脳性麻痺の子どもの歩き方|はさみ足・尖足を運動分析から支える
はさみ足・尖足を、歩行の連鎖と重心移動から読み解く
「つま先で歩く」「膝が内側に入る」「膝を曲げたまま歩いて疲れやすい」。脳性麻痺のお子さんの歩き方は、足首だけ、膝だけ、筋肉の硬さだけで決まるわけではありません。骨盤・股関節・膝・足部・体幹がつながって、今の歩き方が生まれています。この記事では、はさみ足・尖足・クラウチング歩行を、保護者にもわかる運動分析の視点で整理します。

「歩き方が気になる」を、まず言葉にする。
脳性麻痺のお子さんの歩き方について、保護者の方からよく聞く言葉があります。「かかとがつかない」「膝が内側に入る」「足が交差する」「しゃがむように歩く」「すぐ疲れる」「転びやすい」。どれも大切なサインですが、ひとつの言葉だけで原因を決めることはできません。
歩き方は、筋肉の硬さ、関節の動き、感覚、体幹の支え、視線、装具、靴、成長による骨格の変化が重なって作られます。だからSTROKE LABでは、歩き方の形を直す前に、どこで支え、どこで代償しているかを見ます。
急な片麻痺、急な歩行低下、けいれん様の動き、顔色や呼吸の異常、強い痛み、いつもと違う意識のぼんやり感がある場合は、リハビリ相談より先に医療機関へ相談してください。脳性麻痺そのものの診断、薬、注射、手術、装具処方は主治医の判断が前提です。
脳性麻痺の歩行は、なぜ崩れやすいのか。
脳性麻痺は、運動や姿勢のコントロールに影響する状態です。とくに痙直型では筋緊張が高くなりやすく、脚を内側へ寄せる力、つま先で支える癖、膝を曲げた姿勢などが歩行に表れます。ただし、歩き方を「筋肉が硬いから」とだけ見ると、支援の方向を見誤ることがあります。
歩行は、片脚で体重を支える時間と、反対側の脚を前へ運ぶ時間の連続です。支える側の骨盤が不安定だと、股関節が内側に入り、膝や足首で帳尻を合わせます。足裏の感覚が入りにくいと、つま先や内側の縁で床を探すような歩き方になることもあります。
足首の硬さ、膝の曲がり、股関節の内向き、体幹の前傾は、それぞれ別々に見えてもつながっています。ひとつの関節だけを直そうとするより、どの関節が支え役になり、どの関節が代償しているかを見た方が、生活に使える支援につながります。

はさみ足・尖足・クラウチング歩行をどう見るか。
ここでは、保護者が相談時に言葉にしやすい代表的な歩行パターンを整理します。大切なのは、見た目の名前をつけることではありません。その歩き方が、お子さんにとってどんな支え方・代償になっているかを見ることです。
| 歩き方 | 見え方 | 背景として見たいこと |
|---|---|---|
| はさみ足 | 両脚が内側へ入り、膝が近づく。歩くと脚が交差するように見える | 股関節を内側へ寄せる力、骨盤の支え、足を前へ出すときの選択性、立脚側の安定性 |
| 尖足 | かかとがつきにくく、つま先で接地する。靴の前側がすり減りやすい | ふくらはぎの緊張、足首の可動性、膝の伸びすぎ、足裏感覚、装具・靴の影響 |
| クラウチング歩行 | 膝と股関節を曲げたまま、しゃがむように歩く。疲れやすい | 体幹・骨盤の前後バランス、膝を支える力、足部の支え、ハムストリングス、装具の設定 |

足首だけでなく、骨盤から足部までを見る。
たとえば尖足を見るとき、ふくらはぎの硬さはもちろん確認します。しかし、骨盤が後ろへ倒れていないか、膝が伸びすぎていないか、足裏のどこで床を感じているか、体幹が前へ倒れていないかも同時に見ます。足首の形は、足首だけで作られているわけではないからです。
はさみ足でも同じです。脚が内側に入るからといって、内ももの筋肉だけを見るのではなく、支える側の骨盤が保てるか、反対側の脚を前へ出すときに体幹が逃げていないか、歩くスピードが速すぎないかを見ます。歩行は、身体のどこか一部の問題ではなく、全身が協力して作る動きです。
横から5秒、正面から5秒、疲れてきた後半に5秒。歩行動画を短く撮るだけでも、相談の質が上がります。横からは膝と足首、正面からは膝の向きと足幅、後半は疲労による変化を見ます。動画は診断のためではなく、専門職と一緒に観察をそろえるためのメモです。

研究でわかっていること。
脳性麻痺の歩行支援では、筋肉を伸ばす・鍛えるだけでなく、本人と家族にとって意味のある活動を目標にし、その動作を実際の場面に近い形で練習することが重視されています。歩き方を「形」だけで評価するのではなく、生活でどのように使えるかまで見ることが大切です。
国際的な臨床実践ガイドラインでは、脳性麻痺のお子さんの身体機能を高める支援として、本人と家族に意味のある目標を決め、その動作を課題として練習し、家庭や地域の生活へつなげる考え方が重視されています。
限界注記:対象年齢、GMFCS、麻痺の型、装具、手術歴、痛み、疲労、成長段階によって結果は変わります。研究は治療の代替ではなく、主治医と専門職の評価を前提に活用する情報です。出典:Jackman M, et al. Developmental Medicine & Child Neurology. 2022;64(5):536-549. Novak I, et al. Current Neurology and Neuroscience Reports. 2020;20(2):3.
STROKE LABでは、医療機関での診断・治療を尊重しながら、歩行分析、姿勢・荷重、装具との関係、家庭や学校での使い方を整理します。
専門リハで、取り組めること。
診断・投薬・ボツリヌス療法・SDR・整形外科手術・装具処方は主治医と医療機関の領域です。STROKE LABは、医学的判断を尊重しながら、生活で使う歩行と運動学習の側から併走します。
1. 姿勢と荷重の土台づくり。骨盤・体幹・足部の支えを見ながら、片脚へ体重を乗せる、足裏で床を感じる、膝と股関節を協調させる練習を行います。歩く前の立つ力を整えることで、歩行の安定につなげます。
2. 歩行パターンに合わせた課題練習。はさみ足、尖足、クラウチング歩行など、見た目の名前だけでなく、どこで代償しているかを分析します。そのうえで、段差、方向転換、学校内の移動、遊びなど、実際の場面に近い課題で練習します。
3. 家庭・学校・装具との連携。通う時間だけでなく、毎日の使い方が歩行を育てます。家庭での観察、学校での移動距離、体育や外遊び、装具と靴の状態を整理し、主治医・装具士・療法士と相談しやすい形にします。
効果や経過には個人差があり、発達や成長に合わせて目標は変わります。医学的治療の代替ではなく、主治医の方針と並行して、生活と動きの側から支えることが私たちの役割です。
脳性麻痺の歩行を含む身体機能への支援では、目標志向、課題ベース、十分な練習量、家庭や地域への一般化が重視されます。歩行パターンの分析では、足首・膝・股関節の関係を見て介入方針を考える分類研究も参考になります。出典:Jackman M, et al. Developmental Medicine & Child Neurology. 2022;64(5):536-549. Rodda J, et al. European Journal of Neurology. 2001;8(Suppl 5):98-108.
家庭・学校で観察したいこと。
家庭で大切なのは、無理に歩かせることではなく、変化を見逃さず、相談しやすい情報にすることです。歩き始め、疲れてきた後半、靴を脱いだ後、装具を外した後、学校から帰った後で、歩き方や痛みが変わることがあります。
| 観察する場面 | 見るポイント | 相談メモの書き方 |
|---|---|---|
| 朝と夕方 | 疲労で膝が曲がる、つま先が強くなる、転びやすくなる | 「夕方になると右足のつま先が引っかかる」など時間帯を書く |
| 靴・装具を外した後 | 赤み、痛み、擦れ、足指の丸まり、装具の跡 | 赤みが何分で消えるか、痛みの場所を記録する |
| 学校・園での移動 | 階段、廊下、体育、校庭、荷物を持つ場面 | 「階段の下りで手すりが必要」など具体的な場面を書く |

よくある質問。
脳性麻痺の歩き方は改善しますか?
はさみ足は何が原因ですか?
尖足はふくらはぎを伸ばせばよいですか?
クラウチング歩行は膝を伸ばす練習をすればよいですか?
装具を使っていても歩き方が気になる場合はどうしたらよいですか?
家庭では何を観察すればよいですか?
STROKE LABの小児リハビリ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。脳性麻痺のお子さんの歩き方を、足首や膝だけでなく、姿勢・荷重・感覚・装具・生活環境まで含めて整理します。診断・医学的治療は主治医を尊重し、生活と動きの側から併走します。医療機関でのリハビリとの併用も歓迎です。
生活で使える一歩へ。

お子さんの歩き方が気になるとき、保護者の方は「何をどこまで練習すればよいのか」と悩まれます。私たちは、見た目の歩き方だけでなく、その奥にある姿勢・荷重・感覚・発達を見ます。
大切なのは、きれいな形だけを目指すのではなく、本人が生活で使える歩行を育てることです。家庭・学校・医療機関と連携しながら、一人ひとりの発達段階に合わせて支援します。
歩き方、装具、疲れやすさ、転びやすさについて整理したい方は、一度ご相談ください。お子さんの「行きたい」「やりたい」に向けて、動きの側から一緒に組み立てます。
代表取締役 金子 唯史

脳の機能解剖とリハビリテーションの視点を、脳性麻痺のお子さんの歩行支援にも応用し、姿勢・運動・感覚・生活参加をつないで考えます。
- 脳性麻痺の子どものリハビリ|動作分析で見る運動発達の可能性
- 痙直型脳性麻痺|つっぱりを運動から理解する
- 子どものつま先歩き|癖・発達障害・麻痺を運動の視点で見分ける
- 脳性麻痺の子どもの装具(AFO)と靴|成長に合わせた見直し方
- Centers for Disease Control and Prevention. About Cerebral Palsy. Updated 2026.
- NICE. Cerebral palsy in under 25s: assessment and management. NICE guideline NG62. 2017.
- Jackman M, Sakzewski L, Morgan C, et al. Interventions to improve physical function for children and young people with cerebral palsy: international clinical practice guideline. Developmental Medicine & Child Neurology. 2022;64(5):536-549.
- Novak I, Morgan C, Fahey M, et al. State of the Evidence Traffic Lights 2019: Systematic Review of Interventions for Preventing and Treating Children with Cerebral Palsy. Current Neurology and Neuroscience Reports. 2020;20(2):3.
- Rodda J, Graham HK. Classification of gait patterns in spastic hemiplegia and spastic diplegia: a basis for a management algorithm. European Journal of Neurology. 2001;8(Suppl 5):98-108.
- 金子唯史. 脳の機能解剖とリハビリテーション. 医学書院. 2024.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)