vol.172:上腕骨頭の安定化における上腕二頭筋腱の役割 脳卒中/脳梗塞/片麻痺のリハビリ論文サマリー
脳神経系論文に関する臨床アイデアを定期的に配信中。 Facebookで更新のメールご希望の方はこちらのオフィシャルページに「いいね!」を押してください。」 臨床に即した実技動画も配信中!こちらをClick!!(YouTube)
肩関節評価に役立つ動画は↓↓↓
カテゴリー
バイオメカニクス
タイトル
上腕骨頭の安定化における上腕二頭筋腱の役割The role of the long head of biceps brachii in the stabilization of the head of the humerus?pubmedへ Kumar VP et al.(1989)
本論文を読むに至った思考・経緯
•臨床にて上肢にトラブルを抱える方がおり、上腕二頭筋・三頭筋部分の操作も行う為、よりイメージを鮮明に持てるよう本論文に至る。
論文内容
研究目的・方法
•上腕骨頭の安定化における上腕二頭筋腱の役割を調査するべく、献体15体の肩で研究した。
•上腕骨頭の上方移動は、肩のレントゲン写真にて、肩峰-上腕骨間距離の減少を観察した。
研究結果・考察
•上腕二頭筋の短頭を緊張させると、肩峰-上腕骨間距離の統計的に有意な減少があった。
•上腕二頭筋の長頭または両頭の緊張時には有意な変化はなかった。
•両頭が緊張している間に長頭の腱を切断すると、上腕骨頭が著しく上方に移動した。
•上腕二頭筋の長頭腱の重要な機能の1つは、強力な肘屈曲および主動作筋による前腕回旋中に関節窩に上腕骨頭を安定させることである。
•肩の外科的処置における上腕二頭筋腱の犠牲は不安定性および機能不全を生じ得る。
他論文から追記
•Basmajianら(1957)は上腕二頭筋腱は、肩甲上腕関節における弱い屈曲と内旋として機能することを示した。
•Sakuraiら(1998)は、上腕二頭筋の長頭は、内外旋時に活動的であることを示した。
•Itoiら(1994) Rodoskyら(1994)は上腕二頭筋腱は、肩甲上腕関節のねじり剛性を増加させ、動的な前方安定要素として機能することを示している。
•Role of the long head of the biceps brachii muscle in axial humeral rotation control(Eshuis R ert al.2012)では、研究結果は、解剖学的位置において上腕二頭筋長頭腱への負荷が内旋に作用し、結果として外旋を制限することを示している。上腕骨の回旋に及ぼす上腕二頭筋腱の影響は、肩甲上腕関節の屈曲約45°以上で変化する。上腕二頭筋腱の結節間溝が肩甲骨面の前方に位置する場合、内旋として作用し、肩甲骨面の後方に位置する場合外旋として作用すると示している。
私見・明日への臨床アイデア
•上腕二頭筋は決して肘を曲げるだけでなく、上腕骨の軸回旋や前腕運動中の上腕骨頭を関節窩に留める(安定)事に関わる部分もある。肘、肩甲帯にも関わってくるため、上肢治療で見逃せない部分である。上腕二頭筋の触り分けをより明確にしていき、その上で上記論文をはじめ知識を評価・治療に活かしていきたい。
氏名 覚正 秀一
職種 理学療法士
脳卒中自主トレ100本以上 一覧はこちら
STROKE LABでは療法士向けの脳科学講座/ハンドリングセミナーを行っています
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)