vol.316:ゴルジ腱器官の反応 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
神経系
タイトル
ネコヒラメ筋の自動収縮時のゴルジ腱器官の反応
Responses of Golgi tendon organs to active contractions of the soleus muscle of the cat.
?PubMed Houk J J Neurophysiol. 1967 May;30(3):466-81
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
腱紡錘に興味があり本論文を見つけ、読もうと思った。
内 容
背景・目的
・筋が収縮すると腱に力が生じ、腱紡錘に付着する神経が発火する。
・筋収縮1回の刺激の場合は、電位が立ち上がる際に腱紡錘が発火し、持続的な筋収縮の場合、腱紡錘はリズミカルに発火を繰り返す。
・他の論文によると、筋収縮による張力でもストレッチによる他動的な張力でも、腱紡錘はどちらも同じ閾値で発火すると言われている。
・しかし、反対意見として自動筋収縮では腱紡錘の閾値が他動伸張よりかなり低いとも言われている(L7~S1の前根を刺激した場合)
・本研究は特定の前根のみ残して刺激した際の腱紡錘の電位を記録し、自動筋収縮と他動伸張の違いを比較する。
方法
・成熟した猫に椎弓切除を行い、L7~S1の前根、後根を近位から除去した。左下肢と殿部は脱神経状態とし、ヒラメ筋のみ神経が付着している状態とした。
・筋線維は約160gの他動張力を負荷した状態から実験を始めた。
・次にL7~S1の前根2本のうちどちらかを10-20/秒の周波数で刺激し、ヒラメ筋の一部に筋収縮を誘発した。(単一刺激では刺激と同化し計測に支障が生じるが、刺激頻度が高すぎると筋疲労を生じてしまうため)。
・ヒラメ筋腱にmyographを付け、筋収縮による張力を計測した。
・計8つの腱紡錘を実験に使用した。
結果
図1:筋収縮(上線)と腱紡錘の発火(下線)Houk J (1967)より引用
※上部・下部で違う前根を刺激
・図(上部)は筋収縮を生じさせる(図に表示できないほど強い張力)と腱紡錘の発火が止まった。
・図(下部)は筋収縮(張力18g)でも腱紡錘の発火が増えた。
図2:筋線維と腱紡錘のイメージHouk J (1967)より引用
・図1より、筋線維全てに腱紡錘が付いていないと筆者は考察していた(図2のM2のみ腱紡錘がある)。
私見・明日への臨床アイデア
・図1下部を見ると、他動張力160gでの腱紡錘の発火具合より明らかに自動収縮で発火頻度が強いことがわかる。また、18gの張力で発火していることから腱紡錘は筋収縮に対して反応性が高いことが想像できる。
・ストレッチよりも、筋収縮を促すことがよりIb抑制の効果を得られる可能性がある。全ての線維に腱紡錘が付着していないならば、より多くの筋線維の収縮を動員できるかが筋緊張を緩めるうえで重要になるのではないか。
職種 理学療法士
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)