症、発達障害、低緊張、片麻痺、運動発達の遅れ。診断名や説明の言葉は、状態を理解するうえで大切な手がかりです。しかし、同じ診断名でも、実際に困っていることは一人ひとり違います。
歩くことが目標の子、手を使うことが目標の子、保育園で友達と遊びたい子、食事や着替えを少し楽にしたい子。子どものリハビリは、診断名から始まるのではなく、生活の中の「その子らしい目標」から始まります。
| 見ている軸 | 診断名だけで見る場合 | STROKE LABの見方 |
|---|---|---|
| 目標設定 | 病名や月齢から大まかに課題を決める | 食事、遊び、移動、園生活など、本人と家族の生活目標から決める |
| 評価 | できる・できないを確認する | どの条件なら動きやすくなるか、なぜ難しいのかを仮説化する |
| 介入 | 同じ運動を反復する | 姿勢・感覚・環境を調整し、意味ある課題として経験する |
| 成果 | 訓練室で動作ができる | 家庭や園・学校で参加しやすくなる |
STROKE LABでは、医学的な背景を大切にしながらも、最終的には「何ができるようになると生活が楽になるか」「どんな遊びに参加したいか」「ご家族がどこで困っているか」を重視します。
STROKE LABの視点:脳が身体を使いやすくなる条件を見る。
子どもの動きを見るとき、私たちは「形が正しいか」だけを見ません。大切にしているのは、脳が身体からどのような情報を受け取り、どのような条件で動きやすくなるかです。足裏が床を感じると立ちやすいのか、骨盤が支えられると手が使いやすいのか、見たい玩具があると自然にリーチが出るのか。こうした小さな変化を、評価と介入の中で確認します。
この視点に立つと、リハビリは「できない動作を繰り返す時間」ではなくなります。子どもが成功しやすい条件を探し、その条件を少しずつ生活に近づけていく時間になります。動きの背景を読み、必要な感覚入力や姿勢調整を入れ、遊びや生活の中で使える動きに変えていくことが、STROKE LABの小児リハビリの核です。

研究でわかっていること。
STROKE LABが「動きの形」だけでなく、目標、生活参加、家族、環境を重視するのは、臨床経験だけに基づく考えではありません。小児リハビリの研究でも、単に運動量を増やすのではなく、意味のある課題、環境調整、家族との連携、生活の中で使える経験が重要であることが示されています。
小児リハビリでは、ただ運動を繰り返すだけでなく、その子にとって意味のある目標に向けて、姿勢・感覚・環境・家族の関わりを整えることが大切です。脳性麻痺のある子どもへの介入を整理した研究でも、目標に合わせた練習、生活につながる課題、環境調整、家族が関わる支援が重要であることが示されています。
この研究は、すべてのお子さんに同じ方法を当てはめるためのものではありません。むしろ大切なのは、現在の動き、家庭での困りごと、参加したい活動を見ながら、その子に合った条件を作ることです。ICFやF-wordsの考え方も、身体機能だけでなく、家族、楽しさ、友だち、未来、生活参加を含めて支援を考える方向性を示しています。
評価は、仮説を立てるために行います。
小児リハビリの評価は、「できる・できない」を判定するだけの時間ではありません。私たちは、なぜその動作が難しくなっているのか、どの条件なら動きやすくなるのか、何を変えると生活につながるのかを探します。
| 評価する視点 | 見る内容 | 仮説の例 |
|---|---|---|
| 姿勢制御 | 座位・立位・四つ這いで体を支えられるか | 体幹や骨盤の安定が手足の操作を妨げている |
| 筋緊張 | こわばり、反り返り、低緊張、左右差 | 力を入れる・抜くタイミングが調整しにくい |
| 感覚 | 足裏・手のひら・バランス・触覚への反応 | 身体の位置が分かりにくく、動作が不安定になっている |
| 視線・注意 | 見たいものを追えるか、課題に向かえるか | 視線と手足の動きがつながりにくい |
| 環境・生活 | 家庭・園・学校でどの場面に困っているか | 練習内容と生活場面がまだ結びついていない |
脳と身体をつなぐ介入。
私たちが介入で大切にしているのは、単に「正しい形」に身体を動かすことではありません。子ども自身が、身体の位置や力加減を感じながら、より使いやすい動きを学べるようにすることです。

足裏や手のひらから「ここに体重を乗せる」という情報を届けます。姿勢が安定すると、手足の動きが出やすくなることがあります。
安心できる姿勢、声かけ、課題の高さ、環境を整え、過剰なこわばりが出にくい条件を探します。
体幹や肩甲帯、骨盤の安定をつくることで、手先や足先の動きが引き出されやすい状態へ導きます。
訓練室だけで完結させず、家庭や園・学校で使う動きに近い形へ少しずつつなげます。
遊びの中で、運動学習を起こします。
子どもにとって、遊びはただの楽しみではありません。見る、触る、支える、届く、つかむ、立つ、歩く、試す、失敗する、もう一度やってみる。遊びの中には、脳と身体が学ぶための経験がたくさん含まれています。
| 比較 | 運動だけを見る | 遊びを通して学ぶ |
|---|---|---|
| 目的 | 姿勢や運動の形を繰り返す | 子どもがやりたい活動の中で自然な動きを引き出す |
| 意欲 | 大人の指示が中心になりやすい | 玩具に届きたい、遊びたい気持ちが動きを作る |
| 難易度 | 同じ課題が続きやすい | 反応を見ながら高さ・距離・支え方を調整する |
| 生活へのつながり | 訓練室でできても家庭で出にくいことがある | 家庭や園で使う動きへつなげやすい |
ゴールは、生活への参加です。
STROKE LABが運動と脳に向き合う理由は、身体機能を整えるためだけではありません。最終的には、子どもが家庭、園、学校、遊び、人との関わりに参加しやすくなることを目指しています。
座れるようになることは、食事や遊びにつながります。手を伸ばせることは、玩具や友達との関わりにつながります。立つ・歩くことは、家の中の移動や外遊びにつながります。動作の改善は、生活の変化として意味を持ちます。
| 身体機能 | 動作 | 生活参加 |
|---|---|---|
| 体幹が安定する | 座って両手を使いやすくなる | 食事・机上遊び・園活動に参加しやすい |
| 足裏の感覚が入る | 立つ・歩くときの安定が増える | 外遊び・移動・階段への挑戦につながる |
| 手の支持が育つ | リーチ・把持・操作がしやすくなる | 玩具遊び・着替え・学習活動につながる |
| 不安が減る | 新しい姿勢や課題へ入りやすくなる | 集団活動や友だちとの遊びへ戻りやすい |
家族と一緒に、早期から向き合う意味。
子どもの変化は、施設の中だけで起こるものではありません。毎日の抱っこ、床遊び、食事、着替え、移動、園や学校での活動。その一つひとつが、脳と身体にとっての学習環境になります。

ご家庭での困りごと、うまくいった場面、疲れやすい時間帯、好きな遊び、嫌がる姿勢。こうした情報があるほど、プログラムはその子の生活に合ったものになります。
| 避けたい関わり | 理由 | 代わりにできること |
|---|---|---|
| 運動量だけを増やす | 疲労や失敗体験が増え、動きへの苦手意識が強くなることがある | 目標に近い課題を、成功しやすい条件で短く行う |
| 正しい形だけを求める | 子どもが動く目的を見失い、遊びや生活へつながりにくい | 玩具や生活動作の中で自然に使える動きを作る |
| 家庭で完璧に練習しようとする | 親子ともに負担が増え、続きにくくなる | 日常の中に1〜2個の工夫を入れる |
| 診断名だけで可能性を決める | 同じ診断名でも困りごとや強みは異なる | 今の動きと生活目標から支援を組み立てる |
早期支援とは、焦って訓練することではありません。現時点での動きの特徴を見て、必要な経験を逃さないことです。うつ伏せ遊び、手を前に出す経験、左右を見る経験、足で床を感じる経験、安心して体重を乗せる経験。小さな経験の積み重ねが、次の発達につながります。
STROKE LABでは、実際の動き・生活場面・ご家族の希望をもとに、お子さんに必要な支援を評価から組み立てます。家庭で続けやすい形まで一緒に整理します。
よくある質問。
子どもの動きは、筋力だけでなく、脳が感覚を受け取り、姿勢を調整し、手足をタイミングよく動かすことで成り立っています。転びやすい、手が使いにくい、反り返る、姿勢が崩れるといった困りごとは、脳と身体の連携から見直すことで支援の方向性が見えやすくなります。
診断名が確定していなくても、運動発達や姿勢、手足の使い方、日常生活で気になることがあれば相談できます。医療的な診断は医師が行いますが、リハビリでは現在の動きや生活場面から必要な支援を整理することができます。
量だけを増やすのではなく、その子にとって意味のある動作を、成功しやすい条件で練習することが大切です。姿勢や感覚、環境を整えながら、遊びや生活につながる課題として練習することで、日常の変化につながりやすくなります。
はい。抱っこ、床遊び、座り方、玩具の置き方、歩く環境、食事や着替えの関わり方など、日常の中にリハビリの要素を入れることができます。施設での介入だけでなく、家庭で続けやすい形に落とし込むことが大切です。
診断名や月齢だけではなく、実際の姿勢、筋緊張、感覚、視線、手足の使い方、遊び、生活場面、ご家族の希望を総合的に確認します。その上で、どの条件なら動きやすくなるか、家庭や園・学校へどうつなげるかを整理します。
運動発達の遅れ、姿勢の崩れ、転びやすさ、手足の使いにくさ、反り返り、左右差、日常生活や園・学校での参加のしにくさが続く場合は相談の目安です。診断を急ぐためだけでなく、今できる関わり方を整理する目的でも相談できます。
小児リハビリのご相談。
お子さんの発達について、「このままでよいのか」「どんな練習をしたらよいのか」「家での関わり方が分からない」と感じることがあるかもしれません。そうしたときに大切なのは、不安だけで抱え込まず、専門的な視点で現在の動きを整理することです。
STROKE LABでは、脳卒中をはじめとする神経リハビリで培った視点をもとに、小児の姿勢・運動・感覚・手先・生活参加を評価します。診断名にかかわらず、今のお子さんが生活や遊びに参加しやすくなる条件を、ご家族と一緒に探します。
脳と身体の可能性を見つめます。

子どものリハビリでは、目に見える動作だけを追いかけるのではなく、その動きがどのように生まれているのかを丁寧に考える必要があります。
STROKE LABが運動と脳に深く向き合うのは、単に身体機能を高めるためではありません。その子が生活や遊びに参加し、自分らしく成長していくための道筋を、ご家族と一緒に見つけたいからです。
「今の練習でよいのか分からない」「子どもの動きを専門的に見てほしい」そんなときは、どうぞご相談ください。
代表取締役 金子 唯史

脳の領域別の働きから、臨床で行うリハビリテーション方法を提案する専門書です。子どものリハビリでも、動作を筋肉だけで見るのではなく、脳、感覚、姿勢、生活参加の連鎖として捉える視点が重要です。
- 小児(脳性麻痺児/発達障害など)のリハビリ — STROKE LAB
- 「個性かも」と様子見にする前に|発達が気になる子への早めの一手
- うつ伏せを嫌がる赤ちゃん|腹ばいが苦手な理由
本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断・治療に代わるものではありません。お子さんの状態についての判断は、かかりつけの小児科医や専門職にご相談ください(最終確認日:2026年7月4日)。
- World Health Organization: International Classification of Functioning, Disability and Health(ICF)
- CanChild: F-words for Child Development
- American Academy of Pediatrics: Developmental Surveillance and Screening
- CDC: Why Act Early if You’re Concerned about Development?
- WHO: Improving early childhood development. 2020.
- Novak I, Morgan C, Fahey M, Finch-Edmondson M, Galea C, Hines A, et al. State of the Evidence Traffic Lights 2019: Systematic Review of Interventions for Preventing and Treating Children with Cerebral Palsy. Current Neurology and Neuroscience Reports. 2020;20(2):3.
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)