2017.10.12神経系
vol.203:姿勢の定位と平衡 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
神経系
タイトル
姿勢の定位と平衡:転倒予防のためにバランスの神経コントロールについて何を知るべきか?
Postural orientation and equilibrium: what do we need to know about neural control of balance to prevent falls?
?Pubmed Horak FB Age Ageing. 2006 Sep;35 Suppl 2:ii7-ii11.
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・姿勢制御に興味があり、姿勢制御にどんなサブシステムがあるか知りたいと思ったため。
内 容
バランスの評価と介入における姿勢制御の考え方
・バランスの評価をする際、立位が取れる、タンデム肢位が取れると動作の可否のみ着目していないだろうか?姿勢保持ができない場合、ただその姿勢を反復するのではなく、姿勢制御のサブシステムを基に、原因に着目しアプローチできているだろうか?
・姿勢制御の目的は姿勢の定位と平衡である。
・姿勢の定位とは重力、支持面、視覚環境、内部表象によって動的に身体アライメントと筋緊張をコントロールすることである。
・また、姿勢の平衡とは内的もしくは外的な力からCOMを安定させるための感覚運動戦略の協調を意味する。
・高齢者は感覚障害、筋力低下、整形外科的問題、認知症などでバランス障害を呈することがあるが、その他の戦略で補うこともできる。また、ニュロパチーを持つ患者は視覚で代償することで日常生活を送れるが、夜は視覚情報をうまく使えずバランス障害が顕著になる場合がある。これらのことから、バランス障害は課題に応じてどの戦略を使うのか、使えるのかが重要であり、課題依存的であると言える。
・バランス能力を評価する場合は、以下の6つのサブシステムを理解することが重要である。
図1:6つのサブシステム
Horak (2006) より引用
バイオメカニクス的制限・運動戦略
・支持基底面の大きさが重要であり、その基底面上にCOMをコントロールすることができるかが、最も大事。
・COMを維持するために足関節戦略、股関節戦略、ステッピング戦略どれを使うのか?
・安定性限界はどれくらいの大きさなのか?足関節制御では安定性限界は比較的大きいと判断できる。狭い場合は股関節・ステッピング戦略が生じる。
・足関節制御ができない場合は、可動域・筋力・感覚どこに問題があるのか?
・また、中枢からの影響はないのか?中枢は内部表象として安定性限界を把握しているのか?
・基底核障害のパーキンソン病などは安定性限界の把握や予測的姿勢制御に不備が生じるため、姿勢不良やバランス障害を呈する。
感覚戦略
・明るい環境下でしっかりとした支持面があれば、健常成人は体性感覚に70%、視覚に10%、平衡覚に20%依存する。
・しかし、不安定面上で立つならば、平衡覚と視覚に重きが置かれる。
・中枢にて自動的に3つの経路を使い分けている。どれかが障害されればバランス能力は低下することになる。
・中枢の障害として、アルツハイマー型認知症では3つの戦略の切り替えが素早くできないといった症状を呈する。
空間での定位
・重力、支持面、視覚情報、内部表象から身体部位を位置づける能力は姿勢制御に必要である。
・身体の垂直性は視覚、体性感覚、平衡覚のどれに依存しているかが重要であり、状況と課題によって使い分ける必要性がある。健常者であれば神経系によって自動的にコントロールされている。
動的コントロール
・動的な場面ではCOMは支持面の直上に位置しない
・歩行において矢状面上のCOMの前方落下は下肢の振り出しにより制御されるが、前額面上の安定性は体幹と足部接地位置のコントロールによって成される。
・転倒しやすい高齢者では外側へのCOMの変位が大きく、足部接地位置も不安定となる
認知過程
・認知機能は姿勢制御において重要である。
・より難しい姿勢では反応時間と認知機能の低下が認められており、両者の関係性を示唆している。
私見・明日への臨床アイデア
・姿勢制御の定義や6つのサブシステムをみていると、普段臨床コースで教えていただいていることと強く関連するように感じる。
・sway(重心動揺)の評価は姿勢の平衡をみていると解釈でき、例えば重心が右方へ大きく動くならば、①重心の右方変位を感知できない→足部の圧覚や筋紡錘(体性感覚)の低下②感知できても修正するに十分な筋収縮が得られない、収縮が遅いなどが問題として挙げられるのではないだろうか。
・静的姿勢の崩れ(COMの上下左右の偏位)は姿勢の定位の異常であり、①感覚情報や内部表象の異常②特定の筋の抗重力活動の低下が原因なのではないか。
・対象者のどのシステムが障害されているのか、ひとりひとり丁寧に評価していきたい。また、どんな状況でバランス障害を呈するのかを考え、その場に適切な代償戦略を見つけていきたい。
職種 理学療法士
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