子どもが不器用・よく転ぶ|発達性協調運動症(DCD)かもしれないサインと対応
「運動が苦手」で終わらせず、転ぶ直前の動きから見直します
「また転んだ」「箸やハサミがうまく使えない」「体育になると自信をなくす」——。それは努力不足ではなく、脳が感覚をまとめ、姿勢を整え、動きを計画する過程につまずきがあるサインかもしれません。不器用さを責めるのではなく、転ぶ直前の視線・体幹・足部・手の出方から、支援の入口を探していきます。

こんな場面で、心配になります。
公園で走るとすぐにつまずく。階段で足元を見ているのに踏み外す。ボールを投げても受けてもぎこちない。園や学校では「もっと丁寧に」「よく見て」と言われるけれど、本人は一生懸命やっている。
こうした姿は、単なる性格や練習不足ではなく、感覚を受け取り、身体をまとめて動かす神経のしくみが関係していることがあります。
子どもは一人ひとり発達のペースが違います。転びやすい時期、不器用に見える時期があっても、それだけで発達性協調運動症(DCD)と決めつける必要はありません。一方で、本人が困っているのに「もっと練習しなさい」「ちゃんと見て」と言われ続けると、運動そのものを避けるようになったり、自信を失ったりすることがあります。
この記事では、DCDとは何か、どんなサインを見ればよいか、家庭や園・学校でどのように支えればよいかを、神経とリハビリの視点から整理します。STROKE LABが大切にしているのは、「できない理由」を責めることではなく、動きが難しくなる背景を一緒に見つけることです。
発達性協調運動症(DCD)とは。
発達性協調運動症(Developmental Coordination Disorder:DCD)は、年齢に期待される協調運動スキルの獲得や使用が難しく、日常生活、学校生活、遊びに支障が出る状態です。脳性麻痺、筋疾患、視覚障害など、運動に影響する他の要因だけでは説明できないことも確認します。
DCDは「運動神経が悪い子」という言葉だけでは説明できません。運動には、目で見る力、身体の位置を感じる力、バランスを保つ力、動きの順番を計画する力、注意を向ける力が関わります。これらを脳がうまくまとめにくいと、本人は一生懸命でも動作がぎこちなく見えます。
| 見る視点 | 家庭や学校で見える例 | 相談時に伝えたいこと |
|---|---|---|
| 全身運動 | 走るとつまずく、階段が苦手、片足立ちや縄跳びが続かない | どんな場所・速度・遊びで転びやすいか |
| 手先の動き | 箸、ハサミ、ボタン、鉛筆、定規が使いにくい | 時間がかかる動作、嫌がる動作、できる条件 |
| 目と手足の協調 | ボールを受ける、蹴る、投げるタイミングが合わない | 見ているのに合わないのか、見る前に動くのか |
| 生活への影響 | 着替えが遅い、体育を避ける、ノートが遅い | 本人の困り感、自信低下、園・学校での支障 |
STROKE LABの視点:「転ぶ直前の3秒」を見ます。
転んだ回数ではなく、転ぶ直前の動きを観察します
DCDの記事では、「よく転ぶ」「不器用」という結果だけが注目されがちです。しかし臨床では、転んだ瞬間よりも、その直前の数秒に多くのヒントがあります。足元だけを見すぎていないか、視線が次の場所へ先行しているか、体幹が先に崩れていないか、足裏で床を感じているか、手が防御反応として出るかを見ます。
この見方に立つと、支援は「もっと走りなさい」ではなくなります。視線を先に向ける遊び、足裏で床を感じる課題、体幹を安定させる座り方、靴や道具の調整、動作を1〜2工程に分ける声かけなど、本人が成功しやすい入口を作れます。STROKE LABでは、こうした姿勢連鎖と運動計画の視点から、生活で困っている動作を一緒に整理します。

神経の視点で見る「不器用さ」。
コップを持つ、階段を下りる、ボールを捕る。こうした動きは一見単純に見えますが、脳の中では多くの処理が同時に起きています。目で相手や物の位置を見る。足裏や関節から身体の位置を感じる。頭の傾きや加速度を前庭感覚で捉える。過去の経験から「次にどう動けばよいか」を予測する。そして姿勢を保ちながら、手足をタイミングよく動かします。
DCDで起こる不器用さは、この「感覚を受け取る」「動きを計画する」「姿勢を保つ」「タイミングを合わせる」過程のどこか、または複数がかみ合いにくい状態として理解できます。そのため、筋力トレーニングだけをしても、本人が困っている動作が改善しにくいことがあります。
見本を見ても、身体のどこをどう動かせばよいかがつかみにくい子がいます。必要なのは、ただ回数を増やす練習ではなく、姿勢、道具、手順、見る場所を分けて、本人が理解しやすい形にすることです。
足裏や足首からの情報が使いにくいと、段差や床の変化に気づくのが遅れ、つまずきやすくなります。
走る、投げる、跳ぶ前に体幹が安定しにくいと、手足の動きがバラバラになり、転倒やぎこちなさにつながります。
足元だけを見すぎる、周囲を見る余裕がない、動く相手を追いながら自分の身体を調整できない場合、遊びの中でぶつかりやすくなります。
次にどの足を出すか、どのタイミングで手を伸ばすかを予測しにくいと、動きが遅れたり過剰になったりします。
研究でわかっていること。
40研究・1,655名を対象にしたシステマティックレビューとメタ解析では、運動介入がDCD児の運動協調、手先の動き、手と目の連携、バランスを改善する可能性が示されています。特に、困っている動作に近い形で練習する課題指向型トレーニングは、手先の動きや手と目の連携に役立つと報告されています。
保護者向けに言い換えると、苦手な運動をただ長く繰り返すより、困っている生活動作を小さく分け、成功しやすい形で練習することが大切です。
研究結果を家庭に置き換えると、「苦手な体育を何度もやらせる」ことよりも、「靴を履く」「階段を下りる」「ボールを受ける」「ノートを書く」など、本人が実際に困っている動作を分解して支えることが重要です。これはSTROKE LABが重視する、生活課題に近い練習とも一致します。
様子を見ながら関われる場合、相談した方がよい場合。
DCDは、不器用さだけで判断するものではありません。年齢、経験量、生活への支障、本人の困り感、他の疾患では説明されないことを合わせて考えます。下の表は、家庭や園・学校で観察するときの目安です。
| 観察ポイント | 様子を見ながら関われることが多い | 相談を考えたい |
|---|---|---|
| 頻度 | 新しい動作や成長期だけ一時的にぎこちない | 複数の動作で長く続き、日常的に困っている |
| 場面 | 慣れない場所や疲れたときにだけ目立つ | 家庭・園・学校・遊びなど複数場面で同じ困りごとがある |
| 練習後 | 少し練習すれば年齢相応に近づく | 回数を重ねても習得しづらく、やり方の説明が必要 |
| 生活への影響 | 本人が困っておらず、活動参加もできている | 体育や遊びを避ける、自信が下がる、友人関係に影響する |
| 急な変化 | 以前からの傾向で、少しずつ変化している | 急にふらつく、片側だけ弱い、痛みや発達の後退がある |
急に転びやすくなった、ふらつきが増えた、片側の手足だけ使いにくい、痛みや腫れがある、できていた動作ができなくなった場合は、DCDだけで考えず、まず医療機関へ相談してください。
健診・発達相談で伝えるためのメモ。
相談の場では、「よく転びます」「不器用です」だけでなく、どの動作で、どの場面で、本人がどのくらい困っているかを伝えられると、状態を共有しやすくなります。以下の7項目をメモしておくと、相談時に役立ちます。
年齢帯別に見たいサイン。
年齢は目安です。同じ年齢でも、経験、体格、性格、環境によって見え方は変わります。大切なのは、一つのサインだけで決めつけず、複数の場面で同じ困りごとが続いているかを見ることです。
| 年齢帯の目安 | 見られやすいサイン | 生活での困りごと | 見方のポイント |
|---|---|---|---|
| 3〜4歳頃 | 走る、跳ぶ、階段、食具、着替えがぎこちない | 遊びに入りにくい、着替えや食事に時間がかかる | 発達の個人差が大きい時期。左右差や発達の後退があれば相談 |
| 5〜6歳頃 | 片足立ち、ケンケン、ハサミ、ボタン、靴が苦手 | 制作活動や身支度が遅れ、本人が困り始める | 経験を重ねても困りごとが続くか、生活への支障を見る |
| 小学校低学年 | 体育、縄跳び、ボール、書字、定規が苦手 | ノートが遅い、体育を避ける、友達との遊びで困る | 学校での支障や自信低下も確認 |
| 小学校中学年以上 | スポーツ、複雑な道具操作、速い書字、集団活動が苦手 | 劣等感、活動回避、疲れやすさが目立つ | できる環境と難しい環境を分けて支援を考える |

※年齢は目安です。発達には幅があります。早産・既往歴・療育歴がある場合は、かかりつけ医や発達相談で確認してください。
家庭でできる対応と、避けたい関わり。
家庭で大切なのは、苦手な動作を無理に反復させることではありません。まずは「何が難しいのか」を小さく分け、できた部分を本人が分かるようにすることです。成功体験が増えると、運動への不安や回避も減りやすくなります。

| 支援として行いたいこと | 理由 | 具体例 |
|---|---|---|
| 動作を1〜2工程に分ける | どこでつまずいているか分かりやすくなる | 靴なら「座る」「足を入れる」「かかとを引く」に分ける |
| 椅子・机・道具の高さを調整する | 姿勢が安定すると手先が使いやすくなる | 足台、太めの鉛筆、滑りにくいマットを使う |
| できた部分を具体的に伝える | 本人が成功の理由を理解しやすい | 「今は足を先に置けたね」と言語化する |
| 困っている動作に近い形で練習する | 生活に使える力につながりやすい | 縄跳びの前にジャンプと腕回しを分ける |
| 避けたい関わり | なぜ避けたいか | 代わりにできること |
|---|---|---|
| 「ちゃんと見て」と責める | 本人は見ていても、身体の組み立てが難しいことがある | 見る場所を一つに絞って伝える |
| 苦手な運動だけを長時間反復する | 失敗経験が増え、運動を避けやすくなる | 短く、成功して終われる課題にする |
| 兄弟や友達と比較する | 自信低下や活動回避につながる | 昨日の本人との変化を褒める |
| できない理由をやる気だけにする | 支援すべき環境や手順が見えなくなる | 道具・姿勢・手順を一緒に調整する |
STROKE LABでは、よく転ぶ・運動がぎこちない・手先が不器用といった悩みを、姿勢制御、感覚、運動計画、家庭・学校での環境まで含めて見ていきます。
よくある質問。
不器用さや転びやすさだけでDCDと判断することはできません。年齢相応の運動発達の範囲にある子もいます。ただし、転ぶ、ぶつかる、手先の操作が苦手、書字や着替えに時間がかかるなどが複数の場面で続き、日常生活や園・学校生活に支障が出ている場合は、相談の目安になります。
DCDは、運動の練習不足や本人のやる気だけで説明できるものではありません。視覚、前庭感覚、固有感覚、姿勢制御、運動計画などを脳が統合して動きを組み立てる過程に難しさがあると考えられています。叱責よりも、動作を分け、環境を整える支援が大切です。
DCDの特徴は幼児期から見られることがありますが、発達には個人差が大きいため、確定的な診断は5歳以降になることが多いとされています。診断名を待つより、転ぶ、着替え、食事、書字、体育などの困りごとが続く段階で、かかりつけ医や発達相談、作業療法士・理学療法士に相談すると安心です。
転んだ回数だけでなく、転ぶ直前の数秒を見ます。足元だけを見すぎていないか、視線が次の場所へ向いているか、体幹が先に崩れていないか、足裏で床を感じているか、手が前に出るかを観察します。動画で短く残しておくと、相談時に伝えやすくなります。
量だけを増やすより、困っている動作を小さく分け、実際の生活に近い形で練習することが重要です。たとえば靴を履くなら、座る高さ、靴の向き、足を入れる角度、かかとを引く動作を分けます。本人ができたと感じられる練習にすることで、苦手意識を減らしやすくなります。
医学的な診断は医師が行います。STROKE LABでは、転びやすさや不器用さの背景を、姿勢制御、感覚入力、運動計画、体幹・肩甲帯・足部の使い方、家庭や学校での環境まで含めて評価し、日常で取り組みやすい練習方法と関わり方を提案します。必要に応じて医療機関への相談もおすすめします。
STROKE LABでは、動きの背景まで見ます。
STROKE LABの小児リハビリでは、転びやすさや不器用さを単なる筋力不足として見ません。視線、姿勢、足部、肩甲帯、手先、感覚入力、動作の順番、家庭や学校の環境まで含めて、なぜその動きが難しいのかを整理します。
医学的な診断は医師が行いますが、日常動作の評価、神経・感覚・姿勢制御の視点からの整理、家庭での関わりや練習方法の提案は、リハビリ専門職が力になれる領域です。本人が「できた」と感じられる入口を一緒に探します。
一緒に見つけていきます。

子どもの不器用さは、周囲からは「雑」「不注意」「やる気がない」と見えてしまうことがあります。しかし、その背景には、感覚をまとめる力、姿勢を保つ力、動きを計画する力のつまずきが隠れていることがあります。
私たちは、表面的なできる・できないではなく、なぜその動きが難しいのかを神経の視点から丁寧に紐解き、お子さんとご家族が取り組みやすい方法を一緒に考えます。
お子さんの転びやすさ、不器用さ、運動への苦手意識が気になる場合は、診断名を急ぐ前に、姿勢と動きの観察から整理してみてください。
代表取締役 金子 唯史

DCDの不器用さを「本人の性格」や「筋力不足」だけで判断せず、脳・感覚・姿勢・運動計画のつながりとして見ることで、家庭での支援が具体的になります。本記事も、その考え方を保護者向けに整理しています。
- 小児(脳性麻痺児/発達障害など)のリハビリ — STROKE LAB
- 体幹が弱い・姿勢がすぐ崩れる子|土台から育てる運動アプローチ
- 字が汚い・はさみが使えない|手先の不器用さへの運動支援
本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断・治療に代わるものではありません。お子さんの状態についての判断は、かかりつけの小児科医や専門職にご相談ください(最終確認日:2026年7月4日)。
- 発達障害情報・支援センター:発達性協調運動症
- 厚生労働省:DCD支援マニュアル
- NHS: Developmental co-ordination disorder (dyspraxia) in children
- Canadian Paediatric Society: Assessment, diagnosis, and management of developmental coordination disorder
- CanChild: Developmental Coordination Disorder
- Peng C, He J, Xu K, Wu X, Wang D, Zhang L. Effects of exercise interventions on motor coordination in children with developmental coordination disorder (DCD): A systematic review and meta-analysis. Research in Developmental Disabilities. 2026;168:105184.
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)