【2026年版】緊張型頭痛の原因と治し方|リハビリ・姿勢改善・ストレッチを専門家が解説
緊張型頭痛は、なぜマッサージでは戻ってしまうのか。
「ほぐすと楽になるが、また同じ場所が痛くなる」——それは施術が悪いのではなく、評価すべき筋機能・姿勢・中枢性感作にアプローチできていないだけかもしれません。新人セラピストが臨床でつまずきやすいポイントを、エビデンスとともに整理します。
— 頸部・胸椎・肩甲帯を含めた複合的評価とアプローチの一例
要点5項目。
臨床現場でこう出会う。
40代女性、事務職。発症から慢性期(2年経過)。NDIは22点(中等度)、NRS平均5/10、月18日の頭痛あり、鎮痛剤は月12日使用。主訴は「後頭部から首にかけての締め付け感が仕事中ずっとある」。
初回評価所見:頭部前方変位あり、CCFTで22mmHg保持時に胸鎖乳突筋の代償(触診で確認)、後頭下筋群・僧帽筋上部に圧痛点あり、鎮痛剤使用日数が月10日を超えており薬物乱用頭痛(MOH)の疑いあり。

新人セラピストがまず戸惑うのは「頭痛」という主訴そのものへの介入経験の少なさです。しかし実際に評価すべきは頭ではなく、頸部・肩甲帯の筋機能と姿勢、そして中枢神経系の痛み処理です。
このケースのように鎮痛剤使用が月10日を超えている場合は、リハビリ単独で解決しようとせず、まず医師への確認を優先してください。これは第7章・第8章で詳しく扱います。
定義と疫学。
緊張型頭痛(Tension-Type Headache: TTH)は、頭痛全体の中で最も頻度が高い一次性頭痛です。「一次性」とは、脳腫瘍やくも膜下出血などの器質的疾患が原因ではなく、頭痛そのものが病態の中心であることを意味します。
かつては「心因性の頭痛」と捉えられていましたが、現在は頸部・肩・頭周辺の筋の過緊張や筋膜の感作、そして脳が痛みを増幅する中枢性感作(Central Sensitization:侵害刺激がなくても脳の痛み処理系が過敏化し痛みを感じやすくなる状態)が組み合わさって生じる、神経筋骨格系の問題として理解されています。
WHOの報告では世界成人の約38%が緊張型頭痛を経験するとされ、日本でも成人の約40〜50%が経験する最頻の一次性頭痛です(Bendtsen L, Jensen R. Curr Opin Neurol. 2006;19(3):305-309)。月15日以上頭痛がある慢性緊張型頭痛は全体の約3%に及び、抑うつ・睡眠障害の合併率も高くなります。「軽い頭痛」ではなく、積極的介入でQOLが大きく改善する疾患だと理解してください。
ICHD-3による3つの分類とMOH
低頻度は月1日未満で日常生活への支障は少なく対症療法が中心。高頻度反復性は月1〜14日で仕事・家事に影響が出始め、リハビリ介入の最適なタイミングとされます。
中枢性感作が確立している段階で、筋・姿勢へのアプローチ単独では不十分になりやすく、心理的介入を含む集学的アプローチが必要になります。
鎮痛剤の月10日以上の使用が3か月以上続く状態。これはTTHの重症度分類ではなく併存する薬剤起因性の病態であり、医師との連携による段階的減薬が先決です。
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STROKE LABは脳神経疾患リハビリの専門施設として、筋・姿勢の問題と中枢性感作を同時に扱う設計力を強みにしています。まずは無料相談で現在の状態をお伺いします。
神経メカニズム・責任病巣。

「筋がほぐれれば治る」という理解では慢性例に対応できません。末梢性感作(筋・筋膜レベル)と中枢性感作(脳・脊髄レベル)は独立した機序であり、評価と介入を分けて考える必要があります。
末梢性機序:筋・筋膜感作
後頭下筋群・側頭筋・僧帽筋における筋収縮の持続と局所虚血によって、ブラジキニン・セロトニン・プロスタグランジンなどの発痛物質が蓄積します。これが筋膜内の侵害受容器(Aδ線維・C線維)を感作させ、触圧刺激に対して過剰な痛みを生じる「末梢性感作」につながります。
中枢性機序:Trigeminocervical Complexと中枢性感作
上位頸髄(C1-C3)の後角ニューロンは、三叉神経核尾側亜核(trigeminal nucleus caudalis)と収束しており、頸部の筋骨格系の問題が頭痛として現れる神経解剖学的経路(trigeminocervical complex)が存在します。この経路を介して、後頭下筋群・胸鎖乳突筋・僧帽筋の機能不全が頭部・側頭・前額部の疼痛として表れます。
慢性緊張型頭痛では、延髄三叉神経核〜視床〜大脳皮質の痛み処理回路が可塑的に変化し、通常は痛みと感じない刺激でも痛みを感じるようになります。これがNSAIDsの効果が乏しくなる主な理由でもあります。
深部頸部屈筋(DCF)機能低下が要となる理由
長頸筋・頭長筋などの深部頸部屈筋群の機能低下は、頸部の動的安定性低下と表層筋(胸鎖乳突筋・斜角筋)の代償的過活動を招きます。この表層筋の慢性過収縮が末梢性感作の主要な維持因子であり、深部頸部屈筋訓練(CCFT)がエビデンスに基づく主要介入とされる理由です。
Jull G, et al. [単独RCT]:頸原性頭痛患者を対象に運動療法・徒手療法の無作為化比較試験を実施(Spine. 2002;27(17):1835-1843)。頸部運動療法と関節モビリゼーションの併用群で頭痛頻度・強度の有意な改善を報告しており、頸部機能不全が頭痛の維持因子であることを支持しています。
鑑別診断。
緊張型頭痛の診断自体は医師が行いますが、セラピストが問診時に危険な頭痛(二次性頭痛)のサインを見逃さないことは臨床安全の第一歩です。あわせて片頭痛・頸原性頭痛との鑑別ポイントを押さえておきます。

| 鑑別疾患 | 共通点 | 鑑別ポイント | 参考検査 |
|---|---|---|---|
| 片頭痛 | 頭部の痛み・慢性化しやすい | 拍動性・片側性・日常動作で悪化・光音過敏や悪心を伴う | 頭痛日記・ICHD-3問診票 |
| 頸原性頭痛 | 頸部由来・後頭部から始まる痛み | 片側固定性が多く、頸部の特定肢位で誘発される。上位頸椎の関節由来所見あり | 頸椎関節モビリゼーションテスト |
| 薬物乱用頭痛(MOH) | 慢性・毎日に近い頭痛 | 鎮痛剤月10日以上・3か月以上使用の病歴が決め手 | 頭痛日記・服薬記録 |
| 二次性頭痛(SAH・髄膜炎・脳腫瘍等) | 頭部の痛みという主訴 | 突然発症・発熱と項部硬直・神経脱落症状・50歳以降の新規頭痛は即医療紹介 | MRI/CT・髄液検査(医師) |
評価尺度と採点基準。
「なんとなく楽になった」を数値に変換することが、介入の質を決めます。ここではCCFTとNDIを中心に、実施手順と採点基準を完全に整理します。

| 項目 | 採点基準 | カットオフ値 | 解釈 |
|---|---|---|---|
| NDI合計点 | 10項目×0〜5点の合計(50点満点) | 0〜4点:正常 | 障害なし |
| 同上 | 同上 | 5〜14点:軽度 | 日常生活は概ね自立 |
| 同上 | 同上 | 15〜24点:中等度 | 仕事・家事に明確な支障 |
| 同上 | 同上 | 25〜34点:重度 / 35点以上:最重度 | 多職種連携を前提とした介入設計が必要 |
信頼性・MCID [複数RCT]:頸部痛患者を対象とした検討で、NDIの検者内信頼性は高く(級内相関係数は概ね良好な水準)、MCID(臨床的最小変化量)は概ね5点前後と報告されています(Cleland JA, et al. Spine. 2006関連文献群)。介入前後でこの変化量を上回るかどうかが、臨床的に意味のある改善の目安になります。
PPT(圧痛閾値) [観察研究]:アルゴメーターによる圧痛閾値測定は、慢性緊張型頭痛患者で健常者より有意に低値を示すことが複数の観察研究で確認されており、中枢性感作の間接指標として利用できます。
介入のエビデンス。
パラメータ(時間・回数・頻度・強度)を明確にしないまま「運動療法をやりましょう」では再現性がありません。4つの介入について、実際に処方できる形で整理します。

10mmHgから開始し、表層筋の代償が出ない範囲で段階的に26mmHgまで負荷を上げます。最低6〜8週間の継続で効果が現れ始めます。自宅練習にはタオルロールを用いた簡易版を導入できます。
後頭下筋群・僧帽筋上部のトリガーポイントに対する持続的圧迫と関節モビリゼーションの併用は、即効性のある緩和と長期的な筋機能改善の両方に寄与します。
会話ができる程度の中等度強度のウォーキングを継続すると、内因性オピオイド分泌を介した鎮痛系の活性化が期待できます。頭痛が強い日は無理せず中程度以下の日に継続します。
中枢性感作が強い慢性例では、認知行動療法や呼吸法の併用が運動療法単独より高い効果を示します。心理士との連携を前提に設計してください。
徒手療法 [単独RCT]:Fernández-de-las-Peñas C, et al. 虚血性圧迫とトランスバースフリクションマッサージが活動性・潜在性トリガーポイントの圧痛に与える即時効果を検証(J Bodyw Mov Ther. 2006;10(1):3-9)。両手技とも圧痛閾値の即時改善を報告。
トリガーポイントリリース [観察研究]:Moraska AF, et al. 単回・複数回のトリガーポイントリリースへの反応性を検討(Am J Phys Med Rehabil. 2017;96(9):639-645)。複数回の介入で圧痛閾値の改善がより持続的であることを報告。
有酸素運動 [単独RCT]:Darabaneanu S, et al. 有酸素運動を頭痛予防の選択肢として検証したパイロット試験(Int J Sports Med. 2011;32(6):455-460)。定期的な有酸素運動群で頭痛関連指標の改善を報告。

STROKE LABでは、評価に基づいた根拠のある介入設計を大切にしています。頭痛のリハビリも例外ではありません。まずは無料相談でお話をお聞かせください。
多職種連携と環境調整。
セラピストだけで完結させない
緊張型頭痛のリハビリは、筋・姿勢へのアプローチだけでは限界があります。特にMOHの疑いや中枢性感作が強い症例では、医師・心理士との役割分担が不可欠です。
「鎮痛剤の使用回数を毎回聞く」ことを習慣化してください。月10日を超えていたら、それはセラピストが単独で判断すべき領域ではありません。
「効果が出ない」と感じたら、筋機能の問題ではなく中枢性感作の関与を疑い、心理士へのつなぎを検討する視点を持ちましょう。
| 職種 | 評価項目 | 主な介入内容 | 連携ポイント |
|---|---|---|---|
| PT | CCFT・ROM・PPT・NDI | 深部屈筋訓練・徒手療法・姿勢矯正 | 頭痛日記の記録をOT・医師と共有 |
| OT | デスクワーク動作・作業姿勢 | ワークステーション調整・作業動線の見直し | PTの姿勢矯正方針と整合させる |
| ST | 構音・嚥下関連の頸部筋緊張(併存例) | 舌骨上下筋群の緊張評価と介入(該当例のみ) | 頸部筋膜連鎖の情報をPTと共有 |
| 看護師 | 服薬状況・睡眠・生活リズム | 服薬管理指導・生活指導 | MOH兆候を早期に医師へ報告 |
| 医師(神経内科等) | 診断確定・レッドフラッグ除外 | 薬物療法・予防薬の調整・減薬管理 | リハビリ経過をフィードバックし薬剤調整に反映 |
| MSW | 就労状況・経済的負担 | 職場との調整支援・制度案内 | 休職・時短勤務の必要性をチームで検討 |
つまずきポイントと臨床判断のコツ。
先輩が新人時代に実際につまずいたポイントを共有します。同じ失敗を繰り返さないための視点です。

効果が停滞したときの判断フロー
6〜8週間継続しても頭痛頻度に変化がない場合、まず「フォームは正しいか」「代償動作が出ていないか」を再評価します。それでも変化がなければ、中枢性感作の関与を疑い、心理的介入の追加を検討してください。
「筋肉が硬いから頭痛が出る」だけで説明を終えないこと。患者が「なぜ運動で頭痛が減るのか」を理解できるまで、機序を言葉にして伝えてください。
効果が出ないときほど、評価に立ち返る。「もう一段強い手技」を探す前に、評価が正しかったかを疑う癖をつけましょう。
予後とゴール設定。
「いつ頃から変化を感じられるか」を患者に伝えられることは、継続のモチベーションを支える重要な臨床スキルです。
1〜2週で深部屈筋の存在への気づきが生まれ、3〜4週で頭痛の「強度」に変化が出始めます。6〜8週で頭痛の「頻度」が減少し、頭痛日記で数値として確認できるようになります。3〜6か月で在宅プログラムが生活に定着し、患者自身が頭痛をコントロールできる感覚を得られることがゴールです。
ゴール設定はNDI・NRS・頭痛日記の頻度という客観指標で行い、「痛みゼロ」ではなく「頻度・強度が生活に支障をきたさない水準まで下がること」を現実的な目標として共有してください。
よくある質問。
最大の鑑別点は「日常動作による増悪の有無」です。緊張型頭痛は歩行や階段昇降でほとんど悪化しませんが、片頭痛は動作で明確に悪化します。両側性か片側性か、拍動性か圧迫性か、光音過敏や悪心の有無もあわせて確認してください。慢性化すると境界が曖昧になるため、頭痛日記による記録が鑑別の助けになります。
背臥位で圧力バイオフィードバックユニットを後頭部下に置き、20mmHgを基準に22〜30mmHgまで段階的にあご引き動作を保持させます。表層筋(胸鎖乳突筋等)の代償が触診で早期に出現する場合を機能低下ありと判断します。Jull Gらの手技が国際的な標準とされています。
週3〜5回、1回10〜15分を基本とし、最低6〜8週間の継続が効果発現の目安です。強度はCCFTで10mmHgから開始し、表層筋の代償が出ない範囲で26mmHgまで段階的に上げます。自宅ではタオルロールを用いた簡易版から導入し、フォームの崩れを毎回確認してください。
運動療法単独では不十分なことが多く、認知行動療法・バイオフィードバック・呼吸法などの心理的介入を組み合わせる必要があります。慢性緊張型頭痛では筋・姿勢へのアプローチだけでは再燃を繰り返すことがあるため、心理士・医師との多職種連携を前提に設計してください。
MOHが疑われる場合は、リハビリ単独で解決しようとせず、まず神経内科・頭痛専門医による段階的減薬の方針を確認してから運動療法を並行するのが安全です。急な断薬は反跳性頭痛を招くため、医師の管理下での減薬とリハビリ開始のタイミングを揃えてください。
NDIは50点満点で、0〜4点が正常、5〜14点が軽度、15〜24点が中等度、25〜34点が重度、35点以上が最重度の障害とされます。MCIDは概ね5点前後と報告されており、介入前後でこの変化量を上回るかどうかが臨床的に意味のある改善の目安になります。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは脳卒中をはじめとする脳神経疾患リハビリの専門施設として、「脳の可塑性・痛み処理システムの再構築」を日常的に実践しています。この知見は慢性緊張型頭痛のリハビリに直接応用でき、筋・姿勢の問題と中枢性感作を同時に扱える設計力が、一般的なマッサージ・整体との最大の違いです。

「CCFTで22mmHg保持時に胸鎖乳突筋の代償が出ていた慢性頭痛の患者さんがいました。最初はタオルロールでの簡易版から始め、代償が出ない範囲を毎回確認しながら段階的に負荷を上げていきました。6週目にNDIが22点から14点に改善し、頭痛日記でも頻度の減少が明確になり、患者さん自身が変化を実感してくれたのが印象的でした。」— 理学療法士・臨床経験6年・頸部機能障害領域
「月14日鎮痛剤を使用していた患者さんに対し、まず神経内科と連携して減薬方針を確認してから運動療法を並行しました。単独で介入を進めていたら、効果判定を見誤っていたと思います。多職種連携の重要性を痛感した症例でした。」— 理学療法士・臨床経験4年・慢性疼痛領域
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一緒に終わらせましょう。

緊張型頭痛は「気の持ちよう」ではなく、筋・姿勢・神経系の問題として理解し、正しく介入すれば確実に改善できる疾患です。
私たちは評価に基づいた根拠のあるリハビリを大切にしています。なぜこの運動をするのか、なぜこの姿勢が問題なのかを、一つひとつ言葉にしてお伝えします。
薬に頼らない生活を取り戻したい方は、まず無料相談でお話を聞かせてください。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)