Vol.456.非麻痺側トレーニングが麻痺側同部位を強化する!?脳卒中患者の手関節背屈筋に対するCross Educationの効果
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タイトル
●非麻痺側トレーニングが麻痺側同部位を強化する!?脳卒中患者の手関節背屈筋に対するCross Educationの効果
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●麻痺側の出力を高める事は脳卒中リハを行う上で、課題となる。今回、”cross education”という概念が目に止まり、麻痺側の出力を高める上での一つの臨床アイデアになるのではと思い本論文に至る。
内 容
背景・方法
●脳卒中は両側性の神経障害と筋力低下を誘発し、神経学的により多く影響を受ける(MA:麻痺側)および影響を受けにくい(LA:非麻痺側)側がもたらされる。麻痺側を直接トレーニングすることは、重度の筋力低下や関節可動域制限を有する人にとっては非常に難しいことがある。研究は、片側トレーニングが脊髄レベルと皮質レベルの両方で神経経路に両側的に影響することを明確に示している。”Cross-education” とは片側の同部位の筋を訓練する事で訓練されていない側の同じ筋の強度を高める事を指す。
●本研究では、慢性期脳卒中患者24人の非麻痺側の手関節において5週間の最大筋出力での手関節背屈トレーニングを実施し、観察した。20人がトレーニングを完遂した。
●3つのベースライン評価(PRE1、PRE2、PRE3。4〜7日間隔)と1つの事後テスト(POST。トレーニング後1週間以内)が実行された。最大手関節背屈の強度、脊髄および皮質の可塑性および臨床評価がPRE1-3およびPOSTで行われた。
結果
●トレーニングの5週間後、非麻痺側手関節背屈の高強度訓練にて非麻痺側手関節背屈筋力は42%、麻痺側は35%増加した。4人の患者で臨床的に意義のあるレベルの手の機能改善があった。5週間後のフォローでもこの両側の筋力増加量は維持されていた。
●筋活性化は、麻痺側上肢でのトレーニング後の皮膚反射振幅と相関していた。
●この研究は、神経学的に影響を受けにくい「非麻痺側」の上肢を使った高強度トレーニングが、両側の筋力を改善し、脊髄と皮質の両方の可塑性を変化させることを示している。
私見・明日への臨床アイデア
●脳卒中は両側性に神経障害がもたらされる為、非麻痺側にも着目する必要性は言われているが、非麻痺側を鍛えると左右のバランスが余計に崩れるのではないかと思うこともあった。本論文ではCross educationという考え方が示されており非麻痺側を高強度でトレーニングすることで麻痺側の同部位の出力向上が見込まれるとされる。麻痺側の出力が出てきた時点で麻痺側単独練習に移行させていくのも一つの案と思われる。
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 4万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)