パーキンソン病と固有受容感覚 エビデンス論文 専門リハビリ施設 vol179
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カテゴリー
神経系
タイトル
パーキンソン病と固有受容感覚Proprioception and motor control in Parkinson’s disease.?pubmedへ Konczak J et al.(2009)
本論文を読むに至った思考・経緯
•パーキンソン病の利用者様を担当しており、未だ姿勢制御に関する推察が不十分だと感じたため学習の一つとして本論文に至る。
論文内容
論文背景
•パーキンソン病(PD)は、運動機能の進行性の低下をもたらす神経変性疾患である。PD患者もまた運動機能に悪影響を与える固有受容感覚の障害を生じることが示されている。
目的
•このレビューでは、PDにおける固有受容感覚と運動障害との関係について取り上げています。
「PDの知覚-運動を統合する能力の低下についての知見」
•日常的な臨床検査では、感覚的な変化を示すことは然程ないが、PDでは感覚的な変化が示されている。例:先行研究では、PD患者の約40%が神経学的検査を受け、正常と判定されたにも関わらず、自覚的な異常感覚の訴えがあることが示された。
•神経生理学的研究では、PD患者は体性感覚誘発電位または固有受容感覚が著しく低下していることが示されている。
•基底核の機能不全が、上肢の位置感覚の変化をもたらすことが示されている。
•先行的な知見が運動感覚の障害のみに起因するのか、または視覚および認知プロセスにおける問題に起因する可能性があるかは不明であるが、いずれもPDにおいて障害があることが知られている。
•健常者ではフリーハンドでの立位から座位または支持物を使用すると、即座に姿勢応答として足から上肢または体幹へ筋の活性を変化させるが、PD患者では徐々に適応させるにも関わらず足部の姿勢応答を減少させない。
「固有受容感覚の閾値の上昇」
•先行研究では、視覚情報を遮断した状態のPD患者の筋活動のない受動的な運動における感覚の感受性を調査した。
結果、年齢等が同じ健常対象群と小脳疾患群とPD患者で比較し、関節の角度が対象群では1.03°、小脳患者は1.15°、PDでは2.10°とPDでは対照と比較し、平均2倍高い検出閾値を示した。
5度を超える変位でのみ、PD患者は対照および小脳患者と同じ感受性を示した。この運動感覚障害は、PDの重篤度および発症からの期間と有意に相関していた。
•同様の研究では、関節を動かす速度が遅くなると検出するのに時間がかかるという報告もされている。健常対照群と比較して、PD群の検出時間は、様々な速度条件に対して92〜166%増加した。
•圧力を感知する閾値に関しても、PDの重症度と相関し、閾値が上昇することが示されている。
私見・明日への臨床アイデア
•パーキンソン病の患者様では、一般的な感覚検査では観察されにくいが、その質の低下があることが示唆されている。検査において、ほんのわずかな角度や圧力の変化に俊敏に返答できるか等「質の評価」をする必要がある。
•動作を見る際に運動症状だけでなく、非運動症状など総合的に診る必要があり、家族はじめチームアプローチとして密に関わる必要があることを常日頃感じる。
•今回は、論文内の一記事であるが、他にも固有受容感覚に関して多くの内容が記載されているので興味のある方は一読頂きたい。
氏名 覚正 秀一
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)