vol.152:腹筋群の解剖学的検討 脳卒中/脳梗塞リハビリに関わる論文サマリー
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カテゴリー
バイオメカニクス
タイトル
腹筋群の解剖学的検討Regional morphology of the transversus abdominis and obliquus internus and externus abdominis muscles?pubmedへ Urquhart DM.et al.(2005)
本論文を読むに至った思考・経緯
•治療時の体幹筋の扱いに曖昧さを感じたため、よりイメージを持って治療できるよう本論文に至る。
論文内容
論文背景
•腹筋群が作用した時の腰仙部の制御についてのメカニズムは、明確に理解されていない。腹部形態の記述も矛盾しており、腹部筋群の局所解剖学的構造は包括的に研究されていない。
研究目的
•研究目的は、腹横筋、内腹斜筋、外腹斜筋の形態を調べることであった。
研究方法
•26人の献体において腹壁を切開し、筋の厚さや長さなどを観察した。
研究結果)筋線維束の方向
・腹横筋の上部の筋線維束の方向は水平であった。人により10度よりも大きな角度を有する場合もあった。中部と下部は(水平に近い)下内側方向へ走行した。
(角度は下部>中部)
・内腹斜筋線維束は腸骨稜に優位に付着し上部と中部は上内側に配向していた。
対照的に、腸骨稜の下方では、内腹斜筋の筋線維束は水平に配向され、ASISの下において下方内側への角度が増加した。
・外腹斜筋線維束は下方内側へ配向し中部領域で最も大きな角度を有した。偏差が大きく、献体間の変動性が高いことを示しています。
研究結果)筋線維束長
•全ての筋線維束は、中部で最も長く、下部で最短であった。
•外腹斜筋の中部の筋線維束は最も長く、中部の腹横筋および内腹斜筋よりも約7cm長かった。
•腹横筋の下部線維束は最も短く、わずか3.6cm程で、内腹斜筋よりも約2cm短かった。
研究結果)筋の厚み
•腹横筋の上部は、下部および中部よりも厚みがあった。下部および中部では厚さの差はほとんどなかった。
(腹横筋の厚み 上部>中部・下部)
•内腹斜筋の下部と中部は同様の厚さを有し、上部の厚さとは異なり、上部は最も薄かった。
(内腹斜筋の厚み 中部・下部>上部)
•外腹斜筋の中部は上部よりも厚かった。
•内腹斜筋と腹横筋の上部は同様の厚みを有していた。中部は内腹斜筋と外腹斜筋の方が腹横筋より厚かった。下部では、内腹斜筋は腹横筋より24%厚かった。
•内腹斜筋の精密な観察では、下部および中部には筋層が2層認められた。
私見・明日への臨床アイデア
•繊維方向や長さ、厚みなどからその筋の働きが想像できると思われる。例えば、腹横筋や内腹斜筋の下部では骨盤帯の閉鎖力を生むために水平走行に近く、長さが短いため縮むというよりは等尺性に近い形で働くのではと思われる。外腹斜筋は最も長くトルク生成に優位で、筋線維束方向は下内側である。そのため、例えば寝返りやダイナミックな屈曲回旋動作(求心であれば)など大きな動きや上半身の重たい質量をコントロールするのに適しているのではと想像する。筋をよりイメージを深める事で、一つ一つの筋への関わり方も変化すると思われるので、継続してイメージを深めていきたい。
氏名 覚正 秀一
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)