Vol.412.日常生活で麻痺手を使用するにはどの程度の機能が必要?MALの使用量とARATスコアの関係性
目次
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タイトル
日常生活で麻痺手を使用するにはどの程度の機能が必要?
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●麻痺手の日常生活への参加は上肢リハビリを行うに当たって目標となる部分であるが、実際にどの程度の機能を有すると生活で使用出来てくるものなのか疑問に思い本論文に至った。
内 容
背景
●慢性期脳卒中患者における運動機能と麻痺側上肢の使用量の関係はほとんど分かっていない。
●CI療法後の上肢の使用の変化を調べる研究では、上肢遠位の機能が重要な要因であることが分かったが、さらなる調査が必要であった。
●最近の研究では、脳卒中者の麻痺手を定期的に使用するには、機能が非常に高くなければならないことが示唆されている。
●課題指向型トレーニング(TST)では患者は機能的なタスクを繰り返し実行し、そのパフォーマンスに関するフィードバックが与えられ、脳卒中後の上肢機能の改善に効果的であることが示されている。
●本研究目的は、慢性脳卒中者において、MALを用いて上肢の使用量の予測因子および課題指向型トレーニング後の上肢使用量の増加の可能性を調査することであった。また、利き腕と非利き手で異なるかどうかを判断することも目的とした。
方法
●慢性期脳卒中患者はベースラインの評価後、ブロックランダム化されて、末梢神経の全てに対する刺激あり(n=16)または偽(n=17)の体性感覚刺激を受け、その後30分にARAT16項目に必要な課題に基づいて課題指向型訓練を週3回、4週間受けた(5分ごと6つメニュー:1.ストレッチ2.ウォームアップ3.grasp4.pinch 5.粗大運動患者の選択6.患者自己選択)。
●評価は年齢、発症からの期間、Barthel Index、MAS、ARAT(介入前後・3か月・6か月)、上肢Fugl-Meyer(介入前後・3か月・6か月)、MALであった。課題指向型訓練前後のARAT、FMA、およびMALスコアを比較した。
結果
●体性感覚刺激・偽刺激を受けた人の間では機能またはMALスコアに有意差はなかった。
●すべての参加者は脳卒中前に右利きであった。
☞図:介入前のMALの使用頻度とARATまたはFMAとの関係
●MALの2.5(発症前の使用頻度の半分以上)の使用スコアに達するにはARATスコアが54/57点必要であった。
●ベースラインのARATスコアは、利き手が麻痺した患者の使用量を予測した。
●ARATスコアの変化と使用量の変化の関係を図に示す。
●ARATスコアの変化は、MALの使用量の変化の変動の30.8%を予測し、ベースラインでのFMAの手関節のスコアを追加すると予測力が41.1%に増加した。
私見・明日への臨床アイデア
☜ARATの検査道具 図参照:インターリハホームページより
ARATを知ってはいるけれど、使用したことは無いという方も多いかもしれません。ARATはGrasp(つかむ)、Grip(握る)、Pinch(つまむ)、Gross movement(粗大運動)の4種類19項目のテストで構成され、57点満点で評価されます。
ARATで54点取るとなると、巧緻性・リーチ・空間保持はじめ基本的に概ね遂行出来ないと得点に達しません。(※大きい物を片手で上手く持てなかった、親指と薬指で小さな球を持てなかったなどその程度の失敗まで)それ程、上肢を日常生活で発症前と比較し半分以上参加させていくというのは難しいことが分かります。
本論文では、上肢への介入手法として課題指向型訓練を推奨しています。手~肩が上手く動けば日常生活に繋がるというものではなく、物を目で見て、瞬時に運動計画を企て、目と手~肩の協調運動が起こり、適切に目標物に到達し、物を正しく感じ、その自分の体でない物を扱うなど様々な事を成し遂げられる一連の過程を麻痺側の上肢で再学習していく必要があります。
筋の短縮の改善・アライメント修正なども勿論非常に大事ですが、能動的に手を使う課題に同一時間内で繋げていく事が大切です。
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 4万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018)